EBA 一番と四番の子供達   作:アルポリス

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 始まります。


第九話

 

 

 二人が落ち着きを見せた頃を見計らい、リリスは4号機に乗るようカガリに告げた。泣き腫らした顔そのままに頷くと軽い動作で腕を伝いエントリープラグの中に乗り込んだ。内部からの操作でプラグが装着される。

 

 それを確認したリリスが今度こそ告げた。

 

『これより、槍を通してアダムの魂を落す』

 

 述べた直後、二本の槍が淡い輝きを放った。それは時間が立つ連れ輝きが増していく。

 

『始祖たるアダムよ、太古の時より紡がれた魂の根幹を新たな器に落したもう。我らの抑止力たるロンギヌスを媒介に魂道が開かれん』

 

 目を開けられないほどの輝きが槍から放たれ始めると魂の道は開かれた。

 

 人間の魂と違いアダムやリリスのもつ魂とも呼ぶべきコアは一度サルベージさられた状態から新たな器にサルベージするのは難しい。仮に原初に漂う状態をサルベージする瞬間だった場合はそこにあるコアのすべてを掬い取るかのようにすれば良いので取りこぼしもなく意外と簡単だ。しかし、一度何かの器に入った状態から別の器に注ぐのは慎重にならなければ零してしまう恐れがある。それが極端に難しいとされる理由だ。リリスが零号機に簡単に入り込めたのは魂の状態でさ迷っていた、言わばサルベージされる状態だったからである。

 

 同じく槍と呼応するかのようにカヲルも前進が淡い光りに包まれていた。これは開かれた道にコアが導かれた証拠である。

 

『道は開かれ、アダムは導かれた。小娘、手のひらにいるアダムを四号機で食べてしまえ』

 

『はあ!?』

 

 リリスの言葉にカガリがうろたえる。それも仕方が無いだろう。しかし、リリスは焦り声を上げた。

 

『急げ、道が閉じてしまう!!』

『でも、食べるって、口はあるけど…』

『早くしろ、馬鹿者!! これが一番コアの情報を零さない方法なんだ!! もう時間がない仮の器たるリリンの肉体が保たん!!』

 

 その言葉通りカヲルの左腕が4号機の手のひらにボトリと落ちた。それをモニター越しで見てしまえば、カガリも腹を括るしかない。

 

 

『生きろ、カヲル!! 頂きまぁぁぁぁぁす!!』

 

 

 4号機がカヲルを握りこみ、その手を口元まで持っていくと口を開けた空間に押し込んだ。その刹那、頂くって、カガリ大胆と頬を染めたカヲルが呟く様をレイは、ばっちり見ていた。後で教育的指導を行おうとレイは心に決める。

 

 カヲルを飲み込んだすぐ直後、4号機の胸を覆う装甲、もとい拘束具が弾け飛び、むき出しになったコアが心臓の鼓動のように動き出す。

 

 それは収縮を何度も繰り返していたが、やがてそれは収まりを見せて鼓動は完全に止まった。

 

 

 無事完了した、そう内心で安堵していたリリスに今まで黙ってみていたレイが声を張り上げる。

 

「いかん!! 良子、逃げろ!!」

 

 自身の名前を叫ばれて咄嗟に十字架の方に視線を合わせたリリスは驚愕する。

 

 眼前に広がる白い景色、いや、リリスの肉体であるその腕が貼り付けされた場所から剥がれ、自身の魂を取り戻そうと伸ばしてきていたのだ。

 

『時を掛けすぎた。これじゃあ戻れない、あなた!!』

 

 悲痛な叫び声でレイに手を伸ばすもゆっくりしながら逃がさないよう握りこまれる白い手のせいで必死にリリスを求めて手を伸ばしているレイの姿が視界に映らなくなっていく。

 

 リリスの肉体に魂が還る、リリスは悲痛な表情で己の終わりを嘆いていた時、

 

『良子さん、そのままでいて』

 

 声と共にアダムの槍を握りこんだ4号機がリリスの肉体に向けて投げつけていた。

 

 槍は今まで刺さっていた場所と寸分違わぬ所に勢い良く刺さる。丁度心臓、魂があるとされる場所だ。

 

 リリスにとっての抑止力たるアダムの槍が心臓の部分に刺さった事で肉体は止まり、リリスを握りこもうとする状態のまま動きは止まった。

 

 ふわりとリリスの傍に半透明のカヲルが現れる。

 

『君が僕をリリンの肉体ごとコアに取り込んでくれたお礼だよ』

『……アダム』

『僕はもうカヲルだよ。君がそうしてくれたからリリンの肉体を分析再構築も可能となった。時間制限はあるけれど、再びコアに戻れば同じことを繰り返せる。でもどうして、こんな面倒な事をしたの? 道が開かれていればすぐにでも僕の魂をコアに取り込めたのに』

『ふん、私たちのように何十年も肉体を持って連れ添った夫婦と違って、あんたたちはまだ蜜月も過ごしていないだろうが。それは小娘にとって可哀想だろう』

『じゃあ、君は初めからこうするつもりだったわけ、アダムたる僕の為に?』

『勘違いしないでもらおう。すべてはあの人の望みだったからさ。そうじゃなきゃ、私自身がアダムや小娘のために動くわけない』

 

 そう言って、リリスは愛おしそうに無表情ながら肩で息を吐き出すレイを見つめた。その横顔を眺めていたカヲルが小さく羨ましいと呟く。それを聞きとがめたリリスはカヲルを睨みつける。

 

『ホント、愚か。あんたたちには肉体で触れ合える時間があるんだから、すべてはこれからだろう』

『!? ……うん、そうだね』

 

 そう言って四号機のエントリープラグから飛び出した笑顔のカガリをカヲルは愛おしそうに見つめるのだった。

 

 

 

 

 こうして、最後のシ者は4号機に食べられるといった形で生きながらえることとなった、けれど、名目上は消滅させた事になる。

 

 ゲームのシナリオも終盤に差し掛かり、ネルフ本部も最後の使徒を残すのみ。

 

 

 宇宙から飛来するすべてを破壊するものSTMC、宇宙怪獣。

 

 異性人ゼントラーディとメルトランディとの戦い。

 

 地球を狙う異性人、エアロゲイター。

 

 

 

 そして、ネルフを本来の姿に戻そうと暗躍する第十八使徒リリンとの戦い、元おじいはこの戦いが一つの終わりだと考えていた。終わりに近づいてく足音を自身の体で感じて、それでも尚、元おじいは歩き続ける。

 

 

 

 先に待つものがどんな事象であろうとも。

 

 

 

 

 

 

 

 

+サイド今はレイの元おじい+

 

 

 がぶの部屋での戦いが終わり、わしとカガリは使徒を倒した態で戻ってきた。丁度入り口の所に差し掛かれば、装甲をボロボロにさせたエバ二機とゲームで選択した、出家ばいん、だったかそんな名前の機体と魔神皇帝が同じく数多の被弾を受けた状態で対峙していた。そんな所に戻ってきたものだから、わしらは中での説明を追求された。おもに出家ばいんのタスク君と魔神皇帝の甲児くんに。けれど、シンジ君とアスカちゃんはわしらの無事を確認できたことで安堵し、追及は成されなかった。

 

 取り敢えず、自分たちのトップに報告をしなければならないので、タスク君たちの説明はお座なりに使徒を倒したとだけ告げて愚連隊に帰ってもらい、わしらは機体を元の場所に戻すと揃って司令室に向かった。

 

 御なじみの悪趣味な司令室にてゲンドウに説明したのはカガリだった。口下手なわしよりも確実だ。説明といっても、まさか使徒を残したとは言えず、零戦率いるわしが軽く消滅させたとカガリが報告すればゲンドウは素直に聞き入れた。ところが、シンジ君やアスカちゃんに関してはそうも行かず、特にシンジ君は出向している部隊からの離反宣言を口にした事が、初鰹の録音機から判明、アスカちゃんも同じくそれに加担したとされて、特務機関命令により二人の出向を解除、本部預かりに戻って二週間の謹慎処分となってしまった。

 

 一見して理に叶った処罰に思えるが、わしには別の思惑があると思っている。ねるふにとって、戦いはまだ終わっていないのだ。この先に待つ戦いを見据えてすべてのエバを本部に残したいのだろう。わしはこれでもアニメだけではなく、まあ、よく理解できなかったが、映画も見たからよく分かる。マヤさんの人間が最後の敵とはよく言ったもので、元妻が作り出した末裔も広い括りで使徒と呼ばれ、本当の意味で第十八使徒りりんという人間がこの本部に牙を剥いて来る。

 

 そう言えば、映画を見ていて気持ち悪いと思った、あの白うなぎたちも現れるはず、あれはアスカちゃんの弐号機を破壊して尚且つ食うという懸念があった。そう、過去形なのだ。それに関しては今のアスカちゃんを見ると逆に白うなぎが蒲焼にされそうな勢いなので特に心配していない。元妻も弐号機の中にある末裔の魂は異常だと認識していて、その娘であるアスカちゃんもその素質を受け継いでいるようだと述べていた。まさか、元妻が若干恐怖を抱いているとは思わなかったが、仲間ならこれほど心強いものはない。

 

 逆に心配なのはシンジ君だ。彼の初鰹は確かに特別だろう、だがそれはゲンドウやコウゾウにとっての認識であって、初鰹自体元妻の模造品であり、シンジ君も多少同調率がやり易いという、言い方は悪いがそれだけの少年。多少は訓練で格闘術を学び、それを初鰹に生かしているものの、総合的には見劣りしてしまう。何せ、永久機関という能力は今や、アスカちゃんやカガリにも付いているのだ。

 

 だが、彼には根の素直さと運動神経は悪くない、むしろ中々の才能を持ち合わせていると思う。でなければ、冥王星から帰ってくるまでの短期間で内公的な性格から攻撃的な性格に様変わりして机を割るような技術を学べるはずが無いのだ。

 

 ここは一つ、二週間の謹慎期間に乗じてカガリやアスカちゃんに鍛えてもらうよう提案してみるとするか。あの白うなぎは再生力が並ではないのだ、それが九体も存在して、それら全てをエバ三機で破壊しなければならないだから強化することに越した事はない。

 

 頭の中でこれからの事を算段していると何時の間にか報告が終わり、カガリたちが退室していた。それに習いわしも退室しようとすれば、ゲンドウが呼び止めてきた。わしは先に行くようカガリたちに告げて司令室に残る事になったのだが、ゲンドウは引き止めておきながら一言も言葉を発しない。コウゾウ氏は居ないのでゲンドウと二人机を挟んで対峙する形となっているのだが、向こうは椅子に座り、わしは直立不動、理不尽である。いい加減、足も疲れてきたのでわしは呼び止められた理由を聞いた。

 

「さて、わしをここに残した理由を話してもらおうか」

 

 そう、わしは最近自身の言葉を素直に出せるようになったのだ。しかし、それをシンジ君たちに披露するのも今更な気がして彼らの前では言葉少なめにしている。カガリには思ったことを汲み取ってくれるのでなお更だ。

 

「……全ての使徒が倒された今、残るは人間だけだ」

 

 ゲンドウはようやく言葉を口にした。

 

「貴様は我々の願いを知っているのだろう?」

 

 もちろん、奥さんに会いたいという想いだけでここまでしてきたのだろうことは理解している。

 

「そうか」

 

 それに宇宙怪獣の脅威やその先に待つ、終焉の、確かナンたらぽかすの脅威から人間、強いては息子や奥さんを守ろうとしている事も理解しているぞ。

 

「ならば、話は早い。即刻リリスを説得してガブの部屋を開かせろ」

「お断りだ、ゲンドウ」

「何故だ?」

「人類は、いや、お前の息子を含めたあの部隊の人間は終焉をただ見ているだけで済ますほど達観してはいない。まして人類補完計画のよう今の生を終わらせて、終焉をやり過ごすほど大人しくもない。結局彼らは戦うだろう、これは予言でもなんでもない、人が闘争本能を剥き出しにすれば、同じ種だけに限らず、全ての事象にすら戦いを挑む、人間にはそれだけの可能性が秘められているとわしは思うよ」

「所詮戦いは避けられないと言う事か」

「闘争だけではない事を理解していれば人類同士で戦う必要も無いのだが、こればかりは仕方が無い。人には多種多様の主義主張があるからな。それこそが人間だ」

「私のとっての主張、貴様にとっての主張か」

「然り」

「ならばこれ以上は意味を成さない、か」

 

 サングラスを外してゲンドウは立ち上がり、わしを鋭く見据えた。

 

「私は私の求めるモノのため、貴様を葬る覚悟が出来た。例えリリスがお前を守ろうとそれすらも打ち砕いてガブの部屋を開かせてみせよう」

「戦線布告大いに結構、わしは人類や子供たちの、強いてはこれから産れてくるであろう、明日を望むすべての生物のため、ある意味で尊くも悲しきお前の願いを打ち砕く」

 

 もう一度愛する者と再開したいという望みはわしにも理解できる。幸いにもわしは再会できた。だからこそ、ゲンドウの望みを笑うことも否定する事も出来ない。ただ、わしはこの世界の未来をシンジ君やカガリの未来を望み、ゲンドウは人類の存続と愛するものが居た過去を望んだに過ぎないという極めて両極端の選択。故にこの世界にわしという異物が現れた時点で互いを掛けてぶつかるのは必定なのだろう。

 

 お互いこれ以上語ることは無い、わしは踵を返して司令室を後にする。そんなわしの背中に投げかけるようにゲンドウは言った。

 

「その体は持って二週間だ」

 

 わしが何も告げることなく扉は閉められた。

 

 

 

 

 当に理解していたよ、ゲンドウ。

 

 既にこの体はわしのもの、だからよく分かる。初鰹のこあから帰ってきた頃から、わしはわしの終わりを見据えているのだ。

 




 次回 間幕 原作知識、おぼえていますか






 次回もサービス、サービス……これでシンジもネルフ待機です。そうでなければ、ロンドベルと一緒に行きそうですから。

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