現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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エレオノール&ソフィアルート第1話から第3話

エレオノール&ソフィアルート第1話

 

 

 おはようございます。

 

 学院生活という事で、独り寝が寂しい今日この頃のツアイツです。

 今日こそ……今日こそはメイド隊とニャンニャンすると誓いを立てて、先ずは腹ごしらえでも……

 

「失礼します。お早う御座います。ご主人様」

 

 扉がノックされ僕の返事とメイド服を着たソフィアが入ってくる。

 

「おはよう。ソフィアよく寝れたかい?」

 

 時間ピッタリに来たソフィアに声を掛ける。まさか起きるまで外に居てタイミングを計ってなかったよね?

 

「はい。前と同じお部屋を使わせて頂けたので……ただ、こちらのお部屋とは遠いので少し不便ですが」

 

 ちらりと上目使いで見る。いや流石にこの部屋に配置は無理ですよ……一応貴族の割り当ての建物だから。

 

「そうか、仕方が無いねそれは」

 

 …無理だよソフィア。

 

「でも昼間は隅に控えてますから問題は、「いや問題有るから」……どうしてでしょうか?」

 

 凄く不本意そうに聞いてくる。

 

「流石にそんなに用がある訳ではないからずっと待機しなくて平気だよ。休憩とかその辺の事は追い追い雇用条件書の就業規則欄に書いて有るので説明するから」

 

「それではご主人様への恩返しになりません」

 

「いや君が無事だっただけで十分だから、気にしないで。じゃ準備するからお願い」

 

 

 洗顔の準備とタオル、それに着替えだけど……着替えは勿論、独りで出来ますよ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 やはりご主人様は素晴らしい御方です。

 

 こんなにも大切にされた事なんて今までに一度も、両親にでさえも有りませんでした。

 貴族に身請けをされるとは妾と同じだと聞いてますし、昨夜もご主人様のお部屋に呼ばれたと同室のアリスに言ったら……

 キャーキャー言われて着替えやら体を清めるやらさせられて、今晩ついに男女のゴニョゴニョ…なのね!と覚悟を決めて向かったのにまさかの契約書やら何やらで……

 

 そして直ぐにお部屋を出されて自室に戻ったら、アリスが、じっと私を観察して……

 

 

「あらツアイツ様って淡白なの?それとも早漏なのかしら?」

 

 なんて失礼な事を言ってたので思わず頂いた雇用条件書でぶん殴ったわ。

 凄い分厚い紙の束で殴ったから涙目で文句を言ってきたから「ご主人様はそんなに早漏でもガッツいてもないんです!」と思わず大声で怒鳴ってしまった。

 

 そうしたら両隣の部屋から他の子達が部屋にきて大騒ぎ。実家が商家で読み書きの出来る子が、その雇用条件書を読んだのだけど……驚いてた!

 

 そこには終身雇用であり年々お給金が上がる事、働かないのに休日にお金を貰える有休制度、残業代や残業食、病気の時にお医者様に払うお金の殆どをハーナウ家が負担してくれる事、一番驚いたのが、他の貴族になにか無理を言われたり問題を起こしてもハーナウ家が守ってくれる事。

 兎に角、このトリステインでは考えられない待遇が書かれていた……これ本当なの?

 

 他の皆も、読み上げられる内容に驚いて黙り込んでしまった。

 

「ソフィア、ツアイツ様から離れちゃ駄目よ。この事が本当なら貴方の幸せは保障されてるの」

 

「信じられないけど、でもツアイツ様なら本当なのね。おめでとう。凄く羨ましいわ」

 

 皆、確かにツアイツ様はお優しいけど、貴族とは気紛れだから何時か変わってしまうかも?

 とどこか心の奥で思っていたけど、ここまで契約と言う形で保障してくれるなら……と感じてくれたのかしら。

 

 

 などと回想に耽っていたらツアイツ様の準備が終わったわ。流石にお着替えのお手伝いは断られたけど、結構細身なのに筋肉質なのね。

 洗濯物を受け取り一旦、退出し2時間後に正門脇にて持ち合せと伺いました。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 朝の早い時間だと流石に空席も目立つ……たまの休みぐらい寝坊したいからね。

 僕が食堂に顔を出すと、直ぐに朝食が用意される。確かこの子は良くソフィアと一緒にいる子だな……名前は知らないけど、猫みたいな感じの子だ。

 

 胸は……要努力?かな。

 

 食事が終ると「紅茶のお代わりをお持ちしますか?」と聞いてきたので、折角なのでもう一杯貰おうかな?

 お代わりを頼むと直ぐに食べ終わった食器が下げられる……何だろう?今日は一段と待遇が良いな。

 

 気になるので後で厨房に顔を出すかな……

 

 ここでは基本的に彼女等は私用では話し掛けて来ないから、まぁソフィア関係だろうし。

 

「おはよう。マルトーさん、肩平気かい?治癒しようか?」

 

「ああ大丈夫、大丈夫、そんなにヤワじゃねぇから平気だよ」

 

 肩をグルグル廻し無事をアピールしてる。

 

「今日はまた一段とサービスが良かったけど、あまり良すぎると周りから色々言われるから程々にして欲しいんだけど」

 

「お前ら、聞いたか?あからさまなサービスはするなよ。それはソフィアの役目だからな」

 

「「「はーい!」」」

 

「ほんと宜しく頼むね。最近、上級生に変な目で見られ始めてるから面倒なんだ。それと皆も注意してね。とばっちりが有るかもしれないから……悪いけど」

 

 最近僕の周りを伺っているのが、原作のキュルケに夜這い?を掛けていた、ペリッソンとスティックスの2人だ。

 原作同様のキュルケ狙いだろうけど、今のキュルケは色気は凄いが色男なら誰でもチョッカイを掛ける性格ではなくなっているので、彼らのアプローチは今の所、不発に終っている。

 原因が自分の魅力でなく僕をどうにかすれば、キュルケを手に入れられると思っている節が有るんだ。

 上級生が女の取合いで下級生にチョッカイ掛けて来るなんて……

 

 本当は咬ませ犬のモブだったのだが2人ともラインクラスだしスクエアが無敵なんて事は思ってないから条件次第では、負ける可能性も有る。

 

 

 相手も馬鹿じゃないから格上に対して何かしらの手立てを考えている筈だ。少なくとも僕ならそうする。

 基本的にトリステイン貴族は傲慢が多くプライドが無駄に高いから、下級生のしかもゲルマニアの貴族の僕ががちやほやされてるのは我慢出来ないだろうな。

 正面から来れば粉砕する自信は有るけど……何にしても注意だけはしておこう。

 さてそろそろ支度をしに部屋にもどるかな、女性を待たせる訳にはいかないし。

 

 

 

 部屋に戻ると扉の前に、眼鏡君……レイナールがウロウロしていた。

 

 最近だが、モテナイーズ君たち以外にも話をする連中が出来てきたんだが、彼もその内の一人だ。

 ギーシュ経由で例の「男の浪漫本」の噂を聞きつけ、眼鏡君の他に筋肉君のギムリとも交流が出来た。

 男の友情は女で簡単に壊れるが、下ネタで繋がった悪友とは壊れにくいのだよ。

 

 

「どうした?レイナール、用が有るなら食堂の時にでも話してくれれば良かったのに?アレか何か見たい本が有るのか?」

 

「いや本は見たいんだが…気になる事が有ってね。上級生数人が君を狙っている噂が有るんだ」

 

「また物騒だな……でもどうして知ったんだい?」

 

「偶然食堂で、席の近い上級生の話が聞こえたんだ。最もそいつらは実行犯でなく近々あいつ思い知らされるぜ、ザマァ……とか言っていたんだ。どうする?」

 

 レイナールは不安顔で聞いてくる。

 

「上級生の中にそういう動きが有るって事だな。有難う。事前に分かれば対応も出来るよ」

 

 こいつ、いい奴だな地味だけど。さてどうするかな。

 主犯はあの2人で間違いないと思うけど、他にも共犯が居ると思っておいた方が良いだろう。

 

「有難うレイナール。また何か聞いたら教えてくれよ。これから出掛けなきゃならないから御礼は後で」

 

「お礼なんていいさ。いつも本を読ませてくれるだけで十分さ」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 不思議な奴だった。

 

 最初僕の事を地味眼鏡君とか呼んだ時は、固まったね。仮にも貴族がフレンドリー過ぎるだろ。

 初めて見た時はギーシュとの決闘騒ぎの時だったが、ギーシュも大貴族の息子で気障だし、こちらも気に入らない奴と思いどちらの応援の輪にも入らず少し離れて見ていたのが……正解だった。

 まさか一瞬で観客諸共吹っ飛ばすなんて思わなかったし、力の差は歴然だった。

 仲良くなった切欠はクラスの男子だけに出回っている通称「男の浪漫本」を見せてくれた事だ。

 挿絵の女の子も、こうグッと胸を締め付けられる感じで……高価な美術品の絵画なんかより断然心に響いた。

 

 彼流に言うならば……

 

 

 萌え……だそうだ。

 

 

 うんそんな感じだ。なんと、彼の著書だとか……女性陣にバレたら白い目で見られる事確定なのに、全然気にせず続編を執筆する奴だ。

 友達同士でもプライド第一、見栄重視のトリステインに全く居ない新しいタイプの貴族だが、こんなに肩肘張らずに騒げる友人は居なかった。

 今ではギーシュ・マルコリヌ・ヴィリエ・ギムリと合わせて新モテナイーズとか勝手にグループ名を決めちゃってる変な奴だけど、大切な友人なんだ。

 この件は他の奴らにも声を掛けて調べてみるか。

 なに「男の浪漫本」は、一年生の男子の中では殆ど出回っているベストセラーだ。

 

 

 これが休載の危機と言えば、皆労力を厭わないだろう……

 

 僕的には「トゥ○ート」の古代ゴーレム製の可愛いメイドさん姉妹の話が……ううマルチィ。

 

 レイナールの趣味はドジっ子ロリコンタイプだと発覚した。

 ツアイツは巨乳派だが色んなジャンルを網羅出来る一流の変態だったので、ファン層に偏りは無かったのだ。

 

 

 

 エレオノール&ソフィアルート第2話

 

 

 まさかのデレオノール爆誕!

 

 

 待ち合せ場所に行くと既にソフィアが待っていた。

 

「ごめん遅れちゃったかな?」

 

 まだ15分位前の筈だけと、男は女を待たせたらこう言わなければならないのだ。

 

「いえ今来たところですから」

 

 ソフィアにっこり……初々しいデートみたいだね。

 

「では出発しましょう」

 

 御者台にソフィアが乗り込もうとしたので手綱は僕が持ち隣にソフィアを座らせた。折角だから話しながら行こう。

 ソフィアが嬉しそうに、しかし申し訳無さそうに「せめて手綱は私が……」とか恐縮しているが、そこは無理を押し通した。

 だって運転手が女性で助手席に男が座っているって、現代感覚が残っているのか恥ずかしいし……

 折角なので昨日の雇用条件について話す事1時間、草案は僕が作ったので内容は全て頭の中に入っているから説明に問題はない。

 結構大事な話なのにソフィアはニコニコしながら頷くだけ……ちゃんと内容聞いてるのかな?

 

「大丈夫です。ご主人様の説明の内容で不服はありません」

 

 ひと段落着いてソフィアに聞いてみたが、ちゃんと聞いていたみたいだ。

 実はこの時ソフィアは話の半分も聞いていなかったが、ツアイツと並んで馬車に乗っているだけで満足だった。

 

 嗚呼……ご主人様の凛々しいお顔サイコー!

 

 何か難しい事を言われているけど、ご主人様に任せておけば幸せになれるって昨日教えて貰ったから平気。でもご恩返しはどうしましょうか?

 そうだ!今日お会いする他のメイドさん達に相談してみよう。

 その後、のんびりと馬車に揺られツアイツの執務用の屋敷に到着し……見慣れた家紋の馬車が……あれ?

 

 あの家紋はヴァリエール公爵のだけど、なにか用事が有ったかな?事前連絡は無かった筈だけど。

 僕の馬車を視認した使用人達が、出迎えの準備を整然としている。

 ヴァリエール家から来たメイドズが正面入口前に2列で並び、扉付近にはナディーネ達が控えている。

 

 その脇には……

 

 ヴァリエール夫人とエレオノール様がイマスネ!ミマチガイデハナイデスヨネ?

 目上の人達に馬上から挨拶は不敬なので、少し前で馬車を降り歩いて屋敷に向かう。

 

 

「「「「「「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」」」」」」

 

 一斉に礼をするメイドズ。

 

「ただいま、皆変わりはないかい?」

 

 メイドのアーチを潜りながら玄関へと向かう。くーっ前世ではこの感動を味わう事は出来ないだろう至福の時!

 玄関前に行くと、ナディーネ・エーファ・ルーツィア・シエスタが笑顔で迎えてくれた。

 彼女達の位置付は上級メイドになっており、信者メイド達は一般メイドだ……但し待遇に差は無い。

 

 夜のお相手までしてくれる娘達が上級と言う括りらしい。因みにこのネーミングは僕が決めていない。

 彼女達が自主的にきめたのだ。

 

 そしてヴァリエール夫人とエレオノール様に貴族的礼節に則った挨拶をする。

 

「お待たせしてしまいました。本日はどの様なご用件ですか?」

 

「同行しているそのメイドは何ですか?婿殿?またですか?またなんですか?」

 

 流石は烈風のカリン。こんな質問でもプレッシャーが半端でない。

 てか隣のエレオノール様と後ろのナディーネ達の視線も突き刺さる……息苦しいっす。

 

「彼女はモット伯に不当に妾にされそうだったので、成り行きですが当家で世話をする事にしました」

 

「聞いています。我が家にも防諜機関が有りますから。相変わらず平民に甘いですね」

 

 ふっとプレッシャーを緩めて微笑してくれた。この人の偶に見せる笑顔は好きなんだよね。多分ルイズの将来の姿だ。

 烈風の騎士姫はまんまルイズだったし。

 

「調べではモット伯は貴方に隔意はないみたいですね。上手く例の本で篭絡したのですか?我が夫と同じく」

 

 この辺の配慮がこの人の凄い所だ。多分モット伯が僕に何かしようとするか調べたんだな僕のために……

 

「男は単純ですからね。まぁ実害の無い本ですしヴァリエール公爵にも程々にしてあげて下さい。そして有難う御座います」

 

「お礼はエレオノールに言いなさい。最近貴方の周りに不穏な空気が有るからと調べさせていましたよ」

 

 はっとエレオノール様を見る。あっ目を逸らされた。

 

「貴方は……まぁ割と、本当にアレですが……その話すと其れなりに……楽しいから……失脚して欲しくは無いのです」

 

 まさかのデレオノール!

 

 えっ本当にエレオノール様ですか?

 

「改めて有難う御座います。僕はその辺の貴族の機微に疎いので、知らない内に敵を作ってそうですから……」

 

「まぁ良いわ。暇潰し程度に気を配ってあげるわ。どうせ来週から臨時講師で学院に呼ばれているし。あくまでついでよ」

 

 

「立ち話も何ですから屋敷に入りませんか?」

 

 ヴァリエール夫人らを促す、貴婦人に立ち話を強要してはダメだから。

 

「エーファ、彼女はソフィア、今日から正式にうちの従業員になるので面倒を見てくれ」と引き渡した。

 

 応接室に、ヴァリエール夫人とエレオノール様を案内しお茶の手配をさせる。

 一寸気になる発言の確認をしたいんだけど、いきなり切り出すのは無粋かな?

 

「婿殿どうかしましたか?」

 

「あの……婿殿とは一体?」

 

 確かに口約束では婚約してるけど公の話では無い筈だけど……

 

「いえモット伯は貴方がどうにかしましたが、このトリステイン貴族の中にはやはり貴方を良く思わない者がいます。学院の上級生とその実家の者達が動いています」

 

「ペリッソンとスティックスの実家とかですか?」

 

「流石ですね。他にも幾つかの貴族達が動いています。彼らは今の貴方に手を出す事の危なさを考えられない連中です。だからこそ短慮に直接危害を加えそうな連中なのです」

 

「つまり政治的な動きをせずに、武力行使というか……馬鹿ですかね?でもそれと婿殿と何の関係が?」

 

「簡単です。ヴァリエール公爵家と婚姻予定と広まれば早々、行動には出れませんし私が動ける口実になります」

 

「つまり、ウチの身内にチョッカイかけたらどうなるか分かっているんだろうな?ですか。」

 

「貴方は既にゲルマニアでもそれなりの地位に居るのです。もし危害を加えられたらそれを理由に色々騒ぐ連中がでます」

 

「随分と買い被りを……仮に婚約と言っても既にルイズと……ですよね?」

 

「そうですね、ですがまだ強制力が弱いのです。エレオノール誰が適任ですか?」

 

「えっ?あ……その……いやそのカトレアは既に分家して領地持ちですが体が弱く政界とは無縁ですし……

ルイズではまだ子供だから親の威光でしか対応できないし……

私ならアカデミーの実績も有りますし、名前も売れてますから……今回は仕方が無いから……その……」

 

「だそうです。婿殿、公表はしますが口約束の延長ですから事が落ち着いたら解消も出来ます。貴方の実家には私の方から話を通しておきます」

 

「後で破談など、エレオノール様に傷がつきますし……」

 

「もう何度も婚約を解消しているのです。逆にルイズやカトレアでは破談など無理な方法ですからね」

 

「エレオノール様は僕なんかと婚約など平気なのですか?」

 

 珍しく大人しい彼女に声を掛ける。

 

「仕方ないわね。本当に仕方ないからなんですからね……良いわ。受けてあげるわ」

 

 

「僕の一存では決められないので、父上とツェルプストー辺境伯とも相談してお返事をさせて下さい」

 

 ここまで気を使われているのは嬉しいけど、一人では決められない問題だから。

 その後、幾つかの案件をお互い確認しあいヴァリエール夫人とエレオノール様は帰っていった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「エレオノール、これは最後のチャンスです。形振り構わず逝きなさい」

 

「お母様……私は、彼の事は別に……これは彼に危害が加わるとこのトリステインの為にならないからの処置です」

 

「それで良いのですか?確かに彼は年下で変わり者ですが、今までの婚約者共と比べたら破格の相手です。

それに男ばかりが若い相手と結婚出来るなんて事は無いのです、分かりますね?」

 

 確かに彼との会話は楽しい。研究者としての討論も、たわいない世間話にしてもこれ程気の合う相手は居なかった。

 家格も外見も将来性も文句は無い。でもまだ彼は学生だ。

 卒業を待っていたら30歳になってしまうしそれから子供を作るとなると……ブツブツと悩んでいる娘に母親がダメ押しの一撃を加えた。

 

「学生結婚でも構わないのです。

学院や王宮への圧力なら何とでもするから問題はないわ。もう貴女には彼と結婚するか、仕事と結婚するかしかないのよ」

 

 エレオノールは決心した。

 

 逝かず後家より、有能な若いツバメを侍らせたほうが100倍マシだ!それにルイズに先を越される事は女として我慢がならなかった。

 しかし正攻法では無理だし、こちらから寵愛を授かるように接する事は今更ながら恥ずかしい。

 

「お母様なにか良い手立てはないですか?」

 

「任せておきなさい。彼は基本的に女性に対して不思議な位優しいのです。

仮にとはいえ婚約者として接していけば、突き放す事は出来ません。反面生涯妻1人では我慢が出来ないでしょうから、その点は我慢しなさい」

 

「なる程、確かに彼なら一度懐に入れてしまった女性に酷い事は出来ないわね。

つまり既成事実を作れば……この胸でも愛してくれる訳ね」

 

 才女2人の悪巧みは続いていく。

 

 

 

エレオノール&ソフィアルート第3話

 

 

 査問会議

 

 ピンチです。ご主人様助けて下さい。

 現在進行形で20人以上のメイドさん達に囲まれて、友好的でない雰囲気を醸し出されています。

 

「こんにちは。ソフィアさん私はルーツィアと申します。この屋敷の警備主任をしています」

 

 口調は優しいのですが、凄いプレッシャーを感じます。

 

「始めまして、ソフィアです。宜しくお願いします」

 

 取り敢えず挨拶は出来ましたが……もう持ちそうにありません。主に精神的な意味で。

 

「さてツアイツ様からは詳細を伺っていませんが、ここに来る様になった経緯を教えて下さい」

 

 この金髪を短く切り揃えた方はルーツィアさんで、ご主人様の護衛も引き受けていた方だそうです。

 私はポツポツとモット伯様に妾として召し出されそうになった所をご主人様が、態々モット伯様のお屋敷に単身乗り込んで来て引き取って下さった事を話し、お屋敷の他のメイドの方に紹介する為に同行したと伝えた。

 

「流石ツアイツ様」とか「ツアイツ様は相変わらずお優しい」とか聞こえます。

 

 やはりご主人様はお優しい素晴らしいお方なのですね。

 

「ソフィアちゃん久しぶり。それでツアイツ様にはどれ位迄、仕えているの?」

 

 あっシエスタちゃんだ。タルブの村に居る時には随分遊んだのだが、見違える様に綺麗になっていた。

 

「どれ位って……助けて頂いたのは昨夜で、お仕えしているのはご主人様が学院に来られてからです」

 

「それでツアイツ様に身請けされたのなら、お手は付かれたのかな?」

 

 お手付きって……えーっそれって男女のごにょごにょですよね?

 

「いえ昨夜もお部屋に呼ばれましたが、雇用条件とか契約書とかのお話が終ったら直ぐにお部屋に戻されましたし……

ご主人様はお優しいので、無理にそういう事はしないと思います」

 

 あっなんか張り詰めた空気が和んだ気がします。

 

「そうね、ツアイツ様はお優しいから、改めてようこそソフィアちゃん」

 

 その後、他の方々とも自己紹介をしつつ和やかな雰囲気になりました。もしかして皆さんご主人様がお好きなのかしら?

 もし寵愛を受けてしまっていたら……粛清された?そして私はエーファさんに雇用条件の説明を受ける為に別室に向かった。

 

 そこで色々な雇用条件の説明や不足の契約書のサインと捺印やら支給されるメイド服の採寸をおこなった。

 なんとメイド服には、略式ですがハーナウ家の家紋が入っています。

 これは私の身分の証明と保証をするもので、たとえ他の貴族様から無理を言われたら、この家紋も見せて雇用主はハーナウ家なのでそちらに話を通す様に伝える様に……と。

 これなら問答無用で理不尽を受ける事がなくなります。

 そして下着類も支給されたのですが、一寸付け方とか分からずにエーファさんに実践して貰いました。凄い肌触りと着やすさです。

 

 ぶらじゃとぱんてぃと言うらしいのですが、一般には出回ってないそうです。

 既に支給品だけで鞄に入り切らないのですが、まだ夏服とか出してきてますが……メイド服って季節で変えるものだったんですか?

 

 でも夏服は半袖でスカートも短く生地も違う見たいです。色も白が基調で水色のアクセントで爽やかな感じです。

 

 えっ?これはもしも夜伽に呼ばれた時に着る下着ですか!何種類も有りますけど?必要な時に開けて確認するのですか。

 

 そこまで支給されるなんて……どこまでも凄いんでしょう、ご主人様って。

 

 因みにエーファさんから、既に4人ほどご主人様から寵愛を受けている事を知らされました。

 もしお手が付いたら報告する様にも言われましたが……また待遇とかが変わるそうです。

 それとご主人様には内緒ですが、エレオノール様の学院滞在のお世話をする為にこちらの屋敷からローテーションで複数人のメイドを派遣するそうです。

 

 私も組み込まれますので、学院でずっと一緒は不可能になってしまいましたが仕方ないです。

 他の方もご主人様の近くに居たいのはわかりますから。

 この申請書類はご主人様の執務室の重要度の低い方に積んであるらしく、ご主人様自らが決済されるか……時間が無ければエーファさんが代理承認するそうです。

 

 それって計画的犯行?

 

 勿論凄い笑顔で口止めされましたよ……頷くしか出来ませんでした……ご主人様すみません。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ここまで来るのに相当な時間が掛かった気がする。感覚的に3〜4話位かな……執務室には、綺麗に重要度別に揃えられた書類が積んであります。

 そして側には政務の補助に特化教育をしたメイドが4人。軽くチェックするだけで午前中が終りそうです。

 昼食後、直ぐに始めても夕飯までに終るか終らないかだな……今日はハイパーメイドタイムは無しかも、トホホ……気を取り直し「さぁ頑張ろう。」と皆に声を掛ける。

 

「分かりましたツアイツ様。」と返事を返してくれたので、先ずは重要度の高い案件から確認する。

 

 新しい取引希望先の身辺調査、これから買付予定商品のリスト、売り商品のリスト、それぞれの収支報告それとゼロ戦の解析と転用可能な技術の報告書……

 武装面に目が行きそうたが、装甲の超々ジェラルミンの調査も進めさせていたがついに安定的な錬金に成功したそうだ。

 これで強度が有りしかも軽い金属の使用が可能となった。

 

 他にもゴム……

 

 これはパッキンに流用しビン詰め等の保存食に効果が有るしコルクに変わる蓋に使える。

 車輪やサスペンションは輸出用の高級馬車に転用し乗り心地の改善に貢献しかなりの売り上げで予約が殺到している。

 VIP用の総超々ジェラルミン貼りの装甲馬車は各国王室からも打診が有るそうだ。

 

 逆に電装系は手付かずだ……

 

 これは分解したら戻せないと言う実情が有るから無理はさせなかった。

 ゼロ戦の技術転用はこれ位で終らせて、直ぐに使える様に整備させておく……と。

 

 次は、アルビオンの内乱に合わせて軍需物資の食糧や医薬品の増産と購入、各種秘薬も同じ。

 有能な平民の引き抜きは順調だ……トリステインやロマリアから逃げてくる知識階級の平民は結構いるし、彼らは帰る所がないから必死で働いてくれる。

 それに報いる報酬と安全の確保をすれば離反は少ない。

 平民といえども結構な割合でメイジが居るんだな。没落だけじゃなくてお手付きが多いって事だ。

 彼らは主に錬金部門で働いてもらう。人手は幾ら有っても足りない程だ。

 しかし色々な所から間者が入ってきて、それの対応する部署の人材確保が急務になってしまった。

 これは例のヴァリエール公爵との連絡係の男が何人か融通してくれ、後の人材教育にも手を貸してくれている。

 ウチのは情報収集には強いが、荒事にはイマイチだったので正直助かる。持つべきは趣味友達か。

 

 さてこの辺でお昼にしよう。

 

「みんなひと段落したら食事にしよう」

 

「「「「はーい!」」」」

 

 さて昼食はなんだろう?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 そろそろ昼食の支度だわ。ツアイツ様は手の空いている使用人全てと同じ物を摂られます。

 普通ではありえないですね。だから私達の食事も当然グレードが上がります。とても嬉しいです。

 

 ツアイツ様は同じ釜の飯を食べた仲間だとか仰ってますが、貴族様と仲間と言うのは……これは外にはバレない様に口止めしています。

 

 ツアイツ様の不利になる様な情報は極力押さえなければかりませんから。まったく手の掛かる弟のような感じがしますね。

 その苦労が嬉しいのですが。

 

 さてお昼の献立は、サラダ・鴨肉とキャベツのパスタ・コーンスープに各種パンです。デザートには林檎のヨーグルト和えです。

 

 ふふふっ、乳製品の摂取は今でも欠かさず行っていますよ。

 

 さぁ準備が出来たのでツアイツ様を呼びに行きましょう!昼食は皆がワイワイとお喋りしながら、楽しく食べました。

 初めて参加したソフィアさんは吃驚していましたね。普通の貴族様では考えられない状況ですし…… あとで念の為、口止めしておきましょう。

 

 周りに広まり問題となり、この食事会が中止になってしまっては残念ですからね。

 


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