張りなおす。
祐一「面倒な能力を・・・」
あの能力相手に殆どの攻撃は通用しない。
まぁ、あの防御と再生能力は同時に使えないという欠点と言えるかどうかわからない欠点はあるが・・・。
向こうも原作を知っているのなら、早々そんな手段は取らせてくれないだろうな。
エリザの錬金術はもう『完成』でコピーしたから、錬金術の分解であの炭素の鎧を崩す手段は持ってはいる。
問題は、どう使うかだ。
既にエリザは全身を炭素硬化で覆っており、完全に防御態勢に入っていた。
俺がさてどうしようかと考えていると、エリザは手袋を着けている指を擦って「パチンッ!」と鳴らす。
瞬間、手袋から発せられた火花が導火線のように俺の方に伸びていき、
―――――ドオォッ!!
爆発した。
俺の周囲の酸素濃度を調節して爆破させたのだ。
俺の身を炎が焼き尽くす。
だが、
祐一「―――――御馳走様」
俺はその炎を全て吸い込んだ。
エリザ「はぁっ!? 何それ!?」
祐一「俺の能力・・・『完成』で、ナツの滅竜魔法をコピーしたからな。俺に炎は効かんっ!」
エリザ「・・・私が神様特典で選んだ能力も結構チートだけど、アンタのも大概ね」
皆チート好きだからね。
エリザ「じゃあ、これならどうよっ!」
瞬間、エリザの姿が俺の視界から消えた。
――――これはヤバいっ!?
嫌な予感がして、俺はすぐさま目を写輪眼にして、視る。
すると、俺の眼前にエリザの姿が、
祐一「うおぉっ!?」
上体を海老ぞりに逸らして(マトリックスとも言う)、エリザのその一撃を回避した。
俺は側転して、直ぐに体勢を立て直す。
そして、エリザを再び見た。
そこには、指先が伸びたエリザの姿が・・・・
祐一「つーか、ちょっと待て。今のは色欲の最強の矛と、怠慢の超スピードか? まさかとは思うが・・・」
エリザ「そ。ウロボロスの人造人間の能力を全部使えるわ!」
祐一「チートじゃん!」
エリザ「アンタに言われたくないっ!」
それもそうだ。
だが、どうする?
ホムンクルスの全能力が使えるってことはだ。
どんな防御をも貫く最強の矛。
どんな攻撃をも防ぐ最強の盾。
どんなモノをも吸い込む疑似真理の扉。
どんな姿形にも変身する肉体変化。
制御不能なほどの超スピード。
どんな攻撃をも見切る最強の眼。
そして、全てを切り裂き、飲み込む影。
おそらく、再生能力も使えるのだろう。
そして今のエリザの状態を視る限り、複数の能力を使うことも可能なようだ。
・・・・俺が言うのもホントアレだが、チートだよな。
レッド「祐一・・・どうすんだ?」
祐一「そうだなぁ・・・・」
其々能力別の対処法なら、原作通りにやればいい。
それは当然奴もエリザも警戒している。
だが、俺の『完成』の事を知っているのなら、俺が既にエリザの能力を完全に完成させたことも理解しているはず。
つまり、俺を倒すことはそう容易ではない、ということだ。
エリザの最強の矛の攻撃と超スピードは、最強の眼や写輪眼で見切って避け、当たりそうになっても最強の盾で防ぐことが出来る。
肉体変化でどんな姿になろうとも凌げる自信はあるし、影で攻撃してきても全て避けるか防ぐか出来る。
警戒するとしたら、疑似真理の扉の吸引か。
アレは防ぎようがないし。
けど、それは逆も同じ。
俺の攻撃は最強の眼で見切られるし、当てたとしても最強の盾で防がれる。
エリザも俺の攻撃を食らわせるのは容易ではない。
それが分かっているからか、エリザは俺を見据えて構えたまま一向に動かない。
俺も同じだ。
どうすれば有効打を与えることが出来るのか?
その答えが出ない限り、何をやってもお互い無駄に終わるだろう。
神威で吸い込むって手もあるが、アレはあまりやりたくない。
だってここからいなくなるだけで倒せるわけじゃないし。
つーか、俺は別にコイツを倒さなきゃならない理由なんて特にないし。
・・・・アレ、俺コレ戦う必要なくね?
向こうがキレて攻撃してきただけなんだから、適当に凌いどけば――――――
―――――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
祐一「おう?」
レッド「何だ!?」
急に地鳴りが起きたと思ったら、この遺跡が何か動いているような・・・。
・・・ああ、ウルティア・・・じゃねーや、ザルディだっけ。
アイツの時のアークで遺跡を元に戻したのか。
てことは、ナツVSザルディ。グレイVSリオンの戦いが上の階で行われてるのか。
祐一「レッド。グレイとナツに加勢してやれ」
レッド「え・・・?」
祐一「傾いた遺跡が元に戻ったってことは、月の光がデリオラに当たるようになったってことだからな。急いだ方がいい」
レッド「お、おう! 分かった!」
俺が有無を言わせない顔面でそう言うと、レッドは素直に飛んで行ってくれた。
まぁ、何もしなくても事態が変わる訳じゃないから、ここから追い出す口実に使っただけだが。
レッドが飛んでいったのを確認して、俺は疑問をエリザに問う。
祐一「そーいや、お前何でここにいんだ?」
エリザ「? どういう意味よ?」
祐一「いや、別にここで俺らがやり合っててもあんま意味ねーっつうか。お前がリオンに加勢してデリオラの氷を溶かしても、デリオラが既に死んでんだからリオンに協力する意味もあんまねーだろ?」
リオンの邪魔をしようと、氷を溶かそうと、目的のデリオラが既に死んでいるのを、コイツは知ってるはずだ。
じゃあ何で、今コイツはここにいるのか?
俺がそう言うと、エリザは「ああ」と頷く。
エリザ「私デリオラに家族を殺されたっていう設定でリオンに接触したから・・・」
祐一「設定かよっ!?」
エリザ「いいじゃん別に! リオンに接触するんなら、それが一番手っ取り早い設定でしょ!」
確かにそうだが、思い切った事すんなぁ。
祐一「で、どうするよ? このまま俺らが睨み合ってても何も変わらんと思うんだが?」
エリザ「・・・・・それもそうね」
言って、エリザは能力を解除して元の軍服姿に戻った。
そして、今度は「オオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッ‼‼‼」と、何かの叫び声が聞こえてくる。
祐一「デリオラか」
エリザ「復活したみたいね」
てことは、もう『ガルナ島』編も終盤。
そろそろ皆がデリオラの死に気づく頃だろう。
祐一「・・・行くか?」
エリザ「そうね」
俺達はデリオラが安置してある遺跡の地下へ向かった。
.
レッドの扱いに困る。
出すべきではなかったのかもしれん。