主水(もんど)が突く!   作:寅好き

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今回の話は最初は原作沿いのため、グロイ描写があります。また、後半必殺仕業人に倣いエグイ話になっており、後味が悪くなっています。原作の三人娘が好きだった人や、以上の事が許せない人は読まない方が良いと思います。


第42話

 雲一つない快晴の青空。照りつける太陽は、恵みの光を燦々と降らせ続ける。

そんな中で、汗だくで息をきらせたタツミと、涼しい顔をして、息一つきらしていない主水が、剣(木刀)を交えていた。

「はあっ!」

「踏み込みが甘い!」

突き出される木刀を軽々と主水が払うと、タツミの体勢が崩れる。

「王手だ」

木刀の鋒がタツミの喉元に当てられる。

「参りました」

「強くはなっているが、まだまだ甘いな」

「主水さんが強すぎるんですよ」

主水がナイトレイドに滞在する間は、今は亡きブラートに代わりタツミの稽古に付き合っていた。

普段はスサノオに見てもらっているらしいが、剣術であれば、と主水が面倒を見ていた。

「次は少しアレの見極めに付き合ってくれるか?」

「はい任せてください」

主水の問い掛けに、心地よい返事を返すタツミ。

自然と主水の口元にも笑みが浮かび、腰に挿す帝具アレスターを抜こうと、右手を柄に添えた時だった。

「主水、タツミ、新たな仕事が入った集まってくれ」

突如現れたアカメにより、新たな仕事が寄せられたことを告げられる。

「しょうがねえな。行くか」

「そうですね」

主水とタツミはアカメに続いて臨時のアジトに戻って行った。

 主水とタツミがナジェンダの部屋に着くと既に、チェルシー以外の皆が集まっている。

「遅いわよ主水、タツミ」

「すまねえな。ついつい力がはいっちまってな」

マインの文句に慣れた感じで飄々と主水が返す。

嫁や姑、はたまた上司の愚痴りに比べたらマインの文句を流すことなど、主水にとっては雑作もないことだった。

「集まったようだな」

ナジェンダの声に、部屋の雰囲気が引き締まりる。

「帝都での仕事が届いた。遠出になるが、出向いて仕事をすることになる。レオーネ仕事について説明を頼む」

「はい。依頼を受けたのは一昨日の夜だ」

◇◆◇◆◇◆

 時は丑三つ時、草木も眠り、雲によって月さえ隠され、真の闇が支配するスラム街の外れの辻堂で、一人の少年が、頭を下げていた。

「依頼を聞こう」

突如辺りに響いた声に驚き、躊躇しながらも、少年は意を決したように話始めた。

「殺して欲しい人物がいます」

「…理由を聞こう」

「はい俺の村では、年々厳しくなる税金の取り立てに困り。知り合いに頼んで村の娘を奉公に出すことにしました。その内の一人から聞いた話です。

――――――

 揺れる馬車の中に三人の少女が乗っていた。 

一人は泣き腫らしたのか充血した目で、元気なく俯き、一人はその少女を励まし、一人は足をパタパタさせながら、暢気に外の風景を見つめるといった感じで三者三様といった所だ。

「エアたった三年だよ。頑張ろ」

黒髪のフードを被った少女が、先ほどまで俯いて落ち込んでいたセミロングの髪の少女を慰めている。共にかなりの美少女である。

「う、うん…皆のためだもんね。じゃあ奉公先の旦那様ってどんな人だろうねルナ?」

奉公先の旦那様という人が高給で三人を雇ってくれたとは聞いてはいたが、どのような人物かは聞かされていなかった。

「多分エロ親父だと思う。夜の相手を求められるかも」

フードを被ったルナは冷めた表情で語る。

「えーーー!!」

「大丈夫だエア。そうなったら私が壊して磨り潰してやる!」

活発そうな少女が拳を握り締めて、笑顔を浮かべる。

「ダメだよファル。狂暴なことしたら」

三人は帝都での生活を不安に思いながら馬車に揺られていた。

―――――

「す、凄い!!」

三人は馬車から降りると驚きで、嘆息を溢した。今まで住んでいた村とは全てのスケールが違った。

村では平屋が基本だが、帝都では、どれも見上げる程の高さを持ち、先進的な見た目をしており、三人はその光景に魅了されていた。

 そんな中、突然三人に掛けられる声。

「こんにちは」

街並みに見とれていた三人が我に返り、声を掛けられた方へ振り向くと、良い身なりをし、誰もが見惚れるような、爽やかな笑顔をたたえた美青年が、手を上げて歩み寄って来る。

三人のもとに歩み寄り、またその笑顔は三人に向けられてはいたが、三人は皆一様に首を傾ける。彼が面識の無い人物の為だ。

故に、警戒心の強いルナが、探るような視線で見つめていると。

「はじめまして、僕が君達の旦那様になるバックだよーっ」

一転して気さくに話しかけるバックと名乗る人物。

そこには、三人が想定していた脂ぎったエロオヤジとは真反対の人物がいた。

若く、清潔感があり、誠実そうな好人物。

警戒心の強いルナ以外の二人は内心安心していた。

この人なら三年間頑張れそうだと。

すると、バックが三人に視線を巡らし、頷く。

「これから帝都で暮らすことになるから、服などを変えた方がいいね」

バックは懐から分厚い財布を取り出す。

その財布をとっても、見事な細工が施され、丁寧な作りが見て取れる確かな一品であり、その羽振りの良さが垣間見れる。

バックは財布から数枚の金貨を取り出すと三人に分け隔てなく配る。

今まで見たこともない程の大金に呆気に取られ、呆然と立ち尽くす三人に、バックは再び笑顔を向け。

「さあ、このお金で服を買いにいこう。これが初めての君達の仕事だ。これからはセンスも重要になるからね」

笑顔で提案の要旨を告げる。

三人の少女は田舎暮らしの為、ショッピングなどしたことがなかった。

しかし、女性という本質は変わることはない。

初めてのショッピングを楽しみ充実した時間を過ごす。

この先に地獄が待ち受けるとも知らずに。

 三人は見違える姿でバックの元に戻ってきた。

元々素材が良かった三人のため、身につける物が変わった瞬間、誰もが振り返るほどのものとなっていた。

「綺麗になったね。じゃあ行こうか」

バックは変わらない笑顔を浮かべる。

三人は気づくことはなかった。

その爽やかに感じる笑顔の奥に、隠された今までのものと違いどす黒く腐ったものが存在することを…

―――――

「すごい!!」

帝都に来て、何度同じフレーズを使っただろうか。

聞くものが聞けば、バカの一つ覚えだと言うだろうが、そんなことも気にならないほどの驚きを再び感じていた。

開かれた門から中に入る馬車。

馬車の窓の外には、バラなどが咲き乱れる巨大な庭園が広がり、過ぎ去る景色の中には見事な彫像が据えられた噴水が、その更に先には、遠近法が狂ったのかと錯覚するほどの立派で豪華な屋敷が存在していた。

馬車が目的地に着くと、屋敷の中からやって来た強面の黒服の従者によって馬車のドアが開けられ、屋敷の中の広間に通された。

「中もすごいね!」

「お給金高そうね」

素直に感想を漏らすエアと、辺りを値踏みし、期待を口にするファル。

ショッピングで上がったテンションそのままの様相。

ルナもあまり表情は変わらないが、幾分か嬉しそうにしている。

「楽しそうで何よりだ」

バックが変わらぬ笑顔で現れる。

しかしながら、何故か不穏な空気を醸し出しながら。

「それではメインディッシュだ」

バックは指をパチリと鳴らすと、黒服の一団が部屋に現れ、三人を羽交い締めにする。

二人は困惑と恐怖に思考が止まる。

しかし、ファルだけは違った、帝都に出てからは、私が二人を守ると決意していたために、羽交い締めにされながらも、抵抗を試みる。

村で習っていた拳法。

村の中でも五本の指に入る程の腕前。

うまく体を捻り、渾身の力で蹴りを入れる。

普段ならばその一撃で終わるはずだった。

しかし、それこそ『井の中の蛙大海を知らず』男は蹴られながらもニヤリと笑うと、

「田舎者の拳法かよ」

有無を言わさず腹に一発叩きこむ。

「ファルちゃん!」

エアの悲痛な声が広間に響く。

「いい声で泣くねー」

そんな三人には絶望的な状況をもバックは嬉しそうに眺めている。

 しかし、絶望は序の口であった。

扉から現れる三人の男。

胴着を着た禿げた男、烏帽子を被りよく肥え、目を血走らせ舌舐めずりをする男、髷を結いドーベルマンを連れた男、の三人が滑った視線を三人の少女に向ける。

まるで舐めあげるかのように、マジマジと、下卑た眼差しで。

 その中の一人胴着の男が、腹に一撃を受け、意識が飛びそうになっているファルに近づく。

「そう言えばこの跳ねっ返りの娘の落札者はスカさんでしたね」

「ええ、私はこういう娘を少しづつ刻んでいくのが面白いのですよ」

恍惚の表情を浮かべ、苦しむファルを見ながらスカと呼ばれた男はバックに答える。

「了解しました。両足折っちゃってよ」

バックの指示を受け、黒服の男は無慈悲にファルの足をあり得ない方向に折る。

「いやあああああぁぁ」

辺りに耳障りな折れる音と、耐えられない痛みに泣き叫ぶファルの断末魔がこだまする。

「いい、いい、いい、惚れ惚れする声じゃわい。もっともっと鳴き声を聞かせてくれ」

スカは誰もが目を背けたくなる程の残酷な行為を嬉々としてファルに行う。

轟く叫びは止まらない。

二人は羽交い締めにされているため、耳を塞ぎたいがそれさえもできない。

絶望と恐怖、二つの感情のみが二人を支配していた。

「ここにいる三人はね、いわゆるマニア層のひとでねー。もう普通の女の子じゃ満足できないんだって。みんな最高の笑顔を見てから、苦しむ顔を見て愉悦を感じる変態なんだよ。呆れた変態だよね」

バックは依然としてニコニコとして、その残虐な行為を見つめる。

「わしは、わしはあのおとなしそうな娘だ。目だの、目だの、ペロペロして萌え萌えしたいの」

烏帽子の男が常人にはまるで理解の及ばない事を口走る。

しかし、バックはその意を察したように、顎で黒服の男に指示を飛ばす。

黒服の男は千枚通しを持ち、ルナの視力を奪い取った。

ファルとルナの悲鳴が辺りを染める。

気が狂いそうな光景ながら、周りの男は薄ら笑いを浮かべている。

それは乃ち、そのような場面が日常的に行われ、慣れきっているということを、表していた。

「随分待たせおって」

髷を結った男がエアの前に立つ。

「剥げ」

「勿体ないなせっかく買ったのに」

髷の男の指示を受け、黒服の男がエアの服を引き裂いた。

身につける物を失い、必死に体を隠そうとするエアに、男はドーベルマンを近づける。

「ワシの可愛い息子のドグちゃんだ。ドグちゃんは発情期での、大人にしてあげたいんだ」

男はそう言うと、首輪を外した。

その後も狂乱の宴が続いた。

―――――

以上の話が俺がエアから聞いた話です。ファルはその後、四肢を失い死に、ルナは自殺したそうです……。エアは男に忠実に従い…可愛がられて…少しの自由が与えられているそうです」

少年は声を詰まらせながら、事の内容を話した。

握り締められた拳からは、赤い鮮血が滴り落ち、地面を赤く染めた。

悔しさ、怒り、悲しみ、三つの感情に押し潰されそうになりながらも、必死に耐えている。

「絶対に、絶対に許せない!!エアだけでも助けたい!このお金はエアが男の目を掠めながら集めたお金と俺の全財産です。お願いです。この晴らせぬ怨みを!力のない俺と三人にかわって!!」

崩れるように膝をついて少年は土下座しながら、叫ぶ。

「……分かった…裏を取り次第…仕事にかかる」「ありがとうございます」

少年の泣き声が辺りに響いた。

◇◆◇◆◇◆

以上が私が聞いた話の全てです」

レオーネが話し終えると、皆の表情にも怒りと、悲しみがありありと浮かんでいた。

ただ、主水は顎に手を当てて何かを考え込んでいるが。

「裏を取っているチェルシーが後少しで帰ってくる。その話を聞き次第行動に移す。皆準備をしておけ」

「はい!」

皆、固い表情で準備を整えるため散会した。




テスト勉強の合間の投稿です。
ということで、今週中はテストの為、次回の投稿は週末になると思われます。

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