「さて、と・・・・・・」
試験発表後、みんな其々適当に分かれて其々過ごし、俺は1人夜風に当たりながら雪が降る空を仰ぐ。
原作通りなら天狼島では、【悪魔の心臓‐グリモアハート‐】とゼレフ、そしてアクノロギアがやって来る。
原作第1部の大きな分かれ目だ。
【悪魔の心臓‐グリモアハート‐】は兎も角、アクノロギアとゼレフだよなぁ、問題は。
あの2人(1人と1匹?)は、原作だとラスボス級だ。
物語の主軸に大きな役割があると思うし、此処で倒しちゃっても良いモノか?
いや、そもそも倒せるかどうかって問題もあるよな。
まぁた、転生者が出てくる可能性が高いし。
「・・・・・・クリスをどうするか、だよなぁ」
俺と同じ転生者のクリス。
アイツを天狼島へと連れて行くか否か。
どんな敵が現れるか分からない以上、連れて行った方が勝率は上がるかもしれん。
同じ【転生者‐イレギュラー‐】だし。
だが、何が起きるか分からないから、念の為待機させておくという考えもある。
もし原作通りなら、俺もみんなと一緒に天狼島で時間を止められるかもしれない。
それから第2部の7年後まで、原作以外の事が起こらないとも限らんし、念の為【転生者‐イレギュラー‐】を残しておきたい。
ま、原作を知ってるエリザとかルーチェに任せるって選択肢もあるが、違うギルドに所属してる以上、コッチに何か起きても間に合わないかも知れないし。
「あー・・・・・・悩むな」
ま、なるようにしかならんか。
◆◆◆
そして、S級魔導士昇格試験当日の早朝。
俺、ギルダーツ、ミラ、エルザは天狼島に来ていた。
皆は後で、ジジイが船で連れてくる。
俺達は先に持ち場に付かなきゃならんから、先行したのだ。
俺達が担当する試験は、最初の一次試験。
島に8つある通路から、試験に参加する8組のチームが、それぞれ1つの通路を通るというモノ。
そして、通路の先はこんな感じになっている。
1:VSギルダーツ
2:3と戦闘
3:2と戦闘
4:VSエルザ
5:VS祐一
6:7と戦闘
7:6と戦闘
8:VSミラジェーン
とこんな風に、1の通路を通ったチームはギルダーツと戦い、2と3の通路を通ったチーム同士が戦い勝ったチームが先に進めたり・・・といった内容だ。
つまり8つある通路の内、4つの通路を俺達現役S級魔導士が立ちふさがるという最難関ルートで、残りは2組がぶつかり、勝った1組のみが通れるという事だ。
理屈の上では最大6組が、一次試験に合格出来る。
ま、ある程度手加減するとはいえそう簡単に倒される魔導士じゃないからS級なんて呼ばれてるから、最悪2組しか一次試験を突破出来ないのだが。
「よし、では持ち場に着くとしよう」
エルザの声に、俺達は移動を開始する。
其々どこの通路に着くのかは、もう事前に決められてるのだ。
「つか、エルザ。お前分かってんのか?」
「何がだ?」
「コレ試験なんだぜ。ちゃんと戦えんのか?」
「そんなことか」
エルザは当然と言わんばかりに堂々としている。
「コレはS級魔導士昇格の試験だからな」
「そーだよな、流石にお前にもそれくらいの常識はあるよな」
「ああ。私達S級を倒せないのなら、S級魔導士とは呼べんからな。全力でぶつかるのみだ!」
「お前やっぱ分かってねぇだろ!?」
コイツのこの脳筋具合はホント如何にかならんだろうか?
「ギルダーツ・・・・・・」
「まぁ、なるようになんだろ」
ま、ギルダーツは大丈夫か。
「ミラ・・・・・・」
「ふふふ、ちゃんと手加減するわよ」
「あ、サタンソウル封印したりすんの?」
「・・・・・・うふふ」
否定して欲しかったんだけど。
エルザとミラのルートを通ったチームは御気の毒だが、今年の試験は諦めた方が良いだろうな。
俺? 勿論ある程度手加減するよ。
そして俺達は其々持ち場へ向かった。
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