「クソ、正面から突っ込んだら見物人を巻き沿いにしちまうな」
「ただ敵を蹴散らすだけなら、そう手間はかからねぇんだがな」
「祐一とガジルだけだぞ、ソレ」
エドラスガジルと別れて、俺達は王都にある広場にやってきた。
正確には広場の外周にある建物の上だが。
そこから、下の広場を見下ろしている。
広場にあるのは巨大ラクリマ。
無論、アースランドの人間だったものだ。
「どうするよ・・・・・・?」
「エドラスガジルが情報を集めてくれてるんだろ? もうちょい待ってみようぜ」
俺達はエドラスに関する知識が少ないからな。
原作でもそう多くは語られてないし。
◆◆◆
「ん?」
しばらくして、広場にいるエドラスガジルの姿が見えた。
そしてエドラスガジルは、広場の南側を指さす。
・・・・・・見た感じ、北側の方が警備が薄そうだが。
「成程な」
「あ?」
「行くぞ」
ガジルは建物から飛び降りて、兵士に見つからない様に広場を移動する。
・・・・・・どうやらガジルはエドラスガジルの意図が分かったらしい。
ま、俺も行けば判るか。
俺とレッドも、ガジルに続き跳び下り、広場を移動する。
◆◆◆
周囲は凄い賑わいだ。
兵士達がラクリマが付けられている杖を翳すと、巨大ラクリマが発光する。
・・・・・・もしかしなくても、結構急がないとヤバ気?
だが、こうも人が多いんじゃ身動きが取れない。
最悪強行突破だが・・・・・・。
――――――パァン‼
「何だ?」
「花火だ!?」
「良いぞもっとやれ‼」
「花火なんて聞いてないぞ!?」
兵士や住民たちの声が聴こえる。
俺達は空を見上げると、そこには花火でNと描かれた光の文字が・・・・・・。
続いてまた花火が上がる。
今度は4連続だ。
また花火で文字が出てくる。
O、R、T、H。
最初のと合わせて『NORTH』。
・・・・・・北?
「見ろ! あそこになんて書いてある!? 広場の北だ‼ 怪しい野郎がラクリマを狙ってるみたいだぜぇ‼」
なんてガジルが大声を上げ、
「なに!?」
「不味いぞ、北側はラクリマの裏だ。固めている兵士が少ない‼」
「3分の1を残して北に向かう! 見物人をもっと後ろに下げろ‼」
「下がってくださーい‼」
「もっと後ろへー‼」
なんて言って、兵士達が分かれて行動する。
此処に居る3分の2が北側へ行き、残り3分の1が此処に残った。
そして見物人たちが後ろへ下がった事でスペースが出来上がる。
あー、こういう事ね。
「よーし、コレで大暴れできるぜ‼ ギヒッ‼」
「もう小難しいこと考える必要なさそうだな」
「考えたシーンあったか?」
俺達は互いに視線を交わした後、同時にラクリマへと駆け出す。
「鉄竜棍‼」
「【戦闘形態‐バトルフォーム‐】‼」
「螺旋丸‼」
残る兵士達をぶっ飛ばす。
この世界では魔法は美味く扱えないが、ミストガンから渡された特殊な丸薬を飲めば、魔法の行使が可能になる。
どういう薬なんだろうな?
「やる事は分かってるな、ガジル!?」
「おうよ‼」
ラクリマにされた皆を元に戻す方法。
それは、
「鉄竜剣‼」
「雷竜方天戟‼」
滅竜魔法をラクリマに叩き込む。
「まだまだぁっ‼」
「もう1発‼」
これもまたどういう原理か知らないが、ドラゴンスレイヤーの特殊な魔力が働いているのだとかなんとか。
滅竜魔法を叩き込んでいると、巨大ラクリマが強く発光しだした。
巨大ラクリマの光が収まっていき、巨大ラクリマが姿を変える。
「な、何ぃ!?」
そのラクリマは、人間に姿を変えた。
人数は2人。
「グレイ‼ エルザ‼」
ガジルとレッドは驚いた声を上げる。
まぁ、あんだけデカいラクリマが2人分とは思わなかったのだろう。
俺は原作知識で知ってたが。
「おい、起きろ‼」
「・・・・・・ぅ・・・・・・・・?」
ガジルの声で、2人は閉じていた目を開き、その身を起こす。
「おう、気が付いたか」
「ガジル?」
「???・・・・・・どうなってる!?」
グレイとエルザは目覚めて早々状況が理解出来ておらず混乱しているようだ。
まぁ、コイツ等にしてみればギルドで適当に過ごしていて、気が付いたら見知らぬ場所で兵士に囲まれてるんだもんな。
戸惑って当然だ。
「話は後だ。とっととこっからずらかるぞ!」
ゆっくり話していられる状況じゃない。
「貴様らぁぁぁああああ‼」
「何という事を!」
「逃がさんぞ‼」
兵士達が襲ってきてるしな。
「! 魔法が使えない!?」
「なに!?」
「その話も後だ」
魔法で迎撃しようとするグレイだが、この世界では魔法を上手く使えない。
俺とレッドとガジルで敵を薙ぎ払う。
「鉄竜の・・・・・・・」
「火竜の・・・・・・・」
「「咆哮ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオッ‼‼」」
俺とガジルの口から吐かれたブレスが、群がる兵士を吹き飛ばす。
「レッド!」
「うん。グレイ、エルザ、こっちだ‼」
戦えない2人を護りながら、レッドが道を開きながら先へ進む。
俺とガジルは追って来る敵を追い払いながら撤収した。
◆◆◆
広場から離れた路地裏。
ここならしばらくの間は兵士にも見つからないだろ。
「何でお前達は魔法が使えた?」
「まずはコイツを飲むんだ」
グレイの疑問に、俺はミストガンから渡された薬瓶を取り出す。
「何だ?」
「何があった? 詳しく聞かせてくれ」
「分かってるよ。けど、あんまゆっくりもしてられねぇんだが・・・・・・」
どう説明したもんかと考えてたら、
「お二人はラクリマにされていたんですよ」
と、後ろから声が飛んできた。
この声は・・・・・・。
「おう、来たか」
「ギヒッ、流石はアースランドの僕さん、見事に助け出しましたね」
「「ガジルが2人!?」」
「そりゃ驚くよな・・・・・・」
グレイとエルザのリアクションに、レッドが「うんうん」と頷く。
うん、気持ちは分かる。
「この世界のガジルと言えば、この僕なわけでして」
「コイツ、結構使えるぜ。この顔は仕事出来る男の顔だろ? ギヒヒヒヒヒ!」
肩まで組んで、ホント意気投合してんな。
けどガジル、その台詞捉えようによってはただの自画自賛だぞ。
「それより、ラクリマにされていたとはどういう事だ!?」
「それよりっておい・・・・・・」
「オメェらの顔は、どうでもいいってこった」
「「・・・・・・・・・・」」
あ、ガジルーズがブルーになった。
2人が落ち込んでいる間に、俺はアースランドでギルドがアニマで吸い込まれた所から今に至るまでを説明する。
「フェアリーテイルの魔導士は、全員ラクリマにされている。俺達の魔力を狙ってな」
「広間のラクリマがそれだと思ったんですが・・・・・・」
「あのデカさでお前達2人とはな・・・・・・」
「本体ってどれだけデカいんだろうな?」
魔力のデカさがそのままラクリマのデカさになってるんなら、相当量だろうな。
ジジイとギルダーツとミラの3人がまだラクリマにされてんだから。
この3人だけでも相当だろ。
そんで他の面子だしな。
「聞きたい事はまだまだあるんだが、さっきの変な物は何なんだ?」
「エクスボールっつって、コッチの世界で魔法が使えるようになる薬だそうだ。後の話は、そいつを飲んでからだな」
「だそうだ、とは?」
「この薬はミストガンから貰ったんでな」
「ミストガンから!?」
作ったのはたぶん、ポーリュシカの婆さんだろうがな。
たしかあの婆さんもエドラス人だったはずだし。
「これからどうするんだ?」
薬を飲んだエルザが早速換装で剣を出した。
やる気満々だな。
「やる事は2つだ。ナツ達と合流と、ラクリマにされたみんなの救出」
「ナツ達は何処に居るんだ?」
「それは僕が答えますよ」
なんて、エドガジルが口を挟む。
うん? 何でお前が?
「何やらアースランドの滅竜魔導士を捕らえたいう話を、王国軍にいる方に聞きましてね」
「ナツとウェンディか!?」
「ま、滅竜魔導士ってんだから、そうなんだろ」
そーいや、コイツ王国軍内部にも情報網があるとか何とか言ってたな。
「ナツ達は王国軍に捕まったって事は・・・いるのは城か」
「後はラクリマにされた皆だけだが・・・・・・」
具体的な場所までは知らんが、大凡の場所は知ってるんだよな、俺。
けどそれって原作知識だし、それをどう説明するか・・・・・・。
「あ」
「あ?」
「見つけたわ、ラクリマ」
「何!?」
俺は空を指さす。
すると、ここから見える空。
その空に漂う浮遊島に、巨大なラクリマの姿が。
「あんなところにあったのか!」
ま、空にある事は知ってたが。
まさかこんな形で目撃するとは。
「そういえば、ラクリマに変えられた皆をどうやって戻すんだ?」
「この世界で滅竜魔法ってのは特別な意味があるらしい」
グレイの疑問にガジルが答えるが、グレイは更に首を傾げた。
「ま、兎に角ラクリマにされた皆を元に戻せるのは、滅竜魔法だけって事だ」
俺の幻想殺しでも元に戻せるかどうか分からねぇんだよな。
魔力の塊みたいになってるって事だから、下手したら触れた瞬間消滅なんて事になるかもしれんし、迂闊には触れない。
「では、二手に分かれるんだな?」
「そうだな。滅竜魔法を使えるのは俺とガジル。俺は1人でも空を飛べるがガジルは飛べないから、レッドがガジルを運んでくれ」
「分かった!」
「では、私とグレイはナツ達の救出に向かおう」
「おし!」
グレイにエクスボールを渡し、俺達は別れて行動する。
さて、面倒な奴と出くわす前にさっさと終わらせるかね。
なーんか嫌な予感がすんだよなぁ。
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