FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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2話連続更新!


第115話 終わりは突然に

続けて、ゼレフは振り下ろした大剣を横薙ぎにする。

 

「マジか!?」

 

大抵の攻撃は筋肉や皮膚だけでも防げるというのに、アレだけ防御能力を重ね掛けしたにも関わらず、コイツは問答無用でぶった切って来やがった。

あの剣の力か?

防御スキルを貫通する能力でも備わってんのか?

てか、そもそもゼレフってあんな剣使ってたっけ?

いや、そもそもあの剣、何か何処かで観たことあるような気が・・・・・・。

 

「考え事かい?」

 

ゼレフはその細い腕からは考えられない程、身の丈もある大剣を左手一本で軽々と振るう。

どんな力を持っているのか分からないが、触れるのはマズい。

【解析‐アナリシス‐】で情報を得るまで、回避に徹した方がいいかもしれない。

ま、隙を突いて攻撃はするが。

 

「フライングフォーク‼」

 

後ろに跳躍して距離を取り、オーラで出来たフォークを飛ばす。

だが、ゼレフは容易く大剣で斬り落とした。

効かないのは分かってる。

距離を取って戦う牽制に使えれば充分だ。

隙の大きい威力のある攻撃は、使えば接近される。

このまま攻撃を見切り、遠距離でチマチマ攻撃し、情報を集める。

まずは絶対に避けれるように、目を使う。

【写輪眼】+【白眼】+【憤怒の最強の眼】+【天帝の――――――

 

「無駄だよ」

 

ゼレフの眼が紅く輝くのを視認する。

瞬間――――――

 

「・・・・・・――――――――――――」

 

視界が真っ暗になった。

何だ、幻術か?

写輪眼相手に幻術を掛けるとか、どんな能力だ。

俺は幻術を解こうとする。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・解けなかった。

 

いや、そもそも、瞳術が、使えない?

 

「ッ!?」

 

直感任せに身を捻る。

何かが身体を掠めた感じがした。

ゼレフの剣だ。

いったい何をやったのか分からないが、視界と魔眼が封じられた。

幸い視覚以外の五感は問題なく、音と匂いと気配を頼りに攻撃を回避する。

 

「テメェ、何しやがった!?」

「答える気は無い」

 

ゼレフの猛攻は続く。

如何にか攻撃を凌ぐが、このままではいずれやられてしまうだろう。

左腕だって治ってねぇってのに―――――――

 

「――――――治ってない?」

 

思わず口にして、異変に気付く。

俺には数々の再生能力や無効化能力がある。

にも拘らず、腕が再生する気配は無い。

眼も戻らないままだ。

この野郎、マジで俺に何しやがった?

 

「追いかけるのにも飽きて来たな」

 

そうゼレフが呟いた瞬間、俺はグッ‼と身体が引き寄せられるのを感じた。

まるで重力に吸い寄せられるように、抵抗出来ない程の強い力で引き寄せられる。

 

「チィッ‼」

 

宙で身体を捻り、この勢いを利用して、

 

「【アルティメット化】+【スーパーサイヤ人3化】+【虚化】+【瞬閧】+【モード雷炎竜】+【武装色の覇気】+【猿武】+【食義】+キャノンナイフ‼‼‼‼」

 

強化をふんだんに使っての右足のナイフ蹴り。

それが凄まじい爆音を轟かせ、ゼレフの首に突き刺さった手応えを感じた。

・・・・・・手応え?

首に間違いなく突き刺さった。

だが、これほどの蹴りを喰らいながら、首が吹き飛んだ感覚は無い。

いや、それどころか、ゼレフ自身を蹴り飛ばす感触が無い。

ナイフの回し蹴りは、依然とゼレフの首に突き刺さったまま。

微動だにしていなかった。

 

――――――――――斬ッ‼‼

 

右足が根元から断たれた感触が―――――――

 

「クソがッ‼‼」

 

俺は竜の咆哮の放とうと口を開くが、ガッ‼と顎を撃ち上げられて発動をキャンセルさせられた。

 

――――――――――斬ッ‼‼

 

胴体が横に真っ二つにされる感覚が――――――。

そして今度は胸部を蹴られ、俺は上空へと飛ばされる。

敵の能力は未知数。

このままだと本気でヤバい。

俺は残った右拳を握る。

 

「オオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ‼‼‼‼」

 

気合の叫びと共に舞空術で急降下。

どんな能力を使っているのかは未だに分からないが、異能である事には違いない。

なら、俺の【幻想殺し‐イマジンブレイカー‐】でぶち殺せるはず。

俺は重力の勢いをつけて、右腕をゼレフ目掛けて思いっきり振り抜いた。

 

 

◆◆◆

 

 

「その右手は知っている」

 

勢いをつけて落下してくる上田祐一の考えを、ゼレフは看過していた。

コレから振るおうとしている右手の力に、ゼレフは何の脅威も感じてはいなかった。

 

「その右手の奥に潜むものは警戒すべきだが、右手の能力を無視すればそれはただの拳打に過ぎない」

 

【幻想殺し‐イマジンブレイカー‐】を使っている間、その右手は【幻想殺し‐イマジンブレイカー‐】以外の力を使えない。

であれば、特に警戒するに値しない。

全快状態ならともかく、今の死に体の状態では、何の変哲もないただのパンチだ。

 

「それに、僕は知らないが・・・・・・俺は知っている」

 

・・・・・・僅かに、ゼレフの気配が変わった。

 

「その右手では、コレに勝てない事を」

 

落下して来た上田祐一の右手を、顔を逸らす事で避ける。

そして、ゼレフは・・・・・・右手を振るう――――――――――

 

「――――――――――新たな天地を望むか?」

 

その右手が振るわれた瞬間、上田祐一の姿が忽然と消える。

この場から、ではない。

 

上田祐一の存在が、この世界から完全に消滅した―――――――――――。

 

 

◆◆◆

 

 

「そういや、祐一に奴何処に行ったんだ?」

 

マスターハデスを倒し、グリモアハートとの激戦が終わって簡易ベースで身体を休めていたグレイが、未だに姿を見せない仲間の事を口にした。

 

「もう七眷属も残ってないだろうし、ハデスも倒しちゃったし、敵はいないハズよね?」

「・・・・・・いや」

 

ルーシィの言葉を、パンサーリリーが否定した。

 

「もしかしたら、まだゼレフを追っているのやもしれん」

「あの黒い奴か」

 

自身が大事にしているマフラーを黒く染められたことを思い出し、ナツは怒りを顔に出す。

 

「まだこの島にいるって事?」

「未だに姿を見せないんだ。可能性はあるだろう」

「けど、祐一がまだ戦ってるんなら、もっと島が騒がしいと思うけど・・・・・・」

 

エクシード組の会話、シャルルの言葉に同意する皆だが、未だに姿を見せない事に疑問を感じる。

勝ったにせよ、逃げられたにせよ、闘いが終わったのなら姿を見せてもいいはずだ。

上田祐一が遠く離れた気配を感じ取れることを知っており、みんなが此処に集まっていることに気付けないはずは無い。

なら、何故この場に現れないのか?

未だに戦っているのか。

それとも、動けない状態なのか・・・・・・。

 

「・・・・・・ジュビア、探して来ます!」

「俺も行くぜ。何時の間にかアイツに助けられてたみたいだからな。漢として放って置けん!」

「敵倒した後放置されたけどね」

「それは言うな、漢として」

「私は女だっつの‼」

「みんなで手分けして探した方がよくない?」

「うむ。そうした方がよいかもしれんな」

 

彼らはまだ知らない。

その探し人が、もうこのアースランドに存在しない事を。

 

「「「!?」」」

「何だぁ!?」

「ウルセーッ‼‼」

「この声・・・・・・!?」

 

彼らはまだ知らない。

この島に破滅が訪れようとしている事を。

 

彼らはまだ知らない。

今、一つの時代が終わろうとしている事を。

 

――――――――彼らはまだ、何も知らない。

 

.


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