現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第150話から第152話

第150話

 

 イザベラ様、男の裸(上半身)を目撃す!

 

 

 二階の客間ってどれだい?片っ端から開ければ良いか。

 

 此処も違うねぇ……

 

 此処も違った……

 

「此処かい?」

 

 三部屋目の扉を開けた途端……裸のツアイツが居た!

 

「はにゃ?すっすまないね。覗くつもりは無かったんだよ」

 

 思わず扉を閉めてしまう。うーまさか裸で居るなんて寝る時は裸派なのかい?それは、ちょっと恥ずかしいだろう。

 

「イザベラ様?もう大丈夫ですよ。入って下さい」

 

 感動の出会いが、ぐだぐだだよ全く……

 

「ああ、入るよ……」

 

 アイツは、上半身が包帯だらけだった。

 

「アンタ、その傷……痛くないの?無理してんじゃないのかい?何だよ!そんなに酷い傷なのに、のこのこガリア迄来てさ……」

 

 何だ?視界が滲んでるよ……

 

「イザベラ様?見た目が酷いですが、大した事はないんですよ。二週間もすれば、傷跡も残らず治りますから」

 

 何を微笑んでるんだい!

 

「全治二週間ってのは、普通は重傷なんだよ!何で……そんな体で、私に会いに来たんだよ。絶対安静だろうに……」

 

 なに、勝手に手を引いて椅子に座らせるんだい。

 

 なに、勝手にお茶とか煎れて……

 

 なに、ハンカチで涙を拭いてくれてさ。

 

 なに、向かい合って座るんだい……

 

 ナニナニナニ……

 

「心配してくれたそうで。イザベラ様を久し振りに見れたので、苦労が報われた感じがしますね」

 

 なにを爽やかに笑ってるんだい。痛いんだろ?我慢してないのかい?うー、何か言いたいのに何も言えないなんて……

 

「イザベラ様?もしかして、傷跡とか見せられて怒ってます?」

 

 怒る?私が、なんで?こんなに傷付いてるのに、私の為に来てくれたアンタに?

 

「……怒ってないよ。その、アレだよ。レディに裸を見せ付けるのは、紳士としてどうなんだい?……いや、ガリア迄来てくれたのは嬉しいよ。本当だよ」

 

 くっ、アンタの顔がまともに見れないよ。無事な顔をもっと見たいのにさ。

 

「紅茶、冷めますよ?」

 

「あっああ……紅茶好きなのかい?私も好きだよ。気分が落ち着くからさ」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 大の大人と年頃の娘が、扉に張り付いて中の様子を窺っている。

 

「誰?ねえ、アレ誰?」

 

「イザベラ様。初々しいですな。しかし、もっとガツンと行かないと!ツアイツ殿は、アレで結構鈍いんですよ」

 

「てか、アレがイザベラ様?ウッソー別人じゃん!何時もの腹黒さが微塵もないですよ?アレが恋する乙女かぁ……変われば変わりますね」

 

「全くですな。しかし、イザベラ様の方がツアイツ殿にベタぼれ!

これは何とかしてあげたいのですが……今夜は無理でしょう。ツアイツ殿からアプローチが有れば、或いは」

 

「子作りまで進むかも?イッタイ、何するのよ?」

 

「黙れ!下世話な想像をするな」

 

「アンタだって覗き魔じゃん!」

 

「これは見守っているから問題無いのだ!」

 

 小声で貶し合う2人。しかし目線は部屋の中から外してはいない。何処までも覗き屋根性が、据わっていた……

 

 

 

 いっぱいいっぱいイザベラ様

 

 

 

 ツアイツの煎れてくれた紅茶を飲む。ふう……大分落ち着いたね。

 

「その……なんだ。少しは心配したんだよ。無事で良かった」

 

 上目使いで見れば……何だい、その微笑みは。うー嫌な女だね私は。もっと素直に嬉しさを表現出来れば良いのだけど……

 

「有難う御座います。イザベラ様は、お変わりは有りませんか?」

 

 変わり?有るよ!アンタを心配し過ぎて大変だったんだよ。

 

「うー……変わりはないよ。普段通りさ、何の問題も無いね」

 

「そうですか。少し残念ですね?もっと悲しんでくれt」

 

「勿論、凄く心配したし悲しかった!」

 

 思わず叫んでしまった!

 

「そうですか。嬉しいです」

 

 こっコイツ、タラシだ……口説いてるよね?私、口説かれてるよね?つまり私は、コイツにとってそう言う対象に見てくれているんだよね?

 

「明日、竜騎士団詰め所に来るって言ったが……アンタは重傷だ。だから駄目だよ。明日は絶対安静だ。私がまた夜に会いに来るからさ」

 

 やっと、ビックリした顔が見れた!

 

「イザベラ様が危険です!深夜に出歩くなんて。僕の方から……」

 

 ふふん!自分の体の心配をしな、アンタはさ。

 

「心配しなくて平気さ!ここは私の国だ。それにアンタは病人だよ。

私にこれ以上、心配させたくないなら言う通りにしなよ。良いね?私が明日の夜に、アンタに会いに来るんだよ!」

 

 本当は抱き付く位はしてあげるべきだけど……怪我に響くからね。

 

「分かったね?では、明日の夜にまた来るよ」

 

 そう言って部屋の外に出る。もっと話したいけど、無事が確認出来たから今夜はこれで満足だ。

 余り長居しても、ツアイツの体調に響くからね。明日は何か見舞い品を持ってこようかな……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 気配を遮断して中を伺っている。スキルとしては、無駄に一流なのだが……

 

「かーっ!見てられないですね。また明日、私が会いに来るとか言ってますよ」

 

「ツアイツ殿は、この後アルビオン王国に向かうのだが……今夜は、相談は無理か。

しかしツアイツ殿はナチュラルに口説いてるな。アレで口説いてないって言うなら、相手の女性が可哀想だ」

 

「えっ?墜としに入ってるんですよね?てか、ナチュラルにあの言動だと刺されますよ?

私が同じ事を言われたら、明日は結婚式でオーケーですよね?ですけど……」

 

「流石はツアイツ殿。我が主に相応しい御方だ」

 

「「こっちに来るぞ!隠れろ」」

 

 音も無く扉から離れる2人……

 

 

 

 お帰りイザベラ様

 

 

 

「ジャネット、帰るよ。カステルモール、話が有るから一緒に馬車に乗りな」

 

「「はっ!」」

 

 帰りの馬車の中で、今夜の事を考える。どうしたら、ツアイツをモノに出来るだろうか?

 

「カステルモール、ジャネット。私はツアイツが欲しい。協力してくれ」

 

 遂にイザベラ姫が、ツアイツ争奪に参戦表明をした瞬間だった!

 

 

 

第151話

 

 

 深夜にプチトロアに向かう馬車の中で密談が進む。その周りには、厳重な警護を敷いて……知らぬはイザベラ姫だけ。

 彼女の初ミッションは微妙に成功したが……内密と言う面では、完全敗北だった。

 

「カステルモール、ジャネット。私はツアイツが欲しい。協力してくれ」

 

 仕える姫から本音を相談された2人。

 

「勿論、協力させて頂きます。面白そうだから!」

 

「ツアイツ殿をガリアに迎える……それは大変喜ばしいですな」

 

 微妙にイザベラ姫の想いとは違う方向で承諾する家臣2人……

 

「しかし、独り占めは無理ですよ。既に4人の婚約者が居ますから」

 

「特にテファ殿ですが……ハーナウ家に既に居ますし、彼女のオッパイは伝説クラス……幾らイザベラ様でも勝てないですよ」

 

 初っ端から高すぎるハードルを示す2人。

 

「黙れ!婚姻なんて物は、血統と爵位が物を言うんだ。最後に結ばれても、第一夫人は譲らない」

 

 イザベラ、コメカミがヒクヒクしながらも答える。

 

「既に浮気オーケー?それは何とも……」

 

「確かにイザベラ姫の胸では、彼を独占するのは不可能でs……イタッ!車内で暴力は!」

 

「黙れ!不敬を続けるなら、この一升瓶を喰らわすよ!別に私はツアイツを独占しようとも思ってない。序でに見てくれや乳の大きさで繋ぎ留めるつもりも無い!」

 

「「確かにアバズレですし、気立ても良くない?」」

 

「死ぬか?此処で、ああん?」

 

 両手で一升瓶を構えて恫喝する。

 

「「すみませんでした」」

 

 素直に頭を下げる2人。狭い車内では逃げ場も無いから……

 

「確かに私は、他の婚約者達と違い性格も可愛くないし凄い美人でも無い。

しかし、そんな物でツアイツを物に出来るとは考えていないよ。私には私のやり方が有る。

それに、あの程度の恋敵を潰すのは簡単だ。政治的圧力・物理的な実力行使……ネタは幾らでも有るし、実行出来る駒も居る。

それが、ガリアの王女たる私の力。そして、ツアイツの野望の手助けを出来るのも私だけだ……その線で攻めるよ」

 

「ははははっ!マジですね、権力を私用で使うのも躊躇わず無駄に有能だし陰険で腹黒い……」

 

「使える物は全て使って攻めるのですか?エゲツないですよ。たかが一貴族の小娘を相手に大国の王女が全力全開なんて……」

 

 イザベラは下を向いてヒクヒクしている。

 

「何度も言わせるなよ……黙れ、黙らんかお前ら!」

 

 彼女の目は据わっている。

 

「異性との恋愛も、他国との外交も基本的には同じ。自分のカードを有効に使い、どれだけ自分に利益をもたらすかだ。

この場合は、愛情だね。ツアイツは、基本的に優しい。しかし、その一方で彼の身内に敵対するとエゲツない……

どんな手段で来るか、まるで分からない。だから私は、小娘達には手を出さない。

そして本人も気付かない内に状況を固めて、逃げ道を塞ぎ、アイツから私に求婚する様に仕向ける。なぁ?楽しい仕事だろ、お前達もさ?」

 

 その笑みは壮絶だった。うふふ、あはは、な恋愛観など微塵も無い猛禽類の笑み……

 

「そんなに凄んでも、ツアイツ様の前だとヘニャヘニャですよね?」

 

「確かに寵を受けるのに素直になれないなら、そんなアプローチも有りですよ。可愛くなりましたね、イザベラ様は……」

 

 ポンポンと肩を叩いて慰める?

 

「では、明日の夜またお待ちしております。くれぐれも内密にお願いします」

 

 そう言って、カステルモールは戻って行った。

 

「私の隠密行動は完璧だ!なぁジャネット?」

 

「……そうですね」

 

 知らぬは本人だけだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 イザベラ様……随分と対応が、フレンドリーになってきた。もう友達と思っても良いかな?

 しかし、明日までガリアに滞在となると……もう、トリステインでの緊急召集会議は始まるだろう。

 

 頑張って下さい、義理オヤジズ!僕は僕に出来る事をしますから……

 

「ねぇ?エルザ。何でナチュラルに僕の部屋に居るのかな?」

 

「んー?暇だからー、遊んでー!」

 

 ベッドに座り思考に耽っていたのだが、エルザが僕の見舞い品を漁っているのが気になる。

 この見舞い品は、イザベラ様が帰った後にプチトロアのメイドさん達が、彼女の名前で贈ってくれた品々だ……

 つまり、イザベラ姫はちゃんとこの訪問の準備を整えて側近達の協力体制も敷いているんだ。

 これが、イザベラ様の凄い所だよね。大国ガリアを取り仕切ってるのは伊達じゃない!

 

 だから僕は他の婚約者達には言わない事も、彼女には相談出来るんだ。

 こと謀略で、同じ高さで周りを見れる人は少ないから。彼女に相談したい事は2つ……

 

 一つ目は、ロマリアへの対応。

 

 イザベラ様は、アイドルとして絶大な人気が有る。ブリミルなにそれ?って位だから、あいつ等は必ずチョッカイを掛けてくる筈だ!

 僕も新たな宗教と言われてもしょうがない程に、信者を広めてしまった貧巨乳連合の教祖だ。奴らからすれば、自分達の利権を犯す敵だね。

 だから足並みを揃えておきたい。レコンキスタが倒れたら、元とは言えブリミル教の司教が反乱を起こしたんだ。

 威信回復に躍起になるだろうし、格好の的だからね。簡単にやられるつもりはないから……

 

 2つ目は、オルレアン絡みの件だ。

 

 オルレアン夫人の治療とジョゼットの扱い。これはジョゼフ王にも関係するし、治したっきり助けたっきりで済む問題じゃない。

 ちゃんとその後の道筋まで整えないと駄目だ。それに、ジョゼットにはジュリオがコンタクトをしていた。

 此方も居なくなったのがバレたら問題だ!直ぐには疑われないが、母娘3人で幸せに暮らしていればバレる。

 偽装しないと無理だよ。

 

「エルザさん!夜中にそんなに食べると太るよ?それと、そのパイは僕も食べたいから。お茶を煎れるから待ってて……」

 

「はーい!エルザ、取り皿貰ってくるー!」

 

 トテトテと部屋の外へ走って行く。吸血鬼だけに、夜が本来の活動時間なのかな?

 懐いてくれるのは嬉しいけど、周りの事も考えて欲しい……アレか?僕は巨乳派教祖だから、絶対安心ってか?

 

「ツアイツお兄ちゃん、持ってきたよー!」

 

「はいはい。お皿並べてね……」

 

 カステルモール殿が帰る迄は付き合ってあげるかな。端から見れば、仲の良い兄妹のようだ!

 

 

 

第152話

 

 

 ド・ゼッサール隊長、部下から慕われる!

 

 マンティコア隊の隊舎にて、隊員達を集めた隊長。

 この隊舎、見回すと男の浪漫本がチラホラと置いて有ったり会報やカタログも山積みだ。

 残念ながら鋼鉄の規律は、先代隊長の引退と共に廃れていった……

 この隊舎からは、現代の漫研やアニメサークルに通じる雰囲気が有る。

 

 つまりは、ツアイツの信奉者が多いと言う訳だ。

 

「今日、皆に集まって貰ったのは、この隊の未来について……良い報告と、悪い報告が有るからだ!さぁ、どちらから聞きたい?」

 

 初っ端から、ぐだぐだな開始だが隊員達は顔を見合わせながら考えている。

 

「えー先ずは悪い方から教えて下さい」

 

 誰も何も言わないので、仕方無く副隊長が答える。

 

「悪い話か……最悪だぞ!

先代隊長の烈風のカリン様が復活した。先日、私の下に訪ねてこられた……鋼鉄の規律の実践者。

歩く環境破壊魔。泣く子も黙る伝説の女傑。最悪の使者だ……その内に、この隊舎にも来るだろう」

 

「えっ?烈風のカリンって、御伽噺の悪役じゃないの?」

 

「小さい頃に、親から良く言われたな……言う事を聞かないと、烈風のカリンがやって来るって。都市伝説だと思ってた」

 

 若い隊員は、直接会った事が無いから言いたい放題だ……そして生存中に既に伝説扱いか。しかし、年嵩の隊員達の顔色は青い。

 

「たっ隊長!何を呑気に言ってるのですか?この惨状を見たら、お仕置きっすよ」

 

「そうです。早く片付けないと……色んな意味で終わりますよ!」

 

 既に席を立ち、周りを片付け始める。

 

「落ち着け。それは十分に理解しているが、先ずは残りの話も聞いて欲しい」

 

 手を止めて隊長に集中する。

 

「良い方の話ですか?」

 

 一方が最悪なのに、それを打ち消す程の良い話が有るのか?

 

「宿敵グリフォン隊の奴らに勝つ方法が有る。何時も何時もチッパイ派の癖に、ツアイツ殿に何かと便宜を図って貰ってる奴らに……巨乳派の我らが、教祖殿に会える可能性が有るのだ!」

 

「「「おおっ!」」」

 

 皆、身を乗り出す様に話の先を促す。

 

「これからの話は、トリステイン王国と巨乳に忠誠を誓った漢達にしか話せない……誓えぬ者は退出しろ」

 

 そう言って、ド・ゼッサール隊長は隊員達を見渡した……誰一人、席を立たない。

 

 大きく頷くと、話を進める。

 

「良いか?アルビオンで話題になっているレコンキスタ……教祖を害した我らが敵。

奴らは、このトリステイン王国にも毒牙を伸ばして来た。そう!アンリエッタ姫の有力貴族の緊急召集は、売国奴の一掃だ……」

 

 突然の話に皆が動揺を隠せない。

 

「それが、ツアイツ殿の面会に繋がるのですか?直接の敵討ち的には、ならないのでは?」

 

「売国奴の捕縛ですよね?我らだけでは力不足ですよ」

 

 消極的な意見しかでないか……

 

「アンリエッタ姫は、アルビオン王党派に応援を送るつもりだろう。つまりレコンキスタに宣戦布告……」

 

 皆が息を呑む。まさかの開戦か?

 

「「「…………!」」」

 

「それに反対する連中の中に売国奴が居る。見分け方は分からぬが、既に調べはついているのだろうな。

此処まで話が進んでいるのだから……そして彼らをグリフォン隊より多く捕まえるのだ」

 

 事の重大さに、皆が黙り込む……まさか、我が国の中にも裏切り者が居るなんて!突然、ド・ゼッサール隊長が話題を変えた。

 

「時に烈風のカリン様……今はヴァリエール公爵夫人なのだが。彼女には3人の娘が居る。

年増のチッパイ、賞味期間ギリの巨乳美女。そして、今が旬の巨乳美少女だ!

彼女らの誰かと、ツアイツ殿は結婚するらしい。カリン様の義理の息子……つまりは、そう言う事だ」

 

 話し終えてニヤリと笑う。

 

「つまり、ツアイツ殿はカリン様の義理の息子。此度の作戦で活躍すれば、彼に会う為の、便宜を図ってくれると?」

 

「カリン様曰わく、市販されてないブツも有るそうだよ。しかも多数……分かったか?

この作戦には、我らマンティコア隊の未来が掛かっている!総員、気合いを入れろ。ワルド等には負けないぞ」

 

「「「アイアイサー!」」」

 

 ここに、信念と欲望で結束した漢達が生まれた!因みに、彼らは巨乳王女アンリエッタ姫も見るだけなら大好きだった。

 上手くすれば、巨乳王女を近くで見れるかもしれない!彼らの想像の中の未来は薔薇色だ……

 ちゃんと、アンリエッタ姫の胸も本物の巨乳になりつつ有るのだ!

 

「あー皆、その前に隊舎の片付けをするぞ!カリン様に見つかって、捨てられそうな物は隠す様にな……」

 

「「「アイアイサー!」」」

 

 皆が一斉に掃除を開始する。

 

「しかし、ヴァリエール三姉妹がカリン様の娘とは!誰なんですかね?ツアイツ殿のお相手は?」

 

「順当に行けば、年も近い三女だろ?巨乳美少女と聞くし。巨乳教祖のツアイツ殿ならお似合いだ」

 

 話題はツアイツの婚約者が誰なのか?で盛り上がる。

 

「いや、あの強烈のカリン様だけに売れ残りの長女を押し付けるのかも!」

 

「あの連続婚約破棄記録更新中の才女だろ?やっぱ、ツンツンより癒し系巨乳美女か美少女が良いよな!」

 

「まぁ長女なら受取拒否だな!」

 

「お前に拒否権なんてねーよ!」

 

「その前に、我々には声も掛けて貰えないか!」

 

 和やかに笑い合う隊員達。好き勝手に言っているが、カリーヌとエレオノールに知られたらミンチだぞ?

 そして、遂に緊急召集会議の当日を迎える。現王崩御以来初めてだろう、これ程の貴族達が一同に会するのは……

 集められた貴族達は、一部を除き理由を知らされていない。

 また、暴走姫の思い付きだろうとタカを括っているが……今回は、トリステイン王国の歴史に残る1日になるだろう。

 ハッピーなアンリエッタ姫が周りの者達のお陰で、その名声をハルケギニア中に広める事となる。

 国に巣くう悪徳貴族を一掃し、アルビオン王国に救いの手を差し伸べる。

 

 彼女の美貌も相まって、その噂は尾ひれを付け捲って凄い事になっていく。

 

 稀代の謀略女王の誕生は、本人が何も準備をしなかったが、着実に進んでいた!

 

「遂にこの日を迎えましたわ。私の、私による、私の為だけの、未来の為に……この手にイケメン2人をガッチリ掴んでみせますわー!」

 

 アルビオン大陸に吠えるアンリエッタ姫が居た!

 

 


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