指輪の魔法使いin麻帆良   作:アルペリア

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三話目です。


三話

 

佐倉愛衣side

 

「さあ、ショータイムだ。」

 

 

 辰連さんはそう言うと一つ目の巨体の魔物・サイクロプスに突っ込んでいった。サイクロプスはギリシャ神話にも登場する古代から存在するものですが、今回は魔物として召喚されたようです。本来は神族の一員なのだそうですが。

 そして、今回は召喚したあの魔物が高位の存在ではなかったので、それほど強力な個体として現れなかったみたいです。これが強力な個体だったら、魔法先生が何人も必要になる大事態になっていました。

 

 

「おっとっ!こりゃぁ一発食らったらヤバいかねぇ。」

 

 

 目の前では辰連さんがサイクロプスの攻撃を難なく避けています。あの姿になると身体能力が上がるのでしょうか、常人では回避不可能な速度の攻撃を避けているのを見ると、私たち魔法使いが使用する『戦いの旋律』と同じ位能力が上昇しているように見えます。

 私はすべての魔法を知っているわけではありませんが、辰連さんの魔法は見たことありません。不思議な魔法ですが、なんだか見ていると不安が無くなっていく気がしました。

 

 

「おらっ!」

 

 

 辰連さんの戦い方は何か流派のような感じはせず、何か喧嘩をしているような素人の戦い方に見えますが、それでもサイクロプスと互角に戦っています。このままなら倒すことは出来なくてもお姉様が来るまでの時間は稼いでくれそうです。辰連さんが相手をしてくれている間にお姉様に何とか連絡しないといけないですね。

 

 

「辰連さん!頑張ってください!!」

「了解!佐倉ちゃん!!」

 

 

 思わず応援してしまった私に対して返事を返す余裕があるなんて、凄いとしか……………今、私ちゃん付けされてました?

 

 

 

sideout

 

 

 

 思わず彼女の事をちゃん付けしてしまったけど、特に問題ないよね?とっさに出てきたものだったから確信犯じゃないからさ。

 

 

「おっと!コイツの攻撃は分かりやすくて避けることが出来るけど、怖いなぁ。」

 

 

 変身してから身体能力が上がったのだろう。自分の体だとは思えないほど動けている。変身前の俺は軽いジャンプで二メートル程飛ぶことは出来ないし、手を使わずに宙返りなんて出来ない。

 それが出来るようになってはいるが、本来のウィザードのように華麗に戦う事は出来ない。ただ闇雲に殴る、蹴るを繰り返すだけだ。

 

「痛ぁ!?」

 

 サイクロプスを殴ったら指輪が指にめり込んで痛かった。特に考えもしないで戦っていたから当然かもしれないが、指輪。しかも普通よりもデカい奴つけていたまま殴れば当然のことだった。

 

どうしてウィザードがパンチを使わなかったのか、身をもって理解した。

 

 

「でもこの魔物と戦えるのは変身してるからなんだろうけどなぁ………っと!!」

 

 

 突進してきた一つ目を避けて背中を思いっきり蹴飛ばす。だが、蹴っ飛ばした方向が悪かった。俺は佐倉ちゃんがいる方向に一つ目を蹴っ飛ばしてしまった。

 吹っ飛ばされた一つ目は背中を蹴った俺の方を見ていたが、自分のすぐ近くに動けない相手を見つけて、そっちの方が倒しやすいと思ったのかニヤリと笑うとそっちに向きを変えて歩き始める。

 

 

「げ……ってヤバ!?」

 

 

 まぁつまり佐倉ちゃんが標的になってしまったという事で、標的にされた佐倉ちゃんはまだ動けないようで、地面に座った状態で後ずさりをしながら、何か呟いている。俺も急いで彼女のもとに走る。一つ目よりも俺の方が足が早いけど、間に合うか!?

 

 

「っ!魔法の射手!炎の5矢!!」

 

 

 佐倉ちゃんの魔法で一つ目の歩みが一瞬止まるが対してダメージを与えることは出来なかったようで、一つ目は魔法が当たる前と変わらず歩き始めるが、一つ目の動きが止まった隙に俺は距離を詰める。

 走りながら右手の指輪を変えて佐倉ちゃんに対して腕を振りかぶった一つ目と動けない佐倉ちゃんの間に飛び込んで魔法を発動させる。

 

 

〔ディフェンド・プリーズ!〕

 

 

「ぐっ!!」

 

 

 防壁を張って攻撃を防いだが、それでもかなりの衝撃が来た。思った通り一発でも食らったらどうなるか考えただけでも恐ろしいし、それを生身の佐倉ちゃんが受けたらひとたまりもない。一つ目を彼女の方に吹っ飛ばした自分を殴ってやりたい。

 攻撃が防がれてバランスを崩した奴を蹴り飛ばし、距離をとる。幸運にも当たり所が良かったのか一つ目は倒れたまま起き上がる気配がない。

 この隙で佐倉ちゃんの状態を確認する。

 

 

「佐倉ちゃん大丈夫?ゴメンね。さっきは危ない目にあわせちゃって。」

「いいえ、大丈夫です。辰連さんが攻撃を防いでくれましたから、問題ないです。」

「ならよかった。そう言えばさっきアイツに攻撃してたけど、あまり効果がなかったね。」

「アレは無詠唱でしたから威力が通常より落ちていましたし、何よりあの魔物、サイクロプスは魔法に対する防御力が高いんです。高位のサイクロプスには普通の魔法は通用しません。」

「マジか。魔法使いにとって相性最悪だな。」

「幸いにもあのサイクロプスはそれほど高位の個体ではないので、しっかり詠唱すれば大抵の魔法は通用します。」

「それを聞いて安心したよ。」

 

 

 一つ目・サイクロプスを吹っ飛ばした方を見ると、アイツは起き上がり、こっちに向かって歩いてきている。さっきもそうだが、あの魔物は走ることが出来ないのか?

 

 

「辰連さんも何か魔法で攻撃するんですか?」

「まぁ、一応手段はあるから何とかしないとね。」

 

 

 話しながら、右手の指輪を変える。これから使うのは魔法って言っても半分以上物理攻撃だから問題はないと思うんだが、ちょっと不安もある。

 

 

「それと、俺がアイツを何とかするから、そっちで応援とかって呼べない?」

「あ、そうですね。さっきお姉様に念話が通じたので、あと少しで来てくれると思います。」

「………お姉様ねぇ………。」

「?何かまずかったですか?」

「いやそういうわけじゃないんだけどね。」

 

 

 お姉様とか呼ぶのって実際にいるんだな。聖母様にでも見られてるの?漫画の中だけだと思ったよ。

 っと、話していたらサイクロプスもいい距離まで来ている。さて、使ってみますか。

 

 

「よっと。」

 

 

〔ビッグ・プリーズ!〕

 

 

 目の前に現れた魔法陣を通り抜けるようにサイクロプスに向かってパンチを繰り出す。魔法で作られた腕だから、指輪で指が痛くなることはないから安心だ。

 

 魔法陣をくぐって巨大化した俺の拳がサイクロプスにあたり、もう一度吹っ飛ばす。後ろでは佐倉ちゃんが「う、腕が大きくなってる!?」なんてびっくりしていた。耳が大きくなるのとは違ってこれはちゃんとした魔法だよ。

 

 

「さっきから結構攻撃当ててるから、そろそろ決めてもいいかな?」

 

 

 多分もう平気な気がするから、終わりと行きますか。右手の指輪を再度変えて、ハンドオーサーをもう一度右手側にする。相手が来るまで余裕があるから、ゆっくりやれる。

 

 

〔ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー! ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー!〕

 

 

後ろで佐倉ちゃんが「る、ルパッチ?」なんて言っているのが聞こえる。初めて聞くと変な感じがするのはよく分かるよ、俺もそうだったから。まぁそれよりも

 

 

「フィナーレだ。」

 

 

 指輪をハンドオーサーにかざす。

 

 

〔チョーイイネ!キックストライク!サイコー!〕

 

 

「はああああああぁぁぁ」

 

 

 足元に魔法陣が現れてそこから俺の右足に炎が集まっていく。これをサイクロプスに叩き込めば倒せるハズなんだが…………

 

 

「(ストライクウィザードを叩き込む前にやってたあの回転ってどうやるんだ?)」

 

 

 テレビでは見たことあるけど、自分がやるとなると分からない。あの回転とか無理な気がする。いくら変身して身体能力が上がっていても何だか失敗しそうでやりたくない。

 そんな事を考えて動かない俺に対して、サイクロプスはどんどん近づいてきているから、そろそろ決めないと、こっちが攻撃をされてしまうし、後ろにいる佐倉ちゃんも危険な目にあわせてしまう。

 

 

「(仕方がない。もうこれでいいや。)だああああああぁぁ!!」

 

 

 近づいてきたサイクロプスに少し助走して跳び回し蹴りを当てる。蹴りが当たったサイクロプスは吹っ飛んだあと、魔法陣が現れて爆発した。何とか倒すことが出来たようだ。爆発後を見ながら指輪を変える。白い魔法使いに言われたとおり、魔力を集めなくては。

 

 

〔ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー! ホープ・プリーズ!〕

 

 

 向けた右手の先から魔法陣が現れて、魔法陣に向かってサイクロプスの爆発跡から粒子が魔法陣へ吸い込まれていく。すべて吸い込んだ後魔法陣は勝手に消えた。

 

 

「ふぃー。」

 

 

どうなる事かと思ったけど、一応倒すことが出来た。初陣にしては上出来だと思う。

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

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