ジョジョの奇妙な学園 ~stardust stratos~   作:エア_

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季節ネタ。今回はハロウィン。

SPWと化した一夏先輩が見られるのはここだけ。いいゾ~コレ。

ポルポルった上にスピードワゴった一夏先輩は解説者の鏡。


番外編、平和な日々を送る青年
ハロウィン編 仮装、あるいは現代のコスプレ前編


始まりは土曜の夕方、一夏の一言から始まった。

 

「ってな訳で、仮装パーティーがあるんだよ」

 

「おい。何が“ってな訳”だ。一夏」

 

10月もそろそろ終わり、完全に秋、そして冬へと移行する季節。日本ならではの四季が季節の移り目というものを感じさせ、多くの外国人、そして日本人を感慨させる秋。秋の風物詩と言えば紅葉狩りを始め、さまざまな文化が日本には根付いていた。

 

八百万の神と言うだけあって外から来たものを自分達に合うように改善され取り入れられた文化は数々とあり、“ハロウィン”もそのひとつであった。

 

承太郎の部屋に押しかけてきた一夏は唐突にそのハロウィンのことを口にしたかと思えば、すぐさま冒頭のようなことを言ったのだ。

 

流石の承太郎も唐突な話に対応できず暫く首をひねったが、季節を思い出し日付を見て改めて納得した。そう、今月は10月。日付は25日。ハロウィンの時期なのであった。普段の日本なら身近なところでハロウィンなど見たこともないだろうが、外国ではよく31日に他人の家(と言っても知人)へ出向き「Trick or treat」と唱えお菓子を貰う。

 

ハロウィンとはもともとカトリックの11月1日に祝われる「万聖節(現在は諸聖人の日)」の前日にあたることからAll Hallows(諸聖人の日)のeve(前夜)、つまりはHallows eveが訛りHalloweenと呼ばれるようになったのが由来だ。ハロウィンの日、ケルト人は先祖の霊が家族を尋ねて帰ってくると信じられるのと同時に、同じ時期に彼等に有害な魔女や悪霊が現れるため、身を守るため己を仮装し、火を灯し魔除けをしたとか。これに因み現在はカボチャに火を灯し(ジャック・オー・ランタン)、魔女の仮装をして近隣の家へと出向き、お菓子を貰うことをハロウィンと呼んだ。

 

「まぁ、ハロウィンパーティが今日あるんだよ。まだ31日じゃないけどさ」

 

「ちょうど平日だからな。それで? 俺に出ろと?」

 

「おう。ついでにどんな仮装をしようか相談にな」

 

一夏はそういいながら紙袋の中から何かを取り出した。よく見るとそれはカボチャの被り物だった。彼は嬉々としてそれを被っていたが、目の前で紙袋よりも大きなその被り物を取り出した光景を見ていた承太郎からすればあまりにも非現実。少し眉をピクリと動かし、彼の珍妙な行動を観察した。

 

「生憎と仮装する気はねぇしパーティーに出るきはねぇよ。第一菓子なんざ作ったことすらねぇ」

 

「そう言うなよ。楽しいぜパーティー。お菓子ぐらい俺が作り方教えてやるよ」

 

そういいながらまたもや紙袋の中から何かを取り出した。今度はお菓子作りに必要な粉やら固形チョコやらの材料だ。いったい紙袋の中はどうなっているのだろうか。

 

しかし、やはり承太郎はパーティーに出るのを渋った。いろいろと理由を挙げれば出てくるだろうが、彼にとってはこれこそが最も出たくない理由だ。

 

「俺は仮装ってぇのがどうも気にいらねぇ。俺に仮面をつけろってか?」

 

「いいじゃんか。ほら、この石っぽく作った仮面とかどうだ?」

 

「止めんか」

 

またもや紙袋から取り出し、仮面を見せてくる。その仮面を見るやいなや何ともいえない感覚が承太郎を襲う。そう、何と言うか“つけちゃあいけない”そんな感覚があったのだ。

 

「ほら、折角なんだからさ。ラウラだって仮装するらしいしよ」

 

「・・・・・・面倒くせぇ」

 

ゴロンとベッドへ横になった承太郎はひとつ大きな欠伸をし、天井を見上げた。隣では「センスはあったと思うのになぁ」と小さく呟く一夏の姿があった。とりあえずドイツに行くか宇宙空間へ行けば賞賛されるだろう。誰からとは言わないが。ウィンウィンウィン

 

すると一夏は小さくため息をつくと、仮面を弄くりながらボソボソと呟いた。

 

「ラウラはいったいどんな仮装するんだろうな~」

 

「・・・・・・」

 

小さく呟かれたその言葉は近くにいた承太郎の耳に届く。小さい部屋で呟けば何処からでも聞こえるだろうと言う距離で態々一夏は呟いた。

 

「きっと凄い格好をするんだろうなぁ~」

 

「・・・・・・」

 

「一度は見ておかないと損だと思うんだな~コレが」

 

「喧しい! うっとおしいぞ一夏! わかったからその“餓鬼を物で気を引く”ような、“まるで俺が悪い”ような言い方をするんじゃあねぇ」

 

ニヤニヤと半笑いで呟いていた一夏へついに叫んだ承太郎。喧しいと怒鳴った彼だが今はその怒鳴り声のほうが喧しいと思った一夏。だがまぁそれは無粋と言うもの。それは伏せておく。

 

「おっし。じゃあ承太郎はどんな仮装がいいんだ?」

 

「・・・・・・何でもいい。どうせ似合わねぇよ」

 

「んな事ないって。仮装なんだからさ」

 

嬉々としてまたもや同じ紙袋から衣装を取り出す一夏。完全に四次元ポケットと化したその紙袋に異様な感覚を覚えながらも、仕方がないと諦め衣装を選ぶ承太郎。彼としては早く終わらせたいのだろう。

 

「うっし。学校でみんな仮装してるらしいし。さっさと回ろうぜ」

 

「休みの日にまで学校に行けってぇのか?」

 

「ん? まぁそっちの方が広いからだろ」

 

「・・・・・・やれやれだぜ」

 

 

 

 

モノレールに映る奇妙な影。完全に場違いなその存在が二つ、モノレール内を圧倒していた。

 

一人は体を黒いマントで包む金髪赤眼。牙をチラつかせながら頭に被っていた灰色の石のような仮面を楽しそうに見ているとても明るそうな青年。

 

もう一人は、黒い学ラン。学ランなのだが、ところどころ不器用に縫われた場所があり、如何にも[古い]と思われる風格。一番の特徴は帽子についている螺子二本だろうか。何やら手の甲にも刺繍後が存在し、一昔前の人工物を思い出させるとても不機嫌そうな青年。

 

「よりにもよってフランケンシュタインか」

 

「いいじゃないか。スッゲー似合ってるぜ? 後で皆と写真を撮ろう」

 

「・・・・・・やれやれだぜ」

 

帽子を深く被りながら、フランケンシュタインの格好をする青年。空条承太郎。一夏の懇願により仕方がなしに仮装したのはまさかのフランケンシュタイン。彼にとっては不本意だろうが長身で大柄なのが幸いしたのか、とても“らしい”格好になっていた。

 

「なぁなぁ承太郎。俺の仮装はどうだ? どっか可笑しいところとかないか?」

 

「聞きてぇ事は山ほどとあるが、まぁ可笑しいところはねぇな。一般的な吸血鬼だろうよ多分」

 

そんな素っ気無い返答ではあったが彼は喜んでいるようだ。そうかそうかと何度も呟きながらまるで子供のようにはしゃぐその姿は年相応とは程遠いものがあった。

 

「お、着いたぞ承太郎。さっさと行こうぜ」

 

「まぁ待て。会場ってぇのに足は生えてねぇ。そんなに急がなくても大丈夫じゃあないか?」

 

「ってもさぁ。早く行きたいじゃんか。食堂貸切なんだし、料理もいっぱいだろうからな」

 

少し足早に進む一夏を追って、承太郎はゆったりとその身を動かす。最近は彼等に根負けすることが多くなったと感じながらも、それほど自分が信頼をしているのだなと心の移りように自分自身関心を持っていた。

 

彼は誰もが認める不良だった。体がでかいからと言う理由で喧嘩を売られたことなど多々存在した。自分と仲の良かった人間がその県下に巻き込まれ病院に送られたことなんて良くあった。そのつど、周りの存在への被害が自分自身を傷つけていった。

 

空条承太郎と言う存在が、周りに迷惑をかけている。

 

その事が彼自身を深く傷つけた。好き好んで不良をやっているわけじゃない。友人を作りたいと普通に思っていた。だが、作れば自分の喧嘩に巻き込まれる。時には人質にとられたこともある。

 

だが、それは彼が悪いわけじゃない。それを理解しているからこそ、周りの人間は気にするなと彼に近づく。その優しさが余計彼を苦しめた。

 

半端逃げるようにわざと不良を振る舞い皆を遠ざけ、孤独を選んだ。一人のほうが余計に傷つくことはないと思っていたからだ。

 

だが今の状況を見れば今までのことが全部笑い話に変わる。周りにいる人間を見てみろ。目の前にはたかが仮装にあんなに大はしゃぎするISを使う剣士。彼の周りには剣道で日本一になった者もいれば、そこらの不良なんか一撃で葬り去るような力を持ったカンフー少女。イギリスのゴルゴ13な淑女がいれば、弾丸を撒き散らす全距離戦闘可能なフランス娘まで存在している。

 

自分には誰がいる? 世界最強の教師がいれば、IS学園最強の生徒会長。そして苦楽を共にした軍人娘までいる。このどこに巻き込まれる要素があるだろうか。むしろ彼が厄介事に巻き込まれるのではないだろうか。

 

それほど心強い。それほど安心できる仲間がいるだろうか。

 

本能的に、承太郎は彼彼女等なら大丈夫。自分は一人でいなくていいと感じ取ったからこそ、こうやって根負けしても、決して【嫌】とは思わない。【否】と思えど【嫌】はないのだ。同じ意味なのかもしれない。だが、彼にとっては違う意味なのだ。

 

行きたくないと【否】定しようとも、決して【嫌】ではないのだ。

 

「おーい、承太郎早く来いよ~」

 

「・・・・・・あぁ、すぐ行く」

 

再び帽子を深く被りながら、承太郎は一夏の元へと足を速めた。いつもは落ち着いた休日を過ごし、体の疲れをとり、趣味に没頭するのだが。

 

(こう騒ぐのも、【嫌】いじゃあない)

 

今思うのは、無粋なのかもしれない。

 

 

 

 

会場は食堂。そこではもう飾り付けが終わっており、数々の料理が並んでいた。ハロウィンと言うことから、カボチャ料理が豪勢に振舞われている。他にもジャック・オー・ランタン本来の由来になったカブの料理や、秋の食材であるきのこや芋など、和風なものから洋風なものまで幅広く料理が並んでいた。あまりに香りが良かったのか、一夏は人知れず無意識にのどを一回鳴らしていた。他の女生徒達は料理に夢中だったり話に夢中だったり、ワイワイガヤガヤとしていた。

 

「あ、一夏だ」

 

最初にこちらへ聞こえたのは、鳳鈴音のソプラノ近い声だった。鈴音の格好は中国ではお馴染み(?)の妖怪であるキョンシーのようだった。相変わらず肩が露出した服装だが、中華独特な帽子と妙にマッチしており、そこについている御札がいかにも妖怪といっているようだった。

 

「一夏それって、もしかしなくても吸血鬼?」

 

「へへっ、結構自信作でよ。承太郎からも可笑しいところはないらしいからさ。それよりこの仮面とかどうだ? 牙とかも頑張ったんだぜ?」

 

そう言っておもむろにマントを翻してみせる。案外似合っているもので、彼に好意を寄せる女性の瞳を通すと完全に乙女フィルターが掛かっているものだから顔を真っ赤にしてしまう。

 

「に、似合ってるわよ。か、かっこいいんじゃない?」

 

「おう! 鈴も結構似合ってて可愛いぜ」

 

「あ、ああ、当たり前じゃない。ばっかじゃないの!?」

 

さり気ない口説きに更に顔を赤らめあたふたしだす鈴と、ただ純粋に感想を述べた一夏の姿がそこに存在した。側から見ていた承太郎は彼のことを天然の誑し野郎かと理解するのにそう時間は必要なかった。

 

まぁ、楽しそうで何よりだと思ってしまうあたり相当柔和になったんじゃなかろうか。

 

「なぁ鳳。他の奴らはどうしたんだ? いつものメンバーが見当たらねぇぜ?」

 

「えぇ、ラウラとセシリアがちょうど服を直しにね。箒とシャルロットはその着付けの手伝い。まったく、あたしみたいに軽い服装にしとけばいいのに、あんな重そうな物体に巻きつけちゃって」

 

「まぁ見てからのお楽しみってやつだな! 承太郎。飯取ってこようぜ」

 

「そうだな。流石に腹が減ってきた」

 

鈴音と一度別れ、二人はフードコートへ向かった。途中二人に気がついた女生徒達に寄られてたどり着くのに手間取ったが、折角のパーティーなのだと結論付ける。承太郎が怒っていないところを見ると頷けるというもの。

 

並んでいた料理は近くで見ると更に食欲をそそった。パンプキンパイへと自然に手が動く一夏と、キッシュに手を出して一口分を頬張る承太郎。流石は食堂のおばちゃんが作っただけはあって、その料理の味はまさに絶品。甘さもちょうど良く、口の中に広がるカボチャの甘味がこの料理の旨さを物語っている。キッシュも薄く刻まれたカボチャが旨みを残したまま焼かれているのか、その味は料理店に出てもおかしくないしろものだった。

 

二人の手は止まらなかった。ISを起動しているわけではないが、彼等の手の動きはスター・プラチナに通ずるものを感じ取れる。

 

スープやサラダ。肉料理や魚料理。そのどれもにカボチャやカブが入っているのだが、飽きるという言葉が旅に出ているのか、中々出てくる気配すらない。二人はその旨い料理に真の意味で夢中になっていた。

 

「な、なんだこの料理はァ! 肉を噛めば肉汁が、あ、溢れてきやがった。それだけじゃあねェ! カブと和えただけかと思ったらそんな事もないッ! このカブにまで肉の味が染み込んできているゥ!! しかもどういう事だ。このカブに染み込んでいる肉の味は、今さっき食べた肉とは違う種類の肉汁だ。どういうことだ。二つの肉が歯車的回転によるまさに黄金比を理解したかのような絶妙なァ―――」

 

「落ち着け一夏! 途中から訳の分からねぇことを叫んでるぞ」

 

「ハッ、こ、こいつァすげェ! 食の神秘の香りがプンプンするぜ! 何てこった。気がつけばこの料理に俺は飲まれてた。た、例えが悪いかもしれないが、こ、これはまるで食虫植物が虫を食べる時につかうあの危険な香りのようだ。承太郎ッ! この料理は危険だ。この料理は俺たちを骨抜きにしようとしてやがる! こんな旨い料理を食べさせて俺たちの料理をここの食堂に限定しようとしている!」

 

「そこまで考えちゃあいねぇだろ。ただ単に今まで食べた料理よりも旨かったってことだ。時々お前、反応感度が良すぎるんじゃないか? 毎回それだと疲れるぜ?」

 

承太郎の祖父であるジョセフが聞けば「日本のSPWさん」だと言ってくれるんじゃないだろうか。それほど彼のリアクションはスピードワゴンのように少しオーバーだった。

 

承太郎も改めて食事を取る。やはり旨い。一夏のようにオーバーなリアクションはとらないが、金を払いたくなるほど旨いのは確かだ。先ほど食べた肉料理も二種類の肉汁があふれ出していたというのに互い良さを殺さないそれはまさに神秘とも言える。まさに現代のアリストテレス。いや、フランケンシュタインに基づいて、「デュオニュソス、あるいは現代のアンブロジア」とでも言うべきか。それほど、この食堂のおばちゃんが作る料理には計り知れない凄さがそこにあった。

 

「っと、早く料理を持っていこうぜ。鈴を待たせてるんだった」

 

「あんたが大声張り上げるから来てやったわよこの馬鹿チン」

 

「あ痛っ!?」

 

突如一夏の頭に衝撃が入る。勿論したのは先ほど一夏が騒いでいたからと駆けつけた鈴音だった。威力が強かったのか、しゃがんで蹲る彼を見ると流石にやりすぎたと思ってしまってる。

 

「さ、流石にそこまで強く殴ることはねぇだろ鈴」

 

「その事については謝るけど、騒いだあんたが悪いのは決定的に明らかよ」

 

「う、うす」

 

「・・・・・・やれやれだぜ」

 

二人のやり取りにため息をつかざるを得ない承太郎はいつもの口癖を吐き、ラウラ達の到着を待った。

 

 

 




ちなみに石仮面は例の石仮面の形をしています。

一夏「後編は何時なんだ? エアのおっさん」

エア「後編は次の日と相場が決まっている。あんたはダァッとれい」

一夏「元気ですかッ! 元気があれば何でも出来る。行くぞッ! 一、二、さって、皆なんでそんな軽蔑した目で見るんだ? 見るなッ! 俺をそんな目で見るなァアアアアアアアッ!」

承り「やれやれだぜ」

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