Angel Beats! 星屑の記憶   作:刻焔

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第11話 とんだハプニング後編

「……はぁ、エライ目に合った」

 

入江が離れてくれるまでかなりの時間を要した。

何を話しても聞いてくれないし、顔をあげたかと思えば

何が恥ずかしいのかまた俺の胸で顔を隠す。

このやり取りを何十回か繰り返したところでようやく離れてくれた。

 

「うぅ、…ごめんなさい」

 

「いや俺が考え事に夢中で気が付かなかったのが悪いんだし

 俺に用があったんだよな、なんだ?」

 

「えっとその、新しいドラムセットが届いたから、それを運ぶのを手伝って貰いたくて」

 

「あぁあれか、分かった。この仕事が片付いたら運んどくよ」

 

新しいドラムが届いた理由、それは数日前に遡る。

いつも通り練習をしていた昼過ぎ、関根が休憩中にふざけて入江抱きついた。

そしてその反動で入江の持っていたスティックが空中に舞い、落下してきた勢いでスネアとトムに突き刺さってしまったのだ。

そもそも突き刺さる時点でおかしいのだが、消耗していたということで納得しておこう。

 

燕は段ボール整理に戻るが、いつまでたっても戻ろうとしない入江が気になって仕方がなかった。

 

「……なぁ、いつまでそこに居るんだ?急いで運んで欲しいのなら今すぐ運ぶぞ?」

 

「え?あ!いえ、……そういうつもりじゃなくて」

 

入江は少し頬を染め、動揺し始める。

 

「……ちょっと、仕事してるところが見たいなって」

 

「ん?こんなの見たって退屈だろ」

 

そういうと燕は作業に戻ると「…そんなことないです」っと小さな声で入江が答えた。

 

「え、なんか言ったか?」

 

「いえ何も、仕事が終わるまでここで待ってます」

 

「そうか、なら急いで終わらせるな。あとすこしで終わるから」

 

「はい」

 

その後燕の仕事は、あと少しと言いながら作業が終わったのは一時間後だった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「さてと、これでセッティング完了かな?」

 

「ありがとうございます。運ぶだけじゃなくてセッティングまで」

 

燕は新しいドラムセットをまとめて荷台で運んできた後、古いドラムセットと交換ついでにセッティングまで済ませていた。

 

「好きでやってることだからな、気にしなくていいよ」

 

再度ドラムを叩いてその位置を確認する。

 

「ただ俺が叩きやすくなってそうだから、あとは自分でやってくれ」

 

「はい、わかりました」

 

燕と入れ替わり入江がドラムの前に座るが

 

「あれ?前と同じくらい叩きやすい」

 

「ん、そうか?俺用っぽくなったと思ったんだが」

 

「セッティング上手いんですね」

 

「あぁいや、多分生前音楽やってたのが効いたんだろ」

 

「記憶思い出したんですか?」

 

「……少しだけだけどな」

 

燕はこの間見た夢のことを話した。

自分がギターを弾いていたであろうと言う事

その施設の子供たちに好かれていたこと全部

 

「……それ、ホントに生前の記憶だと思います」

 

「そうか?夢なんてそうそう信じられるかよ」

 

「だって、月斑先輩がそこに居ることが不思議に思えたんですよね」

 

「あぁ」

 

「ギター弾けるんですよね」

 

「弾けるな」

 

「だったら生前の記憶だと思います」

 

入江は確信を持ったように言い放つ

 

「…ギター、聞かせてもらえませんか?」

 

突然入江がそんな申し建てをしてきた。

 

「はぁ?なんだよいきなり」

 

「ちょっと聞いてみたくなって、駄目ですか?」

 

――――いやいやいや、そんな上目遣いは反則だろ

 

燕は頭を掻きながら少し考えると

 

「……はぁ、いいよ。一曲だけ弾いてやる。ただし、歌わないからな」

 

「弾いてもらえるだけで十分ですよ」

 

燕は岩沢が使っているのとは別のアコギを取り出しギターを構えた。

 

「わぁ、意外と似合いますね」

 

「意外ってなんだよ、まぁいいさ」

 

燕は椅子に座るとギターを弾き始めた。

曲はこの世界に来て初めて弾いた『My Soul for You』ではなく『Submarine Street』を弾き始めた。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ま、こんなもんだな」

 

ギターを弾き終わった燕の第一声はそんなそっけないものだった。

 

「こんなもんって、すごく上手じゃないですか!」

 

「いやいや、岩沢やひさ子に比べたら俺なんてまだまだ」

 

「確かにあの二人に比べれば――」

 

その言葉に燕は膝から崩れ落ちた。

 

「あ!いえ、そんなつもりで言ったんじゃ」

 

「いやいい、元々自覚してたし」

 

燕は立ち上がるとフッと窓の外に目を向けた。

 

「もう夕方か、飯食いに行くか?」

 

「……は、はい!」

 

教室を出ていく燕の後ろを小走りで追いかけ、肩を並べて食堂へ向かった。

 

 




燕「これ、本来の結末だったのか?」

入「なんか、前に見たプロットとはずいぶん違う結末でしたけど」

いやいや、なぜかこうなっちゃったんですよねww

燕「笑うな!」

まぁ、こういった結末もいいかなっと思ったんでいいじゃないですか

入「私は元の方が…」

燕「ん、なんか言ったか?」

入「いや、何も」

まぁまぁ今回使わなかった話も別の話で使う予定ですから

入「そ、そうなんですか」

燕「さて、そろそろ頃合いじゃないか?」

そうですね、ではそろそろ

『また次回もお楽しみに~』

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