現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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新章第11話

謀略教皇VS謀略教祖!趣味と趣味の闘い・第11話

 

 

 

 トリステイン王国を前王が亡くなってから纏めてきたのは、間違い無くマザリーニ枢機卿だろう。こうして直接会って話しをするのは初めてだ。

 

「初めてまして。ゲルマニアが貴族、サムエル・フォン・ハーナウが長子、ツアイツ・フォン・ハーナウです。お見知りおきを……」

 

 イメージよりも、更に痩せていますよ。頬も痩けているし、目の下に隈も出来てるし……これで40代とは思えない老けっ振り。

 

「こうしてお目に掛かるのは初めてですな。トリステイン王国で宰相の真似事をしているマザリーニだ」

 

 あれ?宰相だと思っていたけど、正式な役職じゃなかったんだ。あんなに大変なのに、無償奉仕なのか?

 

「お噂は、かねがね……」

 

「ふん。噂なら、其方も大概だろうに。巷で噂の巨乳派教祖!アルビオン王国、救国の英雄。そして大国ガリアの次期王が決まったそうだな」

 

 随分と調べていますね……僕も交渉相手は調べたり、原作知識を利用したりするけどさ。

 

「お陰様でと言いますか……アルビオンでは、其方も活躍したそうで。戦後の方ですがね。ウェールズ皇太子より、色々聞いていますよ」

 

 カリーヌ様とお姉ちゃん、アンリエッタ姫とイザベラのダブル頂上決戦とか。

 城塞都市を半壊させたり、ガリア王家に対して喧嘩売ったりとか……ヴァリエール公爵絡みもあるから、公にはしてないですが?

 

 ニッコリと先制のジャブを打つ。

 

「……その件については、此方も反省している。蒸し返すのは止めて頂きたいですな」

 

 一旦言葉を切り、互いに出されたお茶を飲む。尚、今回の話し合いはマザリーニ枢機卿のたっての願いで、僕と二人切りでの話し合いだ。

 良くヴァリエール夫妻が、この条件を飲んだと思う。互いに同じタイミングでカップを置く。

 

「では本題に入ろうか……貴殿はトリステイン王国をどう思っているのか、教えて頂きたい」

 

 また抽象的な言葉で切り出して来たね。どう思っている……これで、此方の思惑を探る気だな。

 

「我が側室、ルイズやモンモランシーの祖国。そして数多くの友が住む国でしょうか」

 

 国家でなく、個人との繋がりに重きを置いていると匂わせた……トリステイン王国自体の存続は、どうでも良い。其処に暮らす人達が大切だから、と。

 

「なる程。ツアイツ殿は、国を超えて友誼を結んでいる友が沢山いますからな。そう言う意味ですかな?」

 

 僕は黙って微笑む。

 

「では……ブリミル教をツアイツ殿はどう思ってますかな?」

 

 無言の返答に、直球の質問で返して来た。ブリミル教をどう思っているのか?この返答が、僕と僕の仲間達がロマリアをどう思っているのかが分かる……

 やはりマザリーニ枢機卿は、政治家ではなく宗教家の色合いが強い。時に直球は効果大だが、互いの立場と距離を計りかねる時には悪手だ。

 この質問の回答が、互いの立場を決定付ける。まだ話し合いの余地が有るかも知れない時点で、決を採る様なものだよ……

 

「それを答える前に教えて下さい。マザリーニ枢機卿にとって、ブリミル教とは何ですか?そもそもブリミル教の定義や理念を教えて下さい」

 

 権力者の為の方便でない、惰性の宗教で無い事を教えて下さい。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「それを答える前に教えて下さい。

マザリーニ枢機卿にとって、ブリミル教とは何ですか?そもそもブリミル教とは何ですか?その定義や理念を教えて下さい」

 

 何だと?

 

 ブリミル教の定義や理念……くっ、これは今のロマリアの在り方に対しての批判のつもりか?

 

「ブリミル教とは、6000年前にハルケギニアに降臨した始祖ブリミルを祀る物だ。

始祖ブリミルは、それまで幅を聞かせていた先住魔法を押しやり四系統の魔法を広めた。火・水・風・土……そして虚無。

始祖ブリミルは亡くなる前に、三人の子供と弟子に力を託した。それがロマリア・ガリア・アルビオン、そしてトリステインの祖だ。

この世界の成り立ちの礎を築いた偉人。それが始祖ブリミルで有り、彼を祀るのがブリミル教だ」

 

 これはハルケギニアに住む者ならば、誰でも知っている話だ。しかし彼は黙って聞いていた……

 

「ブリミル教は分かりました。では次にマザリーニ枢機卿にとってのブリミル教とは何でしょうか?」

 

 くっ……私にとってのブリミル教だと?

 

「私にとってのブリミル教……それは信仰の寄り所で有り私の全てだ」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 聖職者にとって、信仰の寄り所は大切ですよね。

 

 しかし地球の宗教感で行くと、民衆が付いてくる宗教とは……必ず救済が有るんですよ。

 仏教なら極楽浄土、キリスト教なら天国。生前の善行や信仰の強さにより、死後も幸せになる為に僕らは信仰する。

 

 じゃブリミル教は?

 

 確かに魔法の祖として、貴族社会の根源が始祖ブリミルだ。つまり英雄信仰なんだと思うんだ。

 確か原作では、四つの四を集めると……つまり、虚無の担い手、虚無の使い魔、各系統の指輪と秘宝。

 これを揃えると「始祖の虚無」が、復活するんだっけ?コレってブリミル教の神官達は、どう思っているんだろう?

 

「マザリーニ枢機卿。貴方の信仰の寄り所には……其処に民衆の幸せは入っていますか?今のブリミル教を信仰すれば、幸せになれるのでしょうか?」

 

 これに、どう答えますか?聖職者の貴方なら……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 なっ?民衆の幸せだと……こやつ、一番痛い所を突いてきたな。

 確かに今のブリミル教は、貴族の権力と神官の特権を守る物になっている。そこに民衆の救済など……

 

「それは……」

 

 くっ、言葉に出来ぬ……

 

「僕は、宗教とは救済をしてこそ信仰を集められると思っています。最近のロマリアの動き……どう思いますか?」

 

 ホモ教皇が、自分の趣味に突っ走って、ショタを集めているのだよ。しかも「男の娘」なる、怪しい聖歌隊が出来た。

 彼は若い頃から有能だったのに、権力の座についてから変わってしまった……

 

「教皇ヴィットーリオ殿も頑張っている。貧民の救済や、腐敗した神官達の意識改革。それに……」

 

 配下の神官達から、総スカンを喰らっておるので遅々として進まないがな。

 

「マザリーニ枢機卿……

貴方は先の教皇選出会議でロマリアから帰国要請をされていたにも係わらず、トリステイン王国に居残った。

何故ですか?本来なら、正しきブリミル教の為に……

次期教皇と目されていた貴方は戻るべきだった!貴方が教皇になるべきだった!違いますか?」

 

 私が、私が教皇にだと?しかし、当時のトリステイン王国は崩壊寸前。

 

 私が抜けたら……

 

 ツアイツ殿、貴殿は私が教皇にならなかった為に、今のブリミル教がこうなったと言うのか?


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