EBA 一番と四番の子供達   作:アルポリス

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 オリジナル展開極める話が始まります。


 長いです


原作のかたち 剥離のかたち

+サイド今はレイの元おじい+

 

 

 ゲームでは出てこない第八使徒を倒して一週間、わしの周りでは割と平穏が流れていた。時折、諜報部の役人が視界に映ってくるものの日常の一部にしてしまえば気にならなくなった。さて、割と平穏という言葉を使ったのはわしにとってはある問題が浮上したからだ。それは学校生活において発生した。

 

 一週間前、学校で普通に午前の授業を受けて、さあ楽しい昼飯を取ろうかと弁当を取り出せば教師から一枚の用紙を渡されたのだ。

 

 そこには修学旅行、おーぶ一週間の旅と書かれていたのだ。当然わしはエバ操縦者なので行けないと思って不参加にしたのだが、なんとゲンドウから、おーぶに行って実情をレポートして来いといわれたのだ。当然、諜報部に見張りはさせるが、と不敵な笑みで言われたときは正直殴ってやろうかと思ったものだ。

 

 そんなことで給料を貰っている身のわしは命令に逆らえることも無く急遽旅支度をしてねるふより支給された渡航用アイデーを貰ったのが出発の三日前、つまり今わしがいる場所は観光地おーぶなのである。ちなみに最初の二日は団体行動で観光地のはうめあ火山や庁舎などの見学を行い、今は三日目の自由行動中だ。面子はトウジ君とケンスケ君、本当は委員長も入るはずだったのだが、別の仲が良い女の子に誘われどうしても断れず回る事になったらしい。わしは誘われなかったから誘った女の子はわしのことが苦手なのだろう。わしは普段、ぼっちというやつなのかもしれないと感じていたから余計悲しくなった。

 

 ああ、そうだとも、さっきは強がりで面子といったが、元々一人席で呆然としていた、各々が仲の良いグループを作り出して内心焦っていたわしを見兼ねてトウジ君とケンスケ君と委員長が誘ってくれたのだ。

 

 ケンスケ君がわしに買ってきてくれた、とろぴかるな飲み物を飲んでいるとトウジ君はカメラ片手にため息を吐いた。

 

「それにしてもこのオーブっちゅうところは不思議なところやな、そない大きな島や無しここまで豪勢な町並みっちゅうのはある意味凄いで」

 

 街中の商店を眺めながら言った。それを聞いてケンスケ君が眼鏡を光らせる。

 

「当然だよ、ここはオーブ本島、五大氏族が納める土地だからね。このオーブが発展したのは今も活動中の火山による地熱発電でエネルギー問題をある程度解決、このご時勢エネルギー問題は政治資金を食う化け物だから」

 

 わしは飲みながら鼻高々に語るケンスケ君を眺めていた。チラチラと映る諜報部員は無視だ。というか、もう少し分かりにくくして欲しい。格好が私服になっただけで雰囲気がカタギに見えないぞ。

 

「それに……」

 

 ケンスケ君は小さな声で言いながらわしたちを手招きする。近づいたわしらに視線を合わせ、次いで周りに視線を動かして戻ってくると口を開いた。

 

「オーブはその豊富な資金で独自の軍事技術を開拓しているという噂だよ。下手すれば、今のジオン並みの技術力があるらしい」

 

 ほう、それは良いことを聞いた。もしかしたらゲンドウはその当りを探って来いと言ってきたのかもしれない。だが、中身老人とは言え、見た目少女にさせるようなことではないだろう。

 

「ほんなら、モビルスーツっちゅうやつがこの島にはあるんかい」

 

 トウジ君はそんな事を述べながら町並みを見渡す。残念だが、存在していたとしても、こんな街中には無いと思うぞ。それに今のご時勢では難しい。

 

「資源がない」

 

 わしがそう言えば、トウジ君は珍しそうな目でわしを見て、ケンスケ君はキラキラした眼差しで見つめてくる。

 

「凄いね、綾波。そう、残念ながらこの島には資源が無いんだ。殆どのものが輸入で賄っている状況、そして…」

「今は戦争時…機体を作り出せるほどの資源は…確保できない。ここは表だから」

「うん、うん、そうだね。補足するならこのオーブは表向き内外に戦争を持ち込まないという理念があるんだ。そんな国が堂々と資源を確保する事は出来ないさ、言ってる事と逆だから世論が許さない。かといって裏で手を回していても戦時下では表向きになりやすいからそれもままならない」

「何でばれるんや?」

 

 トウジ君にとっては当然の質問だ。わしが言っても良いがこの口は時に強暴だから、ここはケンスケ君に任せよう。

 

「何処の軍も資源を欲しがるからさ、そうなれば数が減る。けど、戦争は続いているから減った中からまた争奪戦が起きる。そこに名無しの横槍が入れば各国や軍がそれを調べるに決まっているよ。どんなに強固な隠蔽を行っても火の無いところに煙は立たず、ほんの少しの証拠が残ってしまったら、あっという間に表沙汰だ。それじゃリスクが高すぎる。じゃあ、何時が良いのか、簡単だよ、戦争終結寸前が一番良いんだ」

「何でや?」

「武器を放棄するからさ。そうなれば小規模な戦争商人やジャンク屋は戦争が終わってから何年後かには食っていけなくなる。そこに不明瞭な依頼があった場合どうする?」

「なるほど、食っていくために売るんやな」

「小規模なら表沙汰になりにくいというのも大きいかな。大企業となると何十年か先を見据えて証拠を残しておくらしいし。甘い汁は一生吸いたいものだろう?」

 

 そう、終結寸前がミソなのだ。終結してしまえば次の戦火に備えて大国は秘密裏に買い漁るだろう。戦争で数が少なくなった資源自体をいくら豊富な資金を持ち合わせたといえ、おーぶは小国に属する。大国には残念ながら勝てないだろう。

 

 

「へえ、学生の身分で面白い事を言うな」

 

 

 わしたちに向けられた第三者の声が聞こえ、驚きを見せるトウジ君とケンスケ君に平時無表情のわしは声の方向に視線を向けた。

 

 そこにいたのはこのおーぶの住民だろうか、極めて簡素な格好をしたわしらより一つか、二つ上の金髪の少女がわしらを見て笑っていた。ただ、目は笑っていない様子から彼女は僅かに怒っているようだが。

 

「お前ら、格好から修学旅行だろ、どこだ?」

 

 少女はわしらの制服を見てそう問いかけた。そうなのだ、わしら制服を着なければならない決まり。これには国の情勢や今の戦時下に置いて身分を分かりやすくするための処置でそうするよう決まったのだ。この国に来るときも戦闘機が護衛と称してついてきたほどである。ただ、小国とされる日本は人類戦争には関わっていないのでジオンなどの標的になりにくいからこそ、修学旅行を遂行できたとも言える。しかし、今後の情勢が不明慮なので、行ける内に行っとこうという精神でわしらは中学一年で修学旅行に行く事になったのだ。

 

「なんや、きさん! いきなり現れやがってからに、なんでわいらがきさんにそないなこと言わなあかんねん!!」

「ちっ、それは何語だよ。所々、ジャポン訛りがあるからジャポンだと思ったんだが、違うのか」

「トウジは少し黙って、彼女ちょっとやばいよ」

 

 ケンスケ君が少女とは別の場所に視線を合わせながらトウジ君を小声で嗜める。わしはケンスケ君が見ている先を不自然にならないように見据えた。

 

 そこにはわしに付いていた諜報部員のような堅気とは思えない男たちが目の前にいる金髪の少女を見守るかのように立っていた。素人のケンスケ君に知られてしまうようでは彼らの技量が無いのか、それともわしらに下手な事をさせないためにわざと分かりやすくしているのか判断がつきかねる。

 

 わしはトウジ君とケンスケ君を庇うように前に出て少女と対峙した。後ろから心配する声が掛かるもそれを無視する。彼らはぼっちのわしに声を掛けてくれるほど優しい子だ、楽しい修学旅行がこの少女にぶち壊されるのはしのびない。

 

「日本で正解」

「お、今度は笑わないお前が答えるのか? そうか、やっぱりジャポンか」

 

 この話し方、所々高圧的な態度に出る感じが前世の記憶に引っかかる。こう言った話し方をしたのは誰だったか……。

 

「日本語上手い」

「まあな、語学は一通り習ったからな」

「大変だったでしょう?」

「仕方ない、覚えろと煩かったからな」

 

 思い出した、元妻の兄がわしに対してこんな感じで高圧的だった。可愛がっていた妹貰い受ける立場だったから仕方ないと思っていたが、後々考えれば良家を継ぐ立場だからこそ、だったのだろう。つまりこのお嬢さんもそういった立場にあるのかもしれない。

 

 そしてそれはつまり。

 

「五大氏族は大変」

「お前も分かってくれるのか! そうなんだ!! アスハを継ぐ身とし…て…え?」

 

 驚愕の表情でわしを見てくる、アスハ氏。後ろの彼らも同様の表情を浮かべているだろう。相手の意表を付いてやった形だが、わしは選択を間違えた。アスハ氏の後方に控える多分、彼女を守る衛士がゾロゾロと現れてアスハ氏を囲うように立ちはだかった。

 

 これはトウジ君もケンスケ君も悲鳴を上げて縮こまる。しかし、今ならこちらが素直な態度を取ればお咎めはなしだろうと踏んだ、わしが馬鹿だった。わしという存在はわしが思うよりねるふには重いらしい。

 

 今度はわしに付いていた諜報部員が数人かがわしたちを囲うように現れたのだ。わしが把握していた人数より多いのに腹が立つ。わしに見せていた諜報員は残りを隠すための囮だったのだ。

 

「何故、出てきた?」

 

 内心の怒りを抑えて問えば彼らは衛士を見据えながら答えた。

 

「あなたを守るのが我々の最優先命令です」

「ここは街中」

「それは向こうも同じです」

「穏便に済ませたかった」

「これから交渉すれば良いのです、すべては我々が行いますのでご安心を」

 

 なるほど、向こうも痛い腹を探らせたくは無いのだと暗に告げているのか。ねるふ諜報員はわしが思っているより優秀だ。

 

「アスハ氏」

 

 直情型の性格をしているのだろう、この緊迫感など気にもせず、衛士に何で出てきたと怒鳴りつけているアスハ氏に声を掛ければ、ようやくことの状況に気づいたのか顔を引きつらせてわしを見た。

 

「ここは人が多い。会談場所の変更を」

「え? あ、うん」

 

 意外と素直に了承してきたので、こちらも内心で驚く。高圧的な態度を取りながらも素直な部分を持ち合わせているこの子は果たして政治家になった時、どうなるものやら、などと本人に告げたら怒りそうな事を考えていると、衛士が道を開けて促されながら入ってくる褐色の肌の男性が声を掛けてきた。

 

「その必要はありません。お互いここであった事は忘れましょう」

「おい、キサカ!! どういう意味だ!!」

 

 キサカと呼ばれた男は私とアスハ氏の間に立ってそう言った。アスハ氏にはそのような考えは無いらしいが。

 

「別に構わない」

 

 こちらとしてもその言葉は渡りに船というもの。わしは別にして後ろで事の成り行きを見守っている二人は組織とは関係ない唯の学生なのだ。

 

「こちらは構うぞ!! どうして一学生にこんなにも物騒な連中が付いているんだ!!」

「お嬢様……落ち着いて下さい」

「オーブに何かあったらどうするんだ!! ここは拘束してでも…」

 

 その言葉は駄目だ。懐に手を入れて構える諜報部にわしは口を開く。

 

「止まりなさい。あなたたちが行動を起こしたら余計に身動きが取れなくなる」

「おい、お前はどうしてそんなに落ち着いていられるんだ!! さっきもオーブが武装しているとか、根も葉もないことを言っていただろうが!!」

 

 アスハ氏は矛先をわしに向けてきたようだ。そして気づく、少女はそれで怒っていたのかと。少女はオーブ愛が強いらしい。

 

 どう答えようか考えあぐねていれば後ろで縮こまっていたケンスケ君とトウジ君が身を乗り出してくる。

 

「僕らは正真正銘日本の学生だよ! このぐらいの学生は妄想することが一種のステータスなんですから、一々それに目くじらをたてるのはどうかと思います!」

「そうやそうや、ホンマに何も無ければ堂々としてればええんとちゃうか?」

「おまえらぁ!! 言っていい事と悪い事ぐらいあるだろう!!」

 

 二人の言葉にアスハ氏の怒りが増す。わしは自身の言葉を紡ぐため、死に物狂いで言葉を吐き出す事にした。

 

「アスハ氏、これが現実です。自分も含めて彼らは所詮外国人なのですから、内政など分かるはずもない。知る機会などネットで流れる噂ぐらいです。そう、自分や彼らが話していたのは所詮噂という奴です。あなた方がそれに対して不快に思われたのでしたら素直に謝りましょう」

 

 言って、わしが視線を後ろの二人に向ければ、不満そうな表情を浮かべながらも彼らは謝罪を口にした。

 

「これ以上事を大きくするのはお互い無い腹を探る事になるだけですから水に流しませんか?」

 

 妥協して欲しいという言葉を含めて述べれば、アスハ氏は目を吊り上げてわしを威嚇しだした。

 

「それはそちらの方便だ!! お前たちには痛い腹があるから穏便に収めたいだけだろうが!!」

「お嬢様良い加減しなければお父上がお怒りになります」

「うるさい!! お父様は関係ない。むしろお父様の娘としてオーブを守っていかなければならないだろうが!!」

 

 ああ、彼女は自らの証明を自分の口から軽々しく告げていることに気づいていない。

 

「オーブ代表の娘としてご立派な考えです」

「な、今更煽てたって許さないぞ!!」

 

 やはり、気づいてくれない。何処まで素直な性格なんだ。けれど、そんな彼女がわしは嫌いじゃない。むしろ素直な子は元おじいとして好ましい。仕方ないか。

 

「分かりました、アスハ氏としては自分たちを一学生として見られないということでよいですね?」

「当然だ、そこにいる奴らは皆武器を所持しているだろ。この国で武器の不法所持は犯罪だ。そしてそんな彼らがお前たちを守るようにしていた。こんなの馬鹿でも分かる事だ!!」

 

 馬鹿でも分かるか、彼らが平然と武器をちらつかせる意味も理解して欲しかった。きっと、馬鹿でも分かるはずだ。

 

「良いでしょう、代表として自分が拘束されます。彼らは本当に一学生なので勘弁して欲しいのですが?」

 

 わしの言葉に自分たち側の連中が驚愕して口々に反対を述べてきた。

 

「駄目だ、ここにいる全員を拘束する」

「それは止めた方が良いでしょう。すぐにでも日本政府から正式な抗議文が届きますよ。これが表沙汰になって下手な噂が流れればおーぶの名声が地に落ちます。代表の娘が不当に拘束、現代表の支持率がどうなる事やら」

「それは……」

「ですが、自分は確かに学生としての身分だけでなくもう一つの身分もありますから拘束されても表沙汰にはなりません。こちらも都合が悪いですから」

 

 アスハが考え込む間にわしは自分たち側に説明する。

 

「穏便に済ますためだから口出し無用」

「しかし、何かあってからでは遅いのです。ここは表沙汰になってでも止めるべきかと」

「出来るだけ恨みを残しては駄目。ここには自分たちだけではなく他の学生がいる」

「我々の任務はあなたの監視及び、護衛で」

「司令に正式ではなく裏から手を回して出来るだけ穏便に済ませなさいと。出来なければ基地が崩壊するだろうと伝えなさい」

 

 脅迫染みたわしの言葉に怯えを滲ませた諜報員は頷くしかなかった。今度は不満顔の二人の方に向いた。

「トウジ君、ケンスケ君。自分のせいで申し訳ないことをした」

「な、綾波が謝ることないで!!」

「そうだよ、元々僕が変な話をしたから目をつけられたんだ」

「それでも、だ。自分がこの国に来た事自体騒動になりえる事だったんだよ。自分はあれの操縦者だからね」

 

 わしがそう言ってしまえば、彼らは口を紡ぐしかない。元を正せばそこに帰路するのは彼らも理解するだろう。

 

 しかし、トウジ君が口を開く。

 

「それでもや、綾波はワイらと同じ学生なんやで、少しぐらいの平穏があって罰は当たらんやろが」

「そう言ってくれるだけで嬉しいよ。だから、自分やシンジ君の分まで楽しんで欲しい。学生は勉学と遊びに全力を尽くすものだからね」

 

 トウジ君とケンスケ君はわしの言葉を聞くと苦笑を浮かべた。

 

「なんや、綾波はオッサンぽいねんな、知らんかったわ」

「普段一言二言なのに喋るとそんな感じなんてギャップ萌えでも狙っているのかい?」

 

 中身が老人だからですとは言えないので、苦笑を…浮かべたかった。死に物狂いでも表情までは配慮できないようだ。

 

 返答を待っているケンスケ君には悪いが、どうやらアスハ氏は選んだようだ。

 

「分かった。代表でお前を庁舎の方に拘束、学生二人は監視をつけるが自由にしていい。残りは抑留所に拘留だ」

「賢明な判断とだけ述べておきます」

 

 わしらの会話を聞いていた、キサカ氏は深いため息を吐くとアスハ氏に歩み寄る。

 

「こうなっては仕方がありません。彼らについては私が処理をしておきます。お嬢様は彼女を庁舎にお連れください。くれぐれも粗相の無いよう丁重におもてなしを」

「馬鹿を言え、こいつは容疑者だ、なぜ丁重に扱わねばならん」

「お嬢様は非人道的な対応をすることがオーブにおいて許せる行為なのですか?」

「うっ…分かったよ!! 人道的な対応を心得る!!」

 

 キサカ氏はアスハ氏の性格をよく知っているようだ。お嬢様のオーブ愛を巧みに利用している。けれど、それならば拘束自体を止めて欲しかった。

 

 

 

 アスハ氏により黒塗りの高級車に押し込められてその場を後にするのだった。

 




 本来なら行くはずがない修学旅行で、このときはまだ名前すら知らない二人の少女が出会う。これは何を意味するのか。
 そして、日本にようやく戻ってきた出向組はどうなったのか。

 次回 シンジ覚醒(笑)



 次もサービス、サービス……するのか?

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