すいません。
見事にギルドホームがぶっ壊された。
とはいえ、それは一階から上の事で、地下は普通に無事である。
だからみんなここに集まっており、仕事の受注等は現在この地下で行っていた。
まぁ、もっともこんな状況で仕事に出ようとする者などおらず、皆イライラしながら酒を飲んでいた。
マカロフ「よっ、おかえり」
それはこのジジイも同様である。
ナツは「酒なんか飲んでる場合じゃねぇだろ‼」と憤慨しているが、ジジイは特に取り合わず、勝手にS級クエストに行った事を説教しだした。
罰を与えると言って、魔法で腕を伸ばして引っ叩く。
といっても大した痛みも無さそうな軽いビンタだが(何故かルーシィはケツを良い音で叩かれていたが・・・・)。
エルザ「マスター‼ 今がどんな事態か分かっているんですか!?」
ナツ「ギルドが壊されたんだぞ‼」
マカロフ「まぁまぁ落ち着けぃ、騒ぐほどの事でもなかろうに」
グレイ「何!?」
マカロフ「ファントムだぁ? あんな馬鹿タレどもにはこれが限界じゃ。誰もいねぇギルド狙って何が嬉しいのやら」
襲われたのは夜中で、店も閉めており、ギルドには誰もいなかった。
怪我人が出なかったのは不幸中の幸いだろう。
マカロフ「不意打ちしか出来んような奴等に目くじら立てる事はねぇ、放っておけぃ」
ナツ「納得いかねぇよ‼ 俺はあいつ等潰さなきゃ気が済まねぇ‼」
マカロフ「この話は終わりじゃ。上が直るまで仕事の受注はここでやるぞい」
ナツ「仕事なんかしてる場合じゃねぇよ‼」
マカロフ「ナツぅ‼ ええ加減にせんかぁっ‼」
――――――すぱぁんっ‼
ルーシィ「だから何でアタシのお尻!?」
ミラ「マスター・・・怒りますよ」
・・・・・如何にも緊張感がない。
いや、まぁ、ジジイも別に何とも思っていないって訳じゃないんだが。
立場や役職ってのは、こういう時死ぬほど面倒だからな。
◆◆◆
時刻は既に夕方。
ギルドを後にした俺達はというと――――――――
ハッピー「あー、オイラ1ペア・・・・」
レッド「オレは2ペアだ・・・」
ナツ「クッソー! ブタじゃねぇか‼」
グレイ「おっしゃ! フラッシュだ‼」
エルザ「フッ、甘いな、フルハウスだ」
グレイ「何だとぉっ!?」
祐一「やっぱエルザは強ぇなぁ」
レッド「祐一は何だったんだ?」
祐一「ロイヤルストレートフラッシュ」
ナツ&グレイ「「ありえねぇっ‼」」
エルザ「流石にやるな」
―――――――ポーカーをしていた。
・・・・家主がいないルーシィの部屋で。
ルーシィ「サイコー‼」
あ、家主が帰ってきた。
ルーシィ「多いっての‼」
ルーシィがトランクを投げつけてきた。
俺は身を屈める。
ガスッ‼と、俺の後ろにいたナツの顔面に直撃した。
まぁ、大丈夫だろ。
エルザ「ファントムの件だが、奴等がこの街まで来たという事は、我々の住所も調べられてるかもしれないんだ」
ルーシィ「え!?」
グレイ「まさかとは思うが、一人の時を狙ってくるかもしれねぇだろ?」
祐一「だからしばらくの間は、なるだけ複数人で居た方がいい」
ハッピー「今日はみんなお泊り会やってるよ」
ルーシィ「そ、そうなの・・・?」
エルザ「お前も年頃の娘だしな・・・ナツとグレイと祐一だけ此処に泊まらせるのは私としても気が引ける。だから同席することにした」
ルーシィ「ナツとグレイと祐一は泊まるの確定なんだ・・・・」
何でかは知らないけどな。
◆◆◆
ルーシィ「ねぇ・・・例のファントムって何で急に襲ってきたのかなぁ?」
風呂上りで、濡れた髪をバスタオルで拭きながら、ルーシィは聞いた。
エルザ「さぁな・・・今まで小競り合いはよくあったが、こんな直接的な攻撃は初めての事だ」
ナツ「じっちゃんもビビってねぇでガツンとやっちまえばいいんだ」
グレイ「じーさんはビビってる訳じゃねぇだろう。アレでも一応『聖十大魔道‐セイテンダイマドウ‐』の一人だぞ」
ルーシィ「聖十大魔道?」
レッド「魔法評議会議長が定めた、大陸でもっとも優れた魔導師10人に付けられた称号なんだ」
ルーシィ「へぇーすごぉい‼」
祐一「俺と、ファントムのギルドマスター、ジョゼも聖十大魔道の一人だ」
ルーシィ「へぇ・・て、祐一も!?」
祐一「ああ」
つまりはフェアリーテイルに聖十大魔道が二人いる事になる。
レベルで言うならギルダーツも聖十大魔道なんだがな。
確か昔、聖十大魔道の席に空きがあった時に認定するかどうか話があったけど、本人めんどくさがって辞退したんだよなぁ・・・。
で、その空いた席に俺が収まる事になったんだが・・・・。
ルーシィ「ファントムって、そんなに強いの?」
ナツ「たいした事ねーよ、あんな奴等‼」
エルザ「いや、実際争えば潰し合いは必至・・・戦力は均衡している。マスター・マカロフと互角の魔力を持つと言われている、聖十大魔道のマスター・ジョゼ。ファントムでのS級魔導士に当たるエレメント4。一番厄介だとされるのが鉄のガジル。今回のギルド強襲の犯人と思われる男・・・鉄の滅竜魔導士」
ルーシィ「滅竜魔導士!? ナツ以外にもいたんだ‼」
祐一「ま、そりゃいるだろうな」
ルーシィ「じゃ、じゃあそいつ、鉄とか食べちゃうわけ・・・!?」
よくあんなモンが食えるよなぁと思うわ、マジで。
鉄の滅竜魔法を完成でコピーしても、あんま俺鉄を食いたいとは思わねぇし・・・。
エルザ「そういえば、最近妙な噂を聞いたな」
祐一「噂?」
エルザ「まだ私がギルドに帰ってくる前の話なんだが、最近ファントムに入った新人がいるらしい。そいつが如何にも相当腕が立つと聞く」
祐一「へー・・・んな奴がいるのか」
エルザ「あくまで噂だがな。それ以上の事は知らない」
・・・・原作にはない話だよな?
てことは、また例のアレですか?
転生者。
色んな所で出て来るよな。
もう今更驚かんけども。
祐一「・・・・あ」
グレイ「ん? どうした?」
祐一「いや、煙草切らしてたの忘れてた。ちょっと買ってくるわ」
偶にしか吸わねぇから、よく買うの忘れるんだよなぁ・・・。
ハッピー「気を付けてねー」
ルーシィ「大丈夫なの? 一人で出歩いて」
エルザ「まぁ、祐一なら大丈夫だろう」
祐一「ハハッ、犯されそうになったら悲鳴でも上げるさ」
ルーシィ「男が何言ってんのよ・・・・」
何故かジト目で見られた。
解せぬ。
◆◆◆
祐一「さて、と・・・」
夜の街を歩く。
目的は煙草を買う事・・・ではなかったりする。
いや、まぁ、一応それも目的だが、それはついでだ。
俺が今向かっているは、フェアリーヒルズ。
フェアリーテイルに所属している女性魔導士が住まう寮だ。
何で男の俺がこんな時間にそこへ向かっているのかと言えば、それはこれから起こる事に関係している。
確かそろそろ、鉄のガジルにレビィ達が襲撃されるはずだ。
レビィはフェアリーヒルズに住んでおり、家に帰るんならそこに向かうはず。
ジェットとドロイが付いているとはいえ、ガジル相手だと流石に分が悪いだろう。
何かやはりというかなんというか、転生者が今回も出て来るっぽいし?
ついでに辺りを見回っておこう。
―――――――ゴオォッ‼
祐一「―――――――当たりだな」
丁度視線の先に、何かが壊れる音と煙が上がっているのが見える。
戦闘が始まったのだ。
これだけ近けりゃ、気配もハッキリと分かる。
間違いなく、レビィ達。
そして感じ慣れない気配が一つ。
こっちは鉄のガジルだろう。
祐一「さ、て。行くか!」
◆◆◆
駆ける俺の視線の先に見えるは、4人の人影。
一人は高速で動き回り、相手に打撃を与えていた。
多分、ジェットの魔法『神足‐ハイスピード‐』だ。
建物の壁などを走り回り、縦横無尽に移動して敵を翻弄しようとしている。
だが、敵の眼が確かなのか、あまり効果は無いようだ。
続いて、大きな植物が無数に生え、蔦や種が飛び交って敵を攻撃していた。
ドロイの魔法『植物‐プラント‐』。
身体にぶら下げている、秘種という魔法の種が入った容器から種を投げ飛ばし、植物を急成長させて攻撃していた。
そして、この中で唯一の女魔導士が、宙に光の文字を描いている。
その文字はFIREと描かれ、宙に文字が書かれた瞬間、炎へと変化して敵に襲い掛かる。
レビィの魔法『立体文字‐ソリッドスクリプト‐』。
文字を立体化させて意味を持たせ、ソレを相手に放つ魔法。
その三人は、フェアリーテイルの魔導士のチーム『シャドウ・ギア』だ。
彼らの攻撃が襲撃者を返り討ちにしようと襲い掛かるが、敵の防御力が高すぎるせいか、まともなダメージを与えられないでいる。
その敵は、腕を剣にしたり棍棒にしたりと変化させて、シャドウ・ギアをその変化した腕で殴り飛ばしていく。
自身の身体を鉄の武器へと変質させる滅竜魔法。
鉄のガジル。
襲撃者は間違いなく奴だ。
やはりシャドウ・ギアの攻撃では、まともにダメージが通らないらしい。
俺は戦う彼らの元へ全速力で走り―――――――
祐一「ダイナミックエントリイイイィィィィィィィィィィィィィィッ‼‼‼」
―――――襲撃者である鉄のガジル目掛けて、躊躇無く跳び蹴りを放った。
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取りあえずダイナミックエントリー。
それがここの主人公です。