EBA 一番と四番の子供達   作:アルポリス

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 原作のタグを変えました。ご迷惑をおかけします。


決戦第二新東京市

 前回、何やら司令のお怒りを買いたくもないのに買ったらしく不本意ながら自宅謹慎を素直に遂行している、元おじい、現綾波レイです。

 

 学校に行く以外は食料を買うだけで、殆ど家から出ていない。一応、わし、給料を貰っている立場だからね。

 

 その間二度、使徒が襲来してきたんだけど、そのすべてを多分主人公が倒したんだと思う。どうして確信が無いかといえば、使徒襲来中も家にいたからなんだよ。甘んじて罰を受けるのがわしの吟じだからさ……うそ、本当は寝てたんだよ、だから携帯に指令や葛城さん、殆ど掛けてくることのない赤木さんの着信が異常に残っていてびっくりしたわけだ。で、寝てるところ保安部の役人に起こされ、慌てて電話を返したのはいいけど、かなり怒られてしまったよ。いやあ、お恥ずかしい。

 

 それで、一応前の罰が残っているから厳重注意で済んだのはいいんだけど、二度あることは三度あるって言うか、それなら一度あることだって二度あるわけで…。

 

 ん、二度目も寝てました。いや、家にいても暇だから、ネットで買ったアニメぼっくすを手当たりしだい見ていたら、次の日の夕方に起きることも多くて。

 その日は次の日が休みだからというわけで安心してたんだけど、まさか使徒の方が来ちゃうなんてホント、人類の敵ですな、あれは(キリッ

 

 まあ二回目は保安部が家に来る前に何とか起きられたから携帯に出ろというお小言を貰ったにすぎないから助かったよ。

 

 謹慎が終わるまで翌日に控えていたわしは学校の教室で授業を受けている。

 

 そうそう、日に日に思考が若返っているのか口調がどんどん若い頃に戻っているのも報告しておく。誰にだっていうツッコミはなしの方向で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何時の時代も長ったらしく感じる午前の授業を終えてわしはふと、ある席に視線を移動した。

 碇シンジ十四歳……わしと同じくエバで戦う二番目操縦者。

 

 残念ながら、今日は欠席だ。どういうわけか、シンジ君がこの学校に転校してからわしとの接触が無い。こちらも必要以上に接触するつもりは無いが、一応、同じ操縦者なのだから話しかけてくるかと思っていたが、一向に話しかけてくる様子は無かった。もしかしたら操縦者だと思われていないのかもしれない。

 

 それはそれで悲しいが、もう、原作などは崩壊していると思った方が良いのかもしれない。

 

 そんなこと考えながら、お昼ご飯を食べようと手作り弁当、妻があまり料理上手とは言えず、自ずと料理をするようになったを取り出して、さあ食べようと手に掛けたところで携帯電話が鳴り響く。教室に残っていた生徒の視線が一気に集まる。学校での携帯使用は禁止されているのだから仕方がない。わしはエバ操縦者なので特別だ。

 

(もしもし、何事かあったのか?)

「はい……もしもし」

 

『私よ、ミサト。最近あんた、ますます可笑しくなってきたわね』

 

(こちらも意思疎通をするために大変なんですよ)

「こちらも……大変なんです」

 

『まさか、芸を磨くこととか言わないでよね』

 

(鼻で笑ってしまうくらい面白くないな)

「ふっ」

 

「あんた今、鼻で笑ったでしょ、こっちにきたら覚悟しない」

 

 というと、召集が掛かったのか。しかし、謹慎中だったはずだが。

 

「…謹慎中」

 

「そういうことを言っている場合じゃなくなったのよ。セカンドチルドレンが行方不明になったの」

 

(せかんど……外人さんか?)

 

「…外人?」

 

「私にとってはあんたが外人みたいなものよ!! あんたねぇ、一緒の学校に通っているでしょうが」

 

(そうか、主人公の碇シンジ君のことか)

「……主人公」

 

「はあ? せいぜい、ガキ大将についている腰巾着くらいよ」

 

(そこは眼鏡の冴えない少年じゃないか)

「眼鏡少年」

 

「そうね、それなら主人公になれるわね……って、そんなこといっている場合じゃないのよ、とにかく謹慎は今日付けて解いたわ。車を向かわせるからすぐに来れるようにしてちょうだい」

 

「ミサエモン」

 

「取り敢えず、あんたの願いは叶えてやらないと思うわ。早く来なさい!!」

 

 いきなり怒鳴られて切られた。それにしても、最後の言葉は覚えがないのに……解せぬ。ちなみにこの言葉も孫に教えてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 教師に事情を話して早退させてもらい、迎えに来た保安部の車で移動していると、真昼にも関わらず花火の上がる音が聞こえてきた。はて、と首を傾げて運転手にどこでやっているのですかと聞けば、運転手は何故か焦り気味の顔で急ぎますと述べて車の速度を上げた。

 

 いや、わしは花火の場所を聞いただけであって、そこまで焦る必要は無いのだと口にしたいのだが、如何せん言葉にならない。それにしても急な速度上昇により、急いで食べたお昼ご飯が口から再び戻ってきてしまう恐れが出てきた。そんな事も合って、わしは運転手に速度を落としてくれやトイレに行きたいとも告げられず、ねるふの地下基地に着くまで吐き気と戦うことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+サイドアウト+

 

 

 

 ジオフロント内部に併設された駐車場にて葛城ミサトは綾波レイの到着を待っていた。というのも、先ほどセカンドチルドレン、碇シンジが自ら戻ってきて第五使徒と戦闘するも敗北、次の作戦は外部の人間と共に共闘する旨を指令から承り、敗北によって悲観的になった己の気持ちを落ち着かせる意味も込めて自分から迎えることにしたのだ。

 

「シンジ君……もう乗ってくれないかもしれないわね」

 

 初号機がリフトアップした瞬間の出来事だった。

 

 予め知っていたかのように地上に出た初号機を使徒が放つ加粒子方は打ち抜いたのだ。使徒やエヴァンゲリオンだけが持つ特殊なフィールド――A,Tフィールドを初号機は展開するも、それすら打ち抜きエヴァの心臓部ともいえるコアに加粒子方を浴びせたその威力に司令部は一時沈黙、命令を下す立場にいるミサトでさえ、呆気にとられパイロットの安否など頭の片隅にも上がらなかった。

 

「参謀失格ね」

 

 碇シンジは今も救護棟で眠っている。命に別状はない。それでも心身に関してはそうは言えなかった。元々彼は、初号機のパイロットになることを好としていない。

 

「でも、エヴァパイロットが自分だけじゃないと分かれば……」

 

 それは一種の賭けの様な願いでもある。ファーストチルドレン綾波レイが彼と心を通わせてくれれば、もしかしたら立ち直ってくれるかもしれない。例えば、彼女に恋をするなど好意を持たせれば或いは自分から再び乗ってくれることも可能ではある。

 

 しかし、それは……。

 

「私自身が嫌がっていた大人のやりそうな汚い打算」

 

 それでも、ミサトはこの提案を肯定する。それで世界が救えるなら彼女自身泥にも塗れようという気迫を持ち合わせていた。他者がそれを見ればきっとこう思うだろう、私怨だと。そしてそれをミサトは否定が出来ない。

 

「決して良い父では無かったけれど、それでも私は……」

 

 長い時間、物思いに耽っていたのだろう、駐車場に保安部の車が到着した。

ミサトは思考を切り替え、車まで歩き出す。運転手が降りて、後部座席の扉を開いた。

 

「待っていたわよ、レ――」

 

「オロロロロロロロロ」

 

「レイィィィ!!!!!」

 

 車から降りてきたレイはモザイク処理が施されそうな噴水を口から放出させた。苦しそうな表情なら、まだ分かるが、その顔は通常稼動の無表情、嘔吐物だけでなくその表情もモザイクをいれた方が良い。

 

 こんなのが同じチルドレンだと知ったらシンジ君は乗るどころか即効で私たちを見捨てるだろう、ミサトは大人の汚い打算よりも汚いものを吐き出すレイを見据えて諦めることを選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+サイド今はレイの元おじい+

 

 

 いやぁ、参った、参った。残念ながら便所には間に合わなかったよ。だってさ、長いよ、地下基地。どこまでぐるぐる回るの。乗り物酔いには強いわしでもあれは我慢の限界に近かった。それで、最後のえれべーたー、あれが決定打になったね。乗り物に乗り物を重ねたら駄目だって。いかな見た目可憐なわしでも我慢せずにミサトさんの前で吐いちゃうって。

 

 すべてを吐き出し終えて気持ちすっきりした表情、あくまで気持ちである、でミサトさんに視線を合わせれば魚の死んだような目でわしを見ているではないか、失礼してしまう。女の子だって、元老人だって、生きているんだ、嘔吐もするぅんだよーって歌いたい。実際は歌わないけど。うん、あれだよ、現実逃避だよ。精神老人でも他者の前で吐いたら心が痛いんだって気づいたね。

 

 表情を引き締めたミサトさんが深すぎるため息を吐いた。そして頭痛がするのか頭を抱えながら口を開く。

 

「一応、聞くけど、どうして吐いたのかしら?」

 

(いや我慢しようと思ったんだけど、ミサトさんがいて安心したから)

「……ミサトがいたから」

 

 ああ、わしのバカ、こんなやり取りは何度も経験したのに!! ぐはっ!!

 

 ミサトさんはわしの頭を鷲掴みして力を込める。その力、このままわしの息の根を止めるかのごとし!!

 

「私のこの手が月の光に包まれる。お前を倒せと静かに告げた。月に変わ――」

「冗談です死にたくありませんごめんなさい美人のミサトさん車酔いをしただけなんです決してあなたの顔を見て嘔吐したわけではありませんむしろミサトさんの顔を見て安心したのがいけなかったのですすべてはわしの落ち度ですから殺さないで」

 

 死を前にしてわしの口はすらすらと口上が紡がれた。無表情には変わらないがどうやら、死に物狂いで話せば素直に口から紡がれるようだ。知りたくなかったが。

 

 わしの無表情弾丸口上に恐れたのかミサトさんは顔から手を離して後ずさる。

 

「あ、あんた、普段はろくなことしか話さないくせに。そんなに死にたくないのね」

 

(当然だろう、命は大事、勇者様も絶対それを選ぶはずだ)

「…命は大事」

 

「何よ、人間らしい部分も持ち合わせてるんじゃない」

 

(何を当たり前のことを…テレビでのレイちゃんも、今いるわし…私も人間だ)

「……当たり前……私も人間」

 

 その言葉を聴いてミサトさんは笑みを浮かべた。

 

「ふふ、今回はレイの本心を聞いたから先ほどの暴言は忘れることにするわ」

「ありがとう」

「それと、嘔吐についても私のお願いを聞いてくれたら忘れてあげるわよ」

「何をすればいい?」

「ちょっと、そんな喰い気味にこられたら話せないわよ。よっぽど忘れて欲しいのね」

 

 少し、引き気味のミサトさんが可哀想なのでわしは距離を置いた。

 

「実はね、あるパイロットと話して欲しいの」

 

 ミサトさんの話を聞いて、わしは一も無く頷いた。わし自身も話してみたいと思っていたのだ。口から素直に言葉が出るかは不安であるが。

 

 早速、わしは目的地の救護棟に足を運ぼうと歩き出す…前にもう一つの懸念事項を思い出してそこに足を向けて歩き出した。

 

 運転を勤めてくれた保安部の人の前で止まれば、保安部の人は顔を引きつらせていた。失礼な。

 

「運転ありがとう」

「い、いえ、私は任務を全うしただけですから」

「素晴らしい考え」

「あ、ありがとう」

 

 わしは一歩、保安部の人に詰め寄った。すぐ後ろにある車に挟まれて保安部の人は汗を滝のように流す。無表情のわしが怖いのかもしれない。

 

「忘れなさい」

「は?」

「今、ここであったことは忘れなさい」

「えっと、それは…」

「命令」

「いやあなたにその権限は」

「破れば……」

 

 保安部の人が息を飲み込む。

 

「この組織で……お前の居場所が無くなる」

 

 普段、鈴のような声色とは違う、ドスの利いた声色で淡々と告げられ、保安部の人はガクガクと頷く。

 わしの目から見てもその体は極端に震えていた。可哀想だが、仕方が無い、これでも見た目は乙女、あの人が嘔吐で…興奮を覚えて変な性癖でも目覚めたら申し訳ないという言い訳を浮かべておく。

 

「健闘を祈る」

 

 

 

 

 

 わしは保安部の人から離れて歩き出した。途中、ミサトさんの方を伺えば笑っていた。あのやり取りのどこに笑うところがあるのか疑問だが、どうやらツボに入ったらしい。

 それにしても死に物狂いではなかったからか、わしが思って口にしたことが紡がれることはなかった。わしはあくまで下出に出て、お願いするはずだったのだ、なのに口から出る言葉は威圧的な命令口調。本当にこの体は解せぬ。

 

 

 

 




次の話の触り部分でした。

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