「うーん・・・・・」
「中々、コレ! ってのが無いわね・・・・・・」
「依頼書はいっぱいあるのにね」
次はどのクエストに行こうかと、リクエストボードの前で頭を悩ませているウェンディ、シャルル、クリスの3人。
あの3人も、だいぶ内の仕事に慣れてきたなー。
ま、まだマグノリア内での簡単な仕事しかやらせて貰ってないが。
小さな仕事から経験積んで慣れていくのはアリだと思うが、もうそろそろ遠出の仕事を任せても良いんじゃないだろうか?
「なんて事を思う俺であった・・・・・・」
「誰に向かって言ってんだ?」
「独り言だよ」
相も変わらずいつものカウンター席で酒を仰ぐ。
その横で定位置の様に、テーブルの上でケーキを食ってるレッドがツッコミを入れた。
「みんなの役に立ちたい、か・・・・・・」
「頑張れよ!」
「こういう素直で健気な子を見ると、応援したくなるねぇ」
ギルド内でのウェンディ達の人気は高い。
もう充分このギルドに馴染んだだろう。
可愛いもんな、2人共・・・・・・・。
いかん、ロリに目覚めてしまうかもしれん!
「でも、留守にしてる連中が戻ったら、驚くだろうなぁ。こんな小さな子達がいて」
リーダスがキャンバスに絵を描きながら呟いた。
「だな。ギルダーツとか」
「ギルダーツかぁ・・・・・・」
「相変わらず音沙汰ねぇみてぇだが、あの仕事行って何年になる?」
「3年・・・・だっけか?」
「心配ねぇだろ。俺達なら兎も角、あのギルダーツだからな」
「そーそー、別格だからな」
「・・・・・・・・・・」
ギルダーツ。
このギルドでもトップレベルの実力者で、聖十大魔道にも劣らない最強クラスの魔導士。
存在がバグとか言われてもいい感じなデタラメな強さで、今まで俺も勝てた例がない。
ま、今の様々な能力を完成させてきた俺なら勝てるかもだが。
そうか、あのクエストに出てもう3年か・・・・・・時の流れは早いモンだぜ。
「待て待てぃ!」
「ん?」
物思いに耽っていたら、ジジイが声を上げた。
何だ?
「ウェンディとクリスも、ようやくこのギルドのやり方に慣れてきたばかりじゃ。いきなり遠くにやる訳にはいかん!」
グビッと酒を仰ぐ。
「前も行った事のある者。そうじゃな・・・・・・ハッピー!」
「おいら!?」
まさかの指名だ。
「祐一、レッド! お前達もじゃ」
「俺等もか?」
「ん? 別に良いぞ」
ま、危険は少なそうだし、今回は気楽にやれそうだ。
「それにフリード! お前も手が空い取ったな。付いてってやれ」
「マスターのご指示とあれば」
「えー!?」
「「「何でフリード!?」」」
みんなの驚愕も尤もだ。
まぁ、仲間思いの奴だし、悪くはならないだろうが・・・・・・。
◆◆◆
「それじゃあ、行ってきます!」
「逝ってきます」
「クリス、字が違う」
準備を整えて、俺達は出発する。
その見送りに、ジジイ、ナツ、ルーシィ、グレイ、カナ、リーダス、シャルルが来てくれた。
過保護だなぁ、みんな。
気持ちは分からんでもないが。
「マジ、気を付けな」
「フリード、祐一。ウェンディとクリスの事、ちゃんと守ってあげてよ」
「心配無用だ。任せておけ」
「分かってるさ」
危険はあんま無さそうだから、守る必要は無いかもだが。
「必要以上の手出しはいかんぞ。ウェンディとクリスの勉強にならんからな」
「あいさー・・・・・・」
「おう」
ハッピーのテンションが低いな・・・・・・。
レッドはいつも通りだが。
「そんじゃ、行くか」
「ああ」
「はい」
そして俺達の仕事が始まった。
家を出た時・・・いや、仕事を受注した時から、もう仕事は始まったいるのだ!
◆◆◆
「で、いきなり躓くと」
俺達は駅まで来たのだが、
『オニバス行きの列車は、線路の破損事故の為、運休でーす。繰り返します。オニバス行きは運休でーす』
とのアナウンスが流れる。
「早速試練だな」
「幸先悪いな、どうも」
誰かの運が悪いのだろうか?
「どうする、ウェンディ、クリス?」
「オイラとレッド、飛べるからさ、一気に空飛んで連れってあげよっか!」
「オニバスくらい、2人なら運べるぞ?」
2匹の申し出を、ウェンディとクリスは頭を振って断った。
「今度の仕事は、出来るだけ私とクリスの力だけでやり遂げたいの!」
「だから、オニバスまで歩いて行きます」
ハッピーとレッドが「「ええぇーっ!?」」と驚く。
そりゃそうだ、メッチャ時間かかるからな。
「だ、そうだが、どうする、フリード?」
「そうだよ、フリードも止めてよ!」
「確かに、その通りだな」
「ほら、フリードもこう言ってる」
「俺も歩こう」
「マジか・・・・・・」
どうやらハッピーの味方は居ないようだ。
「この仕事は、ウェンディとクリス、2人の意思を尊重する。マスターに言われた。云わば、それがルールだ。ルールは、守らねばならん」
「ありがとうございます! フリードさん‼」
相変わらず頭固ぇな、フリードは。
「祐一、3人を止めてよー!」
「いや、無理だろ。フリードも変に頑固っつーか、マイペースだから。お前らもそれは良く知ってんだろ?」
「あい・・・・・・」
「そうだったな、そういや・・・・・・」
ヤレヤレ、徒歩で行きますかね。
◆◆◆
そして樹海の入り口までやって来た。
「この距離歩くのー?」
「正確に言えば、ハッピーとレッドは歩くのではなく、飛んでいるの訳だが」
「どっちもあんまり変わんないよ!」
「言葉は正確に使うべきだ。術式を使う俺には、言葉の大切さがよく分かる」
「そんな話今されても・・・・・・」
まぁ、言語が正確じゃないと使えないからな、術式は。
「クリスもウェンディも大丈夫なのか? かなりの距離を歩くけど・・・・・・」
2人はまだ子供。
医学を修めているレッドとしては、2人の体調が気になるようだ。
「ウェンディはドラゴンスレイヤーだからな。見た目よりも体力あると思うぜ? 昔のナツを思い出してみろ、体力有り余ってただろ」
「アレはナツがおかしいと思うぞ」
それは否定せんがな。
「クリスはもっと大丈夫だろ。アルティメット化すれば、身体能力は今のナツやグレイにだって負けねぇよ」
「なら大丈夫だな!」
「体力の基準がナツさんとグレイさんなんですね・・・・・・」
あの2人は元気だからな。
仕事先でも喧嘩するくらいに。
「行きましょう。急がないと、日が暮れちゃいます」
「確かに。急ごう」
けれども走らず、体力をあまり消費しない様に歩を進めて、俺達は森へと入っていく。
◆◆◆
そして歩く事数時間。
「すいません。私達の為に皆さんまで・・・・・・」
「仲間の為だ、気にするな」
謝るウェンディをフリードは諌め、俺も言葉を掛ける。
「そーそー。『旅は恥の掻き捨て』ってな」
「祐一、その言葉は使い方が違う。それは『旅先では知人もいないし長く滞在する訳でも無いから、普段なら恥ずかしいと思うような事をしても平気』という意味だ」
「あり?」
「おそらくお前が言いたいのは『旅は道連れ世は情け』だろう。『旅をするには道連れがあれば心強く、世の中を渡るには互いに情けを掛け合って暮らしていくのが良い』という意味だ」
「そうそれ」
「まったく。お前もいい年なんだから、少しくらい正確に言葉を使え」
「ナツよりは出来てるだろ」
「アレは最底辺だ」
「ヒデェ」
エルザの教え方がアレだったのも原因だと思うがな。
「ねぇ、少し休もうよー・・・・・・」
ハッピーがダレている。
空飛びながらダレるって、器用だな。
「でも、雨が降りそうだから、急ぎましょう。私、空気の流れが読めるんです」
「お姉ちゃんは天空の滅竜魔導士ですからね」
「まさかー、こんなにお天気なのにー?」
ハッピーが信じられない風に言うが、雲が一気に陰って来た。
あー、こりゃ確かに降るな。
つか、降って来た。
「何だこの天気ー!?」
「早く雨宿りしないと!」
「祐一、何とかしてくれー!」
「無茶言うな」
どの道此処の雲を吹き飛ばしても、その周囲に散るだけで向かう先に雨は降りっぱなしだろうしな。
行く先々で雲をふっ飛ばすのは流石に面倒だ。
術式ならやれない事は無いんだろうが、書くのに時間かかるうえに、その場から動けなくなるしな。
素直に雨宿りできるところを探そう。
「白眼!」
周囲を透視、遠見して雨宿りできそうな場所を探す。
「あそこだ」
ここから先に行った所に、洞穴がある。
俺が先導し、みんなを導く。
「ふー、ちょっと濡れちゃったね」
「直ぐ洞穴が見つかってよかったな」
ハッピーとレッドは毛をフルフルさせて水を弾く。
とはいえ、結構濡れたがな。
「ほらよ」
「あ、ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
俺は【換装】の空間から人数分のタオルを取り出し、ウェンディとクリスに渡す。
「・・・・・・あれ、フリードは?」
アイツにもタオルを渡そうとしたが、その姿は見えない。
いったい何処へ?
「教えてくれ、ラクサス! もしお前がこの場に居たら、いったいどうする!? 答えてくれ、ラクサァァァァァァァァス‼‼」
雨の中、何か叫んでいた。
・・・・・・何やってんだアイツ?
「おいフリード、何遊んでんだー!?」
「む?」
ようやくこっちに気付き、フリードも洞穴に入って来た。
「よかった。やはり、手を貸さなくて正解だった」
「? 何ブツブツ言ってるの?」
「フッ。分からなくていい事だ」
「・・・・・・フリードの頭の中ってどうなってるんだろう?」
たぶんラクサス一色じゃね?
昔っからラクサスの信者っつーか、ラクサスのパシリだからな。
◆◆◆
「雨が上がってよかったねー」
「でも、暗くなるわ」
「綺麗な夕焼けだもんな」
既に日も落ちかけている。
今日中にオニバスに付くのは難しいだろうな。
「今夜は野宿するしかないみたい」
「寝る場所はさっきの洞穴でいいとして、問題は食料だな」
フリードが俺達から距離を取る。
「食べ物集め位手伝ってよ。でないと、オイラ達お腹減って倒れちゃう」
「案ずるな。俺も、己のなすべき事、なさざるべきことは弁えている男だ」
「一々言い回し固すぎ」
「俺に食料の心当たりがある。既に準備も終えている」
「本当ですか!?」
「流石雷神衆! いざという時は頼りになるね‼」
「そこに痺れる憧れるぅッ‼」
「うん!」
フリードは愛剣である細剣を抜刀し、地面に文字を刻む。
「この術式の中に入った・・・・・・羽魚は落下する!」
ドサドサドサと、雨の様に羽魚が空から落ちて来た。
「何で羽魚!?」
「この辺りは、羽魚の回遊ルートだ。今は卵を産むため、羽魚の群れが上ってくる季節なんだ」
「羽魚か・・・・・・」
幻の珍味、羽魚。
一匹当たり3万ジュエル程の賞金が掛けられることある食材だ。
ハッピーは「アレ滅茶苦茶美味しんだ!」と言っていたが、食べてみたら不味くて吐き出したんだよな。
「コレ、食べられんですか?」
「滅茶苦茶不味いんだよ・・・・・・」
「え?」
「オイラ達、前に酷い目に遭ったんだから」
「食べたのハッピーだけだけどな」
俺等は食ってねぇし。
「と、思うのが、素人の浅はかさ。大方、焼き魚にでもしたのだろう。羽魚の料理には、コツがあるんだ」
フリードは魔法で羽魚を浮かべると、剣で一閃。
羽魚をバラバラに下ろす。
「フリードさんって、お料理がお得意なんですか?」
「それ程でもないが、ラクサスや雷神衆と行動する時など、偶にな」
そしてフリードの料理が完成する。
羽魚の唐揚げ、羽魚の餡かけ、羽魚のムニエル、羽魚の天ぷら、羽魚の刺身etc...。
色々な魚料理が皿に盛りつけられた。
つか、このテーブルとか皿とか椅子とかどっから出した?
「「「「美味しそう‼」」」」
「確かに美味そうだ」
「味も見た目に負けないぞ。さぁ、遠慮せずに食べてくれ」
「「「「「いただきまーす‼」」」」」
俺達は羽魚をいただく。
・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・まぁ、食べられなくはないんだが」
「やっぱり調理法の問題じゃ無かった・・・・・・」
「確かアッチに木の実があったから、それを食べましょう・・・・・・」
「・・・・・・うん」
「オレも・・・・・・」
「あい・・・・・・」
ウェンディとクリス、ハッピーとレッドは木の実を探しに森へ戻る。
・・・・・・ま、俺はこの羽魚を処理するかね。
勿体無いし、食えなくはないし。
「好き嫌いは感心しないな。魔導士は体が資本だと言うのに・・・・・・」
「お前、よく平気そうに食えんな。ま、確かに食えなくはないレベルだけどよ」
「ん? 何を言っている、美味いだろう」
「マジでか?」
「マジでだ」
フリードの調理法に問題があったとも思ったが、違うな。
多分味覚の問題だ。
ナイフとフォークで器用に羽魚を食すフリードを見て、俺はもう一度箸で羽魚を摘み、食う。
・・・・・・うん、不味いわコレ。
◆◆◆
そして夜が明けて。
「山道の次は砂漠かぁ・・・・・・」
「・・・・・・祐一さんとフリードさんは、暑さに強いんですねぇ」
「こっそり魔法で涼しくしてるんじゃないの?」
「仲間を差し置いて、自分だけ楽をしようとは思わん。単に鍛え方の問題だ」
「俺はナツの滅竜魔法を会得してからだな、熱に強くなったの」
「・・・・・・祐一って結構ズルいよね」
「俺に言われてもな」
【完成‐ジ・エンド‐】の効果だし。
「・・・・・・もうダメぇ」
「ハッピー!?」
「オレも熱い・・・・・・」
「レッド!?」
猫だからか?
家とか暑そうだもんな。
「待ってて、私が元気にしてあげる!」
ウェンディが治癒魔法で2匹を治癒する。
「・・・・・あの、フリードさんは何で泣いてるんですか?」
「あ?」
クリスの呟きに、俺はフリードに目をやる。
・・・・・・ホントだ、泣いてた。
「何で泣いてんのお前?」
「いや。天使の心優しさに感動していたのだ」
「何言ってんのお前?」
とうとう暑さにやられたか。
「君が魔力を使う事は無い。俺がなんとかしてみよう」
「どうするんですか?」
ウェンディの問いかけに、フリードは不敵に微笑んだ。
「まずこうして寝かせる」
ハッピーとレッドを、平らな岩の上に寝かせた。
「続いて呪文を描く」
そして砂漠に術式を書き込む。
「この術式の中にいるモノは、暑さを感じない」
―――――ジュ~~~~
「おい、何か香ばしい匂いがすんぞ」
「岩が熱くて焦げちゃうよ~・・・・・・」
岩が赤く熱していた。
「術式を設定するには時間が掛かるんだ」
「ていうか、術式から出たら意味ないんじゃ・・・・・」
「あい・・・・・・」
「しょうがねぇな」
「どうするんですか?」
「こうするんだよ!」
俺はアイツの魔法を使う事にした。
「アイスメイク!」
グレイの氷の造形魔法。
それで掌大の氷塊を作り上げる。
「これでも使ってな」
熱さましに氷を額に乗せる。
「あー、気持ちいい・・・・・・」
けど、直ぐに溶ける。
「なら、アイス・・・ゲイザー‼」
デカい氷柱を砂漠より出現させる。
この氷の近くに居れば、かなり涼しいだろう。
まぁ、直ぐに溶けだすから、少し涼む程度の効果しかないが。
これ以上はどうも出来ん。
◆◆◆
「はぁ~~」
「もう一息だ。我慢する事だな」
「あ!?」
「ん?」
ウェンディが何かを察知した。
「嵐が来る!」
「嵐って、砂嵐!?」
「この地方特有の、呪いの砂嵐だ」
「ええぇーっ!?」
「何処かに隠れてやりすごすか!?」
「この砂漠に隠れる場所なんて無いだろうな」
砂しかねぇもん。
「逃げるんだ!」
「逃げるの!? 祐一の魔法でバーッと吹き飛ばせないの!?」
「俺がそれやったら、新しい砂嵐が起きそうだな」
「ええぇーっ!?」
俺1人ならどうとでもなるけどなー。
神威で飛ばすか?
いや、でも何か呪いの砂嵐って言ってたし、そんなもんを神威空間に入れたくないしなー。
取りあえず逃げようか。
◆◆◆
俺等が逃げる先に、見知った面子が居た。
「ルーシィさーん‼ あれ、シャルルも!?」
「つか、何でお前等こんな所に居んだ?」
「心配で付いてきちゃったの。そっちはみんな無事みたいね」
「エルザ、どうしたのさ!?」
何かエルザがアリジゴク的な場所で沈んでた。
「それがね・・・・・・」
「のんびりしている暇は無いぞ。此処はもう直ぐ、砂嵐に呑み込まれる」
「ええぇーっ!?」
――――――グゥォオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼‼
砂嵐が雄叫びを上げ乍ら迫って来た。
「私に構わず、お前達は行け!」
「何言ってんのよ!?」
「つか、んなとこさっさと出ろよ。何で出れねぇんだ?」
黒羽の鎧なり飛翔の鎧にでも換装すれば直ぐに出られるだろうし、エルザなら通常状態でも脱出は容易いはずだが?
「・・・・・・・・」
「エルザさん、もしかして何か重いモノを身に付けているとか?」
「・・・・・・芝居の道具をずっと握ってる」
「ええぇーっ!?」
「そりゃ重いでしょう!?」
「しかし、コレが無ければ舞台が出来ん!」
「今回の仕事は舞台の助っ人じゃないから‼」
「・・・・・・・・・すまない、私の思い出」
あ、ガチ泣きしてる。
荷物を捨てるようだ。
そしてエルザがアリジゴクから飛び出した。
「ああ、私の心の拠り所が・・・・・・・」
「後で掘りだしゃ良いじゃない‼」
――――――グゥォオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼‼
砂嵐が、もう目の前にまで来ている。
「もう逃げる暇は無いわね」
「アレに呑まれたら、二度と出る事は不可能だ!」
「私が何とかしてみます!」
「あ、ウェンディ!?」
「お姉ちゃん!?」
ウェンディは砂嵐に向かった。
「天竜の咆哮ォォォオオオオオオオッ‼」
ウェンディの咆哮が砂嵐と激突する。
すると砂嵐の雄叫びが止み、砂嵐は何か満足そうにハートを撒き散らせながら消し飛んだ。
何でハートが飛んだんだ、今?
「呪いの砂嵐が・・・・・・消えた!?」
「やったー!」
「ウェンディ凄い‼」
「今回出番なしだな、俺」
え、別に拗ねてなんていませんが?
◆◆◆
「どーもありがとうございます!」
そしてようやくオニバスまで辿り着いたのだが。
「何で元気なの?」
劇場では長蛇の列が並んでいた。
座長も特に問題無さ気だが?
「役者たちと仲直りをして、舞台が出来るようになったんです。お客も大入り、ありがとうございます!」
「そんな・・・何の為に苦労して辿り着いたのよぉ・・・・・・!?」
「折角苦労して掘り出したというのに‼」
「オイラ、ダメェ~・・・・・・」
「オレも疲れた・・・・・・」
「う・・・羽魚を食べ過ぎたせいで、今になって気分が悪くなってきた。あ、いかん、立ってられない・・・・・・」
「・・・・・・みーんな、灰になっちまったな」
無事なのは俺とウェンディとクリスとシャルルだけか。
ま、俺も結構疲れたが。色んな意味で。
「おぉーいっ‼」
「あ?」
何か聞き覚えのある声が。
「ナツさん!?」
「やっと線路が直って・・・辿り着いたんだ・・・でも・・・ずっとオニバスとマグノリアを行ったり来たりして・・・・・・もう、ダメ・・・・・・だ・・・・・・・・」
「何しに来たんだよお前・・・・・・」
来て早々ぶっ倒れたぞ。
「チッ」
なんか盛大な舌打ちが聴こえた。
座長だった。
「態度変わった!?」
「こんな場所で寝られたら営業妨害だ! 君達‼」
「「はい!?」」
指差されるウェンディとクリス。
「コイツ等を全部片付けてくれ! 大仕事だが、報酬はちゃんと払う」
「ええぇーっ!?」
「・・・・・・・・・・はぁ」
コレがこの2人の最初の大仕事か。
なんだかねぇ・・・・・・。
「はぁ・・・・・・コレが初めての大仕事だなんて」
「普段のギルドとあんま変わんねぇ・・・つか、こんな所にまで足運んでまでする仕事じゃねぇな」
ま、報酬出すってんならやるけど。
「いいんじゃない? 皆あなた達の心配をしてたけど、寧ろあなた達がみんなの役に立ってるわ。コレも立派な仕事よ、胸を張っても良いと思うわ」
「そうかなぁ・・・・・・」
「仕事した気になれません・・・・・・」
「ええ、私はそう思う」
「・・・・・・うん。そうね」
「・・・・・・いや、まぁ、何か良い感じに話が纏まってるとこ悪いんだけどよ」
俺は倒れてる馬鹿どもを眺めつつ、
「コレ、もしかして俺等が連れて帰んなきゃなんねーのか?」
「・・・・・・あんまり考えたくないけど、そうなんでしょうね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ」」」」
俺達の吐き出す溜め息は重かった。
.