あまり目立つのもどうかと思い、ひっそりと街へ侵入し、路地裏から街の様子を窺う。
・・・・・・今の所王国軍らしき姿は見えんな。
「さて、と。何から始めっかなぁ・・・・・・」
「手っ取り早く聞いてみっか?」
善は急げ、されど急がば回れ。
慎重かつ迅速に聞き込みを始めるとしよう。
別れて聞き込みしようかと思ったが、何処でどうなるか分からんからな。
しばらくは3人で行動する事にする。
だってナツ達と一緒じゃねぇもんよ。
何処でどうなるか全然分からん。
「よお、ちょっと聞きてぇことがあるんだけどよ」
ガジルが近くを通る男性に声をかける。
だが、その男性はガジルを一瞥すると直ぐに目を反らし離れていく。
「おい、待てよ!」
見事なスルーだ。
その男性だけでは無い、近くを通る他の人も、ガジルと目を合わせたら離れていく。
「はーん、中々親切そうな奴が多い所じゃねぇか。このエドラスって所も・・・・・・」
「ガジルの顔が怖くて逃げてるんじゃないか?」
「ま、確かに極悪人面だもんな。顔のいたる所にピアス開けてるし」
「るせーよ‼」
さて、ガジルの顔見て離れるんなら、一旦別れて聞き込みしようと思ったら、ガジルが何かに気付いた。
その視線の先を視ると、見るからに僕達チンピラでーすって感じの3人組がこっちを視ていた。
「ギヒヒ。でも何処にでもいるもんだな、手っ取り早く俺の相手をしてくれそうな兄ちゃん達がよ」
ガジルがそのチンピラ3人に近づいた。
「なぁんか俺達に用かよ?」
「この蠅野郎が!」
「蠅野郎? それは俺の事か?」
「お前以外に誰がいるってんだよぉ!?」
「蠅が嫌なら蛆虫だぜ!」
チンピラが「ギャハハハハ!」と品なく笑う。
あ、ガジルが頭突きを放った。
そのまま3人を殴り倒す。
・・・・・・あんま騒ぎにはすんなよ。
◆◆◆
あのチンピラ達はラクリマにされた仲間の行方は知らないようだ。
王国軍の情報も特に無いらしい。
どうやらこっちの世界のガジルは記者をやっており、王国や国王の批判的な記事ばかり書いている為、町の皆に嫌われているらしい。
さっきガジルが無視されたのはそのせいか。
そのガジルだが、どうにもこの世界の自分とやらに会ってみたいらしい。
まぁ、記者だから何か情報を持ってるかもだし、チンピラの話を聞けばそのガジルが現れる場所の一つが酒場。
どのみち情報収集で立ち寄る場所だ。
酒場は昔っから情報が集まると相場が決まっている。
だから俺達は今、その酒場にやって来たのだ。
「おい、聞いたか? 2日後に例の魔力抽出をやるらしいぜ」
と、早速情報が客の会話から聴こえて来た。
俺達はカウンター席に座り、適当に酒を注文して客の会話に耳を傾ける。
「ああ、よく分かんねーけど、他所の世界の魔力をゴッソリ持ってきたってやつだろ?」
「ホントに大丈夫なのかなー。おかしなことにならなきゃいいけど・・・・・・」
「何だ? お前国王様のやる事にケチ付けるってのかよ?」
「いやいやいや、そんなつもりはないけどよ・・・・・・」
「国王様に任せときゃ大丈夫さ。俺等が心配するような事なんか、何もねぇって」
・・・・・・ふむ。
ちょっと聞いてみるか。
俺達は席を立ち、その客へ近づき、
「その話、もっと詳しく聞かせてくんねぇかな」
「その話、もっと詳しく聞きたいのですが」
ん? 誰かがガジルと同時に聞きやがったぞ。
いったい誰が?と、目を向けると。
「「ギヒ!?」」
全身を黒スーツでビシッと決めた、もう1人のガジルがそこにいた。
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