EBA 一番と四番の子供達   作:アルポリス

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 高級ホテルの合コン会場にて

A「えーと、今日は彼女に黙って参加してますぅ、ちょっと飽きててやっぱ新しい恋でしょう」
B「三日、何も食べていません。今日はタダで飯が食えると聞いて参加しました」
C「いやはや、一人だけ老人だが、これでも金は持っている。何故なら裏ではカルト教団を運営しているからな、ところで、この会合は外に漏らさないでくれ、粛清されてしまうからね」

ゲ「……何故か、代表として葛城三佐に連れて来られたが、何の集まりなんだ?」

リ「………え?」
ミ「言っておくけど、あのサングラスは駄目よ」
リ「ならどうして連れて来たの!?」
ミ「代表だからよ」
リ「分かりやすいけど!!」
ミ「でしょ」

ゲ「小声で話していてもニュアンスで悪口を言われているのは何となく理解できるぞ!」




 始まります。


間幕

 黒幕の死は多方面で影響を与える事になる。エアロゲイター総司令官 ラオデギア・ジュデッカ・ゴッツォは自身の出生を、ユーゼスによって生み出された複製人間だという事実を今後知る事はない。最後まで副司令官の安否を憂うだろう。

 

 同じく、イングラム・プリスケンは自身を縛る鎖の二つ、それも片方は切れないと思っていたものがこの戦いで切れたことに酷く驚きを見せた。もう一つの方は元凶が死ねば自ずと切れることを理解していたので特に気にはしない。

 

「時の呪縛が解かれた。俺にも先の未来があると言うのか」

 

 残る鎖は際も困難とされる因果の鎖だけだが、それに関しては元老人が語った夢物語を信じていられる自分がいるので取り敢えずは構わない。

 

「それでもやる事は変わらない。リュウセイたちの敵として立ちはだかり、そして死のう」

 

 死のうとも自分はもう先の未来を抱けるのだ。それがどんなに嬉しいことか。

 

 この選択が後に因果の鎖すらも断ち切る芽を作り出すことになるのだが、これに関して語る事は無い。少なくとも今は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユーゼスの死はとある秘密組織にも伝わっていた。六体ほどのモノリスを見据えながら人類補完委員会の議長にしてゼーレのメンバー、キール・ロレンツはバイザーを布で拭きながら、次いでに滴り落ちる顔の汗をも拭いていた。

 

「随分と数が少ないようだが残りのメンバーはどうした?」

 

 キールの問いに02と表示されたモノリスが答える。

 

「三人は欠番とされた使徒の出現に怯え、出席するのが嫌だそうだ。一応、風邪、腹痛を引き起こしたことにしてくれと言われたが…」

「小学生か!!」

 

 03と表示されたモノリスが尽かさず突っ込みを入れた。キールは深いため息を吐いて残りのメンバーの所在を聞いた。

 

「一人は今年最後の幸運な出来事が起きるから行くのは勘弁らしい」

 

 04と表示されたモノリスが答えれば、02と表示されたモノリスが同意する。

 

「ああ、あいつか。今頃、若いハニーを落とそうと必死になって高いホテルで食事しているのだろう。大丈夫だ、次の会合では絶望をその背に下げて戻ってくる」

「リア充撲滅!!」

 

 03が高らかに叫べば、残りのメンバーが拍手を送る。国は違えども今ここにいるメンバーの心は一つだ。

 

「もう一人は今病院の個室で生死をさ迷っている」

 

 06と表示されたモノリスが告げれば、キールがそれに付け加えた。

 

「奴に関してはこちらにも連絡が来ていたようだ。忘れていたよ、若い女に受けが言いとはいえ、精力剤の飲みすぎで死の淵をさ迷うとは、何と嘆かわしい」

「本音は!?」

 

 03が叫ぶように問いかければ、キールは深い笑みを浮かべた。

 

「むろん、粛清されればよい!!」

 

 滴る汗も何のその、キールが盛大に叫べばしゃがれた老人たちの雄叫びがその場所に響いた。ゼーレの結束力ここにあり、であろう。

 

「さて、最後の一人についてだが、皆知らぬようだな」

 

 手を掲げ、興奮するモノリスたちを制してキールが問えば、返ってくるものは皆一様にして存ぜぬという言葉だった。だが、今まで叫んだりつっこんだりしていた03がポツリと呟いた。

 

「あいつは日本人だ」

 

 その言葉を聞いてモノリスたちが別の意味で慌てふためき、口々にニンジャー、ニンキョーと叫びだした。場はもう混乱状態である。

 

「そ、そうか、いやきっと、どこかに潜伏しているのだ……そうに違いない。そうであってくれ……せめて、老い先短い人生、キツイ拷問は止めてやってくれと願うばかりか」

 

 ゼーレの存在が明るみに出ることよりもメンバーの安否が気になる割とアットホームな秘密組織であった。

 

 その後は恒例のお茶会、モノリスなので雰囲気だけだ。と近況報告、いかにしてリア充を壊滅させたかの自慢大会に移り、最後の締めとしてキールが宣言する。

 

「これからも来るべき人類補完計画の発動まで粉骨砕身リア充を許さず邪魔していくことをここに宣言する」

 

 もう、何の秘密組織だか分からないが、これでも人類の存続と永遠の命を手に入れるために様々な非道を行ってきた組織なのである。余談だが、特にリア充の個人、リア充が多い組織には容赦しなかった。だが、それは自身のメンバーに対しても同じである。メンバーにリア充がいれば粛清という嵐で抹殺してきたくらい厳しい組織なのだ。

 

 会合も終わりを告げてモノリスが去っていく間際、キールは今思い出したかのように言葉を発した。

 

「あ、忘れていた。碇を解任するから。あいつがリア充か否かを今まで探っていたんだが、先ごろ金髪の若い女性と食事をしているところを写真に収める事が出来た。物的証拠は手に入れたので、確実性を高めるため今度は状況証拠が欲しいところだ。何か、案はあるか?」

 

 メンバーはそれ対して金髪の女を連れて来いという案を出した。決して羨ましいわけでもなく、単に見てみたいという欲求もあるわけではない。純粋な尋問のためである。

 

「なるほど、そのように手配しよう。理由は先の戦いで零号機凍結の理由に関するパイロットの尋問に隠しながら、いかにして連れてくるかだが、この際パイロットの方でも構わんか」

 

 JC、JC、JC、とメンバーが騒ぎ出した。それを手で制して黙らせる。

 

「碇、我々を謀るとどうなるか、その身で味合わせてやろう。美人の先妻、若い金髪女性、JC、碇を解任するには最適の理由だ」

 

 そして旗ともう一つの事案を思い出してキールは告げた。

 

「すまない、もう一つ忘れていた、秘密裏に碇と接触していたエアロゲイター副司令官、ユーゼス・ゴッツォが先ほどエヴァによって消されたが…まあ、あの仮面だ、リア充ではなかっただろうから謹んでお悔やみ申し上げると言った所か」

 

 メンバーは口々に仮面を付けるとはそれほど醜かったのか、分かるぞ、その気持ち、我らモノリスと同じ顔を晒せなかったんだ、と言いながら涙ぐむ始末、もちろんモノリスなので実際涙を流しているわけではないが、発する声が泣いている。キールに至ってはバイザーが壊れるのでは思わせるほど滝の涙を流していた。

 

「きっと、彼の母星では悲劇的な非リア充だったに違いない。迸る欲の暴走故に過ぎた力を求め、そして無残にも非リア充のまま死ぬ事になった。我らは彼の死を教訓にしなければならない、過ぎたリア充を願望すればその先に待ち受けるのは己の破滅だ」

 

 モノリスたちが涙交じりの雄叫びを上げながら同意していく。キールはその一つ、一つに相槌をうって応えた。そして最後に述べる。

 

「非リア充が存在するのは偏にリア充が存在するからだ。我らは決してリア充に屈してはいけない。我らの願いが妨げられれば世界の、いや宇宙全ての非リア充が不遇の明日を生きることになり、やがて迫り来る終焉の銀河によって非リア充の烙印を押されたまま消え去り、そんな存在がいた証すら残せなくなるだろう。それではあまりにも悲劇的過ぎる」

 

 嗚咽がその空間を満たしていた。モノリスたちが過去を振り返り、その不遇さに涙しているのだ。そうしているうちに一つ、また一つとモノリスがフェードアウトしていく。

 

 そして最後に残ったキールはバイザーを鈍く光らせた。

 

「我らゼーレ、リア充を許すまじ」

 

 

 

 

 

 その空間はキールの声を最後に暗闇に閉ざされるのだった。

 




 次回タイトル 最後の食事






 次回もサービス、サービス……書いといてなんだが、こんなゼーレは嫌だな……でも、シンパシーを感じるのは何故だろう。

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