EBA 一番と四番の子供達   作:アルポリス

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 始まります。


間幕

 翌日、宇宙で戦っていた愚連隊と合流するため、地上の愚連隊がねるふを後にするらしい。わしとカガリはあまり関わってこなかった部隊だが、シンジ君たちとっては大切な仲間である。当然見送りに行くようだが、何故かわしらも誘われたのでそれならばと、カガリはある提案を上げ、それにシンジ君たちは賛同、わしも否はなく、エバ部隊によるお見送り会なるものを開催することになった。と言っても出発の時間まで残り少ないので大掛かりなものは出来ないため、本部にある食堂で作られた出来合いのものを運びこむなどをして割りと小規模な見送り会を行うことに決めた。

 

 会場はエレ様のご好意でごらおんの休憩室をお借りする事が出来た。そこに食堂で頼んでおいた軽食や飲み物を運びこめばお見送り会の開始である。

 

地上部隊の皆が思い思いに食事を楽しむ中、カガリたちは何時の間に練習していたのか、三人組の芸人エバーズなるものを作りコントを披露していた。最初はポカンとしていた皆もカガリやシンジ君のネタに対する必死さ、アスカちゃんの必死すぎるつんでれにネタを笑うと言うよりも必死すぎる彼らを微笑ましく見えて笑い声を上げていた。

 

 その中で、ごついがんだむの操縦者、でぃお君は腹を抱えて馬鹿にしたように笑い、かとる君ととろわ君に窘められていた。逆にひいろ君とうーふぇい君は一ミリも笑っていなかったのが印象的だ。

 

そうなるとカガリたちのコントは面白くないように思えるが、これがまた小さな子供たちには高評価を得ていた。ぶいがんだむの操縦者うっそ君やその仲間である、おでろ君は涙を浮かべながらちゃんとネタについて笑い、大作君も子供らしい笑い声を上げて楽しんでいた。妖精さん、と言うと怒る、ちゃむちゃんなどは前に面白い踊りを教えてくれたことでカガリのふぁんになったらしく、人間に負けないくらい笑っていた。時折、変なおっちゃんの踊りを披露した時は、カガリもそれに返すように踊りを披露して笑われていた。しかしながら、子供たちはその踊りが気に入ったらしく一緒になって踊り出し、最後は変なおいちゃんの踊りを子供たちと妖精さんで披露、会場をほのぼのとさせてコントは終わりを告げたのだった。

 

裏方を知るわしが言うのもなんだが、彼らはネタに集中しすぎて自分たちが笑われているとは露とも知らず、手ごたえを感じていたようである。わしは優しい眼差しを向けながら彼らに肯定も否定もしなかった。勘違いしながらも、正されて恥ずかしい想いをして大人になっていくのだから。

 

 

 

 

さて、わしは今、主人公のタスク君と話をしていた、と言っても、一方的に彼が話していてわしが相槌を打つという形であるが、カガリに似ているのか苦痛には感じない。

 

「でよ、シンジがお前のためならロンドベルをやめるとか本気で言い出すし、まあ、あの時は頭にきてスルーしたけどよ、後で冷静になったところでよくよく考えてみればシンジの奴はあんたに惚れてんだなって思ったわけだ」

「…へぇぇ」

「おいおい、感想はそれだけかよ、俺ほどじゃねえけどシンジもイケメンだと思うぜ?」

「…ほぉぉ」

「実際、あんたはシンジの事どう思ってんだ? あんたの願いをかなえてやろうとする男気に惚れたりしないのか?」

「……」

「それとも、他に大切な奴がいたりするのか?」

 

 わしの反応が鈍いと思ったのか、タスク君はそんな事を聞いてきた。隠す事でもないのでそれに頷けば、タスク君は一瞬痛みを伴う表情を浮かべ、すぐに何時もの笑みを形作ると、そうかと述べて、ニヤニヤとした口元を作り、かとる君と楽しそうに会話しているシンジ君を見つめた。

 

「じゃあ、シンジの奴は茨の恋ってやつをしているんだな。けどよ、想いってのは、変わることもあるからなぁ」

 

 言葉の最後にニヤニヤした目でわしを見つめてきた。わしはその面白がる目と先ほど浮かべた一瞬の悲壮を内心で思い浮かべ、逆に聞き返した。

 

「あなは、どうなの?」

「は?」

「あなたの思いは変われるの?」

 

 そう問いかけた瞬間、彼はあからさまに苦悶の表情を浮かべて項垂れた。そうだ、彼の隣にいてもおかしくない想い人が存在しない。それはきっと、彼が選択を誤ったのだろう。

 

これはゲームであるが現実でもある、この世界に来た瞬間からわしはそれをレイちゃんという肉体で感じていた、つまりそれはゲームのような選択をその人自身で選び取らなければならないと言う事、けれど人は選択を強いられ、その結果が返ろうとも戻る事は叶わない。それこそがゲームではなく現実を生きるということでもある。

 

「俺は…」

 

 彼は特殊な能力を有してわしの雰囲気が変化した事を感じ取ったのだろう。酷く辛そうな表情で言い淀む。

 

「人は過去に戻れない。あなたがどんなに凄い能力を持ち合わせようとも無理なものは無理でしかない……あなたは人間なのだから」

「……あんたは一体何者なんだ、どうして俺の心のうちを知って……誰にもリュウセイたちにすら話した事なんてないのに」

 

 思考が酷く混乱しているのだろう、怯えた眼差しをわしに向けてそう言ってきた。わしはその視線に合わせるようにタスク君の顔を見つめる。

 

「……それでも人間は未来を望み勝ち取れる生き物。あなたが本当に忘れられない想いを抱えているのなら決して手放してはいけない。そしてそれが生きる者ならば尚の事」

「!?」

 

 隠していた本心を暴かれたからか、怯えから一転幼い、子供が泣き出しそうな表情で浮かべてわしを見つめる。そんな彼の頭を布越しで撫で付けると僅かに目を見開かせ、次いで目を細めてそれを受け入れてきた。自分より小さな少女に撫でられ、それを素直に受け入れる青年など旗から見れば異様な光景だろうが、幸いにも他の仲間たちは話に夢中でわしたちを見ていない。存分に撫で終えるとわしは彼から手を離した。思いのほか気持ちよかったのか、タスク君は頭から手を離すとき不満そうに眉を潜めていたのが可笑しくて内心で笑ってしまった。きっと彼はこの時のことを後から思い出して悶絶するだろう。

 

「タスク君、君たちは明日を生きる人々のために戦い続けるのだろう。けれど、その中に自分自身を入れてやりなさい。君は君の心の中にいる存在と再び出会うために戦っている。それを忘れてはいけないよ」

「……あんたは超能力者か何かなのか?」

「君のような念動力なるものや新人類のような力は持ち合わせていないよ。唯少し、先のことを知っているだけの役立たずな老いぼれにすぎない。それでも、君たち若い者にこの先を明るく生きてもらいたいというお節介で話をさせてもらった。君には辛い想いをさせてしまったな」

 

 そう言って謝罪すれば、彼は慌てたように首を横に振った。

 

「謝る必要は無いぜ、あんたから不思議な波動と言うか、他者を優しく包み込むようなものを感じるんだ。可笑しな話、何か会ったことない祖父ちゃんと話しているような、そんな気がするんだよ。ぶっちゃけ、肯定されて嬉しかった。俺は諦めなくて良いんだって言われた気がしたんだ」

 

 これはまた直球でわしの魂を感じたということだろう。さすがは念動力者という奴なのかもしれないが、さすがにそうなのだとは言えず、小さく笑みを形作るのに留めた。

 

「さて、辛い話をさせた代わりと言っては何だが、君の…いや、君たちの未来を繋げる鍵のようなものをあげたいんだが、受け取ってもらえるだろうか?」

 

 そう言ってわしは懐からある一枚の石版の様なものを取り出してタスク君に手渡した。興味深そうに観察するタスク君が聞いてくる。

 

「文字のようなものが書かれているけど、これってなんだ?」

「それは太古の昔に紡がれた歌の歌詞だよ。ある少年が姉にあげたものを譲ってもらった。その石版はこれから先の戦いで必ず必要になるものだ。大切に持っていて欲しい」

 

 カガリから譲ってもらった例の石版を渡した事で本当の意味で彼との接触は果たされた。これで彼らは巨人たちを救う事が出来るだろう。

 

「見るからに古そうだけど、どこか懐かしい感じがする」

「それがあれば無駄な血が流れなくて済むだろう。君たちの仲間のうち誰かが行き詰った時にでも渡してやってくれ」

「ホント、あんたは不思議な感じがするな。けど、俺の勘が信用できるって告げているから素直に貰うよ。使いどころは自ずと分かるんだろう?」

 

 その問いにわしは頷いた。彼はそうかとだけ述べてそれを懐に仕舞う。

 わしはそれを見届けると幾つか思い当たる事を彼に伝言してもらうため言葉にした。彼は快く承ってくれたので安心だ。きっと、然るべき時、然るべき存在に告げてくれるだろう。

 

 その後、艦長のエレ様が閉会の挨拶を告げて彼らを見送る会は終わりを迎えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 そして彼らは宇宙に飛び立った。

 




 次回 間幕2 原作知識 おぼえていますか、いいえ、うろ覚えです。






 次回もサービス、サービス……間幕をもう少しお付き合い下さい。 

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