EBA 一番と四番の子供達   作:アルポリス

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 ギャグ要素が殆どない…だと!?



            始まりますです。


第三話

 

 ネルフ本部に緊急を告げる警報が鳴り響いた。広々とした構造の作戦命令施設では各スタッフが慌しく動き回り情報を伝達していた。そして統括した一報が参謀のミサトに告げられた。

 

 使徒から撃ち出された一撃がジオフロントに繋がるすべての装甲を破壊した。第一から第十七まである装甲がたったの一撃。ミサトは内心で驚愕しながらもエヴァ弐号機をジオフロント内にある森林に配置するよう伝えた。バックアップに急遽存在を公表されたレイの姉が乗る4号機を据えて待機状態にするよう言葉を添えて。ミサトの心情としてはいきなり現れ、禄に似ても居ない姉という不審な存在より長く共にしたアスカを選ぶのも無理は無かった。

 

 ここで、何故レイの存在が出ないのか。これは碇指令より下された勅命によるものであった。今回の使徒との戦いにレイは出してはならない、それ以外は好きにしてよいという酷く不信感を滲ませた命令にミサトは頷きながらも内心で指令に悪態をついた。

 

 モニターには堂々とした貫禄でジオフロント内に降り立つ第十四使徒の姿が映し出されていた。弐号機の射程に入った使徒に数多のミサイルと銃弾が浴びせられる。雄叫びを上げながらライフルやバズーカを撃ち出すアスカには鬼気迫るものがある。やがて爆煙によって視界から映らなくなった使徒にすべての武器を撃ち終えた弐号機が近づいていく。その手に握り締めたソニックレイブを構えながら何時でも反応が出来るよう慎重に歩みを進めていたその瞬間、一見布のような触手が爆煙から飛び出してきた。咄嗟にソニックレイブで防御体勢するも意図も容易く武器を持っていた右腕ごと切断した。

 

 作戦本部にアスカの悲鳴が響き渡る。一瞬の事態にモニターを見ていたミサトも気づけないばかりか外部からシンクロ率カットの命令すら出せなかったのだ。当然その他人間にも目視は難しく遂行される事は無かった。

 

 使徒はもがく弐号機に向けて進み、止めを刺すべく二本の触手を動かした。今度は始動からの時間差でミサトも確認できたことにより命令を伝えようと声を発するところでモニターに変化が起きた。

 使徒に向けて一条の光が撃ち込まれたのだ。それを放ったのはシルバーの装甲を持つエヴァ4号機だった。

 

『これより使徒と戦闘を開始する。弐号機の回収を急いでくれ!!』

 

 元気が良い声が作戦本部に響き渡るとモニターに映し出された4号機はポジトロンライフルを投げ捨て走り出し、その勢いのまま使徒に突貫した。

 

 唖然とするミサト含め、その場に居た一同も呆然とモニターを眺めていた。何故なら使徒が発生させたATフィールドに阻まれ見るも無残に激突したのだ。だが、そんなことでリツコも驚かない。むしろ当然だと自嘲の笑みを浮かべるだけだ。

 

 その後に迫り来る触手を4号機は紙一重で避けていくのだ。僅かに装甲を掠める程度には被弾しているものの致命傷は一度も無い。しかも装甲に掠める時は4号機が攻撃に転じた時だけで、避けるだけなら掠めもさせないのだ。

 

『クソッ、堅いな、こいつ。こっちの攻撃がビクともしないぞ!!』

 

 足元のウェポンラックから取り出した通常よりも長めに設計された後期形プログレッシブナイフで切り込もうとしてもフィールドが邪魔で本体に届かない。悪態を付きながらも触手の動きを覚え、攻撃に転じる時でも被弾しなくなった4号機にモニターを見ていた一部から感嘆の声が上がる。

 

 紙一重の攻防を繰り返していたその時、沈黙していた弐号機が立ち上がった。そして片手でナイフを取り出すと使徒に向け突貫したのだ。

 

『まて!! 今の状態のお前ではやられてしまうぞ!!』

 

『うるさい、うるさい!! これ以上誰にもあたしの邪魔はさせないんだからぁぁぁ』

 

 4号機からの指摘をアスカは憮然と拒絶し、弐号機を走らせる。

 

 勢いよく突き出されたナイフは残念ながら使徒本体に到達することなく触手によってもう片方の手も切断され、4号機が止める間もなく、もう片方の触手によって首が切断された。

 

 これ以上ないくらいの血飛沫が上がって弐号機は血の海に沈んでいった。唯一の救いは、ミサトの状況判断により腕と首が切断される寸前にシンクロ率カットはなされてパイロットの精神負担は軽減されたことだろう。

 

『くそぉぉぉ、よくも大切な仲間をやってくれたな!! あたしは怒ったぞ!!』

 

 共感するかのように4号機のツインアイが輝きだす。すると、あんなにも頑なだった使徒のATフィールドを中和する事に成功したのだ。これにはモニターを見ていたリツコも驚愕して非科学的だわと呟いた。科学者としての立場ならそうだろう、しかし、全スタッフの命を預かるミサトにしてみれば棚から牡丹餅である。あの叫び声を聞いて信用できないと思ってしまった自分を恥じた。

 

 これでようやく勝てると踏んだ矢先、事態は思わぬ方向に進んでいった。

 

「これは! 重力場反応を確認、何者かがこの場所にワープアウトしてきます」

 

 事態を観測していた青葉シゲルが声を張り上げたのだ。反応があった場所で空間が歪む。そこに現れたのは全身が黒い装甲に覆われた正体不明の起動兵器だった。それは物凄い速さで使徒と4号機の元に辿り着き、4号機のほうに攻撃を仕掛けてきたのだ。使徒も目標を4号機に定めていた事から苦戦する。フィールドで黒い起動兵器の攻撃を防ぎながら使徒の攻撃を避けるものの、猛攻に晒され無常にもケーブルが切断される。それでも尚攻撃が続き、やがて内部電源が終わりを告げると4号機は沈黙した。

 

 使徒から離れた黒い機動兵器から作戦本部に通信が入る。

 

『これでエヴァンゲリオンの可能性、そして人類補完計画の要が顔を出すというものか、碇ゲンドウ』

 

 名指しで呼ばれたゲンドウが僅かに眉を吊り上げ、声の主の名前を告げた。その名前にミサトが驚愕する。

 

 イングラム少佐。

 

 かつてはSRX計画に深く関わりながら共に戦う仲間だったが、敵の異性人エアロゲイターのスパイだった裏切り者にして戦闘のプロがこの場に現れたのだ。

 

『先ほど戦っていたエヴァは本来ありえない存在。故に退場願っただけ。よってこれ以上戦闘の意思はない。もちろん信用するかしないかはお前たち次第だ。ただし、生半可な気持ちで挑めばこのアストラナガンで殺す事になる』

 

 先ほどの戦いから強力な機体だということは理解できる。万事休すといったころか、と言いながら状況打破を考えているとそれは現れた。

 

「世のため人のため、子を愛する親のため、悪の希望を打ち砕くダイターン3! この日輪の輝きを恐れぬなら掛かって来い!!」

 

 ダイターン3が本部上空に飛来してきたのだ。

 

「今はイングラム少佐より使徒撃破が優先これ以上本部に近づけないためにもここは僕がお相手しよう」

 

 

 

 

 ダイターン3が使徒の下に飛翔する様をモニターから見ていたゲンドウが同志たちに指示を出す。初号機をダミープラグで発進させようとしていた。

 

 ところが、何度繰り返しても拒絶信号を出してしまうのだ。

 

「やはり、未熟なレイのダミープラグの方ではこの前の一回が限度か」

 

 ダミープラグはレイの精神を基に作られている。これはまだ、赤木リツコの母が生きていた頃に製作された言わば試作型である。今のレイは中身が老人であり、協力などしてくれるわけもなく完成型を作ることが出来なかったのだ。

 

「忌々しい、あの老人は多方面で支障を来たすな。もう一度、A800からやり直せ」

 

 同志たちに指示を出して後方に振り返るとそこには碇シンジが静かな眼差しで自分を見ていた。音もなく忍び寄られ、驚愕したゲンドウはサングラスを落とす。それを難なくキャッチしたシンジが勢いよく握りつぶした。

 

「……シンジ」

「これで四分の三殺しは済ました。道を開けて父さん、初号機には僕が乗る」

「……何をしにきた。お前はパイロットを外された」

「嘘はよくないよ……あの使徒が来るまで時間は無かったからそんな暇は無かったはずだ」

「……それは」

「何をしていたかは問わないよ。父さんにもプライドのぷの字ぐらいはあると思うしね」

「………」

「僕はさ、これでも父さんを嫌いにはなれないんだよ。たった一人の家族じゃないか。四分の三殺しても死んだ事にはならない。つまり最初から父さんを完全に殺す気なんて無かったんだよ」

「シンジ」

 

 瀕死にはしていたと告げているようなものだが、内心で感動していたゲンドウは幸いにも気づく事はなかった。

 

「僕は皆を守りたい。ねえ、父さん、僕はこんなことを思えるようになったんだよ。自分でもらしくないとは思うけど、それでも誇りに思う自分がいる。だから父さん道を開けてくれないかな」

 

 思慮する事もなくゲンドウは道を開けた。シンジは僅かに笑みを浮かべて歩き出すと、父親に問いを投げかけた。

 

「ねえ、父さん。僕は何者だろう?」

 

 ゲンドウは少し考えるそぶりを見せながら口を開いた。

 

「お前はエヴァンゲリオン初号機パイロット碇シンジだ」

「うん、そして父さんの息子だ」

 

 歩みはやがて走りに変わり、初号機エントリープラグに飛び込んだ。

 

 

 

 皆の命と自分の誇りを守るために。

 




 次回 縛られる世界






 次回もサービス、サービス……雰囲気が重い、重いよ。

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