FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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第110話 一次試験終了!

 

 

「良い目してやがる」

 

先程とは随分雰囲気が違うレビィを見やり、今度は大丈夫だと判断する。

自分で勝ちを取りに来る意志があれば、将来的にS級へ至れるだろう。

ま、今回の試験をクリア出来るかどうかは、別の話だが。

ガジルとレビィはアイコンタクトを交わし、2人同時に突っ込んで来た。

いや、ガジルが前に出ている。

レビィが宙に魔力で文字を描き、魔法を発動させる。

描いた文字は『BOOST』。

それをガジルに放ち、ガジルの動きが加速する。

ウェンディが使うような支援魔法と同じ効果があるらしい。

 

「鉄竜槍鬼薪‼」

 

今までとは比べ物にならない程の凄まじい速度と威力で放たれる鉄槍の嵐。

 

「喝ッ‼‼」

 

俺は飛来してくるソレらを気合いで弾き飛ばす。

 

「・・・・・・いない?」

 

迫るガジルを叩き潰そうと思ったが、姿が見えない。

 

「後ろか!」

 

気配を感じ、すぐさま反転。

俺の背後に回り込んだガジルが、もう目前まで来ていた。

 

「鉄竜剣‼」

 

眼前に迫る剣を俺は左手で逸らし、蹴りでガジルを吹き飛ばす。

 

「【固体文字‐ソリッドスクリプト‐】‼」

「!」

 

レビィの声が響き、意識を向ける。

すると、突然辺りに霧が覆い始める。

一瞬だが、レビィが放った魔法の文字が見えた。

『FOG』。

意味は深い霧。

俺の視界を封じる気か。

普段ならそれくらい白眼で見通すのだが、力を使えない今の俺には有効だ。

超五感の視覚でも、ここまで深い霧を見通すことは出来ないからな。

手段は悪くない。

だが、視界を封じただけで俺を如何にか出来るかと言えば、

 

「!?」

 

咄嗟に嫌な予感がし、しゃがむ。

すると、俺の頭上を何かが凄まじい勢いで通り過ぎた。

見ると、ガジルが腕の剣が振り抜いていた。

コイツ、いつの間にここまで接近した?

ガジルは何やら叫ぶように口を開き、口からブレスを吐き出した。

 

「?」

 

俺はソレを気合いで吹き飛ばす。

だが、何だこれは?

今、ガジルが魔法を放つ叫びも、ブレスが噴き出して地を抉る音も聞こえなかったのだが。

いや、それどころか俺がブレスを吹き飛ばす音も消えて―――――

 

「そうか、レビィか」

 

今呟いた言葉も、音として発せられる事は無かった。

たぶん、レビィは『SILENT』と【固体文字‐ソリッドスクリプト‐】で発動し、周囲の音を消したのだ。

しかし、視界と音を消したとはいえ、俺が全くガジルの接近に気付けなかったとは。

完全に勘だけで避けたぞ、今。

・・・・・・そうか、たぶん匂いも魔法で消したな。

たぶん『DEODORIZATION』とかだろう。

俺の五感を潰しにかかったのか。

 

「チッ!」

 

上空に気配を感じ上を見ると、霧が濃くてハッキリとは見えないが、ガジルの姿が映る。

そして再び鉄槍の雨を降り注いでくる。

気合いを発するには気づくのが少し遅かった。

左手で全てを薙ぎ払おうとするが、今度は横から雷が飛んできた。

【固体文字‐ソリッドスクリプト‐】の『THUNDER』か。

舌打ちしつつ、俺は宙に跳び上がり回し蹴りで雷を蹴り払う。

鉄槍と雷の連撃を如何にか凌ぐが、流石に少しきつくなってきた。

普段なら全く効く事は無い攻撃だが、この試験においては有効だ。

 

「?」

 

攻撃を薙ぎ払い、着地した瞬間何かが背中に当たった感触がした。

何だ?と背を見るが、流石に背中は見えない。

呑気に確かめるに間など与えられず、宙に居たガジルが両手を鉄剣に変えて斬りかかって来る。

左右の上段斜め切り。

それを左腕と右足で弾き、残った左足で跳躍しガジルの顎を蹴り上げる。

だが、

 

「何だ!?」

 

当然声は出ないが、思わず口にしてしまった。

蹴り上げた反動で跳び上がったのだが、思ったより高く跳び上がってしまう。

まるで身体の重さを感じさせない跳躍だったが・・・・・・。

 

「(さっきの背中のアレは魔法か・・・・・・!?)」

 

何かが背中に当たった気がしたが、思い当たるのはそれしかない。

【固体文字‐ソリッドスクリプト‐】。

おそらく俺の体重を極端に軽くする『LIGHT WEIGHT』とかそんな感じだろう。

跳び上がった俺は今だに着地する事無く、宙に浮いたままだ。

空中で身動きが取れない俺を、ガジルの鉄槍の嵐が襲う。

魔法を禁止してるから舞空術も【翼‐エーラ‐】も使えない。

仕方なしに気合でまた吹き飛ばす。

だが、その直後。

強烈な風が地上から吹き荒れた。

周囲の霧ごと吹き飛ばす強風。

霧が晴れ、風の出所を発見する。

レビィだ。

その前には、魔法で描かれた文字。

【固体文字‐ソリッドスクリプト‐】。

『STORM』。

意味は暴風。

強烈な風が俺を飛ばそうと吹き荒れる。

気合砲をガジルの攻撃で使った為、この風を気合で散らせない。

体重を軽くされているせいで、抵抗も難しく飛ばされそうになる。

 

「う・・・ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおッ‼‼‼」

 

気合いを如何にか捻り出し、俺は暴風に抵抗し宙に留まった。

だが、その宙に留まった瞬間。

 

「鉄竜棍‼」

「ッ!?」

 

SILENTの効果が切れたのか、確かに背後からそう聞こえた。

瞬間、俺は背を強打され、さながら野球ボールの様に打ち飛ばされて洞窟の壁に激突した。

 

「ナイス! ガジル‼」

「ホームランってな!」

 

2人の勝利の叫びが聞こえる。

・・・・・・あー、まったく、見事にしてやられた。

確かに壁に激突した事で、俺は円の外へと出てしまったからな。

 

「レビィ、ガジルペア・・・・・・一次試験、合格だ」

 

崩れた壁の瓦礫を押しのけて、2人に試験クリアを告げた。

 

 

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