ルーチェ「まいったわね。この私がこうもあっさり負けるとは・・・・」
「ま、相手が悪かったな」
鼻の穴をティッシュで詰めるという間抜けな姿のまま地に横たわるルーチェ。
少年漫画の決闘後のような状態だが、別に爽やかでも何でもないな。
お互いそれほど目的があって戦った訳じゃない。
単にブチ切れただけだからな。
ルーチェ「それにしても、まさか特典の一つが『幻想殺し』だったとは・・・もっといい能力があるでしょうに、なんでそんな応用性のない能力を選んだのよ?」
「特典が6つだからな。なんか無効化する類の能力が欲しかっただけだ。魔法無効化は無理とか言われたし・・・」
ルーチェ「6つ!? 多いわね・・・私の4つも多い方だと思うけど」
やっぱ多いよな。
ま、少ないよりはいいんだろうが。
「お前、特典は『一方通行』の他に何選んだ?」
ルーチェ「・・・・・普通、自分の手の内を晒す様なことは極力しないほうがいいんだけど・・・まぁ、私に勝ったんだし、アンタも自分の特典を言うんならいいわよ?」
「おう」
コイツに知られても、まぁ、どうにでもなる自信はあるし、別に良いだろ。
◆◆◆
「『白眼』に『若返り』に『無垢なる美貌』か・・・なんか、偏りがあるな」
ルーチェ「そうかしら?」
「『一方通行』で戦いを乗り切るのは分かるぞ? 『若返り』と『無垢なる美貌』も、まぁ俺も世界を楽しむために『魅惑の究極美貌』とか特典に付けてるから分かるが、何で『白眼』なんだ?」
白眼入れるなら、普通は日向流体術とかセットで選ぶと思うのだが。
まぁ、透視能力や視界が約360度とか、あって邪魔になるってことはないし、白眼の能力単体でも使えると言えば使えるから、別におかしなことではない。
コイツに何か考えがあるんだろうが・・・・。
ルーチェ「フッ・・・解ってないわね、アンタ」
「あん? どういうことだ」
ルーチェ「私が何で、白眼を特典に選んだのか。それは・・・・」
「・・・・・・それは?」
ルーチェ「―――――――男湯を覗く為に決まってんでしょっ‼」
コイツ馬鹿だ。
『若返り』や『無垢なる美貌』といい、どこまで欲望に忠実なんだこの女。
「滅茶苦茶だな、お前」
ルーチェ「チートばかりの特典付けたアンタに言われたくはないわね、特に『完成』とか」
「まぁな。あー、今までの説明で俺の『完成』にお前の特典が加わったようだ」
ルーチェ「ちょっ、なんかズルくない!? 説明しただけでコピーするとかどんだけチートなのよ!?」
「俺に言われてもな」
と言っても『無垢なる美貌』は、俺の『魅惑の究極美貌』と名称が違うだけで効果は同じだから、あんま意味ないな。
それでもコイツだけで一気に能力を『一方通行』『白眼』『若返り』と3つもコピー出来たんだから、充分か。
「んじゃ、俺帰るわ。もうとくにすることないしな」
ルーチェ「そ? それじゃあ、私も帰ろうかしら」
上体を起こして立ち上がるルーチェの視界の前に、一人の男が通りかかった。
結構なイケメンだ。
ルーチェ「うほ、イイ男!」
ルーチェは鼻息を荒くしながら(その拍子に血だらけのティッシュが飛んだ)、通り過ぎたイケメンの元へ駆けて行った。
・・・・元気な奴だな。
「・・・・帰るか」
溜め息交じりに踵を返し、ギルドへ足を進める。
そーいや、俺住む場所がないな。
どーしよ・・・まぁ、爺さんに相談してみるか。
◆◆◆
「たっだいまー」
マカロフ「おー、帰ってきたか」
ギルドのカウンターで酒を飲んでいた爺さんに、俺は依頼修了の報告をする。
まぁ、簡単な仕事だったし、それほど報告することも無いんだが。
「なぁ、爺さん。俺今さっきの依頼で手に入れた5000Jしか金ねーんだが、前金無しで住める場所って近くにないか?」
マカロフ「住む家か。そうじゃのう・・・確かチラシがあったの、近くにある不動産屋が出したものじゃから、行ってみたらどうじゃ」
不動産とか異世界にもあるんだな・・・まぁ、当然か。
さて、何処かいい物件あるかねぇ。
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