リサーナが生きていた!?
・・・・・・うん、感動を打ち壊すようで悪いけど俺は知ってた。
原作知識で。
だが、原作と違うモノが有った。
◆◆◆
当時俺は、原作を改変する一番最初のポイントは此処だと思い、原作の流れを少し変えてみようとミラの仕事に同伴したのだ。
原作だとエルフマンが獣王ザ・ビーストを【接収‐テイクオーバー‐】し、暴走の末ミラとリサーナをぶっ飛ばし、ぶっ飛ばされたリサーナが偶然アニマに吸い込まれてエドラスへ跳ばされたのだ。
だから、暴走したエルフマンを押さえつければ問題無いだろうと思ったのだが、認識が甘かった。
暴走したエルフマンを押さえつけようとしたら、横槍が入ったのだ。
赫い雷を放つ黒い影。
その妨害が入り、俺は足止めを食らい、結局原作通りの展開になってしまった。
とはいえ、あんな赫い雷撃を放つ奴なんて原作にいない。
あの時は転生者が存在するが故のイレギュラーとしか考えなかったが、今にして思えばアレは以前神が言ってた刺客の類なのだろう。
ジャック・ザ・リッパー程のヤバさを感じなかったのは違和感があるが。
どっちかっつーと、懐かしさとか、誰かに似てる感じがするとか・・・・・・
◆◆◆
「謎は深まるばかりだな」
「何言ってんだ?」
「コッチの話だよ」
ギルドホームで、リサーナのおかえりパーティと、パンサーリリーの歓迎会を兼ねた宴会を行っている俺達。
いつものカウンター席で酒を仰ぎ過去の回想をしていると、横に座るギルダーツが俺の独り言に疑問の言葉を投げたが、まぁ別に説明はしない。
しようがないし。
「それにしても、エドラスじゃったか。向こうでのワシはどんなヤツだったんじゃ?」
同じくカウンターで俺の横の席(っつーかテーブル)に座り、酒を仰ぐジジイが興味深そうに聞いて来た。
みんなラクリマにされてた記憶は無く、エドラスという世界に跳ばされたことに気付いてもいなかったが、リサーナやリリーやミストガンの事を説明する為に、事情は話してある。
・・・・・・結構アッサリ信じてくれたことに少しばかり驚いたが。
俺は記憶を掘り返し、思い出してみる。
「確か、国王だったな」
「おお! そうか王様か‼」
「ああ。ギルドを壊滅させ、マグノリアの人間を殺そうとして、世界を我が物にしようとした悪の王様だ」
「ぐもーん・・・・・・」
王様と聞いて機嫌が上がったが、悪党sideだったと聞くやテンション急降下だった。
ま、エドラスの為にやったことだから、完全な救いようのないクズって訳じゃないんだろうが。
「で、俺は?」
落ち込んだジジイを笑って、ギルダーツも興味津々で聞いて来た。
「ナツに聞いた話じゃ、コッチの世界の俺達とは逆の感じな奴なんだろ?」
「そうなんだが、ギルダーツ・・・・・いたか?」
そもそも名前すら上がって無かった気がする。
「コッチのギルドでトップレベルだからな。逆ってーと、向こうじゃ最弱か。俺等が行った時にはもう死んでたんじゃねぇか? 仲間が大勢やられたとか何とかって話を聴いたし」
「死んでんのかよ・・・・・・」
「あ、もしかしたら蛙とか魚なのかもしれねーが」
「ヒデェ!?」
だってコッチじゃ一応上から数えた方が早いくらいには強いエルフマンが弱く、特定の条件じゃないと本領を発揮しないジェットとドロイが最強級だもんな。
コッチで最強のギルダーツなら、最弱で死んでてもおかしくは無い。
「・・・・・・のう、ギルダーツ、祐一」
「ん?」
「あ?」
しんみりした様子で、ジジイは俺とギルダーツの名を呼んだ。
「ミストガンの事は残念じゃったが・・・・・・そのエドラスとやらで元気にしている事を願おう」
「・・・・・・・・」
何だ、そんな事か。
「・・・・・元気さ」
「ん?」
「そうだな」
俺の言葉に同意し、ギルダーツはギルドで騒ぐ皆を眺める。
「このギルドで育ったんだ。元気に決まってる」
そう言うと、ジジイはニッと笑った。
「ギルダーツ、しばらく街にいるのか?」
「うーん、どうすっかなァ・・・・・・」
「ちと、相談があるんじゃがのう」
「ん? 何だよ、改まって・・・・・・」
「ああ・・・・・」
ジジイの相談に付いて、俺は心当たりがあった。
そうか、そろそろあの時期か。
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