現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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超女の戦い・王女の品格

対決ガリアVSトリステイン・超女の闘い

 

 

「姫様!ツアイツ様が重傷です。直ぐに医務室へ」

 

 午後の紅茶を楽しんでいた時に、メイドが血相を変えて飛び込んで来た!

 馬鹿な?レコンキスタの刺客が入り込む余地は無い筈だ。

 のほほん!としててもスクエアのアイツが怪我を負わされるなんて……持っていたカップを乱暴に置いて叫んでしまう。

 

「誰だ!ツアイツに怪我を負わせたヤツは!ああ?誰なんだい?」

 

「兎に角医務室にご案内しますので……早く、こちらです」

 

 王女だから、他国ではお淑やかにしてるつもりだったが駆け出してしまう。

 見かねたメイドが私を抱き上げてフライで窓から飛び出し、屋敷の外から一階の隅の部屋にショートカットして医務室に飛び込んだ……

 

 なっなんだい?この部屋、寒いよ!

 

 体感温度じゃなくて魂が凍え……メイドが私を庇う様に、前に立ちふさがる!馬鹿な、此処まで刺客が?

 ヒョイと覗いて見ると規格外の女が居た……

 

「くっシェフィールドと……烈風のカリン殿かい?2人共、殺気を抑えなよ。ツアイツの体に悪いだろ」

 

 烈風のカリン……初めて会うが肖像画は見たし、冗談みたいな経歴も報告書で知っている。

 ツアイツの戦闘の師匠であり、自己チューなババァだ。容赦の無い殺気を漂わせている2人を窘める。

 

 私だって相手を殺したいんだ……

 

 ツアイツの容体を確認すれば、ベッドに横たわり半身に擦り傷や打撲痕が集中している。

 何かに弾き飛ばされて、地面に擦り付けた様な傷だ。水メイジが4人掛かりで治療をしている為か、寝ているツアイツの表情は穏やかだよ。

 彼らは、2人が垂れ流す殺気にも怯む事なく治療に集中している。額に汗を滲ませながら、両手を患部に当てて魔力を注ぎ込んでいる。

 

 彼らの邪魔をしちゃ駄目だ……邪魔者の2人を医務室から追い出そう。

 

「治療の邪魔だよ。一旦外に出るよ」

 

 2人を促し退出する。幾らツアイツを害した奴らが憎いとは言え治療の邪魔はやり過ぎだよ、全く。

 でも何故睨み合ってるんだろう?

 

「お前達、ツアイツに怪我を負わせたヤツはどうした?捕まえたのかい?まだなら何故こんな所でグズグズしてるんだい!早く探しに……」

 

 シェフィールドが黙って人差し指でカリンを示す。まさかトリステイン王国のレコンキスタ派の跳ねっ返りが生き残っていて復讐を……

 

「この女がツアイツを吹き飛ばしたのよ。私の大切な義弟に怪我を負わせたわね。万死に値するわ」

 

「ふん!家族の問題に口を挟まないで頂きたいわ。義息子の浮気癖について少しお仕置きをしたのよ。他人の貴女には関係ないのよ」

 

 シェフィールドから表情が消えた!ヤバい、ヤンデレじゃない本気で殺る目だ!

 

 指さしていた掌を握り親指を突き立てて、そのまま下に向けた。

 

「殺すよババァ!」

 

「返り討ちにしてあげるわ!」

 

 シェフィールドが掌を横に振ると、外壁とともにカリンがぶっ飛んだ!そのままシェフィールドが外に飛び出して行く。

 

 浮気?

 

 まだツアイツは未婚だし、第一夫人は地位・血筋・権力共に私だろう。お前の娘の方が側室……つまり私達からすれば浮気なんだよ!

 それを私は受け入れるつもりなのに……烈風のカリン!胸も小っちゃいが度量も小っちゃいね。

 

「ふざけるな、ババァ!シェフィールド、私が許す。その勘違いババァをぶっ飛ばしな!」

 

 此方をチラリと見たシェフィールドが、グッと拳を上げた!ああ、新しいお母様は頼もしいね……

 しかし、外壁が崩れる程の圧縮した暴風を喰らってもフライで浮いているあのババァ。まるで堪えてない、服に付いた埃を払ってやがる。

 

 生きている内に伝説になるだけの事は有るね。

 

 シェフィールドの追撃の竜巻がババァを襲う!屋敷の城壁を吹き飛ばし、今度こそ有効打を与えたか?てか、街にババァを吹き飛ばしたな!

 

「ばっ馬鹿がっ!市街地に行くな、民衆にまで被害が……だっ誰か居るかい!避難勧告をだすんだよ」

 

 これは戦後の協議は揉めるだろうね。戦災より被害が大きくなりそうだよ……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ツアイツが医務室に担ぎ込まれた!

 

 あの烈風のババァが犯人ね。ツアイツの容体を確認している時に、浮気癖だとかお仕置きだとか言っていたわ。

 私の大切な弟に怪我を負わせた罪は重い。しかし手持ちは風石と火石だけ……それに牙ゴーレムか、これは無意味だわ。

 

 心細いけど、他の凶悪アイテムを取りに行く暇が無い。今直ぐ殺りたいから!

 

 と思っていたらイザベラが来たわね。私達の殺気がツアイツに良くないと……そうだったわ。前もこの女の屋敷でツアイツは倒れた。

 やはりこの女は始末しよう……誰がツアイツを傷付けたって?目の前のこの女よ。

 

「この女がツアイツを吹き飛ばしたのよ。私の大切な義弟に怪我を負わせたわね。万死に値するわ」

 

 指差して教えてあげたわ……

 

「ふん!家族の問題に口を挟まないで頂きたいわ。義息子の浮気癖について少しお仕置きをしたのよ。他人の貴女には関係ないのよ」

 

 よし、殺るわ!親指を突き立てた拳を下に向ける、ツアイツの教えてくれた挑発的な仕草。

 

「殺すよババァ!」

 

 何か騒いでいたババァに風石の力をピンポイントで解放する。

 建物の外壁を突き破ってぶっ飛ばしてやったけど、直前に不自然な風の塊があの女の体を包んだ。

 ダメージは殆ど無いわね、追撃の為に接近する。

 

 途中、イザベラがエールを贈ってくれたので応える。私達の幸せの障害は、ここで潰す!

 

 残りの風石を更に練り込んで解放、これは効いたみたいだ。

 竜巻に巻き込まれ、ボロキレみたく体を揉みくちゃにしながら城壁に叩きつけてやったわ!

 

「よしっ!息の根を止めてやるわ!」

 

 更に追撃をする為に市街地に向かった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「こっこんな化け物達が市街地に……ヤバいよ、これは」

 

 血の気が無くなるとはこの事か。なっ何か私に出来る事は……暫し呆然と超獣対決を見る。

 

「あっ!シェフィールドが吹き飛ばされた。あれだけダメージを与えたと思ったのに無傷?なんてババァだ!」

 

 これは止めないとサウスゴータが崩壊するぞ。

 

「いっイザベラ様!これは一体?」

 

 侍従のバリーと、近衛兵かね?慌てて駆け付けて来たよ。そして奴らの闘いをみて呆然としている……

 

「人災ですか……しかし何故、あのお二方があの様な?」

 

「烈風のババァがツアイツに怪我を負わせたんだよ。それに怒ったシェフィールドが闘いを挑んだ。

しかし規格外の連中なだけにあの騒ぎさ……黙って見ていても終わらない。

バリー、演説で使った拡声の魔法を準備しな!私が止めるよ」

 

 もはやトリステイン軍でもアルビオン軍でも止められないだろう。

 ツアイツの男の浪漫本に有った「エヴァさん・ハルケギニア版」アレの人型最終決戦兵器だよ……

 

 暫くしてテラスに拡声器の準備が出来たので、超獣2人に向けて勧告する。

 

「止めないか、お前達!シェフィールド、もう十分だよ。

烈風のカリン!これ以上の抵抗は、ガリアとトリステインの全面戦争に発展するよ。

良いんだな?此方は開戦に躊躇しないよ!嫌なら双方手を引きな!」

 

 何故かサウスゴータ市民達や兵士達から拍手が沸き起こった!

 

 救世主?魔獸使い?嫌だよ、そんな称号は!ツンデレアイドルだけで十分さ。

 

 

 

対決ガリアVSトリステイン・王女の品格

 

 

 シェフィールドVS烈風のカリン

 

 この冗談みたいな取り組みが引き分けになった後、当然街を半壊させた責任は追求しなければならない。

 では原因は何か?アルビオン王党派の英雄で有るツアイツを害したカリンを咎め、シェフィールドから闘いを挑んだ。

 

 先に手を出したのはガリア側、しかし原因はトリステイン側。

 

 喧嘩両成敗には心情的には難しい、どう見てもトリステイン側に責任が有る。どちらも我が国の為に、王女自らが軍を派遣してくれた。

 

 これは彼女達の直接対話で決めて貰うしかない……バリーは胃を押さえながら呻いた。

 

「ツアイツ殿、早く目覚めて下さい。この様な修羅場は、老骨には身に染みますゆえ……」

 

 バリーの願いは叶うのか?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 未だに無表情なシェフィールドと応接室で向かい合わせに座っている。

 あのまま闘わせては、勝敗のつく前にアルビオン大陸が壊れたかも知れない。

 

「どうなんだい、お母様?あのままで勝てたかい?」

 

 戦力比を確認しておかないと、最悪の時に決断が鈍るからね。

 

「ああ……手強いわね、正直なところ手持ちのアイテムが少なかったわ。あのままでは負けたかしら……

でも封印しているマジックアイテム類を出せば勝てる自信は有るわ。最悪でも引き分けに持ち込めるわね」

 

 よし!あのババァはシェフィールドが抑えられる。つまり後は純粋な国力の差だね。

 

 ツアイツの病室にはアルビオンの近衛兵に守らせている。その周りには気付かれない様にイザベラ隊を配置した!

 トリステイン側からの接触は力ずくでも阻む。後は私とアンリエッタ姫との直接対決だ!

 

 でも素直に話し合いで済ますつもりは欠片も無いんでね。私は意地が悪いからさ。

 悪いがトリステイン側には、とことん泥を被って貰うよ。先ずは根回しに侍従のバリーと話をしようかね?

 

 シェフィールドに同行を求めようと思ったが……何か水晶にツアイツの寝顔が写っている。

 

「これは、何だい?ツアイツを監視してるのかい?」

 

「嗚呼、ツアイツ!

お姉ちゃんが側に居てあげなかったから、烈風のババァなんかに怪我を負わされて……今度はしっかり見守るから平気よ」

 

 何か逝ってしまった表情だよ……いや、この状態の時に話し掛けるのは私でも危険だね。放っておくか……

 近くに居た兵士にバリーの所まで案内させる。案内された部屋の中で胃を押さえて呻いてるね……幸い死傷者は出なかったが、復興費用は莫大か。

 

「バリーすまないね。私がもっと早く止められれば被害は少なかったね」

 

 先に謝っておく。破壊行為ではなく、止められなかった事を……

 

「これはイザベラ様。いえ、イザベラ様の機転がなければサウスゴータは崩壊していました。有難う御座いました」

 

 此方に悪感情は少なそうだね、ヨシヨシ。

 

「トリステイン側からは謝罪は有ったのかい?」

 

 黙って首を振るか……下手なプライドは、時には悪影響を及ぼすよ。

 

「そうかい。全く何様かね?サウスゴータの復旧費用は私が持とうじゃないか」

 

 なに、大した金額じゃないしヴァリエール一族に打ち込む楔になれば御の字さ。

 

「しかし私の一存では……もう直ぐウェールズ皇太子も戻られますので」

 

 確かに決定権は無い、か。

 

「いいんだよ。迷惑をかけたのはウチも同じだ。シェフィールドは内々だが、お父様の後妻になるんだよ。

だから醜聞はね……それに市街地の復興は民衆の為に最優先だろ?」

 

 どうする?ガリアの王妃(予定)に罪は着せられないだろ?しかも復旧費用は出すと言っている。

 

「ウェールズ皇太子……

随分とアンリエッタ姫に苦手意識を持っているんだろ?この件で貸しを作りなよ。

他国で、他の国の王族と揉めたんだよ。しかもレコンキスタの件では、大した活躍も無い。

逆に貢献したツアイツを家族間の問題とは言え怪我をさせたんだよ……」

 

 そう囁いて部屋を辞した。これでアルビオン側は私に付いたも同然だよ。

 

 さて次はアンリエッタ姫と直接対決さね。

 

 魔法は苦手だけど、外交はそうでも無いんだよ。しかし他国の王女の部屋にいきなり押し掛けられないからね。

 先に使者をたてるか……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 周りの方々が、ヴァリエール夫人がツアイツ様にお仕置きをした報復に、ガリアの魔女から攻撃を受けたと騒いでいるわ……

 マザリーニ枢機卿が、イザベラ姫に使者をたてて和解しろって煩いけど。別に怪我をさせた訳でもないですし……

 

 私がツアイツ様のお見舞いに行った方が誠意が伝わりますわ!

 

 そうです。ツアイツ様のお見舞いに行きましょう。夕日が差し込む医務室に、私とツアイツ様の2人……

 見舞いに来た私にツアイツ様は感激をして、そのままベッドに引き込む……

 

 嫌ですわ!困りますわ!だって私にはウェールズ様も……嗚呼、女の幸せが極まって逝くわ!

 

「ひめ、姫様……アンリエッタ……姫……」

 

 何かしら?私の幸せな一時を邪魔する不届き者は。

 

「こほん。無礼ですわよ、マザリーニ枢機卿……女性の部屋に許可無く入室するなど……無断で入って良いのは、その2人だk」

 

「アンリエッタ姫!一大事ですぞ。

イザベラ姫から使者が来ました。先程の件について話が有ると……大丈夫ですか?ガリアの才女本人が乗り込んでくるのですぞ」

 

「くすくすくす……私には心強き殿方が付いているのです。良いでしょう!この部屋にお招き下さいな」

 

 丁度良い機会ですわ!ツアイツ様に少しばかり良くされたからと言っても、私とは積み上げた歴史が……愛の歴史が違うのです!

 思い知らせてあげますわ。

 

 うふふ、うふふふふ……

 

「アンリエッタ姫、妄想はその辺で……イザベラ姫がいらっしゃいました」

 

「あら?時が過ぎるのは早いわね……分かりました。お通し下さいな」

 

 確か竜騎士団団長のカステルモール殿でしたか?彼と三人のメイドを引き連れてきましたわね。

 こちらはマザリーニ枢機卿とアニエス隊長だけだわ。

 

 ふん!私の方が美人で胸も豊かで魔法の才が有りますわ。

 

「アンリエッタ姫かい?単刀直入に言うよ。

アンタの家臣が私の旦那に怪我を負わせた上で、お父様の側近と戦闘を始めた件で、双方の確認をしておきたくてね」

 

 あら、ガサツな姫ね……本物かしら?

 

「貴女の旦那様など私は知らないわ。何か誤解が有るのかしら?」

 

「ツアイツ・フォン・ハーナウ!現在、私と婚前旅行中なんだよ。知らないのかい?」

 

 可哀想な姫ね……ツアイツ様は私の為に尽力し、私の為にアルビオンまでいらしたのよ。

 

「私のツアイツ様と、貴女のツアイツ様は別の方なのね?お可哀想に……」

 

「そうかい?なら構わないよ……私は私のツアイツと結婚するからさ。アンタのツアイツは、何処に居るんだろうね?

そうそう。烈風のカリンと戦った側近だけど……実はお父様の後妻になるんだよ。私も危なかったんだよ。

互いに怪我は無かったけどさ。じゃヨロシクね!アンタのツアイツにさ」

 

 そう言って部屋を出て行ってしまわれたわ。

 

「私の勝ちね!すごすごと帰りなさいな」

 

「ちっ違いますぞ。何て事をしてしまったのですか!」

 

「そうです姫様!ツアイツ殿は1人ですよ。じゃなくて、今ガリアに喧嘩を売りましたよね?」

 

 全く五月蝿いわね。しかし世界は広いわね……まさか同姓同名のツアイツ様がいらっしゃるなんて。

 さぁお見舞いの準備をしなければ……

 

 何処までもマイペースな姫様だった。

 


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