現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第147話から第149話

第147話

 

 ツアイツが現れるまで……トリステイン王国内で、色を語るならグラモン!

 と女好き、女にだらしないと評判のグラモン一族だったが、今ではそれ程話題になる事もなくなってしまった。

 ツアイツからすれば、お得意様だが……そんな彼は、思わぬ来客を前に脂汗を流していた。

 久し振りに旧友2人と、青春時代のトラウマの女性が訪ねてきた。

 

 例のアンリエッタ姫の召集の途中で寄ったのだが……

 

 話の途中で、ツアイツ殿の怪我の話をしたのが自分だとバレた瞬間! 途方もないプレッシャーに襲われた……

 

 現役時代、恐怖の象徴と謳われた烈風のカリン。彼女の突然の変貌に、応接室は厳冬期に裸で外に出された気分だ……

 視界の隅に居るメイドや侍従が平気なのは、彼女が指向性の有る殺気を自分にだけ向けているからだ。

 

 何か気に障る事をしたか?虎の尾を踏む様な事はしていない筈だが?

 

「グラモン元帥?」

 

「なっ何かな?ヴァリエール夫人……」

 

 彼女の顔は能面の様だ。

 

「貴方でしたか?あの揃いも揃って、アレでナニな母娘を誑かしたのは?」

 

「いや……ちょ待って、何もしてないぞ?ただ、ご執心のゲルマニアの貴族の現状を伝えて……」

 

「黙れ!」

 

「……はい」

 

 なっ何を怒っているのだ?別に、お前のお気に入りの若いツバメに手を出してはおらんぞ?

 

「グラモンよ……お前が焚き付けたせいで、この有り様だ。アンリエッタ姫の暴走癖……分かっているだろう?」

 

「いやしかし、他国の貴族の為に国を動かすなど有り得んかったし……アンリエッタ姫の思い人はウェールズ皇太子だろう」

 

 何だ?3人共溜め息をついて……

 

「「「悪かったな。貴殿に難しい話をしてしまって……」」」

 

「それはどう言う意味だー?」

 

「もう良いでしょう。グラモン元帥。アンリエッタ姫は、暴走しています。

此度の召集……アルビオン王党派への応援の為の出兵を決める為でしょう。それと、このリストの売国奴の粛清……」

 

 机の上に投げ出された書類を読む。

 

「なっ馬鹿な……こんなに……何かの間違いではないのか?しかし、証拠が揃っているし……全てを捕まえるのは難しくないか?」

 

 祖国を売り渡す奴らがこんなにもトリステインには居るのか?この国を愛してはいないのか?

 

「会議でアンリエッタ姫が、彼らを弾劾した時点で動ける駒は……グリフォン隊とマンティコア隊、それに銃士隊だ。

我らの手勢は動かせん。バレれば警戒されるし、王都に兵を向けるなど此方が謀反の疑いが掛かる」

 

「グラモンよ。軍で信用が出来る連中を動かせるか?勿論、このリスト以外でだ!」

 

 リストをもう一度じっくりと読む。

 

「軍関係者も居るな。彼らの派閥に今接触は危険だ。そうすると、軍役に就いている我が一族位だろうか?」

 

「その者達は、男の浪漫本ファンクラブ会員か?」

 

「そうだが?何故だ?まだ初級会員ばかりたがな」

 

「彼らなら、ツアイツ殿に好意的だから信用出来るだろう。では、王宮に乗り込むぞ」

 

 一世代前に活躍した一団が再び暴れる為に、トリスタニア王宮に乗り込む!アンリエッタ姫は、知らない内に全てのお膳立てを整えて貰った。

 稀代の謀略女王の晴れ舞台はもう直ぐだ!しかし、その後に母娘共々烈風のカリンからキツいお仕置きが待っている。

 

 頑張れ、アンリエッタ姫!君の薔薇色の人生は……微妙?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 大型船での航海は順調だ。何が順調かと言えば、外を見なくても良い事だ!

 高所にトラウマを抱える自分には、そとの景色は辛い。

 

「しまった!アルビオン王国って、雲より高い所にあるんだった。平気かな?でも下を見なければ……うー失敗したかも」

 

 宛てがわれた船室で悩む。結局このトラウマは治らなかった。シェフィールドさんに頼めば、消してくれるかな?

 でも、漢の本能がそれは危険と訴えている。それの他に、何か怪しい刷り込みをされそうだ、と。

 

「べっ別に高い所に行かなくたって、生きていけるもん!」

 

 可愛く言ってみたんだが……

 

「ツアイツお兄ちゃん、気持ち悪いよ。エルザ、鳥肌になったよ。ほら!」

 

 あれから彼女は懐いてくれたのか、僕の部屋に入り浸っている。これを機会に、幾つかのロリ専用のフィギュアの作成が出来た。

 彩色セットを持ってくれば良かったのだが……全部で8体の、色んなバリエーションを揃えた。

 勿論、旦那であるカステルモール殿の意見も参考にしている。特に、スク水などは素晴らしい出来映えだ!

 

「完璧だ。次の寄港地でハーナウ領の実家に送ろう。父上の意見を聞けば、更に究極へと近付く」

 

 今まで、ファンクラブからの要望でロリっ子が少ないとの意見が多かったら。

 流石の僕でも、モデルの居ないロリを妄想で賄うのには苦労したし、ミス・タバサはイザベラ様とセット販売が多かったらな。

 

「ツアイツお兄ちゃんって、本当にすっごい変態だよね。前にカステルモールお兄ちゃんが、巨乳教祖がロリの良さを教えたって言っててね。

それは無いって、突っ込みいれたんだ!でも本当に何でも逝けるなんてスゴーイ!エルザ、其処に痺れないし憧れないけどー!」

 

 人のベッドにうつ伏せに寝っ転がって、足をブラブラさせながらコッチを見ずに投げやり的に言われた……

 

「僕って怪我人だし!もう少し労って下さい」

 

「無理かもー?」

 

 即答されました。

 

 そんな話をしていると、カステルモール殿が部屋を訪ねてきました。

 

「あっカステルモールお兄ちゃん!」

 

 飛び付くエルザ、仲が宜しい事で!

 

「どうしました。まだ到着はしていないようですが?」

 

 時間的にも、もう少し掛かると聞いているけど……

 

「あまり目立つとジョゼフ王にバレます故、ここからはブリュンヒルデにて城下町の近くまで送ります。

徒歩で街に入り宿を取りましょう。今日中に連絡を入れておいて、明日イザベラ様の所までご案内します」

 

「そうですね。非公式の訪問ですから……では行きましょうか」

 

 

 

 ツンデレさんの部屋

 

 

「姫様、カステルモール様より連絡が入りました。それと手紙を言付かってます」

 

 メイドが、待ちにま……ってない連絡が来たか。

 

「ああ、ご苦労さん。あとは良いよ」

 

 メイドを下がらせる。どれどれ……

 

「イザベラ様。ご用命通り、ツアイツ殿をガリアにお連れしました。

入国に際しては細心の注意をしておりますので、ジョゼフ王の耳に入る事は有りません。

明日、竜騎士団詰所にお連れしますので、折を見てお訪ね下さい。今夜は我が屋敷にて滞在して頂きます」

 

 ツアイツが……私の為にわざわざ来てくれた。

 

 明日会える。

 

 明日まで会えないのか。

 

 カステルモールの屋敷……確か近いはずだね。

 

 そうだ!

 

 何時も驚かされっぱなしじゃ悔しいからね。今度は、私が驚かせてやるよ。

 

 

第148話

 

 ド・ゼッサール隊長の悲劇(希望)……公務を終えて帰路につく。

 最近はワルド殿のグリフォン隊がアンリエッタ姫にべったりな為、我らの被害が少なくて良い。

 折角上り詰めたマンティコア隊隊長の地位だ。あのアホ姫の我が儘で失脚したくないのが本音だ。

 

「頑張ってくれ!我らの分まで……」

 

「何を頑張るのですか?」

 

「だっ誰だ?」

 

 幾ら思考に耽っていたとは言え、気配を感じずにこんな近くまで接近を許すとは!後ろから、桃色の髪の女性が……

 

「まっまさか、カリン隊長ですか?」

 

 記憶の中に棲む鬼が目の前に居た。喉がヒリヒリと渇く……

 

「久し振りですね。元気でやっていましたか?」

 

「はっはい!」

 

「今日はお願いが有って来ました。何処か落ち着ける場所は有りますか?」

 

 現役隊長当時より、言葉使いは優しいがプレッシャーはそのままだ。

 

「では、我が屋敷で宜しいでしょうか?」

 

 カリン隊長は、珍しく笑顔で頷いてくれた。結婚して丸くなったのだろうか?

 

 屋敷に案内し、応接室に通す。

 両親を紹介したが、ヴァリエール公爵夫人になっている事は余り知られておらず、家族の驚きは酷かった……地位は人を変えるか?

 優雅に勧めた紅茶を飲む彼女は、見た目は一流の貴婦人だ。

 

 しかし、私は騙されないぞ。

 

「ド・ゼッサール隊長」

 

「はっはい」

 

「アンリエッタ姫が、有力貴族を集め会議を開くのはご存知か?」

 

 ああ、あの姫様の気紛れの為に来たのか。黙って頷く。

 

「ではアルビオン王国の内乱の件もご存知ですか?」

 

 アルビオンで、ブリミル司教が起こした反乱か。確か現状は王党派が不利らしいな。

 

「レコンキスタですね。ブリミル司教が反乱を企てるなど……」

 

「此度の緊急召集。アンリエッタ姫は、王党派に応援を……つまり派兵したいので、その話し合いです」

 

「なっ?何故その様な話になっているのですか?しかも現在不利な王党派に応援などと……下手をすればトリステイン王国にも戦火を招く恐れが!」

 

 馬鹿な!姫様は、トリステインを戦争に巻き込むつもりか?

 

「レコンキスタ……アルビオン王国を平らげたら、次はトリステイン王国ですよ。

盟主オリヴァー・クロムウェルは明言してます。我が情報網も中々確かな精度ですよ。どうせなら、他国で戦乱を収めた方が良い」

 

 カリン様は、私に何をさせたいんだ?近衛としてトリステイン王国の象徴たる3隊の1つ、マンティコア隊の隊長の私に……

 

「アンリエッタ姫は、その会議中にレコンキスタから買収された貴族の粛清を行います。

私が現役復帰したのも、その為です。他にもグラモン元帥にド・モンモランシ伯爵……それにグリフォン隊と銃士隊もです。

ド・ゼッサール隊長!

貴方の忠誠心は何処に向いていますか?私と共に、売国奴を捕まえるか?それとも、まさか既に買収されてはいませんよね?」

 

 なっ何てプレッシャーだ……下手を言うと、現役時代のトラウマが蘇って……

 

「もっ勿論、我が忠誠心はトリステイン王国に!不肖ド・ゼッサール、アンリエッタ姫の力になる事をお約束します!」

 

 やっとカリン様がプレッシャーを抑えてくれた。最早、何処にも逃げ道は無しか……安穏な生活ともオサラバ。

 また鉄の紀律の生活か始まるのか……

 

「時に、ド・ゼッサール隊長。彼処に飾ってあるフィギュアですが……まさか、貴方も男の浪漫本ファンクラブ会員なのですか?」

 

 しまった!やっと買えたエーファたんが嬉しくて飾ってしまった!エーファたんが壊される?

 

「ちっちちち違わないけど違います!これは……」

 

「私の義理の息子にも、同じ物が沢山有ります。ええもう売るほど」

 

 へー、烈風のカリンの娘を貰うのか……大変だな。きっと怒れるカリン様にフィギュアを全て壊されたのか……哀れな、同士よ!

 いつか会う事が有れば、共に素晴らしき乳について語り合おう。

 

「そのモデルのエーファの主人ですよ。分かりますか、ド・ゼッサールよ。今回の作戦が上手く行けば、彼に紹介しても良いですよ。ツアイツ殿に……」

 

「ツアイツ殿?……ツアイツ・フォン・ハーナウ殿ですってー!」

 

「そうです。彼は今、レコンキスタの刺客によって傷付き実家で療養してますが、共にレコンキスタと戦う同士。

貴方の活躍を私が伝えれば……悪い様にはしませんよ?何でも市販されていない逸品や、フィギュアの実在モデル達と会える」

 

「ヴァリエール公爵夫人、皆まで言わずとも結構です。漢ド・ゼッサール!レコンキスタには常日頃より義憤を感じていました。

しかし、立場故に沈黙を保ったましたが……その様なお話ならば、全力で当たらせて頂きます。全て私にお任せを」

 

 何てこったい、ブリミル様よ!これは私に与えられた千載一遇のチャンスだ!

 魔法衛士隊隊長とは言え、領地の無い私では俸給のみで、さほど自由になる金は少ない。

 中級会員昇格もまだまだ先かと思っていたが……こんな抜け道が有ったなんて!

 

「レコンキスタ!我が忠誠心(エーファたんに会う為に)により滅びて貰う!」

 

「それと、ワルド子爵も同様の条件でグリフォン隊として動いていますから……」

 

 なっ何だってー!ワルド子爵よ。貴様、既に上級会員の癖に私とエーファたんの恋路を邪魔するとは……

 

「分かりました。全てお任せ下さい。それと部下達にも同じ条件でお願いします。士気も高まるでしょう」

 

「では、詳細は追って連絡します。宜しく頼みますよ。ド・ゼッサール隊長」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ツアイツ殿、既にトリステイン王国の中枢にまで影響を与えていたとは……グリフォン隊とは既に仲良くしていますね。

 マンティコア隊にも、信者が居たとは……これは、売国奴を一掃した後ならば。

 

 例の作戦を進められるかしら?エレオノールと作戦の詳細を練りましょう!

 

 義息子よ。我らヴァリエール一族から逃げられませんよ。

 

 貴方の為だから……

 

 

 

第149話

 

 

 イザベラ暴走!

 

 何時も何時も私を驚かすアイツが、この国に来ている。

 

 明日には会える。

 

 明日まで会えない。

 

 色々言いたい事が有るんだ!話し合いたい事も……

 

「明日までなんて、待てるかー!メイド。出掛けるよ、支度だ。それと元素の兄弟を……ジャネットだけ呼びな。勿論、内密にだ」

 

 ここは、私の国なんだ。私の好きにするのさ。

 

 ふふふっ……

 

「何だい?その地味な服は……えっ?派手な服は目立つって?

いや、でも地味過ぎないかい?もう少し、こう華やかに……マントで隠せるからさ……」

 

 城を抜け出そうとしている意図を正確に見抜いているメイド達。最近のイザベラ姫は、言葉は悪いが使用人達に決して人気が無い訳でない。

 寧ろ、無理難題を言う貴族達を抑えている方だ。

 

 彼女の、初ミッションが始まった……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 大国ガリアの団長だけ有って、支給された官舎で有る屋敷も大した物だった。

 

「流石は大国ガリア……官舎でこの規模とは!」

 

「宿を取ろうとも思いましたが、大人数ですし。ツアイツ殿の護衛や目立たない事も考えて我が家にしました。たまには団員達も呼んでいますから、不自然ではないですよ」

 

 確かに夜遅くに、貴族が30人以上押し掛けては噂にもなるか……

 

「明日の段取りは?」

 

「ツアイツ殿には我が従者として、竜騎士団詰め所に同行して貰います。そこにイザベラ姫が、折を見てお訪ねになりますから……」

 

 なる程。それなら目立たないし、周りは彼らが警戒してくれる。竜騎士団団長が同行してくれるなら、疑われる心配も低い。

 

「了解しました。何から何まですみません」

 

「いえ、無理を言ってガリア迄来て貰ったのは此方ですから……では今日は此方の部屋でお休み下さい。後で、治療の水メイジを寄越しますから」

 

「其処までお世話には……僕も水メイジですから、水の秘薬だけ下さい。これも鍛錬ですから」

 

「そうですか?では、ゆっくり休んで下さい」

 

 やはり強行軍は疲れたな。少し休んだら、治療して眠ろう。いよいよ明日か。

 

 忙しくな……るか……な……

 

 

 

 ミッションスタート、イザベラ姫!

 

 

 

「と、言う訳だ!カステルモールの屋敷まで護衛を頼む」

 

 急に呼び出され、訳の解らない事をいわれて不機嫌になる。半日位、待って下さい。

 

「はい?何故でしょうか?こんな夜遅くに。危険ですから、大人しく明日を待ちましょうよ」

 

「待てるか!良いから行くよ。ほら、早くしな」

 

「ちょ、せめて他にも人員を用意しま……ってイザベラ様、待って下さい」

 

 珍しく暴走するイザベラ姫だった。イザベラが治世を始めて、力を入れているのは街の治安だ。

 勿論、貴族の横暴を抑える事も含まれている。そして国民的アイドルでも有るイザベラだ。

 

 バレれば大騒ぎだろう。

 

 メイド達が準備したのは、地味な馬車だ。しかし、主を心配する彼女達はちゃんと手を打っている。

 

 具体的には、馬車を護衛する「ツンデレプリンセス隊」「蒼い髪の乙女隊」の2隊だ!

 

 某姫と違い、彼女には言われなくてもサポートしたがる家臣に溢れていた。

 彼女が秘密で深夜にツアイツに会いに行く。それは、皆さんが知ってしまった!

 

 彼女は完璧に護衛された道をひた走っている。

 

「どうだいジャネット?我ながら中々の隠密行動だろ?朝には帰るから安心しなよ。何の問題も無いね」

 

 ご機嫌のイザベラを見て溜め息をつく……周りに護衛の気配が有る事を話すべきか?出掛けにメイドから耳打ちされた言葉。

 

「姫様ファンクラブが既にカステルモール様のお屋敷まで護衛の準備をしていますが、内密にお願いします」

 

 本人は秘密の逢い引きのつもりかも知れない。しかし、このミッションは既に50人からの護衛を投入した大作戦だ!

 

 後にファンクラブの中で「ツンデレプリンセス、深夜の逢い引き大作戦!」とツアイツに夜這いをかけたと思われてしまう。

 

 本人は最後までバレてないと信じているのだが……

 

 

 

 漸く、カステルモールの屋敷に着いた!

 

 しかし当然カステルモールにもイザベラが来るのは知らされている。知らない振りをするが……

 

「イザベラ様!こんな夜遅くに、どうなされたのですか?」

 

「ああ、カステルモールすまないね。ちょっと、アンタの客に用が有るんだ!少しだけだから、構わないね?」

 

「二階の客間に居ます。余り問題を起こさないで下さい。帰りは同行しますよ。ってイザベラ姫、聞いて下さい」

 

「二階に居るんだろ?聞いてるよ。じゃ後は頼んだよ」

 

 さっさと二階に行く姫を見ながら呟く。

 

「イザベラ様……まだ子供は早いですよ?」

 

「イザベラ様……秘密の逢い引きだと信じてるんですね」

 

 隣に、北花壇騎士団のジャネットが音も無く立っていた。

 

「あの姫が、色事で動くとはな」

 

「しかし、周りにバレたら問題ですよ?私は楽しいから良いけど」

 

 確かに、ガリアの第一王位継承権を持つイザベラ姫が、他国の一貴族と恋仲になったなど大問題だ。騒ぎ出す奴も多いだろう。

 父親がアレだし、未だ反発する地方領主も多い。

 

「大問題だな……だから?イザベラ姫が望むなら叶えるのが家臣の務め。手が無い訳ではないな。簡単なのは、ジョゼフ王に認めさせる事だ」

 

「ジョゼフ王に?」

 

「そうだ!家柄や勢力地盤を除けば、ツアイツ殿は有能だ。ガリアの統治も出来るだろう……それをジョゼフ王が認めれば、反発する輩は我々が処理すれば良い」

 

「こっ怖い考え方ですね……また粛清ですか?」

 

「まぁ本気でツアイツ殿がイザベラ様と結ばれたいと思えば……協力を申し出る連中は沢山居るぞ。大した苦労も無いだろうけどな。彼の支持者は何処にでも居るから」

 

 ツアイツ殿をガリア王に、か……それは、面白いかもしれん。

 

 あの頑張っている姫様にそれ位のご褒美が有っても良いだろう。少し真剣に考えてみるかな。

 真の漢達の国を建国出来るやもしれん。

 まぁ建前なら、イザベラ姫のアイドル大国でも構わないけどな……

 


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