祐一「・・・・それで? 一体全体何の御用件だ?」
エルザが評議院の使者に連れられたのと同じく、俺も評議院に呼ばれて、共に評議院のフィオーレ支部に赴いた。
と言っても、俺もエルザも別に犯罪者として連れられたという訳ではない。
表向きは魔導裁判ということになっているが、こんなものは形だけの裁判だ。
形だけの逮捕。
魔法界全体の秩序を守るため、評議会としても取り締まる姿勢は見せておかねばならない。
つまり、有罪にはされるが罰は受けない。
今日中には帰れる。
ナツが・・・・・馬鹿が乱入してこなければ。
ナツが裁判に乱入して暴れて色々ぶち壊してしまい、今は二人とも牢屋に入れられている。
それもまぁ、精々明日までだろう。
どちらにしろ、たいしたことではない。
問題は、俺の方だ。
俺は今、さっきまでエルザが立っていた証言台に立っている。
目の前にいるのは、評議員である。
俺の問いに、評議院議長は疲れたような顔で言った。
議長「・・・・言わんでも分かるだろう?」
祐一「うん、まぁ・・・・・」
先程のナツの乱入が原因だろう。
普通に今日中に終わるはずの案件が、無駄に引き延ばされたのだから。
そして俺が呼ばれた件だが、議長の言った通り予測はついている。
祐一「仕事か?」
議長「そうだ」
あまりにもフェアリーテイルが揉め事を起こして賠償の請求などが多すぎる為、俺が聖十魔導として仕事を請け負って、賠償金を払っているのだ。
・・・・後で始末書も書かなければならんかもしれんな。
議長「仕事はこれだ」
議長が一枚の紙を、魔法で俺の元まで飛ばす。
その紙を受け取り、目を通した。
・・・・どうやら、仕事は闇ギルドの討伐らしい。
ギルド間の抗争は禁じているくせに、個人的にはやらせんのかよと毎回思うな。
祐一「ちゃっちゃと終わらせるか」
俺は踵を返して、評議院を後にした。
◆◆◆
祐一「―――――あー、やっぱ間に合わなかったか」
数日後。
俺は仕事を片付けて急いで戻ってきたのだが、遅かった。
時期的にそろそろ『ガルナ島』の話に入るのだろうとは思っていたが、既にナツ達の姿がなく、グレイの姿も無い。
もうナツ達を追って行き、そして連れて行かれたのだろう。
ギルドに入った瞬間、エルザが怒気を纏っていたから容易に察せられる。
一つ溜息を吐き、
祐一「何かあったのか?」
何が起きたのか知っているが、形だけ聞いておくことにする。
マカロフ「お、おおう、祐一帰っておったか!」
良い所に来てくれた、という字が思いっきり顔に書いてある。
それは他の皆も同じのようだ。
マカロフ「いやー、実はナツとルーシィとハッピーが勝手にS級クエストを受けてしまったようでな。グレイが連れ戻しに向かったはずなのじゃが、戻ってこないんじゃ」
祐一「・・・・なるほどね」
やっぱりか。
祐一「んじゃ、俺が行こう。エルザ、レッド、お前らも来い」
レッド「わかった!」
エルザ「無論だ」
言われなくても、といった風にエルザは物凄い形相をしている。
・・・・怖いわコイツ。
祐一「ジジイ。依頼人には俺がクエストを引き受けたと報告しといてくれるか? アイツらが行った以上もうクエストは引き受けてるだろうし、今更中止には出来ないだろう。S級魔導士の俺とエルザが引き受けて、ナツ達が同行することにすれば問題ないだろ」
評議院の依頼が終わった直後に、また難癖付けられたら面倒だ。
マカロフ「うむ。報告しておこう」
・・・・・さぁて、行くか、悪魔の島へ。
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