ギルド通路遭難事件から数日が経ったある日
俺はゆりに頼み込んで、追加休日を数日貰い放送室に籠っていた。
「――っ! ふぅ、今日はこんなもんかな?」
俺は持っていたベースを立て掛け、腰を下ろした。
「…レコーディングも楽じゃないなぁ、しかも耳コピだし」
オールドギルドから戻ってきた俺はガルデモの練習を聞いてふと思ったことがあった。
ガルデモの曲を録音できないかと
そこで俺はゆりに頼み、今回の追加休暇を貰った。
しかしぶっつけ本番でレコーディングなんて出来るのか分からないので、俺の覚えている曲を試しにレコーディングしてみた。
レコーディングそのものは何とかなるが、その後のマスタリングがなかなか上手くいかず手こずっているのが現状だ。
「はぁ、なんだかんだで思い出した曲を含め八曲ほどレコーディングしてしまったが、完全に当初の目的から外れてしまったな」
俺はいつのまにかレコーディングに没頭してしまい、何の為にレコーディングテストをしているのか忘れてしまっていた。
俺がしばらく椅子に座ってのんびりしていると後ろから声をかけられた。
「レコーディングの調子はいかがですか?」
「うぉあ、ってなんだ遊佐か、いきなり声かけるなよな。まぁ順調っちゃ順調かな?近々ガルデモのレコーディングも出来るはずだ」
「そうですか。それと月斑さん、ゆりっぺさんから本部への招集がかかっています」
「ん?次のオペレーションか。にしても、この間のトルネードには驚かされたよ。仰々しいネーミングだから何かと思えば、拍子抜けな内容にもほどがあるぞ」
俺は今回の休暇を貰う前に二回ほど、オペレーショントルネードを行っている。
やはり頼れる武器が刀だけだと役立たずなのは明確だった。
射撃できる分、野田の方がマシだと自分でも思ったくらいの結果だった。
「まぁゆりっぺさんが付けた名前ですし」
「……ふっ、あっははは!ちげぇねぇや!」
――――――――――――――――――――
―――校長室(作戦本部)
本部内ではギターの音だけが鳴り響いていた。
岩沢がゆりに頼まれていた新曲を完成させ、それを披露しているからだ。
戦線メンバーは全員、岩沢の新曲を静かに聞いている。
そして最後まで弾き終わると、ゆりが口を開いた。
「なぜ新曲がバラード?」
「いけない?」
「陽動にはね」
どうやら戦線の陽動で使うには難しいようで、没らしい
俺としてはとてもいい曲なんだが
「その陽動ってのはなんなんだ?」
音無が手をあげ皆に質問してきた。
「何回もトルネードやってるのに聞いてないの?
彼女は校内でロックバンドを組んでいて、一般生徒の人気を勝ち得ている。
私たちは彼らに直接危害は加えないけど、時には利用したり、妨げになる時はその場から排除しなくてはならない。
そういう時、彼女たちが陽動するの」
「ただゲリラライブしてた訳じゃなかったんだな。それにしてもNPCのくせにミーハーな奴らだなぁ」
「つまり、彼女たちのバンドにはそれだけの実力と魅力があるって事だ」
ゆりと日向の説明を受けて音無は納得したようだ。
「で?駄目なの?」
岩沢は今引いた曲の合否が気になるようで、話を戻した。
「ん~、バラードはちょっとねぇ」
「いいんじゃないか?別に
外で戦闘する分バラードじゃ派手に動けなくなるのは分かるけど、隠密作戦がないわけじゃないだろ?そういう時ぐらいバラードでもいいじゃないか」
「月斑君の意見も一理あるけど、仮に新曲を披露したとしてその新曲があまり弾かれなかったら観客はどう思うかしら」
「うっそうか、そのあたりも考えないとダメなのか」
結局俺の意見は論破され、今回の曲は没となってしまった。
「さて気を取り直して、総員に通達する」
新曲の話が終わった所で次の議題へ移るそうだ
電気が消えスクリーンにSSSのエンブレムが映し出され、ブリーフィングが開始される。
「今回のオペレーションは、『天使エリア侵入作戦』のリベンジを行う。決行は三日後」
本部内でオォ~ッという声が上がるが、初めて聞く作戦名に俺と音無は首をかしげていた。
「その作戦ですか。ですが前回は――」
高松の言葉を遮るようにゆりが右手を前に出した。
「今回は彼が作戦に同行する」
ゆりは席をずらし、その後ろから出てきた人物は
「よろしく」
眼鏡をかけたおかっぱ頭の少年だった。
――いや、だから誰だよ
「椅子の後ろから」
「眼鏡かぶり」
「ゆりっぺ、何の冗談だ」
「そんな青病たんが使い物になるのかよぉ」
「まあまあ、そう言わないでくれる?」
椅子の後ろから現れた少年(とりあえず眼鏡かぶりと命名)は机の前に堂々と立っている。
「はっ!なら、試してやろう!」
野田はハルバートを以前俺に向けたときの様に、眼鏡かぶりへと突きつけた。
「お前友達いないだろ」
音無のツッコミなにも反応せず眼鏡かぶりは鼻で笑うと
「3.141592653589793238462643383279―――」
突然円周率を言いだし
「止めろぉ止めてくれぇ!!」
野田は床へと崩れ去って行った。
「まさか!円周率だと!?」
「眼鏡かb―――」
「止めてあげて、その人はアホなんだ」
「大山いくらなんでもそれはひどいと思うぞ、アホだけどさ」
高松のセリフを無視し、大山と俺がひどいことを言ったにもかかわらず、ゆりは話を続ける。
「そう、あたしたちの弱点はアホなこと!」
「リーダーが言うなよ」
「俺この戦線に入った事後悔してきた」
俺と音無の言葉を再度無視し話を続ける。
「前回の侵入作戦では、我々の頭脳の至らなさを露呈してしまった。
しかし!今回は、天才ハッカーの名を欲しいままにした彼、ハンドルネーム・竹山君を作戦チームに登用、エリアの調査を綿密に行う!」
「めがn、今のは本名なのでは?」
「僕のことは――」
眼鏡かぶりがいきなりこちらを指差し
「クライストとお呼びください」
そう言ってきた。
「はっはは」
「みろ、カッコイイハンドルが台無しだぁ、さっすがゆりっぺだぜ」
――案外厨二なのかもしれないな、竹山って
「で?天使エリアってのは?」
メンバー全員が呆れていると、先程と同様に音無が疑問に思ったことを質問してきた。
その質問に日向が答える。
「天使の住処だ」
「天使の住処?」
音無の頭の中では、天空の城ラ〇ュタが描かれていた。
――天使の住みかねぇ、天使と言えば神聖なイメージが強いが
一方俺の頭の中では、ゼウス神殿が描かれていた。
――《まて、そんな所にハッカーが必要なのか?》
二人とも想像は違えど、結論は同じだった。
「中枢はコンピューターで制御されているんだよ」
「えぇ!!?機械仕掛けか!?」
この時音無の想像では、ハウ〇の動く城が描かれていた。
――機械仕掛けか
俺の想像では、ギ〇スR2に出てきたダモク〇スが描かれていた。
??????
「そのどこかに、神に通じる手段があるの」
「これはとんでもない作戦だ!」
以前のトルネード同様に大山が少々興奮気味に声を上げる。
「二度目ということもある、天使も前以上に警戒しているはずよ。
ガルデモにはいっちょ派手にやってもらわないとね」
「了解」
「Get Chance&Luck!!」
そこで作戦会議は終わり、俺と岩沢は練習教室へ戻ろうとするとゆりに声をかけられた。
「月斑君、今から陽動班の手伝いに回ってもらえない?」
「陽動班の?」
「そ、校内にこのビラをあらゆる所に貼ってきてもらいたいの」
「陽動班ってかなりの人数がいたよな、なぜ俺に」
俺は素朴な疑問をゆりにきいてみた。
「今回のオペレーションで体育館を使うからそっちに人数回してるの。
で、これを張る人が一人になっちゃった訳」
「なるほど、そいつと協力してビラを貼れと」
「そういう事」
俺は少し考え岩沢の方を見た。
すると岩沢は分かったかのように
「別にこっちに気を遣わなくてもいいよ、今日は特に何もないし」
「そうか、ならおとなしくビラ貼りやりますか」
俺はゆりから大量のビラを受け取り、校内に貼って回るため本部をあとにした。
新年明けましておめでとうございます!
今年も『Angel Beats! 星屑の記憶』をよろしくお願いします!
―ザシュ!
燕「おい作者、その挨拶はいくらなんでも遅すぎるだろ!」
入「そうですよ、もう一月も終わりに近いですよ」
そのセリフは斬ってから言わんでください
確かに挨拶するには遅すぎますけど、しない訳にもいかないじゃないですか
燕「いや、さすがにもう明けましてが使える日にちじゃないだろ」
まぁ挨拶の件はこのくらいにして、本題です
入「今回から原作第三話のストーリーですね」
燕「冒頭でやってたレコーディングの意味とは」
レコーディングしてた意味は三話終盤で分かりますよ
まぁどこで使うかは皆さんもうお分かりでしょうけどね…
燕「発想が浅はかだからな」
入「まぁまぁ、珍しい月斑先輩も見れるから良いじゃないですか」
ん?入江ちゃんもしかしてプロット覗いた?
入「な、ナンノコトデスカ?」
燕「分かりやすいな」
文字だと余計分かりやすいですねww
入「はい、もう尺が短いので締めましょうか!」
燕「逃げたな」
逃げましたね、まぁ良いですけど
入「それでは皆さん!」
『また次回もお楽しみに~』