中二カヲ「な、何だい、いきなり現れて!?」
Qカヲ「君の心は中二病に犯されてしまっている」
中二カヲ「ドキッ! ど、どうして分かった!?」
↑
Qカヲ「いや、逆に分かりやすいだろう」
中二カヲ「はっ! 本当だ!!」
Qカヲ「……君は憐れだけでなく、馬鹿なんだね」
続く?
始まります。
順々にリフトアップされたエヴァ各機に搭乗するチルドレンは自分たちより先にリフトアップされた武器庫を抉じ開けて、思い思いの武器をその手にすると本部の周りを囲うようにして待機する。
4号機の中、カガリは瞳を閉じて静かな息づかいを心がける。自分の役目はシンジたちを生き残らせつつ、敵を殲滅する事、その為には自分が冷静でなければならない。こういった状況では熱くなりやすい自分を理解したうえでの配慮だ。操縦桿を握る腕が震えているのはご愛嬌である。
ふと、背後に気配を感じて瞳を上げれば、色白のそれでも男の腕がカガリの腰を掴むようにして重ねられていた。それ以上に主張するのは背中に感じる確かな重みと人肌。こんな事をするのは、
「カヲル」
自分に好意を持つ奇特な元使徒しかいない。
「大丈夫だよ、カガリ。シンジ君たちは弱くない、それにアスカさんの乗る機体は僕以上に化け物だ。ゼーレ如きにやられるはずないじゃないか」
「…そう、だな」
「だから、カガリはカガリらしく猪突猛進であればいい、彼らはきっとそれに付いて着てくれるよ」
「私らしく」
「そう、僕が好きになったカガリらしくあってほしい……それに僕も応えて見せるから」
ぎゅっと腰に重ねられた腕の締め付けが僅かに強くなる。それがカヲルの想いの強さに思えて安心する。
「……うん、そうだな、ここにいる皆できっちり殲滅して本部に帰ろう!!」
「それでこそ、カガリだよ。安心して、僕は最後まで君の味方さ」
その声と共に首筋に落された柔らかい何かの感触を最後に背中の温もりが飛散する。コアに戻っていったようだ。
カガリに燻る不安感を取り除いて颯爽と還る彼氏に愛おしい気持ちと、それ以上に恥ずかしい気持ちが折り重なってプラグ内で悶えていればアスカから通信が入った。
『もうすぐ向こうの作戦が開始されるはず……って、姉御大丈夫なの!?』
ちょうど羞恥がマックス状態でブリッチするような格好で悶える姿を見咎め驚きの声を上げた。
「だ、大丈夫だ!! ああ、大丈夫だとも!! こんなのはあたしのキャラじゃない!! すぐに不死鳥の如く復活して何時もの天真爛漫カガリさんをあなたの目の前に!!」
不安定なプラグ内の中で完璧なブリッチの形態を取ったカガリの姿を見て綺麗な形と内心で冷静に判断しながらもアスカが叫ぶ。
『姉御が壊れた!? どうしよう、シンジィィィ!!』
悶えるカガリ、焦るアスカ、そんな二人に向けてシンジの怒声交じりの通信が入る。
『何やってるんですか、二人とも!! ジオフロントの天井が!!』
告げられた事実に二人は瞬時に真面目モードを展開、ジオフロントが融解する様を視界に捕らえるとカガリが声を張り上げる。
「頭上にATフィールド展開!! 本部を衝撃から守るぞ!!」
エヴァ三機が淡い赤い光りを発生させると本部上空に三機分の巨大なフィールドが現れる。それは融解の次に発生した衝撃波とそれにより崩壊したビル群から本部ビルを無傷で守り通した。
直後、アスカから緊急通信が入る。
『姉御!! ジオフロントに開いた穴から機影を確認したわ、やばいわよ、総勢五十のモビルスーツタイプ!』
「開いた穴に向けて長距離射撃武器で牽制、少しでも数を減らすぞ!!」
カガリは即座に作戦を告げた。
『了解、弐号機はこれより攻撃を開始するわ』
両肩で支えていた大型バズーカ砲を構えると気合の声を上げながら全弾撃ち出した。これによりジオフロントの穴が爆煙で隠れると今度はその爆炎を掻き消すようにビームの筋が放たれる。初号機が肩ラックにコードを接続させた長距離改良型ポジトロンライフルだ。S2機関搭載だからこそ可能となった高威力のポジトロンを発生させることに成功、これにより従来よりも距離と威力を伸ばす事に成功した。これもまた開発班、整備班の血潮に掛けた結果だ。理論上、段数制限なしの決戦兵器と呼べる。
『アスカ、次の武器を!!』
攻撃が止まないようビームの筋を撃ち出してアスカを促すと心得たとばかりに武器庫目指して走り出す。
ところが、幾重にも放たれたビームはやがて止まってしまう。
そう、残念ながら砲身の強度上、エネルギーは無尽蔵でも段数制限が設けられているのだ。この隙に残存のモビルスーツ部隊が爆煙から飛び出してくる。
しかし、今度は先ほどよりも太い光りの筋が上空に展開するモビルスーツを薙ぎ払う。4号機が設置したこれまた改良型ポジトロンスナイパーライフルである。
何重ものコードを独特の肩ウェポンラック――この武器のため作られた――にあるエネルギー変換機に接続して物々しい砲身が煙を上げながら上空に伸びている。
最初に登場した馬鹿にエネルギーを必要とした問題を威力低下によって解決した従来のポジトロンスナイパーライフル、それを威力底上げの部分だけ改良、S2機関のおかげでそれも可能となり、従来の三倍、最初のものの半分の威力まで底上げされた代物だ。
「シンジ、あたしたちの隙を突いて地上に展開し始めた部隊をお前は相手してくれ、アスカが最後にデカイ一発を撃ち出したら、あたしたちもそのまま参加する」
『了解、これより初号機は残存勢力と戦闘を開始します』
ライフルのコードを引き抜いて初号機がマゴロクとカウンターソードを構え、地上に続々と降り立つモビルスーツ部隊に向けて駆け出した。
それを見送りながら四発目のビームを撃ち出すとプラグ内で警報が鳴り響く。どうやらポジトロンスナイパーライフルの砲身がどろどろに解けて使用不能になったようだ。
『丁度いいわ、姉御。最後の花火上げるわよ!!』
弐号機が構える一見して唯のミサイルランチャーに見えるそれは射撃武器の中で一番の威力だ。砲身というより、その中にあるミサイルが敵に決して優しい代物ではないことを自分たちは知っている。
『惣流家訓、目には目を、歯には歯を、暴力には暴力を!!』
噴煙を撒き散らし撃ち出された小型のミサイルは誘導されるかのごとく穴に一直線に飲み込まれた、直後、凄まじい光りと共に衝撃波が発生、ジオフロントの天井はこれにより意味を成さないほど崩壊した。もちろん、衝撃波に関しては4号機がきっちりと本部を守る形でフィールドを発生させ、無傷である。
『汚い花火、これだからN2兵器は嫌いだわ』
向こうの部隊もまさかネルフが密かにN2兵器を所持して使われるとは思ってもいないはずだ。これもまた、レイが同志に指示したことによるものである。
「そう言うな、これで少しは仲間を守れると思ったら安いもんだぞ」
『それは理解しているのよ、姉御。でもね、惣流は拳一つで仲間を守り、裏の世界で成り上がったの、あたしはその血を誇りに思っているから』
「なら話は簡単だ、今度はその拳でシンジを手助けしてやれば良い」
『な!? ど、ど、どうしてそっちの話になるのよ!!』
映し出されるアスカの顔が一瞬にして沸騰する。それを見てケラケラと笑ったカガリが内心で意趣返しできたと喜んだ。自分の悶える姿を見られたのだ、こちらもアスカの慌てる姿を見せてもらわなければフェアじゃない。
「さて、あたしたちも残存部隊を相手にするか」
『ちょっと、姉御!! 聞いているの!?』
「はいはい、聞いてるよ、シンジだけじゃない、あたしもアスカの力を頼りにしている」
『そ、そう、そうよね。あたしの力は姉御のためでもあるんだから。そりゃ、あいつがやられそうになったら死んでも駆けつけるけど…って何言ってるの、あたしは!!』
顔を赤くして捲くし立てるアスカに向けて不意にカガリが真面目な声を上げる。
「アスカ、急ぐぞ。どうやらシンジは有人タイプのモビルスーツ、それもエース級の相手に手間取っているようだ。所々、フィールドを貫かれて被弾している――」
『シンジィィィィ!!! 待ってなさい、今助けに行くわよぉぉぉぉ!!』
アスカの叫び声と共に弐号機が勢い良く駆け出した。その際、フィールドを展開、それを衝撃波のように打ち出していた。
「ように見えたが、あたしの勘違いだったらしい……と聞いていないか、もう」
初号機と共にエース級のパイロットが操縦するモビルスーツを千切っては投げ、フィールドを展開しては打ち出して一方的に破壊するという、言葉通り蹂躙している様を眺めながらカガリがポツリと呟いた。
ちなみに先ほどのやり取りは本当にそう見えていたから言っただけであってカガリに他意はない。むしろ、置いていかれて寂しい気持ちを抱いていたくらいである。
やがて、やけに抵抗する一機のモビルスーツ、バウンド・ドッグを初号機のマゴロクソードが仕留めるとすべてのモビルスーツ部隊が壊滅、束の間の平穏がチルドレンたちに与えられた。
次回 Air/その辺りの話を君に 1
次回もサービス、サービス……その辺りの話をお届けします。お時間は頂きますが…申し訳ない。