FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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今回は大幅にショートカット。
一気に話が飛びます。

追記

流石に省略しすぎと判断しましたので、ハコベ山とディアカービィを追加しました。
まぁ、私が元々書いてた二次小説の引用ですが・・・・・・。


第9話 まさかの男が・・・・

 

 

 

ぼこぼこにしたボラを軍に引き渡し、そのまま軍にボラの仲間の捕縛も任せて、俺達はルーシィを連れてギルドへ向かっている。

何で魔導士と分かったのか、何故自分を勧誘したのかルーシィに当然聞かれたが、「優秀そうだから他のギルドに行かれる前に連れて行こうと思った」と言えば、ルーシィは照れた様子で「いやぁ、それほどでもあるけど」と謙遜してるんだかしてないんだか分からん言葉で答えた。

確かに、元々フェアリーテイルに入りたがってたから勧誘は容易だろうと思っていたが、それでもまさかここまで簡単に説得できるとは思わなかった。

まぁ、単純な娘大好きだから別に良いが。

 

 

◆◆◆

 

 

祐一「ただいまー」

 

 

我が家とも言うべきギルドホームに帰って来た俺は、扉を開けて中に入った。

扉を開ける前から外に洩れていた賑やかな声が、扉を開けると喧しい騒音に変化する。

ホント年がら年中賑やかな奴等だぜ。

 

 

「祐一、ナツ、ハッピー、レッド、おかえりなさい!」

 

祐一「おう、ただいま」

 

 

俺達の帰りを笑顔で出迎えてくれた、ミラジェーン・ストラウス・・・ミラに、もう一度「ただいま」を返す。

ナツは特にミラに見向きもせずに、奥にいる1人の男に、

 

 

ナツ「てめぇっ『火竜-サラマンダー-』の情報ウソじゃねぇかゴラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

 

跳び蹴りを食らわせて男を吹っ飛ばす。

吹っ飛ばした衝撃で、周りにあった机や椅子が割れ、床にも傷がいく。

 

 

ミラ「あらあら・・・ナツが帰ってくると、さっそくお店が壊れそうね♪」

 

祐一「既に壊れてんだが・・・・・・」

 

 

また修理費が掛かるな、コレは。

ナツが暴れだしたのをきっかけに、結局ギルドにいる奴等の大半が暴走してやがるし。

そんな俺達『妖精の尻尾-フェアリーテイル-』を見て、ルーシィは感動したり呆れたりビビったりしており、なんとも新米感丸出しだ。

新鮮でいいな。

 

 

ミラ「あら? この娘は・・・新入りさん?」

 

 

さすがにこの大乱闘にも馴れているミラは、直ぐ真横で争いが起きているにも拘らず、特に顔色も変えず先ほどと同じ笑顔でルーシィに視線をやって問い掛けてきた。

 

 

祐一「ああ、入門希望のルーシィだ。ジジイは何処だ?」

 

ミラ「マスターなら・・・・・・・・・」

 

 

俺の問いに、ミラが視線を移そうとした瞬間、急にギルド内が薄暗くなり、

 

 

マカロフ「やめんかバカタレぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼‼」

 

 

どデカイ怒声と共に、巨人の姿が現れる。

 

 

ルーシィ「デカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

ルーシィの驚愕の反応を最後に、ギルド内は静まり還り、みな動きを止める。

 

――――――空気が、止まった。

 

 

ミラ「あら、いたんですか? マスター」

 

ルーシィ「マスター!?」

 

 

ミラのマイペースな声色に、止まった空気が動き出す。

各々喧嘩を止めて、バラバラに散っていく中、

 

 

ナツ「だーっはっはっはっ‼ みんなしてビビりやがんの‼ この勝負は俺の勝――――」

 

祐一「あ」

 

 

――――グチャッ!!

 

と、ナツの空気を読まない発言に、巨人がその大きな足で踏み潰した。

声をかけて忠告しようとしたんだが、遅かったようだ。

その巨人は、このギルドでは見馴れないルーシィを見て、

 

 

マカロフ「む、新入りかね?」

 

ルーシィ「は・・・はい・・・・・・・・・」

 

 

流石にリアクションに困っているようだ。

 

 

祐一「おいジジイ、怖がってんだから元に戻れよ」

 

マカロフ「ん? そうか」

 

 

俺の言うことを聞いて、直ぐ様「シュルルルルル・・・・・・」とマカロフはその身体の大きさを小さくしていき、

 

 

マカロフ「ヨロシクね」

 

 

元の小さい姿に戻り、ニコヤかに挨拶をした。

先ほどの巨人の姿とはうって変わり、急にちんまりとした姿になったせいか、ルーシィは驚愕すること以外のリアクションが取れなかった。

 

 

◆◆◆

 

 

ルーシィの歓迎会が行われ、また騒ぎ出すフェアリーテイルの野郎ども。

そんなギルド内を、ミラが入れたビールを飲みながら、カウンターでのんびり眺めている。

 

 

ミラ「また賑やかな人が増えたわね」

 

 

夕飯を食ってるナツにボケられてるルーシィを見て、ミラはカウンターでグラスを洗いながら言った。

 

 

祐一「また、無駄に物壊す奴が増えただけなような気もするがな」

 

ミラ「あはは・・・・・・・・・」

 

 

俺の言葉に乾いた笑いを浮かべるミラ。

否定は出来ないだろうな。

昔はミラも、物を壊す側だったしな。

ルーシィは基本常識人だが、無意識に何かを壊すくらいはやるだろう、たぶん。

 

 

祐一「・・・・・・ありゃ?」

 

 

ビールを飲みながら辺りを見回し、俺はある人物の姿が見えないことに気づく。

 

 

祐一「マカオはどうした? また仕事に出掛けたのか?」

 

 

こういう宴では、ワカバというこのギルドの魔導士と一緒に飲んで騒いでいるのだが、その姿が今日は見えない。

ついこの間仕事に出たハズなんだが、連日で仕事を入れるとは珍しい。

 

 

ミラ「それが・・・まだ戻ってきてないの」

 

祐一「まだ? 仕事に出たの先週だろ」

 

ミラ「うん。3日で戻るって言ってたんだけど・・・・・・」

 

祐一「マカオが行ったのは・・・・・・凶悪モンスター“バルカン”の討伐か」

 

 

確かに凶悪モンスターだが、マカオが殺られるとは思えねーよなぁ。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

あ、思い出した。

確か序盤の所でバルカンにテイクオーバーされてんだっけか?

もうここに来て何年も経過してるから、記憶が何処か抜けてんな・・・・・・。

 

 

祐一「・・・・・・場所は、ハコベ山だったな?」

 

ミラ「行くの?」

 

祐一「ああ、1週間も戻らないんだ。何かあったとみていいだろ」

 

 

人の仕事に手を貸すのはどうかと、思わないこともないが。

もしかしたら俺がこの世界に来たことによって何かしらの変化があるかもしれないし、一応様子は見た方が良いだろう。

 

 

祐一「ま、ジジイもナツも心配みたいだし、俺も行ってくるよ」

 

 

マカロフを殴って泣いて去っていったマカオの息子“ロメオ”を追うように、ナツとルーシィがギルドを出ていった。

やれやれ、俺も便乗しますかね・・・・・・。

 

 

◆◆◆

 

 

揺れる馬車の中、いつものごとく乗り物酔いするナツを可哀想なものを見る目で観る。

毎回思うんだが、何でコイツは酔うのに乗り物に乗るんだろうか。

 

 

ルーシィ「―――でね、私今度ミラさんの家に遊びに行くことになったの♪」

 

ハッピー「下着とか盗んじゃダメだよ」

 

ルーシィ「盗むか‼」

 

ハッピー「てか、何でルーシィがいるの?」

 

ルーシィ「だって、せっかくだから何かフェアリーテイルの役に立つことしたいなぁ~なんて♪」

 

 

そんなことを言いながら、ルーシィは俺に視線を飛ばしてくる。

・・・あぁ、株を上げたいわけね。

 

―――――ガタンッ‼

 

と、走っていた馬車が急停車する。

 

 

ナツ「止まった‼」

 

ルーシィ「着いたの?」

 

祐一「いや・・・・・・」

 

 

馬車の外に出る。

外は一面の銀世界・・・なんていい感じの響きはなく、視界が殆ど利かないほどの猛吹雪。

今の季節は春だが、このハコベ山は年中吹雪いている山だ。

 

 

祐一「ま、コレじゃあ進めねーだろ」

 

 

馬車が雪に埋もれかけてるし。

 

 

ルーシィ「てか、寒っ!?」

 

ナツ「そんな薄着してっからだろ」

 

ルーシィ「あんたも似たようなモンじゃないっ‼」

 

 

上半身殆ど裸だしな。

 

 

ルーシィ「・・・ナ、ナツ。その毛布頂戴!」

 

ナツ「ぬおっ!?」

 

 

寒さに凍えながら、ルーシィはナツの了承を得る前に、ナツが背負ってるリュックから毛布から無理矢理剥ぎ取る。

それで少しは暖まったのか、幾分か顔色は良くなった。

 

 

ルーシィ「あー・・・でもまだちょっと寒い~・・・・・・・・・」

 

 

ルーシィはスカートのベルトに掛けている、星霊の鍵を取り出し、

 

 

ルーシィ「開け・・・時計座の扉・・・・・・ホロロギウム‼」

 

 

星霊を呼び出す。

呼び出したのは主人の身を護ってくれる時計型の星霊だ。

ルーシィはその時計の中に入り、

 

 

ホロロギウム「『私、ここにいる』と、申しております」

 

 

ホロロギウムの中で何か喋っていたが、ルーシィの声は外には届かず、変わりにホロロギウムが代弁した。

 

 

ナツ「何しに来たんだよ」

 

ホロロギウム「『何しに来たと言えば、マカオさんはこんな場所に何の仕事をしに来たのよ!?』と、申しております」

 

祐一「もしかして知らずについて来たのか?」

 

ナツ「凶悪モンスター“バルカン”の討伐だ」

 

ルーシィ「!!!?」

 

 

ホロロギウムの中で驚愕の表情をするルーシィ。

どうやら、本当に知らずについて来たようだ。

 

 

ホロロギウム「『私、帰りたい』と、申しております」

 

ナツ「はいどうぞ、と申しております」

 

ハッピー「あい」

 

祐一「ま、もう馬車も帰しちまったし、諦めろ。一人で帰るのは危険だしな」

 

 

バルカンが彷徨いてるわけだし。

 

 

◆◆◆

 

 

祐一「マカオー‼ いるかー!?」

 

ナツ「バルカンにやられちまったのかー‼」

 

 

大声で呼び掛けてみるが、マカオの声は聞こえない。

この吹雪の中では視界も悪く、風音も凄まじい。

 

――――ガサガサッ!!

 

 

祐一「ん?」

 

 

上から物音と、何らかの気配を感じる。

見上げると、その崖の上から1つの影が飛び降りてきた。

 

 

祐一「バルカンかっ!」

 

 

影の正体は、大柄のゴリラのような姿をしたモンスター。

ぶっとい両腕を振り下ろして叩き潰そうとしてくるバルカンの攻撃を、俺はバックステップで回避した。

再び攻撃してくるのかと思ったが、バルカンは俺の後方へ視線を移すと、直ぐ様俺の後ろへ大きく跳んだ。

 

 

祐一「あん?」

 

 

バルカンが跳んだその先に、

 

 

ルーシィ「えっ!?」

 

バルカン「ウホッ、人間の女だ」

 

 

バルカンはルーシィが入っているホロロギウムごと持ち上げ、雄叫びを上げながら去っていく。

つーかよぉ・・・・・・

 

 

ナツ「喋れんのか」

 

祐一「そんな知能あったんだな」

 

ハッピー「あい」

 

 

と、各々の反応を示し、

 

 

ホロロギウム「『てか助けなさいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!!!』・・・と、申しております」

 

 

ルーシィの叫びがホロロギウムの体内で響き、その叫びが外に響くことはなかった。

 

 

◆◆◆

 

 

祐一「気配はこの先なんだが・・・・・・」

 

 

モンスター“バルカン”に連れ去られたルーシィを助けに後を追ってきたが、洞窟のような場所に入り、行く先の道が2つに別れていた。

ルーシィがホロロギウムに入っているせいか、ルーシィの気配も匂いも漂っておらず、バルカンの気配を追ってきたのだが、2つの分かれ道両方からバルカンの匂いが漂っている。

 

 

ハッピー「ホロロギウムの匂いは追えないの?」

 

ナツ「あんま一緒にいたわけじゃねーからな、あの時計の匂いなんて覚えてねーよ」

 

祐一「それに吹雪で大半の匂いや気配が薄れてる。実際、体臭のキツイ“バルカン”の匂い位しか残ってねーな」

 

 

バルカンの匂いが臭すぎて、他の匂いが嗅ぎ取れん。

どっちの道にいるかまでは分からんが、この先にいることだけは気配で分かる。

 

 

祐一「仕方ない、2手に別れるか」

 

ナツ「どう別れるんだ?」

 

祐一「戦力的に、俺は1人でいい。つーか、俺が1人になっても戦力を均等には出来ないが」

 

ナツ「んだとー!?」

 

ハッピー「でも実際その通りです」

 

 

こうして、俺1人と、ナツとハッピーの2人に別れて、俺は右の、ナツ達は左の道に向かった。

 

 

◆◆◆

 

 

ナツ達と反対の道に入った後は、ただ真っ直ぐに走っていた。

特に広い場所に出るわけでもなく、また更に分かれ道に出会すこともなく、一本道をただ走っていた。

バルカンの匂いへ、徐々に近づいていってる。

果たしてルーシィがいるかどうか・・・・・・。

マカオが近くにいる気配もないし、一体何処にいるのやら。

やっぱバルカンにテイクオーバーされた後か。

マカオの仕事はバルカンの討伐。

危険ではあるが、狙うんなら住み処を直接狙ったほうが、バルカンと出会しやすいからな。

俺は感覚を尖らせ、辺りの気配を強く探る。

 

 

ルーシィ「ちょ、ちょっとぉ!? ホロロギウム、消えないでよ‼」

 

ホロロギウム「時間です、ごきげんよう」

 

 

・・・・・・なんて声が奥から聴こえてきた。

 

 

祐一「とりあえず、先にルーシィを助けるか」

 

 

マカオを助けるのは、ルーシィを助けた後だ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

ルーシィ「なんでこんな事になってる訳ー!!?」

 

バルカン「ウッホ、ウホホ」

 

 

バルカンがホロロギウム(inルーシィ)の周りを、やたらめったら元気にグルグル踊り回っている。

 

 

ルーシィ「なんかあの猿、テンション高いし!!」

 

バルカン「女」

 

 

バルカンはホロロギウム越しに、ルーシィを見つめている。そりゃあもう穴が空くほどに。

次の瞬間、ホロロギウムが突然消え去る。

 

 

ルーシィ「ちょ、ちょっとぉ!? ホロロギウム、消えないでよ‼」

 

ホロロギウム「時間です、ごきげんよう」

 

ルーシィ「延長よ延長‼ ねぇっ!?」

 

 

バルカンは鼻息荒く、後ずさるルーシィに詰め寄る。

その様は完全に発情したオスである。

そんないかにもヤる寸前なルーシィと猿の間に、

 

 

「おいおい、猿風情がうちの新人相手に盛ってんなよ」

 

 

全身を黒一色に彩った男が割って入った。

 

 

ルーシィ「祐一!」

 

祐一「大丈夫か~、ルーシィ。先っぽくらい挿入って――あ痛っ――痛ぇよ、涙目で石投げんなって、悪かったって」

 

ルーシィ「バカーッ‼」

 

 

祐一は、石が当たっても然程平気なようで、相変わらず締まりのないヘラヘラとした顔である。

ルーシィは涙目で祐一の後ろへ走って隠れた。

 

 

祐一「ま、無事でよかったな。貞操の危機っぽかったが」

 

ルーシィ「もうソレはいいから、さっさとアイツやっつけちゃって‼」

 

バルカン「おで、男、いらん、女、好き」

 

祐一「貴様の好みなんぞ知るか」

 

 

祐一とバルカンが互いにメンチ切り合っている中、ルーシィは辺りをキョロキョロと見渡し、

 

 

ルーシィ「ねぇ祐一、ナツは?」

 

祐一「道が2つに別れてたからな、各々違う道に進んで、俺は此処に出た。ってことは、此処とは違う場所に出ただろーな」

 

 

心配気にしているルーシィに、祐一は「ま、ナツがいるから大丈夫だろ」と、安心させるように言う。

そんな祐一を睨み、

 

 

バルカン「もう一人、男、いらん」

 

 

ナツという名前で男と分かったのか、バルカンは戦闘体勢をとって、祐一にそう宣言する。

 

 

祐一「いいぜ、かかってこいよ。ま、気づいた頃には、お前は地獄に堕ちてるだろーがな」

 

 

祐一は無防備に無形のまま、右手を上げて人差し指をチョイチョイと動かし、かかってこいと挑発した。

 

 

◆◆◆

 

 

バルカン「お前、やっかい、仲間、呼ぶ」

 

 

バルカンが徐に手を叩くと、辺りから20体以上のバルカンが飛び出してくる。

やって来たバルカン達は皆、テンション高く「ウッホウッホ」と舞い踊り、

 

 

バルカン×20「「「「「男、いらん、女、好き。ウッホウッホウッホッホぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼」」」」」

 

 

何て叫び出す。正直ムサイし、暑苦しいし、何より臭い。

 

 

ルーシィ「きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!? 猿、いっぱい、私、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

祐一「おい、移ってんぞルーシィ」

 

ルーシィ「はっ!? 女!女‼ってここにはエロとエロ猿しかいないの!? 私、全く安全じゃないじゃないっ‼」

 

祐一「おーい、ルーシィや、そのエロって俺も含まれてんのか?」

 

 

ルーシィは俺の問いかけを無視し、黄金色の鍵を取り出し、自身の仲間を呼び出す。

 

 

ルーシィ「開け! 金牛宮の扉・・・・・・タウロス‼‼」

 

 

巨大な斧を背負った二足歩行の筋肉質な牛・・・否、牛男が現れた。

 

 

タウロス「MOぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

バルカンs「「「「「牛っ!?」」」」」

 

祐一「うぉぉい、無視かコノヤロー」

 

ルーシィ「私が契約している星霊の中で、一番パワーのあるタウロスが相手よ。このエロ猿‼」

 

 

俺を無視して、ようやくというか戦う気になり、呼び出した星霊をバルカン達へ向かわせるため指示を出そうとするが、

 

 

タウロス「ルーシィさん‼ 相変わらず、いい乳してますなぁ。MOー、素敵です」

 

祐一「同意だ」

 

ルーシィ「そうだ・・・コイツ“も”エロだった・・・・・・」

 

 

牛男の言うことに俺は強く頷き、ルーシィは頭を抱えて溜め息を吐く。

おいおい、その“も”って俺も含まれてんじゃねーだろうな?

 

 

バルカン「ウホッ! オデの女とるなっ‼」

 

タウロス「オレの女? それはMO聞き捨てなりませんなぁ」

 

ルーシィ「そうよ、タウロス!! あいつらやっちゃて!!」

 

 

俺とタウロスは互いに視線を送り、同時に叫ぶ。

 

 

タウロス「“オレの女”ではなく“オレの乳”といってもらいたい!!」

 

祐一「そうだ、あれは“俺の乳”だ!!」

 

ルーシィ「もらいたくないわよ!! ていうか、何で祐一まで一緒になってんのっ!?」

 

 

俺等は向かい合い、お互い強く、熱く、手を出し握手をした。

 

 

タウロス「まさかここで『乳友-トモ-』にあえるとは、MO思いませんでした!」

 

祐一「フッ・・・俺もだぜ。やつらを蹴散す、行くぜ、乳友よ!!」

 

タウロス「MOぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! 準備OK!!」

 

 

俺達はバルカンに向かって駆け出す。

その時、奥の道からよく知った声が聞こえて来た。

 

 

ナツ「マカオは何処だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ルーシィ「ナツっ!!」

 

 

ナツに続いて、ハッピーもやって来た。

どうやら、どっちの道もこの場所に繋がっていたようだ。

 

 

ナツ「なんか怪物増えてんじゃねーかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

突然、タウロスに跳び蹴りをかましやがった。

 

 

ルーシィ「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

祐一「乳友よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

タウロス「MO・・・ダメっぽいですな・・・乳友よ・・・ルーシィさんの乳は・・・頼んだ・・・・・・」

 

 

それが、タウロスが俺に託した最後の言葉だった。

 

 

祐一「乳友よ・・・敵は討ってやるぜ・・・・・・ナツ・ドラグニル! 俺は貴様を許さない!!」

 

 

乳友の亡骸を抱えながら、ナツを睨みつけ、叫ぶ。

 

 

ナツ「文句があるなら、かかってこいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

祐一「行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

ルーシィ「いや、タウロス生きてるし、気絶しただけだから・・・・・・・・・」

 

 

テンション上がってノリまくる俺達に、ルーシィはツッコんだ。

やれやれ、ノリの悪い。

 

 

祐一「ナツ。牛、味方。敵、サル、you see?」

 

ルーシィ「ちょっと、あたしは無視なの!?」

 

ナツ「何っ!? YES、オレ、ハッピー、祐一、牛、味方、OK。サル、ルーシィ、敵、OK?」

 

ルーシィ「うつってるし!? ていうか、何で私敵なのかしらっ!!」

 

 

その辺はノリだ。

とくに深い意味はない。

 

 

祐一「・・・・ま、合流した所で、サル退治といくか。ルーシィが蟹でも出せば、猿蟹合戦だな」

 

ルーシィ「蟹なら・・・まぁ、いるけど。タウロスが引っ込んでくれないと出せないわよ」

 

祐一「てことは、ナツが栗で、俺がウスか。ハッピーが蜂で、ルーシィは馬ふ―――」

 

ルーシィ「言わせないわ‼」

 

祐一「―――ごふぅっ・・・いいモン持ってんじゃねぇか・・・・・・」

 

 

思わずボディに一撃くらい、膝をつく。

フッ・・・コイツぁ、世界を狙えるぜ。

 

 

祐一「ま、ふざけるのはこの辺にして・・・・・・行くぜっ!!」

 

 

立ち上がりながら、真面目モードに切り替える。

遊びは終わりだ。

 

 

ナツ「おうっ!!」

 

バルカン「「「「「ウホホ!! ウホ!」」」」」

 

 

バルカンたちも戦闘モードに入ったようだ。

 

 

ナツ「火竜の鉄拳!!」

 

 

ナツの炎まとった拳が、バルカンの一体を吹っ飛す。

 

 

バルカン「ウホホッ!!」

 

 

バルカンの一体は、天井から垂れさがっている氷柱をヘシ折り、ナツへと向かって連続で投げた。

 

 

ナツ「火にそんなもん効かーん!!」

 

 

ナツに当たった氷柱は、触れた瞬間に溶けて水となる。

 

 

祐一「次」

 

 

ナツに対して俺は、特に魔法を使わず、素手でバルカンを潰していく。

雑魚だし、別に魔法使う必要ないし。

あっという間に、残りのバルカンの数は一体。

 

 

ナツ「コレでぇ・・・・・・ラスト!!」

 

 

ナツの鉄拳でバルカンは吹っ飛び、壁にめり込んだ。

 

 

祐一「とりあえず、一段落か」

 

ルーシィ「・・・って、マカオさんを探してるんでしょ? こんなエロ猿倒してる場合じゃないんじゃ・・・・・・」

 

ナツ「そうだ!? マカオはっ!?」

 

祐一「いや、問題ねぇよ」

 

ルーシィ「え・・・・・・?」

 

 

俺の言葉にルーシィが首を傾げた瞬間、バルカンの姿が突然、無精ひげのオッサンに変わった。

 

 

ナツ&ハッピー「「マカオだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」

 

ルーシィ「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 

マカオは重傷を負っており、出血が酷い。

あー、レッド連れてくりゃよかったか。

 

 

ルーシィ「何で猿が人間に・・・・・・?」

 

祐一「バルカンに『接収-テイクオーバー-』されたんだろ」

 

ルーシィ「『接収-テイクオーバー-?』」

 

祐一「身体を乗っ取る魔法だ。バルカンは人間を接収して生き繋ぐモンスターだからな」

 

 

怪我を負っているマカオを地面に寝かせ、俺達は治療に取り掛かった。

 

 

ハッピー「接収-テイクオーバー-される前に、相当激しく戦ったみたいだね」

 

ルーシィ「ヒドイ傷だわ」

 

ナツ「マカオしっかりしろよ!!」

 

祐一「とりあえず止血しないとな」

 

 

俺はマカオの傷が一番深い腹部分に手を当てる。

瞬間、傷口が凍り付いて出血が止まった。

グレイの氷の造形魔法だ。

氷で凍らせて、深い傷口を塞ぐ。

応急処置だが、今はこれで充分だろう。

後は医者かレッドに任せるか。

 

 

マカオ「・・・・・ここは?」

 

ナツ「気がついたかっ!?」

 

 

意識を取り戻したマカオ。

状況が分からないのか、辺りを見渡すが、直ぐに自分が何故倒れているのかを思い出す。

 

 

マカオ「そうか・・・バルカンに接収されたんだっけか・・・・・・」

 

ハッピー「うん。危なかったぁ、祐一がいなかったらどうなってたことか・・・・・・」

 

マカオ「・・・そうか、ありがとよ、祐一」

 

祐一「ま、気にすんなよ」

 

 

傷は完全に塞がったが、治った訳じゃ無いし、消費した魔力や体力が回復したわけじゃなく、自力で立ち上がることまでは出来なくて、ナツがマカオに肩を貸した。

マカオは無事・・・とはいえんが保護したし、後は帰るだけだな。

 

 

マカオ「情けねぇぜ・・・19匹は倒したんだ・・・・・・けど、20匹目に接収されちまってよ。これじゃあ、ロメオに会わす顔がねぇ・・・・・・・・・」

 

祐一「いや、1人でバルカン19匹も始末出来りゃ充分だろ」

 

ハッピー「あい、それだけ倒せれば充分だよ! ナツ達は20匹以上余裕で倒してたけど」

 

マカオ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

祐一「おい、マカオ落ち込んじまったろうが。発言に気ぃつけろ、例え事実だとしてもだ」

 

ルーシィ「それ、フォローになってないけど……」

 

 

まぁ、とにかく帰ろうぜ。

 

 

◆◆◆

 

 

時刻は既に夕方。

マグノリアの公園のベンチで黄昏てたマカオの息子・・・ロメオを見つけ、

 

 

祐一「ほら、行ってやれ」

 

 

無様に負けたことをまだ気にしてんのか、足を進めるのに躊躇いをみせるマカオの背を、軽く蹴り飛ばしてやった。

勢いよく前のめりに進むマカオは、倒れそうになるのを足に力を入れ踏ん張り、耐える。

ロメオの目の前に出たマカオは、照れ臭げに頭を掻き、

 

 

マカオ「・・・心配かけたな、スマネェ」

 

 

屈んで、ロメオを抱きしめた。

その行為に、ロメオは泣きそうになる。

周りの子供達にフェアリーテイルの皆を、自分の親を馬鹿にされて悔しい思いをした。

けれど、

 

 

ロメオ「いいんだ・・・・・オレ魔導士の息子だから」

 

 

今にも泣き出しそうに、目に涙をためているロメオに、マカオは言った。

 

 

マカオ「今度クソガキどもにからまれたら言ってやれ、テメェの親父はバルカン19匹倒せんのか!?ってよぉ」

 

 

笑って言ったマカオのその言葉に、ロメオも笑った。

ロメオは、視界の端に映った人影に気づき叫ぶ。

 

 

ロメオ「ナツ兄ー! ハッピー! ありがとぉー!! それと、祐兄、ルーシィ姉も、ありがとぉっ!!」

 

 

そこには、3人と一匹の後ろ姿と二人の親子の笑顔があった。

 

 

◆◆◆

 

 

祐一「・・・・・・なんつーか、平和だよなぁ」

 

 

マカオを救出した翌日の朝。

カウンターでだらけながら、ギルド内を見渡す俺。

 

 

グレイ「ナツ! てめぇ、この間の決着つけっぞ!!」

 

ナツ「おう、やってやらぁ!!」

 

エルフマン「つーか、グレイ、服・・・・・・」

 

グレイ「はっ!? しまった!!」

 

ナツ「またかよ、ウゼェな」

 

グレイ「今ウゼェっつったか、クソ炎!!」

 

ナツ「あ゙ぁ゙? だったら何だよパンツ野郎!?」

 

エルフマン「てかお前ら、俺の横で暴れ――痛っ!?――てめぇら上等だぁ表出ろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

ナツはグレイとエルフマンと仲良く喧嘩しており、その光景はいつものフェアリーテイルの日常だ。

 

 

ミラ「みんな賑やかね♪」

 

 

俺が座ってるカウンターの前に、ミラがコーヒーとサンドイッチを両手に持って運んできてくれる。

俺がミラに、朝食を注文したものだ。

 

 

祐一「サンキュー」

 

 

早速運んできてくれたコーヒーを飲む。

・・・・・・うむ、相変わらずミラの淹れるコーヒーは美味い。

眠い朝にはブラックに限るぜ。

糖分も欲しくなるが。

 

 

祐一「昨日の様子を見るに、ルーシィのやつ早く馴染めそうだな」

 

ミラ「馴染みすぎて物を壊したりしなきゃいいけど・・・・・・」

 

 

どんなおとなしいやつでも、やるときはやるし、壊すときは壊す。

フェアリーテイルに馴染んでくると、自然とそうなっちまうもんだ。

現に、昔はおとなしい感じだったカナや、ギルド内では大分まともなレヴィですら、たまに物を壊したりして評議院に睨まれたりするしな。

 

 

祐一「そーいや、そのルーシィの姿が見えんな。まだ来てねーのか?」

 

ミラ「そうねぇ、まだ来てないけど・・・・・・何でそんなに気にしてるのかなぁ?」

 

祐一「お前こそ何で背後に黒いオーラ纏ってんだ? まだ新人だから、クエストに馴れるまでは俺が付き添えってジジイに言われてんだよ」

 

ミラ「そうなんだ? てっきり私は、また女の子を毒牙に掛けたのかと思っちゃった♪」

 

祐一「・・・・・・おもむろに包丁をチラつかせんの止めてくんね?」

 

 

しかも、このギルドに置いてある包丁って俺が磨いだものばっかだから、普通の包丁でも名刀の業物並に切れ味があるから、斬られたらシャレにならねーんだぜ。

 

 

ミラ「気になるなら、ルーシィを迎えにいってあげたらいいんじゃないかしら」

 

祐一「・・・・って、そーいやルーシィって何処に住んでんだ? フェアリーヒルズか?」

 

ミラ「ううん。でも、そんなに遠くないわ」

 

 

ミラはカウンターに地図を出して、ルーシィが住んでる家を教えてくれた。

・・・・・・ふむ、商店街の近くか。

 

 

祐一「そんじゃあ、ちょっくら行ってくるぜ」

 

 

◆◆◆

 

 

フィオーレ王国

東方

マグノリアの街

人口6万人

古くから魔法も盛んな商業都市

街の中心に聳え立つ教会“カルディア大聖堂”を抜けると、そこにはこの街唯一の魔導士ギルド“妖精の尻尾-フェアリーテイル-”が見えてきます。

で、私が住むことになった家は、商店街の近くで便利そうなの。

 

 

ルーシィ「いいとこ見つかったなぁ」

 

 

家賃7万Jにしては間取りも広いし、収納スペース多いし。

真っ白な壁、木の香り。

ちょっとレトロな暖炉に、竃までついてる!

 

 

ルーシィ「そして何より一番素敵なのは・・・・・・」

 

ナツ「よぉっ!」

 

ルーシィ「Σ私の部屋ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

◆◆◆

 

 

ルーシィ「何でアンタ達がいるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

ルーシィがぶちギレて、ナツとハッピーを纏めて、回し蹴りで壁に押し潰す。

いやー、いい蹴りだ。

ま、無断で部屋に入って好き勝手荒らしてりゃそーなるだろ。

しかも勝手についてきやがって・・・・・・。

 

 

祐一「あー、悪いなルーシィ。勝手に入って」

 

ルーシィ「勝手に入ってきたっていう自覚はあるのね・・・・・」

 

祐一「俺だけな。外からでも、風呂入ってんのは水音で何となく分かったから、時間置いて出直すつもりだったんだが・・・・・・」

 

 

それを聞かずに不法侵入したのが、俺の目の前にいる1人と1匹。

 

 

ナツ「だって、ミラから家決まったって聞いたから・・・・・・」

 

ルーシィ「聞いたから何っ!? 人の家に勝手に入ってきていい訳っ!?」

 

祐一「だから言ったろうが」

 

ナツ「祐一だって入ってきてんじゃねーかっ!!」

 

祐一「お前らだけ入れたら、どんな被害を出すかわかんねぇからだろーが。実際どんだけ散らかしてんだよ」

 

 

一応何度も注意したが、効いた試しがねーな。

幸い物を壊したりはしてないが、現在進行形でコイツらが散らかしたものを片付けてんの俺だしな。

 

 

ルーシィ「親しき仲にも礼儀ありって言葉知らないの!? あんた達のしたことは不法侵入!! 犯罪よ!!! モラルの欠如もいいトコだわ!!!!」

 

ナツ「おい、そりゃあ傷つくぞ・・・・・・」

 

ルーシィ「傷ついてんのは私の方よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

大激怒だな・・・・・・。

 

 

ハッピー「いい部屋だね」

 

祐一「爪研ぐなよ」

 

 

ホント、やりたい放題だな。

 

 

ナツ「ん? 何だ、コレ」

 

ルーシィ「ダメえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

ナツが机の上に置いてある紙の束を手に取ると、ルーシィが物凄い勢いでナツから奪い返す。

戦闘のときはあまりいい動きを見せないんだが、何で日常パートではこうも高い身体能力を発揮するんだろうか。

 

 

ナツ「なんか気になるな。何だソレ?」

 

ルーシィ「何でもいいでしょ!! てか、もう帰ってよっ!!」

 

ナツ「やだよ、遊びに来たんだし」

 

ルーシィ「超勝手ぇぇぇぇぇ・・・・・・」

 

祐一「ま、こういうやつだ・・・・・・・」

 

 

フリーダムなやつが多いからな、フェアリーテイルは・・・・・・・・・。

 

 

祐一「ま、勝手に台所使わせてもらったが、紅茶淹れたし、茶菓子も買ってきたから食え」

 

 

紅茶はこの家にあるものを使わせてもらった。

ついでに言えば、アールグレイだ。

 

 

祐一「それに、いつまでもその格好でいると風邪ひくぞ」

 

ルーシィ「・・・・・・そ、そうねっ」

 

 

ちなみに、ルーシィは風呂から上がってきた直後だからか、身に付けているのはバスタオル一枚だけである。

 

 

祐一「ま、俺としては目の保養だからそのままでも構わねーが?」

 

ルーシィ「着替えてきますっ!!」

 

 

ルーシィは着替えをタンスから取り出して、そそくさと脱衣室へ着替えに行った。

 

 

◆◆◆

 

 

ルーシィ「まだ引っ越してきたばっかりで、家具もそろってないのよ。遊ぶモンなんか何もないんだから、紅茶飲んだら帰ってよね」

 

 

着替えて戻ってきたルーシィは、大層ご立腹な様子で紅茶を飲んでいる。

 

 

ナツ「残忍な奴だな」

 

ハッピー「あい!」

 

ルーシィ「紅茶飲んで帰れって言っただけで、残忍・・・って・・・・・・」

 

祐一「・・・・・・ま、こういう奴だ、諦めろ」

 

 

コイツらに常識を求めるだけ無駄だ。

 

 

ナツ「あ、そうだ! ルーシィの持ってる鍵の奴等、全部見せてくれよ」

 

 

なんて、ナツが思い付きでルーシィに聞いた。

簡単に言うなよ、星霊を召喚するのって結構魔力を使うんだからよ。

 

 

ルーシィ「鍵の奴等じゃなくて“星霊”よ」

 

ハッピー「ルーシィは何人の星霊と契約してるの?」

 

ルーシィ「6体」

 

 

ちなみに星霊は、1体、2体と数える。

ルーシィは持ってる鍵を机の上に、金色の鍵と、銀色の鍵を並べた。

 

 

ルーシィ「こっちの銀色の鍵がお店で売ってるやつ。時計座のホロロギウム、南十字座のクルックス、琴座のリラ。こっちの金色の鍵は“黄道十二門”っていうゲートを開ける超レアな鍵。金牛宮のタウロス、宝瓶宮のアクエリアス、巨蟹宮のキャンサー」

 

ナツ「巨蟹宮!! カニかっぁぁぁぁぁっ!?」

 

ハッピー「カニぃぃぃぃぃ!!」

 

 

コイツら、ホント訳わかんねートコに食いつくのな。

 

 

ルーシィ「そーいえば、ハルジオンで買った“小犬座のニコラ”契約するのまだだったわ」

 

 

あー、あの愛玩星霊な。

ニコラってどう見ても小犬には見えねぇんだが・・・まぁ、そういう星霊も結構いるよなぁ。

何てことを考えてるうちに、ルーシィはナツに星霊魔導士が星霊と契約するまでの流れを見せるために、ニコラを呼び出して契約していた。

 

 

ルーシィ「そうだ! 名前決めてあげないと!!」

 

ハッピー「ニコラじゃないの?」

 

ルーシィ「それは総称でしょ」

 

 

「うーん……」と、頭を捻って名前を考えるルーシィに、

 

 

祐一「しゃぶ太郎なんてどうだ?」

 

ルーシィ「しゃぶ太郎って何!?」

 

祐一「いやー、何かそんな感じじゃねーか? どこぞの聖石使い辺りが命名しそうだろ」

 

ルーシィ「何の話・・・・・・?」

 

 

こっちの話だ。

 

 

ルーシィ「うん、プルー!」

 

ナツ「プルぅ?」

 

ルーシィ「なんか語感が可愛いでしょ!」

 

 

うん、それもアリだ。

そんな名前もつけそうな・・・いや、つけられたような気がするぜ。

なんて、くだらないことを考えてたら、突然プルーが踊り出す。

どうやらその踊りで何かを伝えようとしているが、ハッキリ言って意味不明だ。

 

 

ナツ「プルー!! お前、いいこと言うなぁっ!!」

 

 

なんか伝わってるし。

 

 

ナツ「よし、プルーの提案に賛成だっ!! 俺達でチームを組もう!!」

 

ルーシィ「チーム?」

 

祐一「ギルド内で、1つの依頼を複数人で組んでやることだ」

 

ハッピー「1人じゃ難しい依頼も、チームでやれば楽になるしね」

 

 

ま、大体のやつはチームというかタッグだけどな。

2人以上の人数でチーム組んでるのってシャドウギアと雷神衆くらいじゃねーか?

 

 

ルーシィ「いいわね、それっ!! 面白そう!!」

 

ナツ「おおぉぉぉぉぉし!! 決定だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ルーシィ「契約成立ね!」

 

ハッピー「あいさーっ!!」

 

祐一「あー・・・それじゃあ、俺がルーシィに付き添う必要はなさそうだな」

 

ルーシィ「付き添うって・・・・・・?」

 

祐一「ルーシィ、フェアリーテイルに入ったばかりだろ。だから、クエストに馴れるまでは付き添うことにしてんだよ。俺が担当だ」

 

ナツ「祐一も俺達と組めばいいじゃねーかっ! ちょうどいいし!!」

 

 

・・・・・・・丁度いい?

 

 

ナツ「さっそく仕事行くぞ!! ホラ、もう決めてあるんだ!!」

 

祐一「あ゙?」

 

ルーシィ「もぅ せっかちなんだからぁ~」

 

 

ナツが持ってきた依頼書に目を通す。

 

場所はシロツメの街。

内容は・・・・・・

 

 

ルーシィ「うっそ!? エバルー公爵って人の屋敷から、一冊の本を取ってくるだけで20万Jっ!!!?」

 

ナツ「な? オイシー仕事だろ?」

 

 

絶対なんか裏があるだろ、疑えよ。

 

 

ルーシィ「・・・・・・とにかく女好きで、スケベで変態。ただいま金髪のメイドさん募集中!?」

 

祐一「・・・・・・・」

 

ナツ「ルーシィ、金髪だもんな!」

 

ハッピー「だねっ!! メイドの格好で忍び込んでもらおうよ!」

 

ルーシィ「あんた達、最初から・・・・・・・」

 

祐一「つーか、何で俺がいると丁度いいんだ?」

 

ナツ「祐一もメイド服着ればいいじゃねーかっ!!」

 

祐一「着るかっ!!」

 

ハッピー「昔着てたからいいじゃん!」

 

ナツ「なぁ?」

 

ルーシィ「着てたのっ!?」

 

祐一「昔ミラ達に無理矢理着せられたんだよ!」

 

 

思い出したくもねぇ・・・・・・。

 

 

ナツ「さぁ、行こうぜ!!」

 

ルーシィ「メイドなんてイヤよっ!!」

 

祐一「同意だ、誰が女装なんてするか」

 

ナツ「いいじゃねーか、女ものの服着たら、女に見えるだろ」

 

祐一「・・・・・・・殺す」

 

ルーシィ「ちょっと!? 私の部屋で殺人なんてしないでよっ!?」

 

 

◆◆◆

 

 

ルーシィ「馬車の乗り心地はいかがですかぁ? 御主人様ぁん♪」

 

ナツ「・・・・め、冥土が見える」

 

祐一「乗り物弱いクセに、何で毎回遠い所の仕事選ぶかねぇ、お前は」

 

 

仕事の依頼人がいるシロツメの街へ向かうため、馬車に乗っている俺達。

 

 

ルーシィ「言ってみれば随分と簡単な仕事よねー」

 

祐一「嫌がってたわりには乗り気だな?」

 

ルーシィ「当然!! なんたって私の初仕事だからね!! ビシッと決めるわよ!!」

 

祐一「ま、チームでの仕事とはいえ、今回はルーシィがクエストに馴れるための仕事だ。俺は基本的にフォロー役。気合い入れすぎて空回りしないようにな」

 

ルーシィ「って、要は屋敷に潜入して本を一冊持ってくればいいだけでしょ? 簡単よ!」

 

祐一「スケベオヤジの屋敷にな」

 

ハッピー「そう、スケベオヤジ」

 

ルーシィ「こー見えて、色気にはちょっと自信があるのよねぇ~♪」

 

 

ルーシィがグラビアアイドルばりにセクシーポーズを取るが、

 

 

ハッピー「ネコにはちょっと判断出来ないです」

 

 

ハッピーのその一言にアッサリと撃沈した。

 

 

祐一「大丈夫だってルーシィ。思わず襲い掛かりたくなるほどに、ちゃんと魅力あるぜ♪」

 

ルーシィ「それ全然大丈夫じゃないからっ!?」

 

 

フォローを入れたつもりが、何故か「このエロオヤジっ!!」と、俺がスケベオヤジのような扱いを受けてしまった。

ふぅ、全く照れやがって。

 

 

ルーシィ「何か不愉快な声を聞こえた気がするけど・・・・この仕事、あんたらやる事ないんだから、報酬の取り分7・1・1・1だからね!」

 

ハッピー「ルーシィ、1でいいの?」

 

ルーシィ「私が7よっ!!」

 

ナツ「ちょ・・・ちょっと待て・・・俺達・・・も、やる事・・・ある・・・・・・・」

 

ルーシィ「何よ?」

 

ナツ「捕まったら助けてやる」

 

ルーシィ「そんなミスしません!」

 

ハッピー「魚釣りでもね、エサは無駄になる事多いんだよ」

 

祐一「モンスターが入ってる檻に、小動物放り込むようなもんだよなぁ」

 

ルーシィ「私はエサかいっ!!」

 

 

いや、誰がどう見てもそうだろ。

エロオヤジに美少女放り込むなんざ、エサ以外のナニモノでもねーって。

 

 

◆◆◆

 

 

そんなこんなで、ようやく着いたシロツメの街。

 

 

ナツ「取り敢えず腹減ったなぁ、飯にしようぜ飯っ!!」

 

祐一「その前に宿だろ?」

 

ハッピー「そうだよ、荷物置いてこよーよ」

 

 

俺は手ぶらだけどな。

 

 

ルーシィ「私、お腹空いてないんだけどぉ~。アンタ自分の“火”食べれば?」

 

ナツ「とんでもねぇ事言うなぁ、お前は自分の“プルー”や“牛”食うのか?」

 

ルーシィ「食べるわけないじゃないっ!?」

 

ナツ「それと同じだよ」

 

ルーシィ「そ・・・そう?」

 

 

その例えは分かりづらいだろ。

 

 

ルーシィ「要するに、自分の火は食べられないって事なのね。メンドクサー・・・・・・」

 

 

そういうもんだ。

仮に食えたとしても、自分で出して自分で食ったら、普通に+-ゼロだろ。

 

 

祐一「そんじゃ、俺は宿探しに街を見てくるよ」

 

ルーシィ「あ! 私もちょっと街見てくるから、食事は2人でどーぞ」

 

 

ナツのリュックを受け取って、俺とルーシィは街の通りへ歩き出す。

 

 

ナツ「何だよ・・・みんなで食った方が楽しいのに」

 

ハッピー「あい。でも、しょうがないよ、ナツ」

 

ナツ「なんでだよ?」

 

ハッピー「だって、祐一とルーシィって・・・・・・・」

 

ナツ「・・・・・・?」

 

ハッピー「どぅえきてぇるぅ~♪」

 

ナツ「そうなのか?」

 

 

巻き舌風に言うな。

 

 

◆◆◆

 

 

祐一「さて、と」

 

 

この街にある宿で部屋を取り、そこへ荷物を置いてきて、俺は宿を出た。

おそらく飯食ってるであろうナツとハッピーの元へ向かうか・・・・・・。

 

 

祐一「そういや、ルーシィのやつは何処行ったんだ?」

 

 

宿を見つけたらルーシィから荷物を預かって、そのまま何処かへ行ってしまったが・・・。

仕事以外で何か用でもあったのか?

 

 

ルーシィ「あ、祐一」

 

 

ナツ達を探しに適当に街を彷徨いていると、後ろから聞き覚えのある声がして振り返る、と・・・・・・・

 

 

ルーシィ「どう? 中々可愛いでしょ♪」

 

 

・・・・・・・・メイド服に身を包んだルーシィが、そこにいた。

 

 

祐一「・・・・・・・・・・」

 

ルーシィ「結局私って、何着ても似合っちゃうのよねぇ~♪」

 

祐一「・・・・・・・・・・・・・・」

 

ルーシィ「・・・・・・ちょっと、何か言ってよ。なんか私が馬鹿みたいじゃない」

 

祐一「いやー、うん。可愛いよ、似合ってる」

 

ルーシィ「ホントっ?」

 

祐一「ああ。似合うし、可愛いは別にいいんだが・・・・・・」

 

ルーシィ「・・・・・・・何よ?」

 

祐一「メイド作戦、冗談だったんだが・・・どうするか・・・今さら冗談とは言えんし・・・・・・これでいくか」

 

ルーシィ「聞こえてますがっ!?」

 

 

◆◆◆

 

 

ナツ、ハッピーと合流した俺達は、依頼人であるカービィ・メロンという人物に会うために、彼の家に向かった。

そこは、流石本一冊に20万も出す依頼人、大層な屋敷だ。

しかし、

 

 

ナツ「美味そうな名前だな!」

 

祐一「メロンだしな」

 

ルーシィ「ちょっと! 失礼よ!!」

 

カービィ「あはは! よく言われるんですよ」

 

 

メロン・・・どっかで聞いたことがある名前なんだよなぁ。

なんだっけ?

 

 

カービィ「まさか噂に名高いフェアリーテイルの魔導士さんが、この仕事を引き受けてくれるなんて・・・・・・」

 

ナツ「そっか? こんなうめぇ仕事よく今まで残ってたなぁって思うけどな」

 

 

仕事の内容と報酬が釣り合ってねーから、どいつもこいつも警戒してんだろ。

 

 

カービィ「しかもこんなお若いのに・・・さぞ、有名な魔導士さんなんでしょうな」

 

ハッピー「あい! ナツは『火竜-サラマンダー-』って呼ばれてるんだ」

 

カービィ「おお! その字なら耳にしたことが!!」

 

 

有名だからな、悪い意味でだが。

 

 

ハッピー「祐一も有名だよね?」

 

カービィ「祐一もしや、フェアリーテイル最強候補の1人!?」

 

祐一「ああ、俺のこともご存知で?」

 

カービィ「圧倒的な力で相手を真っ向から叩き潰す“妖精皇帝-フェアリー・カイザー-”・・・聖十の称号を持つ貴方の話は、よく耳に届いております」

 

ルーシィ「妖精皇帝って呼ばれてるのは知ってたけど、そんなに有名なんだ、祐一って」

 

ハッピー「あい!」

 

 

ま、たまに雑誌に出てるしな。

 

 

カービィ「・・・で、こちらのお嬢さんは?」

 

ルーシィ「私もフェアリーテイルの魔導士です♪」

 

 

カービィはルーシィの姿を、上から下までジーッと眺め、

 

 

カービィ「その服装は趣味か何かで・・・・・・いえいえ、いいんですがね」

 

ルーシィ「・・・・・・ちょっと帰りたくなってきた」

 

 

そりゃ、聞かれるだろうな。

つーか、既に着替える意味がないわけだし。

 

 

◆◆◆

 

 

そして仕事の話。

仕事の内容は、エバルー公爵の持つ、この世に一冊しかない本。

『日の出-デイ・ブレイク-』

その本の破棄、又は焼失。

 

 

ナツ「盗ってくるんじゃねぇのか?」

 

カービィ「実質上、他人の所有物を無断で破棄する訳ですから、盗るのと変わりませんがね・・・・・・」

 

ルーシィ「私はてっきり、奪われた本を取り返してくれって感じの話かと・・・・・・」

 

ナツ「焼失かぁ・・・だったら屋敷ごと燃やしちまうか!!」

 

祐一「その方が手っ取り早いしな」

 

ハッピー「楽チンだね」

 

ルーシィ「ダーメっ!! 確実に牢獄行きよ!!」

 

 

もう今更な気もするがな。

今までのフェアリーテイルの所業を考えれば・・・・・・。

 

 

祐一「で、一体何なんだ、その本は・・・?」

 

ルーシィ「本一冊に20万Jも出すなんて・・・・・・」

 

 

まぁ、この世に一冊しかないんなら、相当珍しいんだろうが。

 

 

カービィ「いいえ・・・成功報酬は200万Jお支払いします」

 

「「「「――――――」」」」

 

 

・・・・・・一瞬の静寂。

 

 

ナツ&ルーシィ&ハッピー「「「二百ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

祐一「驚きすぎだろ・・・・・・」

 

カービィ「おやおや・・・値上がったのを知らずにおいででしたか」

 

 

おそらく、俺達がギルドを出発したのと入れ違いになったんだろうなぁ。

しかし、200万か。

 

 

ナツ「200万!? ちょっと待て!! 四等分すると・・・・・・うおおぉぉぉぉぉっ!! 計算出来ん!!」

 

祐一「なんでそんな簡単な計算が出来ねぇんだよバカ。俺が197万で、残りはお前達の分だ」

 

ハッピー「頭いいなぁ祐一!!」

 

ルーシィ「私達1万しか残らないじゃないっ!!」

 

カービィ「まぁまぁ皆さん、落ち着いて」

 

 

突然値上がりした報酬額に驚愕するナツ達だが、ルーシィは恐る恐るカービィに問う。

 

 

ルーシィ「な・・・何で急にそんな・・・200万Jに・・・・・・?」

 

カービィ「それだけ、どうしてもあの本を破棄したいのです。私は、あの本の存在が許せない」

 

祐一「・・・・・・・」

 

 

存在が許せない本?

あ、思い出した、何か本を取り戻しに行く話だわコレ。

 

 

ナツ「おおおおぉぉぉぉぉ!!!! こうしちゃあいられねぇ!! 行くぞみんなぁ!!」

 

ルーシィ「ちょ、ちょっとぉ!!」

 

 

急に正気を取り戻したナツに手を引っ張られ、ルーシィ達は外へ向かって駆け出し、

 

 

祐一「やれやれ、俺も行くかね」

 

 

俺も後を追って駆け出した。

 

 

◆◆◆

 

 

祐一「・・・・・・どう思うよ?」

 

ナツ「何が?」

 

祐一「このメイド作戦、成功すると思うか?」

 

 

エバルーの屋敷へメイドとして潜入し、本を探して燃やそうとしているルーシィを見送って、俺達は屋敷から少し離れた木陰で、様子を伺っている。

 

 

ハッピー「祐一はどう思うの?」

 

祐一「ま、ルーシィはルックスいいから普通に考えれば大丈夫なんだろうが、エバルーがブサメン趣味とかだったらアウトだろうなぁ・・・・・・」

 

ナツ「なんなら賭けるか?」

 

祐一「いいねぇ・・・俺は、エバルーがブサメン趣味で不採用に10000J賭けるぜ」

 

ナツ「そんじゃあ俺は、採用されるに10000Jな!」

 

ハッピー「オイラも採用されるに魚一匹賭けるよ!」

 

祐一「いや、魚なんて賭けられてもなぁ・・・」

 

 

◆◆◆

 

 

結果発表~!

 

 

ルーシィ「しくしくしくしく・・・・・・」

 

 

惨敗でした。

まさかエバルーが、俺の予想をも上回るブサメン趣味とは!!

 

 

ナツ「使えねぇな」

 

ルーシィ「違うのよ!? エバルーって奴、美的感覚がちょっと特殊なの!!」

 

 

まぁ、確かに、ゴリラみたいなメイド連れてたしな。

 

 

ハッピー「言い訳だ」

 

ルーシィ「キィぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 悔しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

祐一「ま、ドンマイとしか言えねぇわ」

 

 

ブスにブスの烙印を押されまくってたからな、同情するぜ。

 

 

ナツ「こうなったら“作戦T”に変更だ!」

 

ルーシィ「おのオヤジ、絶対許さん!!」

 

祐一「ところで作戦Tの“T”って何だ?」

 

ハッピー「『突撃-“T”OTSUGEKI-』のTだよ」

 

ルーシィ「てゆーか、それって作戦なの……?」

 

 

突撃の時点で、作戦でも何でもないな。それは寧ろ特攻と言う。

 

 

祐一「あ! さっきの賭け、俺の勝ちね。ルーシィ不採用だったし」

 

ナツ「くっそー、ルーシィが採用されなかったから10000J摺っちまったじゃねーかっ!!」

 

ハッピー「オイラの魚ぁ・・・・・・」

 

勇人「いや、魚はいらねー」

 

ルーシィ「何賭けてんのよアンタ達っ!?」

 

 

◆◆◆

 

 

“日の出-デイ・ブレイク-”という一冊の書物を頂戴するため、エバルー屋敷への侵入を試みる俺達フェアリーテイル。

そんな俺達は今、空を飛んで屋敷の屋上へと舞い降りた。

 

 

ナツ「何でこんなコソコソ入らなきゃいけねーんだ?」

 

祐一「依頼とはいえ、やることは泥棒だからな。奪われた本を奪還しろってんならともかく」

 

ルーシィ「それに、今回のターゲットは街の有力者よ。ムカつく変態オヤジでも悪党じゃないの!」

 

 

下手なことすりゃ軍が動くうえに、評議院に知られかねん。

そうなりゃ、俺の余計な仕事が増える。

 

 

ナツ「何だよ、オマエだって「許さん!!」とか言ってたじゃん」

 

ルーシィ「ええ!! 許さないわよ!!! だから本燃やすついでに、アイツの靴とか隠してやるのよっ!!」

 

 

ウフフと、怪しい笑みを浮かべるルーシィ。

つーか、やること小さすぎんだろ。

 

 

◆◆◆

 

 

祐一「・・・・・・何やってんだ、お前ら」

 

 

廊下に出て、コソコソしているナツとルーシィ、そしてドクロのような被り物を被ったハッピー・・・・・・。

コソコソしながら部屋の扉を開けて、部屋の中を確認し、目的の本が無さそうなら扉を閉じて、次の部屋へ移動している。

 

 

ナツ「まさかこうやって、屋敷中の部屋の中探してくつもりなのか?」

 

ルーシィ「当然!!」

 

 

自信満々に言うなよ。

んな面倒なことするより、誰か取っ捕まえて聞き出したほうが・・・・・・

 

 

祐一「あん?」

 

 

俺はそこまで考えて、辺りを見回し、感覚神経を鋭敏にする。

周囲の気配を探るが、人の気配は全くない。

・・・・・・何で人の気配がしない?

この屋敷は結構デカイ。

エバルー本人や、ルーシィの面接の時に現れたメイド達を含め、使用人が何人かいるはずなのに、全くそんな気配がない。

 

 

祐一「おい、お前ら―――」

 

 

俺が声を出したのと同時に、

 

 

「「「「「――――侵入者発見!!!!」」」」」

 

 

厳ついゴリラのようなメイドと、ブサメンメイド達が各々武器を手に、屋敷の床を突き破って、下から現れた。

 

 

ナツ「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ、忍者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

たが、メイド達が出てきた瞬間、ナツは何故か首に巻いてあるマフラーを、顔を隠すように巻き付け、メイド達を蹴り倒す。

 

 

ナツ「まだ見つかる訳にはいかんでござるよ、ニンニン」

 

ハッピー「ニンニン」

 

祐一「いや、普通に騒がしいからお前ら。つーか、見つかってんのに顔隠す意味もねーだろ」

 

ルーシィ「どっかの部屋に入って隠れましょっ!!」

 

祐一「今更のような気もするが?」

 

ルーシィ「いいから隠れるの!!」

 

 

俺達は次の部屋の扉を開けて、中に入り込んだ。

 

 

◆◆◆

 

 

俺達が逃げ込んだ部屋は、部屋の壁側にビッシリと並べられた本棚がある部屋だった。

軽く図書館みたいな部屋だな。

 

 

祐一「とりあえず、この部屋探すか」

 

ルーシィ「そうね」

 

 

ナツ達も既に探しにかかってるし。

近くの本棚から順に、並べられている本のタイトルに目を通していき、目的の本を探す。

 

えーと・・・『魔法の書-入門編-』『東洋の神秘』『恋する乙女は嫉妬で男を呪い殺す』『騎士道物語』『モンスター大百科』『これで貴方もモテモテに! 誘惑の惚れ薬調合法』『Hな新任家庭教師~淫欲の放課後~』『恋する乙女は片手でアクノロギアを滅ぼす』『痴漢馬車~犯された処女~』『恋する乙女は聖なる白魔法で黒魔導士ゼレフを葬る』

 

・・・・・・おい、何かエロいのと物騒な恋愛?小説が多いんだが。

 

 

ルーシィ「エバルー公爵って、頭悪そうな顔してるわりには蔵書家なのね」

 

 

『敏感な処女は列車に乗って~神の手を持つ男の痴漢技術~』『サバイバル~生き残りをかけたデスゲーム~』『恋する乙女はカオス理論を凌駕する』『最終痴漢列車~汚された巨乳魔導士~』『拷問の歴史』『大きく振りかぶって斧を振り下ろしたアイツの身体は血に染まり』『恋する乙女の涙は枯れ果てた世界樹を潤す』『メイド凌辱日誌~御主人様に抱かれて~』

 

・・・・・・おい、エロいのと物騒なのしかないんだが。

 

 

ルーシィ「これ全部読んでるとしたら、ちょっと感心しちゃうわね」

 

祐一「そうか、ろくな本しかねぇぞ?」

 

ルーシィ「・・・・・・うわ、何? そっちの本棚エロい本くらいしか置いてないじゃない」

 

祐一「むしろこのタイトルの中に、普通の本が置いてあることに違和感を覚えるぜ」

 

ルーシィ「あー、でも『恋する乙女シリーズ』もある。純愛小説も読むのねぇ、顔に似合わず」

 

祐一「この『恋する乙女シリーズ』って純愛小説なのかっ!?」

 

 

本日一番の驚きである。

 

 

ナツ「あったぁぁぁぁぁ!! 日の出-デイ・ブレイク-!!!!」

 

ハッピー「見つかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

祐一「マジで?」

 

 

ナツが持っている金色の本に目を向けると、その本のタイトルは確かに『DAY BREAK』と書かれていた。

 

 

ルーシィ「こんなにアッサリ見つかっちゃって言い分け!?」

 

祐一「ま、見つかったんだからいいんじゃねーか?」

 

 

随分アッサリと見つかったが。

 

 

ナツ「さて、燃やすか」

 

ルーシィ「ちょ・・・ちょっと待って!?」

 

 

言って、ルーシィはナツから本を引ったくった。

 

 

ルーシィ「こ、これ・・・作者ケム・ザレオンじゃない!!」

 

ナツ「ケム?」

 

祐一「確か、魔導士でありながら小説家だった男・・・・・・だっけか?」

 

 

レヴィに借りた本にも、何冊かケム・ザレオンの名前があったような気が…。

アイツがケム・ザレオンのファンで、よく話聞かされてたっけ。

だが、日の出-デイ・ブレイク-なんてタイトル聞いたことねーけど。

 

 

ルーシィ「私、大ファンなのよ!! ケム・ザレオンの作品、全部読んだハズなのに、未発表作って事!?」

 

祐一「ルーシィ、その本燃やすってこと分かってるか?」

 

ルーシィ「何言ってんの!? これは文化遺産よ!! 燃やすなんてとんでもない!!」

 

ハッピー「仕事放棄だ」

 

ルーシィ「大ファンって言ってるでしょ!!」

 

祐一「今度は逆ギレか・・・・・・」

 

ルーシィ「じゃあ燃やしたって事にしといてよ!! これは、私がもらうから!!」

 

ナツ「ウソはやだなぁ」

 

ルーシィ「この世に一冊しかないのっ!! 燃やしちゃったら二度と読めないのよ!!」

 

 

ま、気持ちは分からなくはないが、仕事は仕事だ。

依頼は果たさなければならない。

 

 

祐一「・・・・ま、それなら依頼人であるカービィさんのところに持っていって、頼んでみたらどうだ?」

 

 

この世に存在しているから消したいのか、それともエバルーのところにあるから消したいのか・・・・・・依頼人の言葉から察するに前者だろうが、頼めば読ませてくれる位のことは出来るかもしれねーし。

なんてことを考えていたその時、

 

 

エバルー「なるほどなるほど、ボヨヨヨヨヨ・・・・・・貴様等の狙いは“日の出-デイ・ブレイク-”だったのか、泳がせておいて正解だった!!」

 

 

不快な声と共に、不愉快な姿が床から飛び出してきた。

 

 

ナツ「ほら、もたもたしてっから!!」

 

ルーシィ「ご、ごめん」

 

祐一「ま、侵入には気づいてたみたいだし、遅かれ早かれだ」

 

 

この屋敷に入る辺りから、ずっと誰かに監視されてる視線は感じていた。

まぁ、取るに足らないことだから放っておいたが。

 

 

エバルー「ふん・・・魔導士どもが何を躍起になって探してるかと思えば、そんなくだらん本だったとはねぇ」

 

ナツ「くだらん本?」

 

ルーシィ「も・・・もしかしてこの本、貰ってもいいのかしら?」

 

エバルー「嫌じゃ、どんなにくだらん本でも我輩の物は我輩の物」

 

ルーシィ「ケチ」

 

エバルー「五月蝿い、ブス」

 

 

エバルーのブス発言がグサリと来たのか、ルーシィが崩れ落ちた。

 

 

ナツ「燃やしちまえばこっちのモンだ」

 

ルーシィ「Σダメ!! 絶対ダメ!!」

 

祐一「あのなぁ、ルーシィ。仕事だぞ?」

 

ルーシィ「じゃあせめて読ませて!!」

 

俺達&エバルー「「「「ここでかい!?」」」」

 

 

床にドッシリと座り込んで本を読み始めたルーシィに、俺とナツとハッピーどころか、エバルーまで一緒に思わずツッコミをいれてしまった!?

 

 

エバルー「ええい‼ 気に食わん‼ 偉ぁい我輩の本に手を出すとは‼ 来い、バニッシュブラザーズ‼」

 

 

エバルーの声に応じて、実に個性的な風貌をした二人の男が扉を開けて、部屋に入ってくる。

扉っつーか、本棚で隠された隠し扉だが。

 

 

エバルー「そして流れの武闘家傭兵‼」

 

「・・・・・は?」

 

 

俺は思わず、一瞬動きを止めた。

エバルーが原作には全く存在しない言葉を喋ったからだ。

日常程度の会話ならそれもあり得ただろうが、バニッシュブラザーズ以外にも傭兵を雇っているのは完全にイレギュラー‼

 

 

???「ふぁ~」

 

 

バニッシュブラザーズが入ってきた扉から、一人の男が欠伸をしながら入ってきた。

その男の姿を視界に捉えた瞬間、俺は驚愕した。

その独特の黒髪、筋骨隆々な逞しい身体。

そして一番特徴的なのは、そいつが着ているオレンジ色の服。

いや、それは道着だった。

オレンジ色で、胸と背中にある〇枠に亀と描かれたその道着。

 

 

「何で孫 悟空がここにいんだよ!?」

 

悟空「ん? なんだぁ、おめぇ、オラのこと知ってんのかぁ?」

 

 

 

 

.




まさかのジャンプ代表キャラの登場。
・・・何でこうなったかは俺にも分からん。

追記

超長くなってしまった。

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