FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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4話連続更新。


第97話 もう1人のガジル

あまり目立つのもどうかと思い、ひっそりと街へ侵入し、路地裏から街の様子を窺う。

・・・・・・今の所王国軍らしき姿は見えんな。

 

「さて、と。何から始めっかなぁ・・・・・・」

「手っ取り早く聞いてみっか?」

 

善は急げ、されど急がば回れ。

慎重かつ迅速に聞き込みを始めるとしよう。

別れて聞き込みしようかと思ったが、何処でどうなるか分からんからな。

しばらくは3人で行動する事にする。

だってナツ達と一緒じゃねぇもんよ。

何処でどうなるか全然分からん。

 

「よお、ちょっと聞きてぇことがあるんだけどよ」

 

ガジルが近くを通る男性に声をかける。

だが、その男性はガジルを一瞥すると直ぐに目を反らし離れていく。

 

「おい、待てよ!」

 

見事なスルーだ。

その男性だけでは無い、近くを通る他の人も、ガジルと目を合わせたら離れていく。

 

「はーん、中々親切そうな奴が多い所じゃねぇか。このエドラスって所も・・・・・・」

「ガジルの顔が怖くて逃げてるんじゃないか?」

「ま、確かに極悪人面だもんな。顔のいたる所にピアス開けてるし」

「るせーよ‼」

 

さて、ガジルの顔見て離れるんなら、一旦別れて聞き込みしようと思ったら、ガジルが何かに気付いた。

その視線の先を視ると、見るからに僕達チンピラでーすって感じの3人組がこっちを視ていた。

 

「ギヒヒ。でも何処にでもいるもんだな、手っ取り早く俺の相手をしてくれそうな兄ちゃん達がよ」

 

ガジルがそのチンピラ3人に近づいた。

 

「なぁんか俺達に用かよ?」

「この蠅野郎が!」

「蠅野郎? それは俺の事か?」

「お前以外に誰がいるってんだよぉ!?」

「蠅が嫌なら蛆虫だぜ!」

 

チンピラが「ギャハハハハ!」と品なく笑う。

あ、ガジルが頭突きを放った。

そのまま3人を殴り倒す。

・・・・・・あんま騒ぎにはすんなよ。

 

 

◆◆◆

 

 

あのチンピラ達はラクリマにされた仲間の行方は知らないようだ。

王国軍の情報も特に無いらしい。

どうやらこっちの世界のガジルは記者をやっており、王国や国王の批判的な記事ばかり書いている為、町の皆に嫌われているらしい。

さっきガジルが無視されたのはそのせいか。

そのガジルだが、どうにもこの世界の自分とやらに会ってみたいらしい。

まぁ、記者だから何か情報を持ってるかもだし、チンピラの話を聞けばそのガジルが現れる場所の一つが酒場。

どのみち情報収集で立ち寄る場所だ。

酒場は昔っから情報が集まると相場が決まっている。

だから俺達は今、その酒場にやって来たのだ。

 

「おい、聞いたか? 2日後に例の魔力抽出をやるらしいぜ」

 

と、早速情報が客の会話から聴こえて来た。

俺達はカウンター席に座り、適当に酒を注文して客の会話に耳を傾ける。

 

「ああ、よく分かんねーけど、他所の世界の魔力をゴッソリ持ってきたってやつだろ?」

「ホントに大丈夫なのかなー。おかしなことにならなきゃいいけど・・・・・・」

「何だ? お前国王様のやる事にケチ付けるってのかよ?」

「いやいやいや、そんなつもりはないけどよ・・・・・・」

「国王様に任せときゃ大丈夫さ。俺等が心配するような事なんか、何もねぇって」

 

・・・・・・ふむ。

ちょっと聞いてみるか。

俺達は席を立ち、その客へ近づき、

 

「その話、もっと詳しく聞かせてくんねぇかな」

「その話、もっと詳しく聞きたいのですが」

 

ん? 誰かがガジルと同時に聞きやがったぞ。

いったい誰が?と、目を向けると。

 

「「ギヒ!?」」

 

全身を黒スーツでビシッと決めた、もう1人のガジルがそこにいた。

 

 

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