Angel Beats! 星屑の記憶   作:刻焔

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第42話 孤児院での穏やかな日

 

生徒会に連行され、反省室に入れられた俺達は

一部メンバーを除いて、固く冷たい床で眠らされる事になった

 

そして俺はこの時も、生きていた時の出来事を夢に見ていた

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「シスター、燕兄ちゃんが来たよー!!」

 

俺がいつものように孤児院へ行くと、外で遊んでいた子供たちが俺が来たことを伝えにシスターの元へと向かう

 

この光景も見慣れたものだ

 

「いらっしゃい燕さん」

 

そしていつものように、俺を温かく出迎えてくれる

 

「兄さん兄さん!今日は私の勉強を見てくれるんでしょ?」

「駄目だよ、今日は俺達と遊ぶんだ!」

 

相変わらずだなぁと思っていると

 

「駄目ですよ。今日は孤児院の掃除を手伝いに来てくれたんですから」

 

シスターが子供たちにそう言った

子供たちのブーイングが酷かったが、俺もその為に来たから終わったら遊ぼうと言って分からせた

 

「相変わらず騒がしい子達でごめんなさいね」

 

「気にしなくていいですよ。子供はあれぐらい騒がしい方がいい…」

 

俺は昔の自分を思い出しながらそう言った

 

「……そうね。あなたもあれぐらいはしゃいで欲しかったわ」

 

「あ、その言い方は卑怯ですよ!」

 

俺とシスターは笑いながら、孤児院の掃除を始めた

 

外の草むしりや部屋の掃除まで、散々こき使われたが

いつの間にか、子供たちも一緒になって掃除をしていた

 

「だって早く終われば遊んでくれるんだろ?」

「私も早く勉強教えて貰いたいもん!」

「僕だって本読んでもらいたいんだよ!」

 

「人気者ね」

 

何でこんなに好かれてしまったのか分からないが、まぁ悪い気はしないな

 

それからしばらくして、孤児院の掃除が終わった

 

だが残念な事に日が暮れてしまっていた

 

「…もう帰っちゃうの?」

 

「悪いなみんな」

 

いつも俺が帰る時間を少し過ぎで掃除が終わったので、子供たちに構ってやることが出来なかった

 

名残惜しいが、帰らなければならない

 

……そう思っていたのだが

 

「………靴が無い」

 

俺は子供たちの方を見ると、全員が顔をそむけた

…あの真面目な真奈まで

 

「……お前らなぁ」

 

「仕方ないわね。燕さん、今日は泊まっていきませんか?みんなも靴を隠すほど一緒に居たいみたいですし」

 

「はぁ、仕方ないですね。じゃあ一晩だけお世話になります」

 

『やったぁあああああ!!!』

 

俺の泊りが決まると、子供たちは大喜びだった

 

それからというもの、俺は勉強を教えたり本を読んでやったり

テレビゲームなどをして遊び倒した

 

「ん?もう十時過ぎてるじゃないか、そろそろ寝るぞ」

 

「えー、もっと兄ちゃんと遊びたい!」

 

駄々をこねだす子供たち

 

「明日も休みだから、一日中相手をしてやるから大人しく寝ような」

 

そう言うと、パァっと表情を明るくし、嬉々として布団へと入っていった

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ようやく寝たか…」

 

さっきまで俺と寝るんだ!と騒いでいた子供たちも、流石に眠気には勝てなかったらしく、静かに寝静まっている

 

さて、これをどうするか

 

俺の腕をしっかり抱きしめて放してくれない真奈がそのままの体勢で寝ていた

 

「……んぅ」

 

やはり座ったままでは寝苦しいのか、布団に倒れ込もうとする

が、それでも俺の腕を放したくないらしい真奈は、必死に倒れるのをこらえていた

 

「もうそのまま一緒に寝たらどう?」

 

後ろからシスターが、突然とんでもない事を言ってきた

 

「……………冗談ですよね」

 

「さぁ?どうかしら」

 

確実に俺の状況を楽しんでいる…

 

まぁいいやと思い、俺は話を変える為に、今まで疑問に思っていたことを聞いてみた

 

「シスターはいつから、シスターって呼ばれるようになったんですか?」

 

「んー?いつからだったかしらね、確かハロウィンパーティをした時に、私が修道女っぽくなった事が原因かしら?」

 

そう言えばそんな事もあったなと俺は思い出していた

 

この孤児院は教会でも何でもない、ただの孤児院だ

 

「シスターも大変だな、そんな格好してないのに変なあだ名付けられて」

 

「あら、私は結構気に入ってるのよ?」

 

いつの間にか俺とシスターは敬語ではなくため口で会話しだしていた

 

 

 

 

 

そう、昔のように―――

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

気が付くと俺は、固い床の上で寝ていた

 

確かシスターと話をしていた筈なのにと、眠たい目を開けながら周りを確認する

 

「……そうか、反省室に入れられたんだったな」

 

戦線メンバーはまだ寝ている様だったが、目が覚めてしまった以上、これ以上固い床で眠る気はないと思い、起きようとしたのだが

 

「……? 腕が重い?なんで……だ……」

 

「………すぅ………すぅ」

 

…………………………なんで入江が俺の腕を枕にして寝てるのかな?

 

その後何をしても起きてくれない入江をどうするか悩んでいるうちに、ガルデモメンバーが順に起き出し、からかわれる事になった

 

戦線メンバーが起きる前にどうにかなった事が唯一の救いか…


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