現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版) 作:Amber bird
完結後リクエスト外伝・アルビオン王国復興記(前編)
お久し振りです。
頂いた感想の中で多かったのが、アルビオン・トリステイン・ロマリアのその後についてでした。
第一弾はアルビオン王国のその後です。
◇◇◇◇◇◇
ハルケギニア全土を巻き込んだ、オッパイ戦争。
人々は「オリヴァー・クロムウェルの乱」と言い、ロマリアの司教が企てた一連の反乱を収めたゲルマニア貴族……
いや、ハルケギニアの漢達の頂点に立つ貧巨乳連合教祖であるツアイツ・フォン・ハーナウを讃えた!
彼の提唱する、オッパイへの情熱と素晴らしさ。
そこには漢の夢が詰まっており、そこから派生する色々な恩恵が貴族だけでなく平民層にも広がっていた。
オッパイ教を信奉する貴族や裕福層は、彼の教義の根本に有る
「大いなる乳の下へ集え!乳を争いの元にするべからず。全ての乳を愛せよ!」
貧乳・巨乳・美乳……
全てのジャンルを網羅する各種教典(漢の浪漫本)に偶像崇拝(フィギュア)と分かり易い教え。
信者達は、自らが求め追求する性癖を謳歌した。
そして信者達は、主に貴族や裕福層だが平民達にも優しくなる。乳は全ての女性に平等に有る。
そこに貴族や平民と言う垣根は無かったから……
そして一番影響を受けたのが、反乱の舞台であったアルビオン大陸で有り。そこに住む、王族・貴族・平民達だった。
◇◇◇◇◇◇
アルビオン王国の主都ロンディニウムのハヴィランド宮殿では、朝から大変な騒ぎになっていた。
救国の立役者、我らが教祖ツアイツ・フォン・ハーナウが公式な使者としてガリア王国から来るのだ。
しかも、フィギュア売上ナンバーワンのティファニア嬢と共に……
オッパイ大好きウェールズ皇太子が陣頭指揮を執り、瞬く間に準備が整って行く。
「バリー!こちらの方は粗方の準備は済んだが、そっちはどうだ?」
「はい、準備万端整っております」
「そうか……いよいよだ!我が新生アルビオン王国に、ツアイツ殿を迎えられるのは……長かったな、この2ヶ月間は」
主従2人、走馬灯の如くこの2ヶ月間の事が蘇る。周りからは滅亡かと囁かれたが、鮮やかな逆転劇で勝利!
何故かサウスゴータの城壁と市街地に被害が出たが揉み消した……そして国その物の復興。
多大な支援をガリアとゲルマニアから受けた。
トリステインの支援は……
アンリエッタ王女自らが、復興援助の指揮を執ると居残りを志願したが……いや、思い出すのも……その、何だ。
大人の事情で検閲削除な事項が多々有ったのだ。
帝政ゲルマニアとの外交は当初は難航するかと思ったが、使節団に紅髪のツェルプストー三姉妹とツアイツ殿の父上であり、貧乳教の教祖たるサムエル殿を遣わしてきた……
父上が巨乳以外の性癖を認めたので、逆に王家に隔意を持つと思われていた者達が率先して交流を深めていった。
私は、帝政ゲルマニアのアルブレヒト三世を義父上と呼ぶ日も近いかもしれない……
性癖に奔放なゲルマニアのトップだけあり、彼の紹介してくれた娘達は綺麗どころが多かった。
しかも美人でお淑やかで巨乳だ!
お淑やかで巨乳だ!
お淑やかだ!
大切だから三度言った。
その中でも、好みにドストライクな三人の姫達。悩む、悩むぞ!
年上のおっとり系巨乳美女!同い年の大人しい系の巨乳美少女!年下の快活だが、素直系美幼女!
ゲルマニアの女性は積極的と聞いたが、彼女達は違う。いっそ全員を……
「ウェールズ様。そろそろツアイツ殿が到着なされますぞ。先ふれの竜騎士が来ましたし、プリンセス・イザベラ号が見えますな」
バリーの声に妄想から引き戻される。僕にも、こんなに嬉しい婚姻話が来るなんて!直ぐにでも話を進めるべきだろう。
意識を周りに向ける……
2人の視線の先には中庭に降り立った竜騎士と、遥か彼方の上空に浮かぶ巨大な戦艦だった。
プリンセス・イザベラ号!
ロイヤル・ソヴリン号と共に最終決戦を戦い抜いた両国の絆の船だ。
◇◇◇◇◇◇
「旦那様。漸く着きましたね」
「テファ……良かったのかい?この国には辛い思い出しかないんだろ?」
プリンセス・イザベラ号の甲板で並んで白の国を見下ろしている。
「いえ、楽しい思い出も有りましたよ。
例えば旦那様が、白馬に跨った王子様の様に私を救いに来てくれました。今は次期王様ですよね」
クスクスと笑う彼女は、自分の両親をエルフだった母親を囲った罪で粛正された悲しいハーフエルフだ。
「次期王様ね……ピンと来ないんだけど。今と何が違うの?」
王族の義務だけがのし掛かってくる。政務や世継ぎの問題とか……
「そんな変わらない旦那様が大好きです」
巨大な胸で腕を抱えられ思わずニヤニヤしてしまう……では、久し振りにウェールズ皇太子に会いますかね。
流石は空中大陸アルビオン!
プリンセス・イザベラ号の様な大型戦艦を係留出来る設備が有る。タラップから降りると、盛大な歓迎を受けた。
まさかのジェームズ王とウェールズ皇太子自らの出迎えだ。
僕の腕を掴むテファが一瞬だが、強く握り締めた……気丈にも僕を見上げて微笑む。
「行きましょう!旦那様」
テファを伴いタラップを降りて、両王族の前へ
「ジェームズ王、ウェールズ皇太子。わざわざのお出迎え感謝します。今日は宜しくお願いします」
そう言うなりウェールズ殿がガッシリと両手を握ってきた!
「ツアイツ殿!
共に王族となったからには、もはや遠慮も要らないな。心の友よ!新生アルビオン王国へようこそ。国をあげて歓迎する」
両手をブンブンと振り回して歓迎してくれる。
「ジェームズ王、初めまして。ウェールズ様、ご無沙汰しております」
母上にミッチリ仕込まれただけあり、テファの作法も様になってきている。
「歓迎しよう。ティファニア殿、未だ戦渦の傷も癒えぬが精一杯のお持て成しをさせて貰おう」
挨拶も済んだ事だし、宮殿内に案内される。
途中で熱狂的なテファファンが、彼女のフィギュアを片手にブンブンと両手を振り回しているのを見た。
アルビオン王国は巨乳派が根強い。
彼らにとって、テファは現人神なんだろう。
普通の女性なら嫌な顔をしてしまう彼らにも、にこやかに手を振っている。
今やイザベラと人気を二分する程の彼女のファンは、沢山居るのだろう。
公式ファンクラブの申し込みも多い……代表的なグループは、隣でにこやかにエスコートしている某皇太子だが。
「ん?ツアイツ殿、どうなされた?私の顔に何か付いてますか?」
「いえ……皇太子が代表を務めるファンクラブって、何だかなー?って思いまして」
「…………いや、人違いでしょう。HAHAHAHA!天空のネクストキングは僕じゃナイヨ?」
「いや、もう少し捻りましょうよ」
外交的にも個人的にも、両国の友好は問題無いだろう……
完結後リクエスト外伝・アルビオン王国復興記(後編)
アルビオン王国の主都ロンディニウムにある、ハヴィランド宮殿。歴史ある煌びやかな宮殿にて歓迎の宴が開かれていた。
主賓は、次期ガリア王ツアイツ・フォン・ハーナウ!
未だ実家の姓を名乗っているが、いずれガリアの文字が名前に入る筈だ。
そして、未だ彼の婚約者の立場だが側室として召されるのが決定しているティファニア嬢。
この2人を迎えた為に宴は深夜迄続いた。
特に着飾ったティファニアのドレスが、初回限定版のフィギュアの色違いだった事をいち早く気付いたウェールズ殿の講釈が長い長い……目が完全に逝ってます。
そこにジェームズ王が参戦。テファの為に用意した、ジェームズコレクションを披露!
宴は前半戦、オタク会談。後半戦、ティファニアによるジェームズコレクション着せ替え披露会なった。
伝統を重んじる始祖の直系王家が、こうも家臣達と身近に接し語り合うなんて!
従来なら有り得ないだろう……しかし、このスタイルが新生アルビオン王国の基本姿勢なのだろう。
この国から腐敗貴族が出る事は、かなり先だな。王家と貴族達が共に理想を語り邁進する関係は強固だ!
ロマリアからの圧力も跳ね返すだろう。ひとしきりテファのファッションショーが終わってから宴はお開き。
ジェームズ王とウェールズ殿、そして僕とテファだけが別室に集まり紅茶を振る舞われた。
「ティファニア殿、ジジイの道楽に突き合わせてしまい済まなかった。疲れただろう?」
穏やかなジェームズ王……これが先程までステージの最先端に陣取り指揮をしていたとは思えない。
「いえ……突然だったので驚きましたが。あの、今日着せて貰ったドレスや貴金属ですが、本当に頂いて宜しいのですか?」
都合50着以上のドレスに、数々の装飾品。どうみても国宝が混じっていました。
風の指輪……アレを嵌めて来た時は目を疑った。
ウェールズ殿が、彼女の金髪と白い肌に映えるから……何て言っていたが、虚無たるテファには危険な代物だ。
これで始祖のオルゴールなんか見せて貰ったら……
「構わんよ。あれらが君への贖罪になるとは思っていない……」
贖罪?ちょまさかジェームズ王はテファの事を?
「ツアイツ殿。昔話を聞いてくれぬか……
儂には弟が居った。兄弟の仲は悪くは無かったよ。儂は巨乳好き、奴は貧乳好き。何処かで聞いた関係であろう?」
静かに語り出すジェームズ王。声は穏やかだが、その眼光は鋭く真っ直ぐに僕を見詰めている。
「まるで、僕の親子関係みたいですね……」
「ふふふ……ツアイツ殿とサムエル殿とか?
そうじゃな。しかし我らは分かり合えなかった。何処かで道を違えてしまった……その先は、話さずとも分かっているだろう?」
「父上……」
ウェールズ殿も、ジェームズ王が何を言っているのかが理解出来たのだろう。
「ええ……種族を超えた愛が有り、時代がそれを許さなかった。
しかし今ならば、私の知る偉大な王は受け入れてくれると信じています」
あれだけテファを持て成したのは、この話が有るからか?
「貧巨乳派教祖のツアイツ殿に信じて貰える王とは……幸せだな。ティファニア嬢。儂は……」
静かに首を振るテファ……
「ジェームズ様。
私は今、幸せです。過去に何が有ったかも知りました。種族の違い……
私は、私を受け入れてくれた大切な人が、私の為にどれだけの努力をしてくれたかを知っています。
それでも秘密がバレてしまった。私は、大切な人に迷惑が掛かるなら……」
ジェームズ王は手を上げて、テファの言葉を最後まで言わせなかった。
「ティファニア嬢……
儂は、過ちを繰り返す事はしない。若い君達を見て、随分と過去の儂らが愚かだったかを知ったからな。
人は分かり合える。なんと単純な事か!だが、一国の王として一度下した結果は覆す事は出来ない……
しかし、次こそは違った結果を出したいのだ。……すまなんだ。今はこれしか言えぬが……」
アルビオン王国の王が、非公式でも謝罪?
「ジェームズ王、それは……」
「ツアイツ殿……
ティファニア嬢には、弟の面影が有る。そして名前も、間者が調べて来たのと同じ。少し捻った方が良いな」
あれ?一本取られた感じ……
「兎に角だ。ティファニア嬢には幸せになって欲しい。助力は厭わぬ。例え儂に死ねと言うなら叶えよう。それ程の事をしたのだからな」
またシリアスに引き戻された。
「ジェームズ王、死ぬとかそれがいけないと思います。テファの幸せを願うなら、彼女をそっとしておいて欲しいのです。
彼女はゲルマニアの下級貴族の娘。僕が一目惚れをして強引に物にしたんです」
「私もそれで幸せです……」
ジェームズ王は、一粒の涙を流してから笑った。力無い笑いだったが……
「老人が余計な事をして、若者を困らせたみたいじゃな。今日の事は我々だけの秘密だ。
強引に物にしたと言ったが相思相愛じゃな。ウェールズよ、お前も早く伴侶を捕まえろ。なんなら例の娘達、三人共申し込むか?」
「ちっ父上?……いや、まぁそれも心が動きます。いっいやしかし、三人は流石にアルブレヒト三世も……」
流石は老獪な王様だ。自分の息子をダシに場の雰囲気を切り替えたか……
「ウェールズ殿?
アルブレヒト閣下には、数多な娘が居ますよね。もしかして秘蔵っ子の三人かな?
年上おっとり美女、大人しい美少女、素直な美幼女ですよね。
彼女等を紹介するとは、アルブレヒト閣下も本気で婚姻外交を望んでいるんですね。彼女達は皆さん良い方々ですよ」
アルブレヒト閣下……ウェールズ皇太子の好みを的確に突いている。本気で墜としにきたよ。
成功すれば、ゲルマニアとアルビオンの関係は強固になる。
勿論ガリアもだ……
アンリエッタ姫と結ばれてトリステイン寄りになるよりは良いのかな?
こうしてジェームズ王はテファに謝罪したが、真相は有耶無耶になった。
後は明日、ジェームズ王とウェールズ皇太子に漢の浪漫本ファンクラブ上級会員として特製マントを授与してお終いだ!
◇◇◇◇◇◇
昨夜のシリアスな展開は何処へやら、漢の浪漫本ファンクラブ特設会場は……ハイテンショーン!
「みんなーコンニチハー!」
「「「ウォー!ティファニアちゃーん!」」」
ナニコレ?デジャヴ?イザベラのコンサート会場に初めて来た時みたいだ……
「今日はー、新しい上級会員のマント授与式なんだよー!」
「「「ウォー!ジェームズさまー、ウェールズさまー」」」
「先ずはファンクラブネーム、謎のオヤジキングさんだよー!みんなー、せーの」
「「「オヤジキングさーん!」」」
イザベラ……テファの事を私に匹敵するアイドル属性だから任せろって言ったけど。
コレは……この教育は、やり過ぎてないか?