「グレイが言ってた宿屋って、この辺の筈だけど・・・・・・」
グレイがナツに語った情報の西の荒野はこの辺だ。
だが、辺りには建物らしい物など何処にも無い。
「気を付けろ、ルーシィ」
「え?」
「獣の臭いだ・・・・・・」
「街でエルザを襲ったヤツと同じ臭いだな」
視線を向けた先の地面に、魔法陣が展開される。
その魔法陣から、1つの影が出て来た。
「な、何よコイツ!?」
「襲撃者だ」
そいつは街で出くわした襲撃者と同じく、フード付きのマントを被って全身が見えない謎の人物だった。
「やはり現れたか!」
フードを深くかぶっているせいか、その顔は見えない。
ただ、怪しく赤い眼が光っっている。
「ルーシィ、離れていろ」
エルザは【天輪の鎧】へと【換装】する。
「手ぇ貸そうか?」
「いや、相手は1人、私だけで充分だ」
「気を付けて!」
相手はやはりエルザと同じ魔法【換装】を使い、剣を2本取り出す。
そしてエルザとよく似たモーションで、攻撃を仕掛けてくる。
エルザと同じような剣に、同じ魔法、同じ2刀流、同じ太刀筋。
鏡合わせの様にぶつかり、鍔競り合いになる。
「目的は何だ!? ナツ達も、お前が襲ったのか!? 答えろ‼」
エルザの剣閃が、襲撃者のマントを切り裂いた。
後へと退いた襲撃者の姿が露わになる。
「!?」
「コイツぁ・・・・・・」
ドラゴン?
いや、人型の竜。
竜人・・・・リザードマンという魔物に似ているが、何処か雰囲気が違う。
「天然モノじゃないっぽいな、アイツ」
「どういうこと?」
「人工生命っぽいってことだ」
竜人が再びエルザに襲い掛かり、応戦する。
両者の剣戟はほぼ互角。
「エルザ!」
ルーシィが援護しようと星霊を召喚する。
「開け! 獅子宮の扉‼ レオ‼」
「ひさしぶり、ルーシィ」
だが、レオを召喚した瞬間、新たに魔法陣から竜人が召喚された。
「ん?」
更にもう一体、竜人が現れる。
俺とルーシィ、其々を相手にするようだ。
「そっちは任せたぞ!」
「うん‼」
俺は竜人に仕掛ける。
「螺旋丸‼」
掌から螺旋丸を竜人に放つが、相手も俺と同じ螺旋丸を繰り出してくる。
2つの螺旋丸がぶつかり合い、弾け、俺と竜人は大きく後退した。
「なら、今度はコレだ。火竜の咆哮ッ‼」
息を大きく吸って、炎のブレスを吐き出す。
すると、相手の竜人の足下に魔法陣が出現し、竜人は魔法陣に吸い込まれて消えた。
そして入れ替わる様に、別の竜人が現れる。
見た目が何処となくナツっぽい。
別固体か?
そのナツ似の竜人は、大きく息を吸い込んで、ブレスを吐き出した。
俺のブレスとぶつかり合い、炎が膨れ上がって爆散、相殺される。
「ああ、そういうこと」
俺達の真似をしている、というよりは、同系統の能力を持つ竜人を召喚しているようだ。
エルザの鎧や、ルーシィの星霊の能力まで用意している所を見るに、フェアリーテイルの情報は収集されていると考えていい。
だが、それにしては妙だ。
此方の情報を持っているのなら、同じ能力をぶつけるよりも、弱点となる能力をぶつけてくるべきだろう。
誰にだって苦手なモノはある。
此方の能力が割れているのなら、通じる通じないは別にして、取りあえず苦手とするモノを送り込んだ方が良いに決まってる。
俺達を倒す事が目的じゃないのか?
「・・・・・ま、いいか」
兎に角、倒す事が先決か。
俺は再び螺旋丸で竜人に攻撃を仕掛ける。
竜人が再び魔法陣で入れ替わろうとするが、
「【流星‐ミーティア‐】‼」
急加速し、超速で竜人との距離を詰める。
「螺旋丸‼」
竜人が入れ替わる前に、攻撃を当てる。
竜人は螺旋丸に吹っ飛ばされて、粉々に消し飛んだ。
俺の【完成‐ジ・エンド‐】までは真似することが出来なかったみたいだな。
いやまぁ、あの能力を簡単に真似されても困るが。
「ま、偽物は偽物だな」
視ると、エルザとルーシィも各々の方法で敵を倒せたようだ。
「「「!?」」」
取りあえず、辺りの様子を写輪眼と白眼で調べようかとした所で、地面が揺れです。
すると、俺達の目の前に、巨大なナニかが姿を現した。
透明化していたのか、景色が揺らぎ、その姿が露わになる。
――――――それは、巨大な竜だった。
『ハイハイハイハーイ! 隠匿魔法解除! ラクリマ・コア起動準備! 各関節、アンロック! 神経伝達ラクリマ、感度良好!サラマンダー以外の不純物、とっとと出てけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼』
その竜の頭から、スピーカーでも使っていると思われる音声が発せられた。
誰の声だよ?
『ドラゴノイド! 起動ッ‼』
目が怪しく輝き出す巨大ドラゴン。
「ドラゴノイド?」
―――――グォォオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ‼‼‼
「うるさっ!?」
『見て見てぇ、これ私が開発した人工ドラゴン、その名もドラゴノイド‼ サラマンダーの魔力を得て、今此処に堂々とお披露目って訳‼』
「ナツの魔力で・・・・・・!?」
「何だアイツ、捕まったのか?」
何て間抜けな。
「ルーシィさーん‼ エルザさーん‼ 祐一さーん‼」
聞き覚えのある声が耳に届く。
視ると、ウェンデイとハッピーとシャルルが走って来た。
「お前達!」
「無事だったのね!」
再会を喜ぶのも束の間、ハッピーが「大変だよ‼」と状況を説明してくれる。
「ナツが捕まっちゃってるんだよ! グレイがダフネって奴と手を組んで、ナツを罠にかけたんだ‼」
「「グレイが!?」」
「・・・・・・・・」
「操られている訳じゃ無くて、自分の意思だって。私達もよく分からないんです・・・・・」
最近様子がおかしかったことに関係してるんだろうか?
「本人に聞くしかないだろうな」
「え?」
「あそこ」
俺が顎で指し示す方向に、皆は視線を向ける。
ドラゴノイドの鼻の上。
そこに、冷気を纏わせているグレイの姿が在った。
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