現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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魔法学院編
第12話から第14話


第12話

 

 トリステイン魔法学院

 

 お早う御座います、ツアイツです。15歳となりヴァリエール公爵夫人の提案通り、今日トリステイン魔法学院に入学しました。

 ヴァリエール公爵家とツェルプストー辺境伯とウチの父上との経済交流は順調に進み、我が家に莫大な富と他の貴族からの嫉妬を買ってます。

 特に僕はトリステインの有力貴族であるヴァリエール公爵家のルイズと、正式ではないが婚約の噂が知れ渡っている為か、廻りからの視線がイタイデスネー!

 多分この学院では、男友達は出来ないかも知れません。

 早く自分の荷物を部屋に運び落ち着きたいので、近くに控えているメイドさんに部屋へ案内してもらいますか。

 

「君、ちょっと良いかな」

 

「はい。貴族様」

 

 金髪で小柄なツインテールのメイドが、小走りで近づいてきた。

 

「部屋に案内して欲しいんだけど」

 

「男子寮にですね。分かりました。お荷物お持ちします」

 

 そう言ってトランクを2つ、うんうん言いながら運ぼうとする。この子大丈夫かな?

 

「トランクは僕が魔法で運ぶから構わないよ」

 

 レビテーションでカバンを地上から10cm程浮かしてから彼女に話しかけたが大分警戒されている?

 

「大丈夫です!」

 

 気丈に言ってくれるが、お構いなくトランクを滑らす様に移動しながら先に歩いていく。

 

「お待ち下さい、ご案内致します」

 

 彼女の先導で部屋まで案内して貰った。

 

「こちらのお部屋になります」

 

 綺麗な所作で一礼して下がろうとしたので、お礼とチップを多めに渡しておく。

 まぁ人気取りと言うかお金を貰って悪い気はしないだろう、掌に押し付ける様に渡した。

 

 触った感じだと結構手が荒れてるな、もう春とは言えまだ水仕事は大変なんだろう。

 恐縮しているメイドさんに「有難う。又、宜しく」と言って、部屋に入る。

 

 結構可愛い娘だったな。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 貴族様に笑顔でお礼を言われてしまいました。

 思わず整われた優しい笑顔に見とれてしまいましたが、顔が赤くなるのを隠す為慌ててお辞儀をして部屋を出ました。

 あとで掌を開いて見たら10エキューも頂いてしまいました、私たちの1ヶ月のお給金と、そう変わらない金額です。

 こんなに頂いて宜しいのでしょうか?お礼まで言われてしまいましたし、変わった貴族様ですね。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 部屋に入りベッドに転がりながら今後の事を考える、さていよいよ原作開始だ。

 しかし僕の知っている原作とは大分違っているからな……どうしようか?

 

 ヴァリエール夫人と決闘して以来、自分なりに随分鍛錬したつもりだ。

 あの後、何度となく手合せして貰ったが一度も勝てなかった。

 しかし、ヴァリエール夫人から適切なアドバイスと、鬼のような課題をこなしてきた自信は有る。

 あの人は本当に戦闘面では優秀だけど限度を知らないよね、普通他国の有力貴族の息子を半殺しにする?

 

 しかも3ヶ月に1度位しか直接指導をして貰えないので課題を出してくれるのだが、とんでもなくハードルが高い!

 

 最初の課題はゴーレム12体を同時制御出来る様にとか無茶苦茶ですあの人。

 次が、そのゴーレムを3体1組で4チームにして同時制御にレベルアップしてるんだ。

 

 出来なければ課題提出の時に、訓練と言う名の体罰を遠慮なく実施するし……そんな半年でゴーレム制御の達人になんて無理。

 何とかクリアしたら次は制御は4体だけれども、大きさを兎に角大きく15m以上を錬金して制御する事。

 最後は1体をひたすら大きく硬く素早く制御する事。

 

 この間わずか2年……何度も死に掛けました。

 

 そして死の淵から戻ると、精神力が強化され何とか課題をクリア。

 先日の卒業試験の時は、このシゴキの集大成を見せ付ける為に一番イメージし易い国民的アニメのMSを鋼鉄製で錬金し無駄にモノアイも光らせる小技も見せる。

 武器はアックス(ヒートアックスは無理でした)を両手に1本ずつ持たせました、このアックスはブン投げれば質量とスピードの関係で物凄い威力!

 

 調子に乗って彼女に向かい振り回していたら練兵場が崩壊し後で徹夜で直させられました。

 やはり量産MSでは倒せないのか、トリステインの白い悪魔は!

 

 そして、2年間のシゴキを終えてヴァリエール夫人にお礼を言って最後の試験の総評を聞いたのですが……

 今のレベルなら、当時のマンティアコア隊の新人程度の力量だとお墨付きを貰った。

 それとヴァリエール3姉妹の誰でも貰って良いと言われたが、土下座して丁重に辞退しました。

 

 ハルケギニアに土下座文化は無かったのだろうが、何とも申し訳ない気持ちになったらしく「保留」にしてくれた。

 

「貴方の体捌や武術は並みなので極力、接近戦で戦わないで済む技術を教え込みました。

当初見せてくれた昆虫型ゴーレムやブーメランを今使えば、制御も威力も桁違いに成っているでしょう。

アウトレンジで戦えば大抵の敵に遅れを取る事もないでしょうが接近されたら難しい、その事を肝に銘じて精進なさい」

 

 僕は感謝の言葉を述べて帰りましたが「感謝するならエレオノールでも貰ってくれれば良いのに……」と言う呟きを聞こえない振りをした。

 

 先日、何度目かの破談を向かえ、今は実家でリフレッシュ休暇中らしいです。

 

 あの時のエレオノール様は年下趣味では無かったが何度か話した時に「不思議と同年代と話しているみたい」と微笑んでくれましたが当たり前です。

 

 精神年齢は年上なのですから、とは言えず笑って誤魔化したけど。

 

 まさか狙ってる?……ガクガクブルブル。

 

 でもエーファと同世代だから守備範囲だけどね、性格と乳を何とかしたら。

 身近で接してみれば悪い人ではないんだけど、あの緊張感を毎日続けるのは神経が擦り切れて無理だと思う。

 

 でも近くで見ると知的で綺麗な人なんだけどね、勿体無いね。勇者の出現を待ちましょう。

 

 はっ!

 

 走馬灯のような地獄の訓練を思い出していたら時間がたち過ぎて入学式に遅刻しました。

 最後に会場に駆け込んだ僕は目立ってしまったのか、何人かの視線と陰口が聞こえた。

 

「あれが烈風のカリンの後継者か」

 

 違います唯の弟子です。

 

「いやヴァリエール公爵夫人の若いツバメらしいぞ」

 

 うん、こいつ叩きのめす。

 

「わざわざトリステインまで金儲けにきてる貴族らしくない奴だろ」

 

 貴族なら領地経営くらい黒字にしろって。

 

「あの御方が伝説の巨乳の担い手なのですよね、お話を聞きたいわ」

 

 ヴァリエール公爵、口止めしてくれたんですよね?

 

 適当に先生達の話を聞いてる振りをしていたが、まぁ噂話が絶えない事。これからの学園生活が思いやられるわ。

 学院長のボケはスルーしてそのまま講堂を出ると、両方からキュルケとルイズが抱きついてきた。

 

 一瞬で周囲の温度が5℃位下がる。

 

 キュルケは原作ほど色恋に激しくなく露出度も低いが、オリエンタルちっくな色っぽさが有り体型は原作基準のナイスバディの美女に!

 ルイズは、身長は原作通り小さいけどメリハリの有る体型の可憐な美少女になっていた、両極端の美女・美少女に同時に迫られれは嫉妬も凄いよな。

 二人とも大貴族の娘だって事も考えれば、当たり前か。

 

「二人とも、周りが見ているから離れてくれない?」

 

「あら見せ付ければ良いじゃないツアイツ」

 

「周りなんで気にする必要ないわよツアイツ」

 

 何気に、この二人は仲良くなってます。ライバル心は相変わらずだけど、両実家が融和政策中なので原作程酷くはない。

 しかも二人ともこの学院生活中に僕を落とす様に言い含められてるみたいなんだよな。

 勿体無いけど、サイトに惹かれる様に誘導するしかないのかな?もう原作通りには進まないだろう。

 

 ヒーローはサイトで良いが、ヒロインからシエスタ・キュルケ・ルイズを抜かなくてはならない。

 ヒロイン候補はアンリエッタとティファニアにして、どうやってサイトと絡めていくかだよな。

 他国の王女と引き篭もりのハーフエルフなんて接点なんてないし、ルイズもアンリエッタにそこまで傾倒していない。

 

 今晩にでも久しぶりに脳内会議を開催するか……

 

 なんて現実逃避をしている間に、某宇宙人の様に両手を掴まれ教室まで連行されていった。

 今後彼女達とは教室も3人で並んで座り、食事も同様な席順で休み時間も殆ど3人で1組状態になるだろう。

 しかし教室に入って3人で並んで座ると周りの連中から、各々の思惑が有るんだろう何とか接触をしようと思っているのが解るんだよなー。

 チラチラ様子を伺っているの丸解りだしね。

 

 そして先生が入ってくる、コッパゲール先生……いやコルベール先生ですね。

 

 最初の授業は当然、自己紹介となり前の席から準じ右から左へと紹介していった。

 僕らは後ろの方に座っていたので最後に近い順番だ、あー原作キャラが続々紹介してるのをリアルで見るのは感慨深いね。

 

 小太りマルコリヌ?マルッコリヌ? 金髪ロールのお嬢様モンモン。気障と言うか、半露出な位にボタンを開いてるギーシュ。

 

 その他のモブ達だが女子は結構美人さんが多い、流石は貴族様って事か。

 そしてルイズの番だが、公爵家令嬢は伊達じゃないね、見事に男子諸君が喰いついてますが優雅に一礼して席に戻る。

 

 次は僕か……と立ち上ると周りがザワザワしてきた。

 

「ツアイツ・フォン・ハーナウです、ゲルマニアから留学してきました。宜しく」

 

 味も素っ気なく挨拶し席に戻った、最後にキュルケの番だ。

 

 こちらも堂に行った態度で控えめだが溢れる色気で、ルイズより男子諸君が喰いついてますね。

 確かに原作より落ち着いているが同世代では有り得ないお色気だからね、なんて考えていたら爆弾を投下された。

 

「先に自己紹介したツアイツとは婚約しているの。ヴァリエールも含めて、横取りは許さないからね」

 

 教室内が爆発した、そんな約束をしていたかな?

 

 

第13話

 

 貴族なんだし許婚の一人や二人居ても……ね。

 

 正直この一言は痛かった、これで男子だけでなく女子からも隔意を持たれてしまう。

 真っ赤になってブルブル震えているルイズが何か言う前にフォローしなければ……

 

「友好的な貴族の間で、自分の子供達を結婚させようって話は割りと有るけど。僕らの場合は、お互いをもっと知る為に同じ学院に入学したんだ。

君らの両親も僕以外の相手も視野に入れて検討しろって事で言ったんだよ。だから良く考えて喋らないと、周りが誤解するよ」

 

「「私と結婚は嫌なの?」」

 

 二人が不安そうな顔で見ている、ヤベー何かグッと来る物が有るな女性の不安顔って……

 

「嫌じゃないけど、決めるにはまだ早いって事だよ。良く考えないと後悔するし、周りの皆だって素敵なレディ二人に遠慮してしまうよ」

 

 取りあえず誤魔化した。そしてポツリと同情を誘う呟きを……

 

「僕だって在学中に相手を見つけないと、カリーヌ様からエレオノール様との結婚を進められそうだし……」

 

 呟きが聞こえたのか周りの反応が同情を含んだ物と、キュルケとルイズには未だチャンスが有る事を理解したようだ。

 これで少しは僕らの風当たりも弱くなるだろうし、夜にでも彼女らにも理由を説明しておこう。

 折角の学院生活がつまらなくなるし、彼らはこれからのトリステインを担う世代だから、仲良くしておかないと後々で問題が発生する。

 その辺も二人に言い含めないと……キュルケはともかく、ルイズはその辺の考えが甘いからな。

 

 やはりと言うか早速ギーシュが二人に粉をかけていた。

 

「美しいお嬢さん方、ギーシュ・ド・グラモンです。宜しく」

 

 薔薇を咥えて気障なポーズを決めている、実際に見るとコレハイタイナー……

 モンモンの様子を見ればそんなに嫌がってないけど、まだ付き合ってないのかな?モンモンと目が合ったので、ニコリと微笑んでおいた。

 彼女には秘薬(豊胸薬)のアドバイスが欲しいので、仲良くしたいんだよね。

 

 あっ真っ赤になって目を逸らされた……

 

 やはりゲルマニア貴族は、トリステインでは嫌われているのかな?地味に凹むわ。

 ギーシュ達を見れば二人に、こっ酷く振られている。

 キュルケには趣味じゃないしツアイツの方が素敵といわれ、ルイズにはキモイから近付かないでと怯えられている。

 

 ギーシュ呆然……そして恥をかかされた腹いせか僕に詰め寄って来た。

 

「君の所為でレディ二人が僕の魅力に気が付かない様になってしまった、どうしてくれるんだい?」

 

 凄い言われようだぞ……

 

「どうしろと言われても、彼女らの趣味じゃなかったんだろ?」

 

 事実を教えるしかなかったのだがキュルケとルイズが止めを刺した。

 

「「ツアイツに絡むな変態の露出狂!」」

 

 ギーシュはプライドを傷付けられたと僕に決闘を申し込んだ、これ原作と違う流れだぞ……

 

「君の所為で、二人のレディの美的感覚が狂ってしまった。どうしてくれるんだい?決闘だ!まさか断らないよな」

 

「いや……しかし、貴族間の決闘は禁止されてるんじゃないのか?」

 

 おいおいギーシュ、決闘騒ぎはサイトが来てからだろ。話の流れって奴が……

 

「ふん。逃げるのか。ゲルマニアには貴族のプライドが無いのかい?」

 

 薔薇を咥えてあくまで余裕の咬ませ犬ギーシュ君。

 

「ツアイツやっちゃいなさいよ!お母様から聞いたわよ。戦闘訓練でお墨付きを貰ったって」

 

「そうよ。最年少スクエアメイジなんだし、軽く捻っちゃえ」

 

 こらこら追い討ちをかけるな、ギーシュ真っ青だよ。

 

「ききき君は……ももももしかして……烈風のカリンの弟子って噂の……」

 

「ヴァリエール夫人とは、家族ぐるみの付き合いで何度か魔法の指導を受けているのは本当だよ」

 

「ででではヴァストリの広場にて待ってるからな……ににに逃げるなよ」

 

 正直に言って面倒臭いし目立ちたくないんだけど、断ると臆病者扱いだろうな……全く君の出番はまだなのに。

 

「誰かヴェストリの広場まで案内してくれないか?」

 

 何人かのモブ達がこっちだど案内してくれる、入学式当日に決闘騒ぎとは問題児扱い決定だろうな。

 だが今後も突っかかって来る馬鹿は必ず居るから、ここは完全に力の差を見せ付けないと……とのんびり歩きながら考えていた。

 ヴァストリの広場につくと結構な生徒達が輪になって集まっている、上級生もチラホラ居るな。

 

 何となくギーシュの後ろにギーシュを応援する男達が集まり、僕の後ろにはキュルケ+ルイズ+その他女性陣な配置だ。

 

 あっタバサ発見。でかい杖に眼鏡っ子で本を読んでいるけど、こっちに注意を向けているのはわかる。

 今日始めて会うが原作と同じチッパイのロリっ子だな、原作ではルイズと人気を二分する程のキャラだ。

 

 確かに綺麗だし保護欲をそそりそうな娘だね。

 

 実際はかなりしっかり者で頑張り屋さんなんだが見た目では解らない、それに彼女とは深く係わらないつもりでいる。

 正直ジョゼフなんぞに、目を付けられたくはないので……

 

「よく逃げずに来たな。褒めてやろう」

 

 ん?ギーシュ少し落ち着いたのかな?後ろからは男性陣が応援している。

 

「ギーシュやっちまえー」

 

 こらこら煽るなよ。

 

「お前と違い美女を独り占めしそうだからやっちまえー」

 

 そんな事はないよ。

 

「ルイズたんハァハァ」

 

 いやヤバイの混じってないか?

 

「いや逃げると言う選択肢は無いだろ。お互い貴族ならば」

 

 ニヤリと言ってやる。

 

「よくぞ言った。僕は青銅のギーシュ、このワルキューレ達でお相手するよ」

 

 そう言って薔薇の杖を振り花びらを舞わせて、更に花びらを錬金してワルキューレを作り出す。

 全部で7体、既に剣・槍・盾を各々装備してる最初から本気モードだ。

 では僕も本気を出す為に準備をするか……

 

「あーもっと離れて離れて!」

 

 周囲に声をかけて直径30m位の輪を倍の直径60m以上に広げさせた。

 

「二つ名はまだ無い。ゲルマニアのハーナウ家長子ツアイツ、いざ参る」

 

 そして自身最高のゴーレム(機動な戦士の敵方量産機)を錬金する。

 

「クリエイトゴーレム!」

 

 自分の前方に全長18mのゴーレムにアックス2本装備を錬金し、ギーシュと向かい合う。

 

「お互い正々堂々と勝負しよう、では薙ぎ払え!」

 

 ダブルアックス投擲→吹っ飛ぶギージュ+ワルキューレ7体→序に土砂も吹っ飛ぶ→ギーシュ側の応援団(男達)全滅……

 

「悪は滅びた……戦いは常に虚しいだけだ。何も僕に残さない」

 

 渋く決めたつもりでこの台詞を言い、ゴーレムを戻して抉れた土を元に戻し颯爽と後ろを向いて後を去ろうとしたが……

 後ろには半円に並んだ女子達が居るので、その輪に突入する形となってしまった。

 魔法が絶大な意味を持つトリステインでは、僕のゴーレムは圧倒的だったから其れなりに好感度アップかな?と軽く考えていたが……

 

 ミナサン、ハンターの目をして僕を見詰めている。アノメハキケンナカンジガスル……

 

 金髪ロール、モンモンが突撃してきた。

 

「ツアイツ様は新しい水の秘薬を数多く生み出していると聞きましたが、土のメイジだったんですか?」

 

 あー風邪薬とか頭痛薬とかハンドクリームとか、平民用に安く配合し直した事かな?

 

「土のスクエアですが、水もトライアングルなんですよ。モンモランシ家のお嬢さん」

 

 ニッコリ笑顔を添えてサービスする、今度秘薬作りに協力して下さい。

 

「私の事をご存知なんですか?光栄ですわ」

 

「母からトリステインのモンモランシ家のご令嬢の調合する香水について、聞き及んでいますから」

 

 顔つなぎの意味でお世辞をいった途端に、キュルケとルイズに両耳を引っ張られて説教された……解せぬ。

 

「デレデレしない!」

 

 まだ周りも話したそうだったけど般若な二人に気後れたのかそのまま見送られた、ドナドナドナードナーな気分。

 その後、二人の機嫌を直すのに虚無の日に出掛ける約束をさせられた。

 教室に戻ると、コルベール先生が待っていてギーシュと二人で学園長室に行く様に言われ連行。

 

 ギーシュ何気に回復早くね?廊下を歩いている最中にギーシュから探りが入った、彼はモンモランシが好きだったよな。

 

「モンモランシ嬢と話していたけど仲が良いのかい?」

 

「同じ水メイジとして彼女の香水について聞いていただけだよ」

 

「えっ君は土メイジじゃないのかい?」

 

「土はスクエアで水もトライアングルなんだ。」

 

「水もトライアングル!凄いな!あの烈風のカリンの愛弟子ってのは、本当だったんだ」

 

「弟子入りしたいなら紹介するよ。ただし死ぬか生きるか的な拷問に近い訓練だけど……」

 

 あっなんか思い出したら涙が……それに体が小刻みに震えてきた、おかしいな?寒くもないのに……

 

「すまない。嫌な事を思い出させたかい?」

 

 僕の空ろな眼でガクブルしだしたのをみて、不味い事を言ったのかとフォローしてくれた。

 

「正直あのシゴキを耐えただけで自信が付くよ。但し余り忍耐力を付け過ぎるとエレオノール様の婿として期待されるけど」

 

「あのエレオノール様か……たしか破談記録更新中だったよね」

 

「知ってる?あの人破談する度に僕を呼付けて夜通し自棄酒で愚痴を聞かすんだぜ、堪んないよ実際」

 

「すまない。弟子入りの件は無かった事にしてくれ、そんな拷問と特典はいやだよ」

 

「ルイズだって、あのカリンの血を強く引いているんだぜ。気を付けろよ。

僕は派手だけど怪我をしない様に注意するが、彼女は問答無用で男の子の急所を狙うよ、マジで……」

 

「それは……忠告有難う。改めてすまなかった、言い掛かりみたいな事をして」

 

「いや僕も舐められちゃいけないと派手にやりすぎたよ。こちらこそごめんな」

 

 僕ら二人は学院長室に付く前に和解した、こいつは友達として見れば良い奴だな。

 そんな二人をコルベール先生はため息を付きながら首を振っていた、問題児が生徒になった悲しみか……

 

「兎に角、しっかり謝る事ですよ」

 

 コルベール先生はため息をついて僕らを学院長室に押し込んだ。

 

 

第14話

 

 オールドオスマン?駄目だこりゃ。

 

 先生の前に立たされて叱られるなど、何時くらいからだろう?

 この時期はまだロングビル(マチルダ?フーケ?)さんは秘書として働いてなく、モブな男性秘書がいました。

 

「君たちは伝統あるトリステイン魔法学院の入学日に何故、問題を起こしているのかね?」

 

「いや友人同士の魔法の研鑽だよね。決闘なんてしてないですよ、なぁギーシュ?」

 

「大分差を付けられているけど訓練だよね。決闘なんてしてないですよ。なぁツアイツ?」

 

「「僕ら友達だし、そんな決闘なんてしないですよ」」

 

 いけしゃしゃと、言ってみました。頭を抱えるコルベール先生に、鼻毛を抜いて聞いているオールドオスマン。

 

 こら!鼻毛こちらに飛ばすな!

 

「それに怪我人も出ていないし、広場だって元通りじゃないですか」

 

「当人達もこんなに反省してますし、互いに研鑽する気持ちが溢れ出てしまっただけです」

 

 更に弁解してみたけど駄目かな?どうせ監視していただろうし、ならば奥の手をだすか。

 

「そうそう……オールドオスマンに渡そうと思って、忘れてました。私が書いた小説です」

 

 そっとフルカラー18禁版「マイフェアレディ」挿し絵&サイン入りを差し出す。

 

「こっこれはモット伯が自慢していた、最近人気のマイフェアレディ18禁バージョンではないか!しかもフルカラー挿し絵にサイン入り!」

 

「先日書き上げたばかりの新作です。良ければお納め下さい」

 

 ニヤリとオールドオスマンの眼を見て言う。

 

「オオ…サイン入りとは。これは宝物庫に収めないと。いや今から熟読しなければ……」

 

 貴族的解決法、それは賄賂!

 

「あーコルベール君、二人とも反省しているのでもうしないと思うのじゃ。教室に戻してあげたまえ」

 

 そして賄賂は成功した、原作通りエロくて話の分かる老人だったな。

 

「オールドオスマン、宜しいのですか?てか色ボケジジイ!ちゃんと指導しろや!」

 

 なにか白熱した教育論を話し合っている二人をその場に残して、さっさと教室に戻る事にした。

 

「ツアイツがあの名作の作者なのかい?実家でも父上が偉く感動して読んでいたよ、なんでも男の浪漫だとか何とか」

 

「ギーシュだって可愛い女の子を自分好みに育ててみたいだろ?そんな内容の小説さ」

 

「それは……確かに男の夢と浪漫が詰まっているね、今度貸してくれよ」

 

 ギーシュも好きだねぇ。

 

「趣味で書いているから一般では中々手に入らないからね。今度部屋に来なよ、貸すから」

 

「それは楽しみだ」

 

「でも他の奴には言うなよ。男も女も色んな意味で五月蝿そうだからさ……」

 

「そうだね……じゃ内緒にするよ」

 

 教室に戻ると、担任であるコルベール先生が戻るまでは自習だ……

 次の授業は、風馬鹿ギトー先生か、大人しくしておこうかな。

 

 イチャモン付けられそうな気がするんだけど。

 

 見渡すとキュルケとルイズの間の席が不自然に空いていて、二人がニコニコ手招きしているのでそっとフライで席に着いた。

 ギーシュはヴィリエとマリコルヌの間か、男子には人気あるんだよな。

 

「どうだった?謹慎とか罰とか言われなかった?」

 

「僕もギーシュもお咎め無し。んで、彼とは友達になったから苛めないであげてね」

 

「えー半裸気障男イヤなんですけど」

 

 ルイズ……ツン絶好調!聞こえたギーシュが、落ち込んでるよ。

 

「コルベール先生戻ってこないのね?」

 

 あれモンモン近くに居たんだ。

 

「オールドオスマンと教育方針についてディスカッションしてるから、授業は自習じゃないかな?」

 

「じゃ少し時間有るのね。ちょっと聞きたいんだけど、巷で噂の巨乳の担い手ってミスタツアイツなの?」

 

 近くに座っている女の子達の耳が一瞬でダンボになる。

 

「計算された栄養と効率的な運動で女性らしい体型を得られる事について、研究した事は本当だよ。

でも誰にでも効果がある訳じゃ無かったんだ。ヴァリエール公爵夫人とその長女エレオノール様には効かなくてね。

現在封印中……」

 

「じゃ教えて貰う事は出来ないの?」

 

 モンモン必死で訴える。

 

 トリステインであの二人を知らない者は居ないし、彼女らが駄目だといったら逆らえる人は居ないのかな?

 でもこれをネタにすれば、ルイズをクラスに溶け込ませる事が出来て、少なくてもクラスで孤立する事ななくなるだろう。

 

「僕は口止めされたけど、ルイズはされてないから聞いてみれば?ヴァリエール一族で効果が唯一有ったから」

 

「なっなによ?」

 

 皆が一斉にルイズの胸を見て、納得してから殺到した。

 

「ミスルイズ!是非お友達になりましょう」

 

「今晩お部屋にお邪魔して良いかしら?」

 

「そうですわ!お茶会にご招待します。是非来て下さいな」

 

 失敗魔法の件で貴族の女の子とは余り友達が居なかったルイズは、当然のことにアワアワと僕を見たけど頑張れ!

 

「ルイズ、まだ毎日実践してるんだろ?皆で一緒に仲良くやればいいだろ。教えてあげなよ」

 

「きゃいきゃいと話が弾んでいるわね!ルイズ嬉しそう」

 

 キュルケが優しい目でルイズを見ながら、話しかけてきた。

 

「彼女には失敗魔法というハンデが有るから……このトリステインでは蔑みの対象になっちゃうし。これを切欠に……ね」

 

 僕らは笑い合うと目聡く見つけたルイズが「あー何か良い雰囲気ズルーイ」と騒ぎ出した。

 

 これで原作と違い、クラスで孤立しないで済めば良いんだけどね。

 彼女と共に励んで巨乳になった娘達なら、彼女に恩義を感じ悪くは言わないだろう。

 その辺の結束は凄いから、女の子ってさ。

 

 そんな我々をじっと見詰めるチビッ子が一人……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 また貴族の馬鹿騒ぎかと正直面倒臭かったけど、片方が今年入学した中で唯一のスクエアと聞いて見に行った。

 気障の方の金髪は雑魚だった……ドットとしてはまぁまぁだけど、所詮ドットだし問題なく倒せる。

 しかしゲルマニアの金髪は、正直ゴーレムの練成スピード・精度・操作技術・大きさ全てが凄かった。

 完全鋼鉄製のゴーレムなどあの大きさでは有り得ない事、しかも武器を操っている。

 単体で砦に突っ込んでも砦が粉砕されるだろう、攻城戦級の大型ゴーレム……

 

 接近戦闘能力は解らないけど遠距離で攻められたら勝てない、勝負はあっさりとついた。

 いや勝負と言えない圧倒的な差があった、でも怪我人が出ない様に手加減してた。

 

 一度、戦ってみたい。

 

 烈風のカリンの弟子ならば、戦って得る物もあるだろう。

 ※タバサは純粋に自身の戦闘力向上に興味が有り、巨乳の方には興味が無しです。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 モンモランシ家は伯爵家とは言え、事業で失敗し赤貧に喘いでいる。

 私も少しでも家計に貢献しようと、香水作りや秘薬作りを頑張っているけど思わしくはない。

 そんな中で、ヴァリエール公爵家が宿敵ゲルマニアのツェルプストー辺境伯と組んで次々と新規事業を成功させ更に羽振りがよくなっていると聞いた。

 

 正直羨ましい。

 

 聞けば、中心的な役割をしているのは同い年の少年らしく、烈風のカリンのお気に入りだとか。

 あんな伝説の化け物に気に入られるなんでどんな筋肉馬鹿かと思えば、トリステインでは入手困難だけと貴族の見栄として何冊か購入した物語の作者だ。

 一度だけ見せてもらった演劇も手掛けている、多彩な領地持ちの長男だとか。

 

 これを狙わずに、極貧からの脱出は有り得ない。

 今日初めて本人を見たが、美男子だったし魔法の腕は、なんと言うかミスタ・グラモンが可愛そうだった。

 私なんかじゃ、あの高みには登れない。

 

 でも色んな秘薬を改良して、安価で平民に渡しているって聞いたけど系統が違う?

 恐る恐る本人に聞いたら、土がスクエアで水がトライアングルだなんて凄すぎ。

 お話しても紳士だし優しいし、これは打算無く狙っても良い良物件だわ。いやコレを狙わずに、誰を狙うのだ!

 両脇のデッカイのとチッチャイの邪魔だけど頑張ろう。

 

 ギーシュを彼氏に……なんて電波が来たけど、それは有り得ないわね。

 

 無理だわ無理無理。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 今年の新入生にはトライアングル2名・スクエア1名それとラインが何人か入学する情報を得ています。

 15歳でスクエアまで登り詰めるとはどんな才有る若者なのだろうと少し調べるだけで……

 

 出るわ出るわ、物語の執筆や演劇の監修。

 

 あの問題だったヴァリエール公爵家とツェルプストー辺境伯家を暫定とは言え、協定を結ばせる政治的才能。

 そこから商売でもかなりの成功を収めている。

 

 どんな完璧人間かと思えば……

 

 許婚だと言う美女・美少女を両方に侍らせ、入学式は遅刻、その後に決闘騒ぎを起こしている。

 しかし相手に怪我を負わさない配慮とその後の復旧作業は完璧ですし、決闘したミスタグラモンとも仲直りしています。

 問題児には代わりが有りませんが、悪い子ではないのでしょう。

 申請書を読めば魔法学院の近くにヴァリエール公爵を通じて屋敷を購入していますね。

 領地経営にも参加している為、学院内以外に執務室が欲しいのが理由でしたが……

 

 確かに機密を扱う事も有るし防諜という面でも、学院外からの侵入は防げても基本的に個人の部屋には友人等が自由に出入り出来てしまいますからね。

 噂ではその屋敷にはヴァリエール公爵家から送られた、巨乳メイドが20人いて自身の領地からも過分な位の人数が来てると言います。

 

 若いのに大したものだ!と褒めるべきか、他国にまで大勢のメイドを連れ込むな!と言うべきか……

 

 注意は必要でしょうね、しかし羨ましいですな。共に大貴族の令嬢で、甲乙付け難い美人ですからね。

 


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