駄文、ご都合主義。ご了承ください。
第0話 旅立ち前
みなさんは神様転生というものを御存知だろうか?
死んだら神様に別の世界へ転生させられて、第二の人生を送るというやつだ。
――――――――俺は今、まさにその場にいた。
「まさかホントにこんなシチュエーションに陥ることになるなんてな……」
嘆息しつつ、空を仰ぎ見る。
ここは何もない真っ白な空間。
この場にいるのは俺と、目の前にいる一人の美女。
「はっはっはっ。美女とは中々上手いことを言うな君は。そんなホントの事を言っても何も起きないんだぜ?」
ヘラヘラ笑いながら、自画自賛するこの女は神様だ。
もっとも自称だから本当なのかどうか知らないし、特に知りたいとも思わない。
神様「ひどい奴だなぁ、もうちょっと私を敬いたまえよ。神様なんだぜ、私」
「あんま神様らしく感じねーからな無理だな。つーか、さっきから俺のモノローグにツッコむの止めてくんね?」
プライバシーも何もあったもんじゃない。
神様「まぁ、神様である私に君のプライバシーなんてものに気を使ってやる気は起きないなぁ」
あ、そ。
神様「さて、まぁ何の因果かある日突然理不尽に死んでしまった不幸な君は、何の因果か幸運にも神様転生というものを体験できる資格を得た」
死んでしまった時点で幸運でもなんでもねーよ。
神様「そういうなよ、ただ死んでしまうよりは、よほど上等だろう?」
「……もう俺喋らなくてもいいか?」
喋らなくても勝手に心の声を聴くんだもの。
一々口にするのも面倒だ。
神様「やれやれ、仕方のない奴だ。じゃあサクッと転生しちゃおうか」
言って、この神様は何処からともなく、手のひらサイズの四角い物を取り出した。
そしてそれを放った。
四角いそれはコロコロと地面を転がり、止まった。
その四角い表面には、丸が六つある。
神様「へぇ、6が出たよ。運が良いね君。じゃあ何か特典を付けてあげるから、さっさと特典を6つ考えてくれ」
「サイコロの目で決めんのかよ、雑だなおい!」
堪らず叫んでしまった。
神様「いや、今まで君以外にも何人も転生者がいるんだが大抵2~4の目しか出ないからね。ホント運が良いなぁ、君は。だからサッサと決めろ」
無視か。そして強引に話を進める気か。
再び嘆息する俺は少しばかり唸りながら考え込む。
「特典ってアレだよな? 何か能力をつけるとか、そーいうのか?」
神様「そうだね。まぁ別に能力に限定する必要はないけどね」
「というと?」
神様「例えば転生先の世界でお金が欲しいとか、住処が欲しいとかね」
「………そういうのって普通デフォルトで付いて来るもんじゃねーのか?」
神様「そんなわけないだろ、このゆとり世代が」
神様とか言いながら随分ケチくさいな。
神様「煩いよ。私から言わせれば、無償で住処や金が貰えると思ってるのがどうかしてる」
まぁ、言ってることは分かるが。
「ま、とにかく金とか住処とかが欲しけりゃ、特典で選べってことだな?」
神様「そういうことだね」
………さて、どうしようか。
ぶっちゃけ住処とか金なんて、最悪現地調達出来るしな。
ここはやっぱり能力だろ。
「能力は何でも出来るのか?」
神様「んー基本的に何でもいけるけど。あ、不老不死は無理だね。転生先の世界で不老不死になるのは自由だけど、最初っから不死だとつまらないだろう? それを観てる私が」
お前の都合かよ。
「ま、いい。一つ目は決まった」
特典その1。
『完成⁻ジ・エンド⁻』
他人の能力を観察し、再現し、最適化し、完成させる能力。
問答無用で必ず相手の上を行く能力。
神様「なんつーか、君ってアレだよね、初っ端から無双する気満々だよね」
神様がなんか乾いた笑みを浮かべているが、気にしない。
もうこれ一つで大抵の事が出来る気がする。
だがまぁ、せっかく後5つも決められるんだから、遠慮なく決めてやろう。
特典その2。
『六道仙人の力』
例えば、『写輪眼』は瞳が赤く染まり、巴形の印が特徴。
全てを見透かす洞察眼と、強力な催眠眼、更に目にした術法を瞬時にコピーする術写しの能力を宿す。
当然ながら『永遠の万華鏡写輪眼』と『輪廻眼』を使うことも可能。
ノーリスクで力の行使が出来る。
後は仙術・忍術・幻術、尾獣の力等々、細かい物を上げればきりがないだろう。
神様「私もさぁ、今まで数々のチート転生者を観てきたけどさぁ……まさか2つでここまでチートにする奴と出会うとは思わなかったよ。大抵の奴はチートはつまらんとか、チートは一つくらいでいいとか言うやつばかりだったからなぁ」
生憎俺にそんなチャレンジ精神は無い。
特典その3。
『スキルを作るスキ――――
神様「あ、待った、それは無しだ。さすがに反則だ。つまらん」
「あ、やっぱダメ?」
特典その3。
『全魔法無効化――――――
神様「却下だ」
「これもかよ」
神様「君が行く世界がファンタジー世界なら、もうそれだけで無敵じゃないか」
「俺は気にしない」
神様「私が嫌なんだ。まぁ、右手限定くらいならいいけどさ」
特典その3。
『幻想殺し⁻イマジン・ブレイカー⁻』
その右手はあらゆる異能を打ち消す。
「あと3つか」
神様「もう先の3つがチートなせいか、選ぶようなものが無いんじゃないかい?」
「『完成⁻ジ・エンド⁻』がチートだからなぁ……」
写輪眼と合わせて大抵の能力を自分のものに――――――
「あ、これはどうだろう」
特典その4。
『無限の剣製⁻アンリミテッド・ブレイドワークス⁻』
己の心象風景を周囲に投影し、現実世界を塗り替える固有結界。
武具と炎と歯車の並ぶ製鉄所。
一度見た武具を複製し、保管する。
構成物質を含めて、ほぼ完全な武具の複製が可能な投影魔術込み。
神様「あー、とうとう能力だけじゃなく、他人の武具まで自分のものにするのかい」
チートのオンパレードに、既に神様は呆れ顔だ。
「あと2つだな」
他人の力と武器を自分のモノにし、あらゆるモノを見切る瞳に、異能を無効化する右手。
………うん、チートだな。
あと2つをどうするか考えていたら、ふとある疑問が頭に過る。
「なぁ。転生先の世界での俺の身体能力とか魔力量ってどんなもんなんだ?」
俺のその問いに、神様は「へぇ」と感心する眼を向ける。
神様「そこに気づいたか。いやー大抵の転生者ってチートな能力を特典で身に付けても、使いこなせない事が多くてね。それ以前に使えずに転生先の世界で速攻で死んだりするし」
「やっぱりか」
能力によるのだろうが、大抵の力は何かしらのエネルギーを使う。
魔法なら魔力といったふうにだ。
神様「君の想像通り、転生先の世界での君の基本スペックは、今の君と変わらない。だから魔力なんて殆どない君が、いきなり投影魔術を使ったりは出来ないってことだね」
「もしかして、他の転生者の中には特典で大量の魔力とか、強靭なパワーとかを入れたりしてるやつもいんのか?」
神様「あと、容姿の変更とかもね」
それすらも特典扱いか。
けどまぁ、確かにいきなりファンタジーな異世界に転生させられて、出会い頭にモンスターと戦闘になって力を使いこなせずにいたら、殺されるだろうな。
となると、大量の魔力なり体力なりを特典に付けた方がいいのか。
「………無限の魔力ってありか?」
神様「んー……無しだね。そもそも神様の僕の力でも、無限の力を与えられないしね。その『無限』を何処からか持ってくるんならともかくね」
「そうか」
どーしよっかなぁ…………あ、そうだ。
神様「……なにやらいいことを思いついたようだね?」
「ああ」
特典その5。
『俺のステータスのパラメーターを、神様の力で上げられる上限限界まで上げる』
ステータスとは、体力や魔力、身体能力など、自分に関する様々な事を指す。
それを神様の力で上げられる上限一杯まで上げるのだ。
神様の力の上限をしらないから、こういう言い方をした。
一々魔力やパワーなど分ける必要などない。
神様「屁理屈みたいなこと言いやがるな君は。セコイというかなんというか………まぁ、可能だけどね」
ステータスをチートと化すわけだ。
それは本来レベル1からスタートするゲームを、いきなりレベルマックスで始めるに等しい。
神様「なんつーか、もう鬼だな君は。君が転生する世界が不憫でならないぜ」
「まだ後1つ特典を付けられるんだから、余計にそうだろうな」
その最後の1つが問題だ。
もう大抵のことが出来るだろう。
金や住処なんて現地調達出来るだろう。
最後は何にする?
絶対遵守の命令?
いや、そんな催眠術みたいなものは『写輪眼』で事足りる。
あらゆる事象を無かったことにする能力?
いや、他に転生者がいるなら絶対そういう能力特典に付けたやつがいるから、それを『完成』で自分のモノにすればいい。
………マジでどうすっかなぁ。
「あ」
もうこれでいいかもしれない。
特典その6。
『魅惑の究極美貌⁻アルティメット・チャーム⁻』
神様の力を帯びた容姿による異性の魅惑。
対峙した女性は、強烈な恋愛感情を抱く。
神様「…………最後の最後で随分俗物的なものが出たねぇ……………」
「チートじゃねーからいいじゃん」
神様「いや、ある意味チートだろ。女限定だけどさ」
「これなら楽してモテるだろ。一々フラグなんて立てる必要もない」
神様「下衆だなぁ」
気を取り直して、神様は一つ咳払いをする。
神様「で、特典はこれでいいんだね?」
「ああ、OKだ」
神様「それじゃあ、精々謳歌してこいよ。第二の人生ってやつをさ」
そうさせてもらうぜ。
「あ、そういや俺ってどんな世界に転生するん――――――――」
神様「じゃあねー」
いや、答えろよ!!
なんて心でツッコミを入れてる間に、意識がブラックアウトする。
こうして、俺――――――上田 祐一は、この世界にやって来た。