グレイ「――――ありがとうございます・・・師匠・・・・」
俺達が地下遺跡に辿り着いた時には、予想通りもう全て終わっていた。
ま、俺とエリザは結末を知ってるから特に思う所とかは無いのだが、グレイやリオンにとっては過去の出来事にケリをつける事が出来たのだ。
色々思う事はあるだろうな。
さて、これで依頼は解決・・・なんてことはない。
村の住人の呪いは『月の雫‐ムーンドリップ‐』の膨大な魔力が人々に害を及ぼしたのだ。
デリオラが死んだからと言って、事態が改善する訳じゃない。
・・・ま、呪いの解き方はもう分かってるから、難しく考える必要はないが。
ナツ達は村に戻って呪いをどうするか考えるようだが、
祐一「エルザ。ここから先、お前に任せていいか?」
エルザ「ん?」
祐一「お前なら、もう呪いの解き方っつーか、村人の秘密には気づいてるだろ」
エルザ「それは確かにそうだが、どうしたんだ?」
祐一「ちょっと用があってな。後で村に向かう」
エルザは俺が向ける視線の先にいる人物・・・エリザベス・マスタングに目を向け、「分かった」と頷き、ナツ達を連れて村へ戻って行った。
祐一「さてと・・・エリザ、ちょっといいか?」
傷ついてるリオンを介抱しつつイチャつこうとしていたエリザを手招きする。
エリザ「・・・・・なによ?」
その手招きに応じてこちらに駆け寄ってはくれたが、エリザのその目は「邪魔すんな!」と如実に語っていた。
その反応に苦笑しつつ、俺はエリザに疑問をぶつけてみた。
祐一「実は結構前々から疑問に思ってたんだが、他に話せる奴もいなくてな」
ルーチェは年中イケメン追いかけまくってて居場所が分からないし、悟空も現状どこにいるか不明だ。
だから、一度同じ転生者と出会ったら聞いてみたいと思っていた。
エリザ「何の話よ?」
祐一「お前、この『転生』ってやつをどう思ってる?」
エリザ「どうって・・・・・」
祐一「いや、何で神様って奴が死んだ俺らを『特典』なんてモノを与えて、別の世界に転生させてんのかなーと思ってな」
正確には、生まれ変わったと言えるかどうか微妙だから転生ではないのかもしれんが。
まぁ、『特典』なんて本来持っていなかったものを手に入れて、死んだはずなのに生き返ったりしたから『転生』と呼ぶのかもしれない。
エリザ「そんなこと私に言われても分かる訳ないじゃない」
祐一「そりゃそうだけどよ。疑問には思わなかったのか? 世界には死んでいく奴なんてごまんといる。そんな中で、何で俺達が『神様転生』なんてモノを体感したのか」
エリザ「まぁ、そりゃ疑問を感じたことくらいはあるけど・・・・」
疑問と言えば、その神様って奴も疑問だ。
例えば、俺が出会ったのは女神・・・女の神様だったが、エリザは爺さんの神様が出てきた。
まぁ、神様だから姿形くらい自在に変えられるのかもしれないが、態々変える理由もわからない。
普通に考えれば別人だろう。
問題はそこではなく、何で俺達が神様転生なんてモノをしてしまったのか。
エリザ「・・・・なにか目的があるってこと?」
祐一「少なくとも、俺はそう考えてる」
まさかただの親切心で、人を生き返らせたりはしてくれないだろう。
それなら、もっと大勢っつーか、今まで死んでいった人たちにも同じことをしているはずだ。
だが、おそらくそれはありえない。
俺はこの世界の今の時代しか知らないが、それでも今まで死んでいった人たちが皆神様に生き返らせてもらったとは考えられなかった。
別に明確な理由とかは無いが。
祐一「この世界に転生してテンション上がったのは確かだが、あんま喜んでもいられないかもしれねーぞ」
エリザ「でもそれ、アンタの勝手な推測よね?」
祐一「まぁ、そう言われたらそこまでだがよ。それでも気にはなるし、あんま良い予感もしてこないだろ?」
エリザ「それは・・・・・・」
途中で言いよどむエリザ。
そして、
エリザ「ああああああああっ‼ そんなこと言ったらメッチャクチャ気になるじゃん‼」
頭を抱えて振り回し、叫び出した。
うん、まぁ、俺から言い出しといてなんだが、気になって眠れなくなったりするかもだよな。
祐一「ま、俺が言いたいのは、油断しない方がいい、ということだ。神様って奴が何企んでんだか分からねぇ以上はな。んじゃ、俺はもう行くわ。言いたいこと言ったし」
エリザ「ちょっと待ちなさいよっ! 私が何かモヤモヤしだして頭から考えが離れないんだけどっ!?」
祐一「リオンにでも如何にかしてもらえ。じゃーなー」
エリザ「無責任すぎるっ‼」
喚くエリザをほっぽいて、俺は村へ向かった。
◆◆◆
『魔法評議会会場 ERA』
「デリオラの件は残念だったわ」
「まぁ、仕方ないさ・・・さすがに死んでるとは思いもしなかった。デリオラが手に入れば、また一歩、理想に近づけると思ったんだがな」
「ごめんなさいね、ジークレイン様。あの女の魔力があそこまで強大だとは・・・」
「そんな言い方をするもんじゃないぞ、ウルティア・・・俺はお前の母を尊敬している。生きていれば間違いなく、聖十大魔道の一人となっていただろう」
「買いかぶり過ぎよ。母は魔の道に取り付かれ過ぎて父に見捨てられた惨めな女」
「失うものが大きければ大きいほど、手に入る力は強大なものとなる」
「私は母の中では小さな存在よ」
「どうかな。幼い弟子を育てたのも、お前への未練にも――――」
「――――その話はおしまい。それより次の段階に進みましょ」
「・・・そういえば、アイツらはどうだった?」
「ああ、あの軍服の女と、フェアリーテイルの男? 随分気にかけているみたいだけど、何なのあの子達?」
「『異邦人‐ストレンジャー‐』だと聞いている」
「『異邦人‐ストレンジャー‐』?」
「――――――――そう、異世界からの来訪者だと聞いた」
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これにてガルナ島編終了・・・かな?