FANTASY☆ADVENTURE   作:神爪 勇人

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第87話 人工ドラゴン

「グレイが言ってた宿屋って、この辺の筈だけど・・・・・・」

 

グレイがナツに語った情報の西の荒野はこの辺だ。

だが、辺りには建物らしい物など何処にも無い。

 

「気を付けろ、ルーシィ」

「え?」

「獣の臭いだ・・・・・・」

「街でエルザを襲ったヤツと同じ臭いだな」

 

視線を向けた先の地面に、魔法陣が展開される。

その魔法陣から、1つの影が出て来た。

 

「な、何よコイツ!?」

「襲撃者だ」

 

そいつは街で出くわした襲撃者と同じく、フード付きのマントを被って全身が見えない謎の人物だった。

 

「やはり現れたか!」

 

フードを深くかぶっているせいか、その顔は見えない。

ただ、怪しく赤い眼が光っっている。

 

「ルーシィ、離れていろ」

 

エルザは【天輪の鎧】へと【換装】する。

 

「手ぇ貸そうか?」

「いや、相手は1人、私だけで充分だ」

「気を付けて!」

 

相手はやはりエルザと同じ魔法【換装】を使い、剣を2本取り出す。

そしてエルザとよく似たモーションで、攻撃を仕掛けてくる。

エルザと同じような剣に、同じ魔法、同じ2刀流、同じ太刀筋。

鏡合わせの様にぶつかり、鍔競り合いになる。

 

「目的は何だ!? ナツ達も、お前が襲ったのか!? 答えろ‼」

 

エルザの剣閃が、襲撃者のマントを切り裂いた。

後へと退いた襲撃者の姿が露わになる。

 

「!?」

「コイツぁ・・・・・・」

 

ドラゴン?

いや、人型の竜。

竜人・・・・リザードマンという魔物に似ているが、何処か雰囲気が違う。

 

「天然モノじゃないっぽいな、アイツ」

「どういうこと?」

「人工生命っぽいってことだ」

 

竜人が再びエルザに襲い掛かり、応戦する。

両者の剣戟はほぼ互角。

 

「エルザ!」

 

ルーシィが援護しようと星霊を召喚する。

 

「開け! 獅子宮の扉‼ レオ‼」

「ひさしぶり、ルーシィ」

 

だが、レオを召喚した瞬間、新たに魔法陣から竜人が召喚された。

 

「ん?」

 

更にもう一体、竜人が現れる。

俺とルーシィ、其々を相手にするようだ。

 

「そっちは任せたぞ!」

「うん‼」

 

俺は竜人に仕掛ける。

 

「螺旋丸‼」

 

掌から螺旋丸を竜人に放つが、相手も俺と同じ螺旋丸を繰り出してくる。

2つの螺旋丸がぶつかり合い、弾け、俺と竜人は大きく後退した。

 

「なら、今度はコレだ。火竜の咆哮ッ‼」

 

息を大きく吸って、炎のブレスを吐き出す。

すると、相手の竜人の足下に魔法陣が出現し、竜人は魔法陣に吸い込まれて消えた。

そして入れ替わる様に、別の竜人が現れる。

見た目が何処となくナツっぽい。

別固体か?

そのナツ似の竜人は、大きく息を吸い込んで、ブレスを吐き出した。

俺のブレスとぶつかり合い、炎が膨れ上がって爆散、相殺される。

 

「ああ、そういうこと」

 

俺達の真似をしている、というよりは、同系統の能力を持つ竜人を召喚しているようだ。

エルザの鎧や、ルーシィの星霊の能力まで用意している所を見るに、フェアリーテイルの情報は収集されていると考えていい。

だが、それにしては妙だ。

此方の情報を持っているのなら、同じ能力をぶつけるよりも、弱点となる能力をぶつけてくるべきだろう。

誰にだって苦手なモノはある。

此方の能力が割れているのなら、通じる通じないは別にして、取りあえず苦手とするモノを送り込んだ方が良いに決まってる。

俺達を倒す事が目的じゃないのか?

 

「・・・・・ま、いいか」

 

兎に角、倒す事が先決か。

俺は再び螺旋丸で竜人に攻撃を仕掛ける。

竜人が再び魔法陣で入れ替わろうとするが、

 

「【流星‐ミーティア‐】‼」

 

急加速し、超速で竜人との距離を詰める。

 

「螺旋丸‼」

 

竜人が入れ替わる前に、攻撃を当てる。

竜人は螺旋丸に吹っ飛ばされて、粉々に消し飛んだ。

俺の【完成‐ジ・エンド‐】までは真似することが出来なかったみたいだな。

いやまぁ、あの能力を簡単に真似されても困るが。

 

「ま、偽物は偽物だな」

 

視ると、エルザとルーシィも各々の方法で敵を倒せたようだ。

 

「「「!?」」」

 

取りあえず、辺りの様子を写輪眼と白眼で調べようかとした所で、地面が揺れです。

すると、俺達の目の前に、巨大なナニかが姿を現した。

透明化していたのか、景色が揺らぎ、その姿が露わになる。

 

――――――それは、巨大な竜だった。

 

『ハイハイハイハーイ! 隠匿魔法解除! ラクリマ・コア起動準備! 各関節、アンロック! 神経伝達ラクリマ、感度良好!サラマンダー以外の不純物、とっとと出てけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼』

 

その竜の頭から、スピーカーでも使っていると思われる音声が発せられた。

誰の声だよ?

 

『ドラゴノイド! 起動ッ‼』

 

目が怪しく輝き出す巨大ドラゴン。

 

「ドラゴノイド?」

 

―――――グォォオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ‼‼‼

 

「うるさっ!?」

『見て見てぇ、これ私が開発した人工ドラゴン、その名もドラゴノイド‼ サラマンダーの魔力を得て、今此処に堂々とお披露目って訳‼』

「ナツの魔力で・・・・・・!?」

「何だアイツ、捕まったのか?」

 

何て間抜けな。

 

「ルーシィさーん‼ エルザさーん‼ 祐一さーん‼」

 

聞き覚えのある声が耳に届く。

視ると、ウェンデイとハッピーとシャルルが走って来た。

 

「お前達!」

「無事だったのね!」

 

再会を喜ぶのも束の間、ハッピーが「大変だよ‼」と状況を説明してくれる。

 

「ナツが捕まっちゃってるんだよ! グレイがダフネって奴と手を組んで、ナツを罠にかけたんだ‼」

「「グレイが!?」」

「・・・・・・・・」

「操られている訳じゃ無くて、自分の意思だって。私達もよく分からないんです・・・・・」

 

最近様子がおかしかったことに関係してるんだろうか?

 

「本人に聞くしかないだろうな」

「え?」

「あそこ」

 

俺が顎で指し示す方向に、皆は視線を向ける。

ドラゴノイドの鼻の上。

そこに、冷気を纏わせているグレイの姿が在った。

 

 

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