FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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第90話 フェアリーテイルの魔導士

 

 

『コイツを俺ごとぶっ壊せ‼』

「そんなことしたら、ナツはどうなっちゃうんだよぉー!?」

『四の五の言ってんじゃねぇ! 俺のせいでマグノリアがボロボロになっちまったら、寝覚めが悪ぃだろーがっ‼』

「ま、確かにな」

 

マグノリアに侵入し、暴れまわる度街の建物を壊していくドラゴノイド。

このまま放っておけばマグノリアは壊滅するし、そんな事になれば軍や評議院も動いて大規模な戦闘が起きる。

ナツごとドラゴノイドを破壊するなんて、当然のようにやるだろう。

 

「だからその前に俺達が――――」

「うん。その前に私達でナツを・・・・・・」

「―――俺達がナツごとドラゴノイドを破壊しないとな!」

「「あれ!?」」

 

何かルーシィとハッピーが意外そうな声を上げた。

 

「どうした?」

「いやどうしたじゃないでしょ!?」

「オイラ達までナツごと倒しちゃってどうすんのさ!?」

「ま、尊い犠牲だよな」

「酷すぎだよぉーっ!?」

「あのなぁ、フェアリーテイルが仕出かしたことで街が破壊なんて事になったらまた評議院に目を付けられるだろ? そうなったら責任取らされるだろ? そうなったら罰則としてまた俺が何か仕事を押し付けられるだろ? 嫌じゃん? じゃあもう俺の平穏の為に倒されるべきだと思わねぇ?」

「自分の保身の為にナツを犠牲にする気だぁーっ!?」

 

誰だって自分の身が一番可愛いモンだろ?

 

「つか、手段は問わずアイツを止めるのはマスター命令だぜ?」

「そりゃそうだけど・・・・・・」

「ま、そう心配そうな顔すんなよ」

 

転生者2人もいるし、どうにかなるだろ。

 

「グレイ!」

 

エルザの声に目を向ける。

視るとギルドホームの天辺の辺りに、グレイが立っていた。

ジジイへの説明は終わった様だ。

 

「ったく俺も読みが甘かったぜ。手短に真相を話す、信じるも信じないもお前達の自由だ」

 

そしてグレイが何で裏切り行為を働いたのか、説明する。

人工的にドラゴンを造っているやつの噂を聞き、接触。

接触するうちに、ナツをドラゴノイドの動力源にすると知った。

接触を続けて、ドラゴノイドは内部から滅竜魔法の力を与えないと破壊できないと知り、ナツをドラゴノイドの内部へ放り込んだのだ。

ナツを渡さなければ、そもそもドラゴノイドは動かなかったのだろうが、理由はそれだけではない。

ドラゴノイドが破壊されないと、オトナシの町で消えた町の住民を元に戻せない。

そしてナツは昔、ギルドの魔導士として、街の皆を助けると約束した。

・・・・・・思いっきり忘れていたようだが。

ナツなら直ぐに破壊出来ると思ったようだが、事は上手くいかなかった。

ナツを放り込めばすぐに終わると思った、いうことらしい。

 

「わ、忘れてたぁ? そんな大事な約束を!?」

「まったく、相変わらずにも程がある・・・・・・!」

 

ルーシィとエルザが唖然とした顔をする。

みんな同じ気持ちだ。

まぁ、昔の事だから仕方が無かったのかもだが、ギルドの仕事として引き受けたのなら、ギルドの魔導士としての本分を忘れちゃいかんだろ。

 

「こうするよりほかに方法が無かった。だが、今はあのデカブツを何とかするのが先だ!」

「何とかするったって・・・・・・」

「あ! 誰か倒れてますよ!?」

 

シャルルのボヤキを、ウェンデイの声が遮った。

視ると、確かに誰か倒れてた。

 

「アレはケーキ屋の!?」

「逃げ遅れたんだ!」

「カバーしろ!」

「助けに行くぞ!」

 

怪我人を助けに行くギルドのみんな。

救出はアイツ等に任せよう。

 

『ハイハイハイ、リザードマンVersion3.1放出‼』

 

新たに召喚されたリザードマンの群れが再び街に放たれる。

 

「メンドクセェ!」

 

俺は多重影分身で分身体を作り、リザードマンに対処する。

街の中で須佐能乎とか尾獣化になる訳にもいかず。こっちも数で対抗するしかない。

リザードマンは分身に任せよう。

 

「俺は本体を!」

 

舞空術で空を舞い、上空から仕掛ける。

 

「火竜の咆哮ッ‼」

 

焔のブレスが直撃する。

ドラゴノイドの皮膚に焼き焦げた跡があるが、効いているのかどうかよく判らない。

生物じゃないっぽいもんな、コイツ。

 

「天輪!【繚乱の剣‐ブルーメンブラット‐】‼」

「お?」

 

ドラゴノイドの背に剣の雨が降り注ぐ。

エルザも来たか。

だが、あまり効いていないように見える。

 

「ドラゴンを模しているだけあって中々頑丈だな」

「ああ。だが、必ず何処かに弱点があるはずだ!」

 

言って、エルザは再びドラゴノイドの身体に無数の剣の雨を降らせる。

 

「弱点ねぇ・・・・・・」

 

あの胸のコアっぽいヤツじゃね?

 

『ちくしょぉぉぉおおおおお‼ 俺を壊せ‼ あ、いや、全部ぶっ壊してやんぞ‼ じゃなくって、のおおおあああああああああああああッ!?』

 

ドラゴノイドの咆哮が・・・てか、ナツの声が聴こえてくるが、何か様子がおかしい。

 

『壊せ! じゃなくて、壊してぇぇぇぇええええ‼ も、もう訳判んねぇぇぇえええ!?』

 

いや、訳判んねぇのはコッチなんだが?

 

『ほらー、エルザ怒ってんじゃんよ』

『知った事かよ! アイツも潰しちまえってーの‼』

『何言ってんだよ、仲間だろー?』

『関係ねーよ、ぶっ壊せってんだよ!』

『うるせぇっての! 人の頭の上で揉めてんじゃねぇぇぇぇぇええ‼』

 

なんでナツは1人で3人いるみたく喋ってんだ?

1人3役とか、どんだけ暇なんだ。

 

「アレか、もう頭が危ない感じなのか?」

 

それとも今頃になってニルヴァーナの影響が?

 

「聞こえるかぁ! ナツ‼」

『『『グレイ!?』』』

「手も足も出ねぇのか!? 情けねぇ、この口先だけのツリ目野郎が‼ デカい図体に溶け込んで、いつまで1人漫才やってやがる‼」

『んだとコラァッ!?』

「テメェが交わした約束を忘れやがって! それでもフェアリーテイルの魔導士か!? そんなドラゴン擬きとっとと打ち壊せ‼」

 

・・・・・・・・・

 

「あー、ハイハイ、そんな感じね」

 

何か急にグレイがナツを挑発しだしたが、その意図が分かった。

 

『壊せりゃとっくにやってんだよ!』

『あんなタレ目野郎ぶっ潰してやんよ‼』

「オイラ、ナツを見損なったよ!」

『何ぃっ!?』

「だってそうじゃないか! 今までどんなピンチだって必ずぶち破って来たじゃないか! 俺ごと壊せなんて聞きたくないよ‼」

「そうよ! みんなが、フェアリーテイルのみんながアンタを必要としてる! だから必死に頑張ってるのに! 仲間の想いに応えないナツなんて、ナツじゃないよ‼」

『な、ぐ、ぐぐ、ルーシィ、テメェ・・・・・・‼』

『ひっでぇなぁ!』

『踏み潰すぞコラァッ‼』

「皆の言う通りだ! 手も無く囚われたまま、お前は簡単に諦めた!」

『俺がいつ諦めた!? いや、諦めろ‼ じゃねぇっつーの!?』

「俺ごと壊せといったな? それが諦めだと言っている。そしてそれは、弱音以外の何物でもない! ならば望み通り、その巨体ごと葬り去ってくれる‼」

『やってみろやゴラァァァアアアアアアアアアアッ‼』

 

怒りに燃えたナツの魔力が高まり、ドラゴノイドの口から強大な炎のブレスが天へ吐き出された。

 

『おお!? スッゲェェェエエエ・・・・・・!』

 

何か自分の力に感動してるし。

 

「自らの命を小さく見るモノは、フェアリーテイルには必要ない!」

『んだとコラ!?』

「そんな中途半端なモノに、気高き竜は会いたいとは思わんぞ! 会って懐に飛び込んだ所で、殴り返されるのがオチだ‼」

『ふざけんな――――』

『『このパワーならエルザに勝てんじゃねーか!?』』

『――――はっ!? おもしれぇぇぇぇ、掛かって来いやエルザァァァアア‼ 今日こそお前に勝ぁぁぁあああつ‼』

 

ホント単純な奴だ。

脳ミソまで筋肉まで出来てるに違いない。

今のは限りなく本音だろうし。

取りあえず怒らせてナツの魔力を爆発させて内側から壊そうぜ作戦。

コレでうまくいくと思うが・・・・・・。

 

『オラオラ、ビビったかエルザ!?』

「貴様という奴はぁぁぁぁぁあああああ‼」

 

エルザが煉獄の鎧(マジモード)に換装して、本気で斬りかかった。

 

『『『うぉぉおおおおお!? やっぱエルザ怖ぇぇぇぇえええええええ‼‼‼』』』

 

煉獄の鎧に換装する辺りマジすぎるしな。

 

「もうちょいだな」

 

いい感じに暴走しているが、まだ足りない。

俺も参加するか。

 

「おい、ナツー」

『んだよ祐一、お前もやんのかコラァッ‼』

「あ? あー・・・・別にやっても良いけど無駄じゃねぇか?」

『ぁああ!?』

「いや、だって――――――お前が俺に勝てる訳無いじゃん?」

『んだとゴラァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼‼‼‼』

 

ナツの魔力が高まっていく。

 

『ふざけんじゃねぇぞゴラァァアアアアアアアアアアアアアアア‼』

 

ドラゴノイドの身体のいたる所から炎が噴出する。

 

『どいつもこいつも好き勝手吠えてんじゃねぇえぞぉぉぉおおおおおおおお‼』

 

感情の焔。

それがドラゴノイドの身体を内側から焼いている。

もう少しだ。

 

「手間ぁ掛けてんじゃねぇ‼」

 

今度はガジルが飛び出してきた。

 

「滅竜奥儀!【業魔・鉄螺旋】‼」

 

足をドリル化して回転し、ドラゴノイドの胸にあるコアらしきモノに特攻。

コアを砕き、中から炎が溢れて外へと飛び出した。

ガジルが上手くナツを救出した様だ。

 

「ルーシィ! あの馬野郎を呼べ! ありったけの火を矢に集めて、此処にぶち込め‼」

「ナイス、ガジル! 後は任せて‼」

 

ま、ナツが引き受けた仕事だし、ナツにケジメを付けさせるべきか。

 

「みんな聴こえた!? 炎を使える人は、力を貸して‼」

「よし来た!」

「ウィ!」

「ナツに火を届ければいいのね?」

「いくよ、アル!」

「うん!」

「俺もやれるぜ!」

「食いきれんほど、その腹に放り込んでやる!」

 

フェアリーテイルで何かしらの焔を扱えるのは、ルーシィのサジタリウス、カナの魔法札、リーダスの絵画魔法、レビィの文字魔法、アルザックとビスカの魔法銃、マカオの紫炎、エルザの魔法剣か。

 

「俺もやるか‼」

 

『ちょぉおおおお!? タンマタンマ、これ以上は魔力を吸収できないって!?』

 

ダフネのそんな悲鳴が聞こえる。

うん、それ聞いて待つ人はいないね!

 

「今よ、放って!」

「乾坤一擲! もしもーし‼」

「【立体文字‐ソリッドスクリプト‐】‼ ヒートスペル‼」

「換装‼」

「【銃弾魔法‐ガンズマジック‐】‼」

「ウィィイイイ‼」

「爆炎‼」

「ナツぅうう! 借りを返すぜぇぇぇええええええ‼」

「ハァァアアアアアアアア‼」

 

皆が放った焔を消さない様に、攻撃の範囲を絞って1つに纏める。

 

「【七色の炎‐レインボーファイア‐】‼」

 

元はファントムの幹部が使っていた魔法。

そいつと戦ったナツの話しと、七色の炎の1つである【紫炎‐パープルフレア‐】を解析して再現して完成させた魔法だ。

皆の炎が一つになって、ドラゴノイドの胸部に・・・ナツに直撃する。

ナツはソレを吸収し、

 

「食ったら力が沸いて来た‼」

 

完全復活した。

 

「燃えてきたぞぉぉぉおおおおおおおおおおおお‼」

 

怒り。

それこそナツの力の最大の源。

自らを解放し、困難に立ち向かい、それを打ち破る原動力。

それには、ナツを怒らせるのが一番。

作戦は無事に完了だ。

後は全部ナツに任せよう。

元々はアイツのせいだし。

 

「イグニールに謝りやがれ! ドラゴン擬きがッ‼‼」

 

ナツの火竜の鉄拳がドラゴノイドを打ち、粉砕した。

 

 

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