現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第176話から第178話

第176話

 

 レコンキスタ軍を壊滅させ、後は盟主オリヴァー・クロムウェルが見付かるの待つばかり……しかし、ガリア王国のイザベラ様と良い仲になってしまった。

 これを婚約者達の親達に説明しなければならない。

 

 そして今、ルイズの両親たるヴァリエール公爵夫妻を前にして……それを告げなければならない。

 

「ツアイツ殿もガリアの仲の良い連中を引き連れて活躍したそうですね。聞きましたよ。私も師として鼻が高い思いです」

 

「しかしツアイツ殿の特技と言うか……他国にまで力になってくれる連中が居るとは。

国や身分・立場を越えて仲良くなれる事は素晴らしいな。彼等はド・モンモランシ領にも来た連中だろ?」

 

 それだけじゃ無いんですよ。僕は出されたお茶を一口飲んでから話し出す。

 

「ははははは……そうですね。僕も彼等には感謝しています。しかし……その、余りその特技と言うか……

 仲良くなり過ぎて……その問題が有りそうな……例えば、姫……様とか……どう思いますか?」

 

 ヴァリエール公爵の目を見て問う。

 

「ああ…(アンリエッタ姫の事だな)まぁ仕方ないだろう。それは不可抗力だよ。私達は気にしないぞ。なぁカリーヌ?」

 

 ヴァリエール公爵はカリーヌ様の方を向いて同意を得ようと聞く。

 

「そうですね。アレ(アンリエッタ姫)は仕方ないでしょう。私達も気にしませんよ。

本人達の問題ですから……(どうせ、アンリエッタ姫では義息子をどうこう出来る技量は無いですしね)だから義息子も気にしないで良いですよ」

 

 そう言って微笑んでくれた。

 

「………?えっと、本当に宜しいのですか?」

 

 何だろう……何かと勘違いしてる?

 

「ええ、貴方の功績を考えれば申し訳ない位です」

 

「そうだぞ。気にしないで良いぞ」

 

 はははははっと笑い合う!

 

「良かった。そう言って貰えると助かります。流石にイザベラ様と仲良くなり過ぎてしまいまして……どうしようかと悩んでましたから」

 

 はははははっと愛想笑いをしたが……

 

「「フザけるなー!アンリエッタ姫の事でなくて、ガリアの姫を口説いてたのかー?」」

 

 ああ……文句と共に、杖を抜いたカリーヌ様が僕を魔法で窓の外に吹き飛ばす!

 盛大な音をたて硝子の破片を纏いながら外へ飛んでいく……シェフィールドさんに吹き飛ばされた連中の気持ちが分かったよ。

 そして、地面が目前に見えたので受け身の体勢を取るが……着地と同時に激痛が右半身に走る!

 

 また療養生活の始まりか……僕は痛みを忘れる為に、意識を手放した。

 

………………

 

……………

 

…………

 

………

 

……

 

「知らない天井だ?いや僕が借りていた部屋だよね……てか、体がそんなに痛くないんだけど?」

 

 起き上がって体中を触って確かめる。うん。包帯だらけだけど、痛みも少ないし、手足も指も全て有る。起き上がって部屋の外に出る……

 

 外に出ると、直ぐに控えて居た兵士の方が「ツアイツ殿、良かった。今、他の方々に連絡しますので部屋でお待ちを」そう言って走って行った。

 

 暫くして「ツアイツ、目が覚めたのかい?全く心配させるな!もう……こんな思いは二度と嫌だと言ったよね」突然扉が開いたと思ったら、イザベラ様が飛び込んできた!

 

 僕の胸の中に……

 

「イザベラ様、すみません。それで僕は……カリーヌ様に吹き飛ばされた筈でしたが。そんなに傷も無いし?」

 

 イザベラ様は僕に抱き付いたまま顔を上げてくれない。

 

「アルビオン王室付きの水メイジが掛かりっきりで治療したんだよ。あの糞ババアはシェフィールドが吹き飛ばした!

今思い出しても大変だったんだ……あんな化け物共が真っ向勝負したから。サウスゴータの城壁の二割が壊れた。

最後は私が、ガリアと全面戦争するんだな?それで本当に良いんだな?って脅して下がらせたんだよ……」

 

 何て事になっているんだ?

 

「それで、シェフィールドさんとカリーヌ様は?」

 

 まさか怪我を……

 

「ああ、あの化け物達は街を半壊させた癖にピンピンしているよ。トリステインの糞ババアはアンリエッタ姫に絞られてるよ。

シェフィールドは……良くやった!って誉めておいたよ。

ツアイツ、もうヴァリエール一族から手を引きな。結婚もまだの相手の浮気で半殺しなんてキチガイだよ、あのババア!」

 

 イザベラ様の背中をポンポンと叩いて落ち着かせる。

 

「アレがあの人たちのスキンシップなんですよ。元が普通じゃないから……大目に見てあげて下さい。

幸い傷も大した事は……有りましたが回復しましたから」

 

 ギュッと抱きしめられた。

 

「それと、義父様がそろそろサウスゴータに来るんだよ。挨拶をしたらガリアへ行こうよ。

オリヴァー・クロムウェルは捕まったよ。ゲルマニア軍が捕まえて此方に向かってるんだ」

 

 そうか……これでジョゼフ王の試練は達成した。後は、父上とツェルプストー辺境伯に説明か。まぁ此方は、どうにかなるかな……

 そう言えば、実家を出る時に2人にイザベラ様を口説いたのか?って聞かれたな。まさか本当に、こうなるとは思わなかったけど。

 

「では、ヴァリエール公爵に会いに行きましょう。誤解じゃないけど、このままの関係ではいられないし……ちゃんと話しましょう、ね?」

 

 小さい子を諭す様に話し掛ける。

 

「分かった。しかし別れろとか言ったら、考えが有るから。ツアイツも私の味方をするんだよ」

 

「ええ。僕らの事を認めて貰いましょう。彼らも身内になるんですから……」

 

 そう言って、一旦彼女を離すとサイドテーブルにしまっておいた胃薬を数錠飲み干す。

 

 昔の偉い人は言ってた。ハーレムとは作るよりも維持する方が大変だと。

 大奥の様に女性達を取り仕切る人物を育てないと破綻すると。身を持って知りました。

 

 そして、アンリエッタ姫に僕が居る事がバレた……アレ?

 

「イザベラ様、アンリエッタ姫にお会いしましたか?」

 

 彼女は凄く嫌そうな顔をした。

 

「会ったよ。あのババアの件で文句を言ったんだ。部下の責任は上司の責任でも有るからって……でも話しが通じなかった。アレは大物だね」

 

 イザベラ様を煙に巻くアンリエッタ姫?どんな会話だったのか気になるんだけど……彼女を伴いヴァリエール公爵に会いに向かった。

 

 

 

第177話

 

 

 こんにちは!ツアイツです……

 

 病み上がりなのにキリキリと胃が痛いです。そしてヴァリエール公爵が居る部屋まで来ました。

 

 すーはーすーはー!深呼吸をしていざ勝負って……

 

「ヴァリエール公爵居るかい?入るよ」

 

 先にイザベラ様が部屋にノック無しで入る。僕には出来ない芸当だ!

 

「これはイザベラ様。今度は、どの様なご用件ですかな?」

 

 ヴァリエール公爵の言葉が固い……

 

「ご無沙汰してます。ヴァリエール公爵……その、すみません」

 

「何を謝っているんだい!怪我をしたのはツアイツだろ?つまりは被害者だ。もっとビシッとしなよ。アンタは身内に甘いからこうなるんだよ」

 

 イザベラ様がバシバシと肩を叩く。

 

「義息子よ……先ずは座れ!カリーヌの事は済まなかったな。しかし、イザベラ様とその様な関係なら先に言って欲しかったぞ」

 

「その……まさかイザベラ様にお会いする迄は、自分もこうなるとは思わなかったので」

 

 実際には数回しか会ってないんだよね。

 

「まぁ私達は相性が良かったんだよ。安心おし、別にルイズ達と別れろなんて言わない。男の甲斐性だよ。だけど第一夫人は私だよ。ツアイツはガリア王家に婿入りだ!」

 

 ヴァリエール公爵も呆気に取られている。

 

「それは有難う御座います。義息子よ……後で詳しい説明をして貰うからな」

 

 ははははっ……乾いた笑いしか出来なかった。

 

「一応断りは入れたからね。私らは、これからガリアに行くから」

 

「ヴァリエール公爵、当初の予定通りレコンキスタは倒しました。

これからジョゼフ王に会ってきます。イザベラ様は心強い味方です。カトレア様の件は、ガリアから戻り次第で……」

 

 其れではと、頭を下げて退出する。次は父上とツェルプストー辺境伯か……

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 アンリエッタ姫の下からカリーヌが戻って来た。顔にまだ井形を浮かべて……

 

「先程イザベラ姫が来られたぞ。ツアイツ殿も一緒だ。アレはイザベラ姫がベタぼれだな。

しかし、ツアイツ殿はジョゼフ王と会う時に味方になってくれると言った。

イザベラ姫攻略も、この試練の布石かも知れんな。それが終わればカトレアの治療だそうだ」

 

 妻は黙ったままだ……

 

「しかし、ルイズが……ガリアの王女の方が本気なら……」

 

 ルイズの幸せに問題が発生するかも知れない。

 

「ルイズ達には手を出さないと言っていた。残念だが、本気になったイザベラ姫では我らでも相手になるか……ここは義息子を信じよう」

 

「分かりました。早く子供を仕込ませなければ駄目ですね」

 

 兎に角、ヴァリエール一族との繋がりを強化させよう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ヴァリエール公爵夫妻の部屋を辞して自室に戻る。

 

「ツアイツは甘いよ。全く……まぁそれがアンタの優しさなんだろうけど。どうする?私の部屋で休んで行くかい?」

 

「いえ、先にウェールズ殿に挨拶をしてきます。少し相談も有りまして……」

 

 相談と言う言葉に反応する!

 

「何だい?私には相談出来ない内容なのかい」

 

 少し表情に陰りが出来る。

 

「いえ……僕とウェールズ殿は、アンリエッタ姫に狙われているので彼と連携をしておきたくての相談です」

 

 イザベラ様が微妙な表情を浮かべる。

 

「あの姫様かい?何とも話していて頭が痛くなる女だね。アレは駄目だよツアイツ」

 

 同性にまでダメ出しされてますよ、アンリエッタ姫……

 

「分かってます、しかし一国の姫君です。慎重な対応が必要です」

 

 そう言ってイザベラ様と別れ、ウェールズ殿の部屋に向かう……途中で近衛兵に止められるかと思ったけどすんなり通された。

 部屋の前の衛士殿に取り次いで貰い中に入る。

 

「おお、心の友よ!良く訪ねてくれたね。此方から行こうと思っていたんだ」

 

 ウェールズ殿が、暖かく迎えてくれる。

 

「ウェールズ殿、レコンキスタ討伐成功おめでとう御座います。これでアルビオン大陸に平和が戻りましたね」

 

 ガッチリと握手をする。

 

「この勝利はツアイツ殿のお陰だ。我々はこの恩を忘れない」

 

「いえ、全ては王党派の方々の力ですよ。僕は切欠を作っただけです。この国の人々は素晴らしい!

勿論、ウェールズ殿もジェームズ王も……

僕は貧巨乳連合の教祖として、また友人としてお二人に上級会員の印で有る特製マントを贈らせて下さい」

 

 周りの方々から拍手が沸き起こる!

 

「ああ、ツアイツ殿……有難う。僕と父上はテファたんのウェディングバージョンが欲しい。

あの神乳を父上にも知らしめたい。世界には、夢が溢れているのだと……」

 

 テファのマントを2人が求めるのか……何て皮肉なんだろう。

 

「分かりました。会報でお二方の事を発表し大々的に贈呈式を行いましょう。勿論、ご迷惑でなければですが……」

 

「迷惑な物か!これは新生アルビオン王国の門出を飾る大イベントになるだろう。

皆も聞いてくれ!我らが教祖と共に新生アルビオン王国は繁栄するだろう!」

 

 周りの人々の熱狂振りが凄い。今、サラッと我らの教祖とか言わなかったかな?

 

「それと、ウェールズ殿にご相談が……アンリエッタ姫の事です」

 

 急に大問題児の話を振られウェールズ殿も意気消沈する。

 

「ツアイツ殿……私は、アンリエッタ姫の事が……」

 

「分かってます。私達は彼女に狙われる獲物……しかし、我らは肉食獣に狙われる草食動物では無いですよね?対抗する牙を持っている。違いますか?」

 

 くっくっく……邪悪な微笑みを浮かべる。

 

「おお、ツアイツ殿!確かに我らは覚醒せし漢……ならばどうします?」

 

「簡単ですよ。アンリエッタ姫が率いるトリステイン王国軍に、さっさとお礼をするのです。

何、大して活躍してないじゃないですか?金銭的なお礼でオーケーですよ。

因みに、ヴァリエール公爵夫妻にはアンリエッタ姫の助力はしない様に言質をとっています!」

 

 ウェールズ殿とバリー殿が、ハッとした顔をする。

 

「確かに要求される前に、礼を尽くしてしまえば……向こうからの要求は突っぱねられる、か」

 

 力強く頷く。

 

「しかも残敵掃討だけですから、強くは言えませんよね」

 

「バリー、直ぐに国庫から資金を……交渉は任せた!して、ツアイツ殿はどう断るので?」

 

 ニッコリと微笑む。

 

「イザベラ様と比べるまでも無いですから……さっさとガリアに向かいますよ」

 

 漢達は互いの成功を信じ、そして暫しの別れをかわした……アンリエッタ姫、ザンネーン!

 

 

 

第178話

 

 

 レコンキスタの盟主オリヴァー・クロムウェルを捕縛した父上達が、漸くサウスゴータに到着した。

 元とは言えブリミル教の司教だ……どうでるかな、ロマリアの教皇よ?

 父上とツェルプストー辺境伯はウェールズ殿と謁見してから僕の部屋に来る手筈になっています。

 

 そして……「ツアイツ、義父様遅いね?何をしてるんだい、全く……」ナチュラルにイザベラ様とメイドさん達がいらっしゃいます。

 ソファーに陣取り、後ろにメイドさん達が並んでいます。優雅に紅茶を飲んでますね。

 

 ああ、すみません。僕にまで淹れて頂いて……渡された紅茶を一気に飲んでからお願いする。

 

「あの……そろそろ戻られた方が宜しいかと」

 

 これからイザベラ様の事を話し合うのに、本人が居ては話し辛いかと……

 

「ツアイツの事だから、折衷案とか飲まされそうだからね。それに義父様には早めに会っておかないと」

 

 そんな彼女の衣装は、気合いが入っている。

 シンプルなロングドレスだが、髪の色に合わせた青色のグラデーションで胸元の淡い青から裾にかけて色が濃くなっている。

 髪飾りはダイヤモンドをあしらった銀色のティアラ、両腕に大粒のサファイアが付いた腕輪をしている。

 胸元を飾る宝石は最高純度の風石じゃないかな?

 

 多分だが正装だ……父上との対面に気合いを入れているのが分かる。

 

「凄く似合ってますが……その飾り、国宝では?」

 

 彼女はニッコリ笑って胸元の風石を弄ぶ。

 

「似合うかい?めったに付けないんだけど、今日は特別だよ」

 

 王族に正装で迎えられては、父上やツェルプストー辺境伯でも躊躇するだろう。

 全て計算している?などと考えていたら、いきなり扉が開いて父上が突撃して来た!

 

「ツアイツ!お前、出掛けにイザベラ姫とは何でもないと言いながら……こっこれはイザベラ様?」

 

 ノック無しで突っ込んで来た父上が、イザベラ様を見て固まる。

 

「義息子よ。流石に大国の姫君は無理があるぞ!もう少し自重してくれ……なっイサベラ姫か?」

 

 続いて入ってきたツェルプストー辺境伯もイザベラ様を確認して固まる。

 オッサン2人の視線が彼女を見詰めて僕の方へと移動し、またイザベラ様へと戻る。

 

 ニヤリと笑うイサベラ様……

 

「義父様、ガリアのイサベラです。末永く宜しくお願いします」

 

 そう言ってスカートの裾を摘まんで優雅に一礼する。慌てる父上!

 

「いや、その義父様?いやいやいや、それは無理が有りますぞ!ツアイツはゲルマニア貴族で有り我がハーナウ家の跡取り息子ですから」

 

 ツェルプストー辺境伯も、一般論で諭そう?とする。

 

「お初にお目にかかります、イザベラ姫。多国間の貴族同士の結婚とは準備が掛かります。

それにツアイツは、私の娘と既に結婚の儀を済ませてます。ですから……」

 

 しどろもどろに説得にかかる。そしてキッっと僕の方をシンクロして振り返ると詰問してきた。

 

「「ツアイツ!まさか節度有る関係であろうな?」」

 

 そして、取り返しのつかない関係ではないだろ?と確認するが……

 

「もっ勿論です。やましい事などしていません」

 

 イザベラ様が僕の腕を組んで言葉を遮る。胸が肘に当たってます。見下ろせば、なかなかのお宝が……

 

「義父様、安心して下さい。

貴族として他国の殿方を我が国に迎える為の協議はアルブレヒト閣下と進めるつもりです。正式な調印を結びます。私達には時間が有りますから……

ツェルプストー辺境伯。私はツアイツを独占するつもりはありません。婚約者が居る事も承知しています。それは受け入れますよ」

 

 そう言い放ってニッコリ笑う。王族に此処まで言われては黙るしかない。

 

 意気消沈してうつむくオッサンズ……気まずい空気が流れる。

 

「父上、すみません。苦労を掛けます」

 

 取り敢えず頭を下げる。本当にすみませんです。やがて顔を上げた父上とツェルプストー辺境伯。

 

「分かった。

アルブレヒト閣下には一報を入れておく。くれぐれも早まった行為はするんじゃないぞ?分かってるな!」

 

「義息子よ。

キュルケを泣かせる事だけはしないでくれよ。本人には直接説明してくれ。一旦我らはゲルマニアに帰るぞ」

 

 物凄く念を押された……何もかも諦めた様な、そんな表情をしている。父上など一気に五歳は老け込んだ感じだ。

 確かにガリアの狂王と親戚になるんだもんな。色々考える事や悩み事も有るだろう……

 

 しかしイザベラ様はご機嫌だ。いつも以上にニコニコしている。

 

「ツアイツ。これでガリアに向かう事が出来るね!さぁアンリエッタ姫が騒ぎ出す前に出掛けよう。

メイド、出発の準備を……では義父様、ツェルプストー辺境伯。失礼しますわ」

 

 そう言って、僕の腕を掴んで部屋の外に出る。それを生気の無い目で見送るオッサンズ……確かにアンリエッタ姫に見付かる前に出発しよう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 部屋を出る2人を呆然と見送る。

 

「…………おい?」

 

「ええ……流石はガリアを表で仕切る姫だけの事は有りますね」

 

 扉を見詰めながら溜め息をつく。

 

「あの調子なら、正規の手順で攻めてくるな。もう回避は不可能だろう……後はどれだけ有利な条件を上乗せするかだな」

 

「アルブレヒト閣下と対等以上に交渉出来るのは、ハルケギニアでは大国ガリアだけ、か。悪い様にはしないと言っているが……」

 

 ツアイツの部屋のソファーに座る。

 

「息子がガリアの入り婿か……ある意味では最高に孝行息子だが」

 

「貴族たる者、一夫多妻は常識だ。そして夫は、妻達を養わねばならない。それを考えれば、確かに悪い話しではないな」

 

 もうイザベラ姫と引き離すのは不可能だ。ならば、より良い条件を引き出すしかない。

 

「しかし、あの狂王ジョゼフと親戚か……大変だなサムエル殿は」

 

 ポンポンと彼の肩を叩く。

 

「お前の娘もイザベラ様が仕切るハーレムの一員なんだぞ。大変だな、派閥争いの親族は……」

 

 ポンポンと彼の肩を叩く。

 

 虚しい言い合いを続けるオッサンズであった……

 


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