現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

51 / 111
第129話から第131話

第129話

 

 トリステイン王国

 

 トリスタニア王宮……ここにも、ツアイツに交友の有る姫が居る。

 

 暴走特急アンリエッタ姫……

 

 イザベラ姫とは真逆の評価を受けている、トリステインの花。

 そして彼女の周りに居るのは、女性ばかりの銃士隊と遍在ワルド隊長。当然、遍在ワルド隊長は何も教えない。

 グリフォン隊の隊員とも、そこまで親しく言葉を交わす事は少ない。

 まして女性が男の浪漫本ファンクラブ会報を読むなど有り得なかった。

 故に、ツアイツのデマな重傷情報は中々伝わらない。

 

 しかし思いもよならい相手から、その情報はもたらされた……トリステインで色を語るならグラモン!

 最も、その後ろに「ボケ」が付く程に色ボケな一族だが、それ故に初級会員が多くいた。

 財政厳しい連中が多く、なかなか中級になれないのだが……

 ちょっとした会談の中で、グラモン元帥が零した一言をアンリエッタ姫は聞き逃さなかった。

 

「アンリエッタ姫が、大変興味をお持ちの演劇ですが、脚本家のツアイツ殿が急病らしいですな……」

 

 ただアンリエッタ姫の興味対象の情報を何気なく言っただけだったのだが……アンリエッタ姫の反応は過剰だった!

 

「なんですって!グラモン元帥、どう言う事なんですか?何故、ミスタ・ツアイツがご病気なのですか?」

 

 多少興味が引ければ良いと思った一言に、過剰に反応されグラモン元帥は困ってしまった。

 しかし会話を振ったのは自分なので続けるしかない……

 

「はぁ……配下の話では、賊に襲われたらしいですな」

 

「賊!その不埒者達は捕まったのですか!誰なんですか?」

 

 矢継ぎ早の質問に思わず及び腰になる。

 

「詳細は不明ですが……今アルビオンで軍事クーデターを起こしている、レコンキスタ関係らしいですな。しかし、主犯格はツアイツ殿が倒したとの事です」

 

 アンリエッタ姫は、呆然と黙り込んでしまった……

 

「そうなんですか……その情報を詳しく集めて下さい。宜しくお願い致しますわ」

 

 そう言って、自室に引き上げてしまわれた。

 

 残された貴族達の憶測は酷い物だったが……純粋にファンクラブ会員は、姫様が懇意にしているツアイツ殿の事を心配している。

 なんとお優しい、姫様なんだ!と思っていた。

 

 しかしレコンキスタに買収されている連中は、アンリエッタ姫がレコンキスタに敵意を持ってしまった!

 

 拙い状況だ!

 

 そして、それを誤魔化す為に、ツアイツの悪い噂を有る事無い事言い触らしてまわった……中には、アンリエッタ姫の興味を引く為の仮病だ!

 ゲルマニアは治安が悪いし賊は虐げている自国民だ!等と色々だ。

 

 まぁこの噂を言っている連中は、ヴァリエール公爵らにチェックされ、反攻作戦の時に粛正されるのだが……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 何という事でしょう。ツアイツ様が大変な時に、のほほんとしてしまいましたわ……

 

 許せません!許せませんわ、レコンキスタ……

 

 私の師で有り、恩人たるツアイツ様に手を掛けるなど……もう待てませんわ。

 私の愛の軍団を率いて、アルビオンに乗り込みますわ!ウェールズ様と手に手を取って、敵討ちをします。

 

 思いたったら即行動!

 

 無駄に、決意と覚悟を固めてしまった。

 

「アニエス隊長を呼んで下さい。それと緊急会議を開催しますわ。有力貴族を全て王宮に集めなさい」

 

 見ていて下さい。ツアイツ様の敵は私が必ず取りますから……

 

 

 悪意なき善意の塊……しかしツアイツの作戦を乱すのは、何時もアンリエッタ姫だった。

 

 

 

 

 その頃のオッパイ教祖ツアイツ……

 

 

 

 会報に負傷と発表した後、直ぐに想わぬ数のお見舞い客や見舞品が殺到してしまった。

 本来なら、この空き時間で「幸せワルド計画」を自ら同行して進めるつもりだったが、ひっきりなしに来る見舞い客の対応が大変だ!

 直接会えばバレる可能性も有るので、面会謝絶にしてしまったから更にいけなかった。

 

 ツアイツの症状は相当に悪い!そう周りに思わせる状況を作り出してしまった。ベッドの上で胡座をかいて座りながら頭を抱える。

 

 こんな大騒動になるなんて……

 

 ちょっと騒ぐけど、直ぐに収まると思っていた。嬉しいけど、予想を超えてしまった。

 

 見舞い品も山積み。水の秘薬も山積み。

 

 面会を求める客も列をなしている……これは、直ぐに元気になった!じゃ問題だろうか?

 折角の休みも、厳重に警戒した屋敷の自室に籠もりっきり……唯一の楽しみは、テファや久々にメイドズと居られる時間が多い事だ。

 テファには、良く学院の話や外の世界の事を聞かせている。

 

 メイドズとは、色々だ!

 

 勿論、添い寝も……と、思ったがシェフィールドさんが監視している気がして自粛中だ。

 でも、こんなにノンビリしたのは久し振り……学院に入学する前以来かも知れない。

 

 そうそう!

 

 ワルドズ&ロングビルさんはセント・マルガリタ修道院に向かった。女性とは何たるか!を相当勉強させたので、多分大丈夫だと思いたい……

 ジョゼットが駄目なら、後はケティしか居ないぞ。しかし、ケティはギーシュの為に残してあげたい。

 

 しかし、彼女は……

 

 彼女なら、ワルド殿の地位や容姿で迫れば口説けそうな気も、しないでもない。それは最後の手段だ!頑張れワルド殿!

 などと考えていたら誰か来たようだ……

 

「旦那さま、お昼をお持ちしましたわ」

 

 ワゴンを押しながらテファが部屋に入ってくる。僕のお世話をする事をエーファにお願いしたらしい。

 しかし健康体なのに、食事の世話や体を拭いたりと介護までしてくれる。寝たきり老人扱いだが……

 

「もし誰かに見られたらどうするのですか?怪我人らしく普段からしていないと駄目ですよ」と、ウィンクしながら言われてしまった……

 

 ならばと、着替えや清布で体を拭いてくれる時に、上半身を見せ付けるのは忘れない!

 

「恥ずかしいです、旦那様……」と、萌尽きそうな表情で言われると……ヤバいかもしれません!

 

 などと、病人ライフを満喫していたら、アルビオンで戦況に動きが有ったと報告が来た!

 

 

 レコンキスタにより、ダータルネス墜ちる。王党派は、最終防衛線をサウスゴータに移したそうだ。

 しかし、周辺住民の全てを移動させ、ダータルネス守備隊も死傷者は居なかったし施設も破壊したので、レコンキスタは暫くはダータルネスの復旧に時間が掛かるだろう。

 

 ジェームズ一世が指揮する今回の戦……ハルケギニアの常識を破り捲りだ。

 あの頭の固い老王が、こんな戦い方が出来るなんて……各国が、多数の間者を放ち情報を集めている。

 

 負ければ弱腰の老王……勝てば、国民を最も大切にしながら戦った英雄になれるだろう。

 大多数の男の浪漫本ファンクラブ会員貴族にとっては、そう理解していた。

 しかし従来の貴族にしたら、平民を守りながら戦うなど負けたらどうするんだ!と、思われていたが……

 

 想わぬ所で評価が分かれてしまったジェームズ一世だが、ハルケギニア中の平民からの支持は高い!

 勿論、男の浪漫本思想を広めた教祖としてのツアイツの人気も鰻登りなのだ。

 

 

第130話

 

 

 ヴァリエール公爵家

 

 トリステイン王国最大級の権力と邸宅を持つツアイツの嫁(予定)の実家で有り、女性陣の強いお宅でも有ります。

 久々に来たツアイツからの手紙を前に、夫妻が悩んでいた……

 

「あなた……義息子に刺客を差し向けるなどと。私、ちょっと行って話を付けてくるわね」

 

 真面目な顔でカリーヌが、烈風のカリンとして、ちょっくらレコンキスタ潰してくるわ!的な事をサラッとのたまった。

 

「待て待て待てぇ!お前が1人で片付けたら、今までのツアイツ殿の努力が水の泡だ」

 

 落ち着け、我が妻よ!ヴァリエール公爵は自身も有能なのだが、妻はバグキャラだからとても気を使う。

 

「レコンキスタは、当初の計画通りアルビオン・トリステインの連合軍で潰す。問題は、このリスト……売国奴の処理だ」

 

 ツアイツから貰った、レコンキスタから賄賂を貰っている貴族の一覧と証拠。我が国の腐敗貴族が、こんなに居るとは……

 しかし、ツアイツ殿も良くこれだけ詳細な証拠を集められる物だな。

 

「それと、義息子はエレオノールの事をとても心配しています。僕のエレオノールをゴンドランの様なキチガイの近くには置いておけないから早く引き取りたいと……」

 

 アレ?そんな文面だったか?

 

「これは、義息子に貰ってもらいましょう。これで娘達の内、2人が片付きました。カトレアは……」

 

「カリーヌ、落ち着け!そんな内容の手紙ではないぞ。なにやら、タングルテールの虐殺の真相や実験小隊を使った非合法な行い。それに人体実験等を行っている、か」

 

「チッ!あの娘の気持ちも考えて下さい」

 

 舌打ちされたぞ。妻は出逢った頃から規格外だったが、こんなに変な性格だったか?これもツアイツ殿の影響なのだろうか……

 

「これだけの裏付けが有れば、こやつらを失脚させるのも問題無いだろう。後はタイミングだな。

王党派は、ダータルネスまで失った。端から見ればピンチだ。反攻作戦の折に、増援を打診するべきか……」

 

「確かに、実情を知らねば一方的にレコンキスタが侵攻してますわね」

 

 まさか、周りの連中もツアイツ殿がオッパイだけで操っているとは思うまい。考えれば危険な男だな……

 人間の欲望を突いて人を動かすのは、悪魔の所業だ。しかし、彼の話に人は進んでそれに乗る。

 何故ならば、性癖の話には悲壮感もなければ罪悪感も無い。

 性癖など皆が持っている普通の感情だし、バレても仲間意識が生まれるだけ。しかも非合法でも犯罪でもないからな。

 躊躇するのは、ホ〇の疑いが掛かるし……味方で良かった。

 

 彼に敵対する=僕は女性は好きじゃないんだよ!的な疑いをかけられそうだ……

 

 違うと言うなら証拠を見せろ!しかし、彼の幅広いジャンル以外の女性好きなタイプを証明しろなど……他にどんなプレイが有ると言うのだ?

 

「どうしたの、あなた?」

 

「ああ、何でもないんだ。これはド・モンモランシ伯爵とグラモン元帥とも話し合わねばなるまい」

 

 見通しはたっているので、さほど心配はしていない。

 

「ご主人様、王室より書状が届きました」

 

 メイドが、アンリエッタ姫の印の有る書状を持ってきた。嫌な予感がする。兎に角、書状に目を通す……誰だ?

 アンリエッタ姫に、ツアイツ殿の怪我を教えた奴は?全く余計な事を……

 

「あなた、どうしましたか?」

 

 無言で妻に書状を渡す。黙って読み出す妻を見ながら、手を打たねばならぬと実感した。

 

「あなた……この緊急召集は?」

 

「誰かが、ツアイツ殿の怪我の件を教えたらしい。アンリエッタ姫は、敵討ち宜しく立ち上がるつもりだ。

しかも、有力貴族全てを集めるとなると……この資料を早速使う羽目になるやもな」

 

 溜め息をつきながら、ド・モンモランシ伯爵に会い下話をしてから王宮に向かうつもりだ。

 

「さて、これはツアイツ殿には出来ない我々の仕事だ!これを機に、腐敗貴族を断罪する……」

 

「そうですわね。私達に出来る事をしましょう……私も元マンティコア隊の隊長として、王宮に行きます」

 

 烈風のカリンが二十余年振りに王宮に行く、か。妻の全盛時を知る奴らには、良い歯止めになるだろう……しかし、これは言っておかねばなるまい。

 

「カリーヌよ、破壊活動は程々にな。王宮を壊すと色々大変なのだよ……」

 

 無言で向ける笑顔は……共に冒険した時の、懐かしい悪戯っ子の笑みだ。

 

 それはそれ、これはこれ!の顔だ……ヤレヤレ。

 

 こんな妻の笑顔を再び見る事が出来るとはな。悪くは無いぞ、ツアイツ殿よ。久々に血が滾る思いだ……

 

「竜を用意しろ!ド・モンモランシ伯爵家に向かうぞ」

 

 兎に角、グラモンも交えて腐敗貴族に当たらねば、もしもの事も有る。ツアイツ殿に、大人の仕事を見せるとしようか。

 

 

 

 アルビオン王党派

 

 

 サウスゴータに最終防衛線を構築し、レコンキスタに備える準備でごった返している。サウスゴータは城塞都市。

 時には籠城も検討しなければならない。これには、かなりの手間が掛かる。

 しかし、平民を味方に付けた為か諸侯軍と平民達とが協力して効率良く作業を行っている。皆の意気は高ぶっていた!

 

 先程のウェールズ皇太子の演説……

 

「私はツアイツ・フォン・ハーナウと会見をした。

彼は気持ちの良い青年で有り、君らファンクラブ会員の行動を誇りに思うと言ってくれた!

そしてレコンキスタに対して、彼らの教義は嘘で塗り固めた方便で有り、これは我らの教義に反しない戦いだと言ってくれた!

レコンキスタはそんなツアイツ殿に刺客を送り込み、彼は主犯を倒すも重体。そして、共犯者の傭兵共は逃げ出した。

 

しかし、我ら王党派は傭兵共を捕まえ、レコンキスタが!

 

オリヴァー・クロムウェルが!

 

この暗殺を指示した確かな証拠を掴んだ!それが、この指示書で有り捕まえた彼らだ。

私はツアイツ殿の傷が癒えれば、レコンキスタを倒した新生アルビオン王国に……彼を心の友として。また国賓として迎えたい!

その為には、君達の力が必要だ。

 

共に戦い、レコンキスタを我らが敵を倒そうではないか!」

 

 

 この演説を聞いたファンクラブ会員達は、自分の信念に間違いが無い事を涙し、平民は素晴らしい教義を広めている御方を害した(元)ブリミル教司教に対して、敵意を抱いた。

 

しかし当然演説には、避難しているブリミル教関係者も居る訳だから……

 

 

それはそれ、これはこれ!

 

の顔だ……ヤレヤレ。

 

こんな妻の笑顔を再び見る事が出来るとはな。

 

悪くは無いぞ、ツアイツ殿よ。

 

久々に血が滾る思いだ……

 

「竜を用意しろ!

ド・モンモランシ伯爵家に向かうぞ」

 

兎に角、グラモンも交えて腐敗貴族に当たらねば、もしもの事も有る。

 

ツアイツ殿に、大人の仕事を見せるとしようか。

 

 

 

 

SIDEアルビオン王党派

 

サウスゴータに最終防衛線を構築し、レコンキスタに備える準備でごった返している。

 

サウスゴータは城塞都市。

 

 

これには、かなりの手間が掛かる。

 

しかし、平民を味方に付けた為か諸侯軍と平民達とが協力して効率良く作業を行っている。

 

皆の意気は高ぶっていた!

 

先程のウェールズ皇太子の演説……

 

「私はツアイツ・フォン・ハーナウと会見をした。

 

彼は気持ちの良い青年で有り、君らファンクラブ会員の行動を誇りに思うと言ってくれた!

 

そしてレコンキスタに対して、彼らの教義は嘘で塗り固めた方便で有り、これは我らの教義に反しない戦いだと言ってくれた!

 

レコンキスタはそんなツアイツ殿に刺客を送り込み、彼は主犯を倒すも重体。

 

そして、共犯者の傭兵共は逃げ出した。

 

しかし、我ら王党派は傭兵共を捕まえ、レコンキスタが!

 

オリヴァー・クロムウェルが!

 

この暗殺を指示した確かな証拠を掴んだ!

 

それが、この指示書で有り捕まえた彼らだ。

 

私はツアイツ殿の傷が癒えれば、レコンキスタを倒した新生アルビオン王国に……

 

彼を心の友として。

 

また国賓として迎えたい!

 

その為には、君達の力が必要だ。

 

共に戦い、レコンキスタを我らが敵を倒そうではないか!」

 

この演説を聞いたファンクラブ会員達は、自分の信念に間違いが無い事を涙し、平民は素晴らしい教義を広めている御方を害した(元)ブリミル教司教に対して、敵意を抱いた。

 

しかし当然演説には、避難しているブリミル教関係者も居る訳だから……

 

 

 

第131話

 

 

 サウスゴータに集まって居る諸侯軍と平民の前で演説を終えた!感触としては、悪くはなかった。

 しかし、万単位の人々の前での演説とは疲れるものだ……一息入れる為に、あてがわれた室内に戻どる。

 応接室のソファーに座ると、バリーが熱い紅茶を用意してくれた。

 

「どうだったかなバリー?私の演説は」

 

 長年仕えてくれた侍従のバリーに問う。自分としては、高得点なのだが……

 

「素晴らしい演説でしたぞ!流石はウェールズ様。あの言い回しなら、ファンクラブ会員はオッパイと言われずとも理解出来たでしょう。

逆にファンクラブでない平民達は、オッパイを知らなくともツアイツ殿は素晴らしい教義を広めていると思うでしょう」

 

 流石はバリー!良く理解してくれる。流石に平民の前で、オッパイは不味いからな……ボカシて話したのだが、ちゃんと伝わっているだろう。

 

「そうだね。ツアイツ殿は、素晴らしき乳の探求者……しかし平民にそれを説いても理解し辛い」

 

「これで、我が軍の士気は高まりましたぞ。いつ反攻作戦を始めますかな?」

 

 最近まで意気消沈していたバリー達も、攻撃が解禁になった為に生き生きとしている。しかし、良い事ばかりでは無かった。

 ロサイスとダータルネスを抑えられた。それは、アルビオン大陸からハルケギニアへの足をレコンキスタが持っていると言う事だ。

 

 端から見れば、王党派は連戦連敗……既にサウスゴータまで攻め込まれている。

 

 被害が軽微など関係無く、レコンキスタ有利と思われているだろう……

 つまり、勝ち馬に乗りたい傭兵達が、続々とレコンキスタの元へと集結している。

 当初は2万だったが、物見の報告では少なく見積もって4万弱だ。約半月で倍になった。

 

 

 我ら王党派の攻撃に向けられる戦力は

 

 竜騎士団、風竜・火竜合わせて百騎。

 近衛騎士団3百人

 近衛歩兵隊4千人

 諸侯軍1万5千人

 それに戦列艦20隻。

 

 これでも敵の半数だ!しかし、航空戦力は此方が有利。士気も高いし、平民の協力も有る。

 

 しかし、近隣の村々に護衛の手を広げる為に、移動力の高い戦列艦を割かねばならず、常駐する歩兵も配置しなければならない。数的にも、やや不利か?

 

「しかし……それ以上に心配事が有ります。先程の演説で、ウェールズ様は我らが教義を言われました。ブリミル教のブの字も有りませんでしたな」

 

「……ブリミル教?ああ、有ったな。そんな教えが。どうでも良いだろホ〇の教えなど!と、言いたいのだが、すまん。正直忘れた!」

 

 素直に頭を下げる。

 

「ウェールズ様……すっかりツアイツ殿に感化されましたな。確かに、ブリミル教には手を焼いてますが……

今回の演説をブリミル教の関係者も聞いて居ましたな。厄介事にならねば、良いですが……」

 

「全ては、レコンキスタを倒した後の話だ。それに元とは言え、始祖の血を引く我らに弓を引いたのだよ、彼らブリミル教徒は。交渉の余地など幾らでも有るさ!」

 

「ウェールズ様……すっかり逞しくおなりになられて……」

 

 バリーが、ハンカチで目頭を押さえている。大袈裟だなぁ……

 

「私は、ツアイツ殿に覚悟を教わった。覚悟を決めれば、道は幾らでも開けるのだ」

 

 覚醒した漢ウェールズ皇太子は、ひと味もふた味も違っていた!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 刻々と入ってくる情報には、アルビオン王党派の良くない情報ばかり……

 ツアイツ様を傷付け、今もウェールズ様に刃を向け続けているレコンキスタ。

 この私達の輝かしい未来を壊す不敬者は、全て私の手で何とかしなければ……秋には、両手に花で演劇を観るのですわ。

 私達のロマンスを妨害する事は、万死に値します。時間は限られているのです!

 

「アンリエッタ姫、関係者に召集をかけました。しかし、全員が集まるのには一週間程掛かるかと」

 

 アニエス隊長が、報告にきましたわ。

 

「一週間ですか……それは時間が掛かるのですわね。でも、その時間で出来る事をしましょう!

アニエス隊長。アルビオンに向かって下さい。この親書をジェームズ一世陛下とウェールズ様へ、届けて下さい」

 

 それは、あの変態から止められていた捏造ラブストーリーな手紙……まだツアイツに監修して貰ってない、アンリエッタ姫の妄想逞しい逸品だ!

 

「ひっ姫さま?これは、この手紙はまさか……まだ早いです。あの男も、タイミングが大切だと言っていたではありませんか!」

 

「そうですわ。しかし、ツアイツ様は卑劣なレコンキスタの凶刃に倒れ療養中です……

なれば、その志を継いで、私が私の野望の為に進しかないのです。アニエス隊長、お願いします」

 

 ギュッと彼女の手を握り締め、目を見詰める……5秒……10秒……

 

「分かりました。銃士隊を何人かに分けて、アルビオン大陸に侵入させ王党派に届けます」

 

 やはり、アニエス隊長は頼りになりますわ。

 

「有難う御座います。アニエス隊長、お願いしますわ」

 

 一礼して退出するアニエス隊長を見送りながら考える。これで、当初の予定とは少し違いますが手紙を送る事が出来ましたわ。

 次の手は、ツアイツ様の言われたトリステイン貴族の膿みを出す事。それには迅速に腐敗貴族を取り押さえなければ……

 残る私の手足は、ワルド隊長とグリフォン隊ね。

 彼らをこれから集まる主要貴族達との会議の前に展開させて、その場で取り押さえる様にしなければ駄目だわ。

 

「誰か! 魔法衛士隊隊長ワルド子爵を呼んで下さい。 大切なお話が有ります」

 

 次々と手を打つアンリエッタ姫……大筋は間違ってなく、大した物なのだが。連携せずに独断専行が不味かったかもしれない。

 

「これでウェールズ様のピンチを救い、ツアイツ様の敵討ちが出来ますわ!上手くいけば、2人の殿方から感謝と求婚を……」

 

 先程までの凛々しい姫君は何処にも居なかった。ワルド隊長が部屋を訪れるまで、ソファーに座り顔を惚けさせながらイヤイヤを繰り返していた。

 暴走特急アンリエッタ号の妄想は、ウェールズとツアイツがアンリエッタを巡り、決闘にまで及び引き分けて友情を育んだ後で、共にアンリエッタに襲い掛かる迄に及んでいた……

 

「2人同時なんて……お待ちになって。でもどちらか1人を選ぶなど、私には出来ませんわ。嗚呼、この体が2つ有れば2人の気持ちに応えられるのに……」

 

 彼女は非常に豊かな感性の持ち主だった。しかし、全く有り得ない未来予想図だったが。

 




明日から8/29(土)まで夏休み特集として1日に2話投稿します。
これからも宜しくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。