現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第123話から第125話

第123話

 

 

 土下座をしてまで、国の為に動くウェールズ皇太子……

 

 流石のツアイツもアンリエッタ姫を押し付けるから平気とは言えなかった。

 しかも、自分がレコンキスタに取り込まれない様に、オッパイ思想を植え付けた連中が参戦に消極的だ。

 

 これは……乳を争いの道具にするな!大いなる乳の下に集え!と教えた事を忠実に守っている彼らに落ち度は無い……

 

「実は昨日、レコンキスタから刺客が来まして撃退したばかりなのです」

 

 唐突に話題を振る。

 

「何と!既に奴らの魔の手がツアイツ殿にまで……」

 

「彼らから言質は取っています。僕の首には賞金一万エキューだそうです。主犯は白炎のメンヌヴィル……それと傭兵12人程。

メンヌヴィルは手加減出来ず倒してしまいしたが、傭兵は全員治療し確保してあるので、お渡しします」

 

 ウェールズ皇太子は、何故か僕を尊敬の眼差しで見てるけど?

 

「白炎のメンヌヴィルは私も聞き及ぶ程の狂人傭兵じゃないですか!それを撃退出来るとは、ツアイツ殿は武力も一流なのですな!」

 

 周りが規格外な連中ばかりだから、イマイチ武力が一流とか言われても……

 

「我が師、烈風のカリン様に比べたら……大した事では有りませんよ」

 

 余計に驚いてる?

 

「あの伝説の環境破壊騎士の弟子ですと?噂では、ブレイドで軍艦をブッタ切るとか、城塞をカッタートルネードで粉砕するとか……」

 

 もう何でも有りだ、あの人……

 

「若い時の武勇伝は聞いていましたが……嘘じゃないのですね」

 

「「「……………」」」

 

「それで、彼らを引き渡すので、其方で公表して下さい。そして僕は重傷を負ったと……」

 

「それは、どういう意味が有るのかな?無事なツアイツ殿を見せた方が、士気が高まるのではないかな?」

 

「僕はレコンキスタからの刺客で傷を負った。会報には、その様に書きます。つまりは、休載のお知らせですね」

 

 ウェールズ皇太子のお付きの2人が、机を叩いて騒ぎ出した!

 

「男の浪漫本ファンクラブの会報は皆が楽しみにしてるのですよ!それを休載などと……」

 

「嬉しいですね。そこまで言われると。そして、その怒りの感情はレコンキスタに向かいますね。

これが伏線のその1」

 

 大人しく座るお付きの2人……

 

「時を同じくして、傭兵達を捉えた王党派から発表が有る。僕を襲撃した連中を捕らえたと……

証拠は此方で揃えます。オリヴァー・クロムウェルからの指示書等を」

 

 これらはメンヌヴィルさんと交渉すれば、本物が手に入る筈だ。条件は、目の治療とアカデミーで受けた薬の治療……

 シェフィールドさんに、カトレア様達の治療の実験台と偽って治して貰おう。

 

「確かな証拠を押さえて、王党派がこれを裁くのが伏線その2」

 

 ウェールズ皇太子が膝を叩いて納得顔で頷いた。

 

「なる程!巨乳派教祖のツアイツ殿を襲ったのはレコンキスタ。お陰で会報は休載。

その犯人は王党派が捕まえて裁いた……一連の流れを見れば、恨みは全てレコンキスタ。

そして実行犯を裁いたのは王党派。しかも指示したクロムウェルと敵対してるのも王党派……」

 

「敵討ち……とまでは行きませんが、悪者は全て向こう」

 

 うんうんと頷いている。

 

「暫くして、傷の癒えた僕が、待ち望んだ会報を再開し、そこで……

今回のレコンキスタの襲撃について、彼らは乳に信念を持っておらず武力のみで自分の欲望を満たそうと動いている。

彼らに乳のチの字も言わせる事は許さない。僕は、レコンキスタの存在を許さない!

同志達よ、立ち上がり偽りの美乳派と戦おう!と、コメントしたら……」

 

 黙り込む三人……

 

「レコンキスタに同情しますね……我々の士気は高まるでしょう。大義名分が全て此方に有る訳ですから。しかし、何故暫く空けるのですか?」

 

 ごめんなさい。ウェールズ様……この空白の期間で、アンリエッタ姫を焚き付けるから時間が欲しいのです。

 

「……情報が広まるには、時間が掛かります。

皆が与えられた情報を理解して行動に移るには、それなりの時間が必要だと思いますよ。作戦を確実に遂行する為にも……

それに、こちらからも僅かですが、増援(アンリエッタ姫御一行)を送れるかもしれません。

最悪、私がウェールズ様の下に赴き、レコンキスタに対して皆さんに話をしても構いませんから」

 

 ウェールズ皇太子は、僕の両手をがっちり掴んで振り回すと

 

「これで、これなら我がアルビオンは平和を取り戻せます!此処まで協力して貰ったからには、どんなお礼でも言ってくれれば何とかしますよ」

 

 お付きの2人も男泣きしだしたし……

 

「全てはウェールズ様の覚悟に心酔しただけです。国民の為に王族が土下座迄できるなど、未だに信じられません。貴方は王族として素晴らしいお方です!

レコンキスタを倒した暁には、アルビオン全土の乳を守った英雄として是非、男の浪漫本ファンクラブの上級会員として、ご希望のマントを贈らせて頂きたいのです」

 

 拍手をするお付きの2人……ウェールズ皇太子は固まってしまった。

 

「私……私が……もう無理と……諦めていた、上級会員になれる……そんな事が、現実となる……こんなに嬉しい事は無い……」

 

 涙を一筋流しながら、呆然と佇むウェールズ皇太子。物凄い罪悪感を感じた!

 アンリエッタ姫を押し付けるので、せめて上級会員にして、好みのマントを贈ろうと思ったのだけど……

 

「ツアイツ殿……いえ、心の友と呼ばせて欲しい!

レコンキスタを倒し、アルビオンを安定させたら国賓として新生アルビオンに招待したい。

有難う、心の友よ。これでアルビオンの未来は明るい!必ずお礼はする、必ずだ!」

 

「ははははは……楽しみにしています。

では、今夜はささやかですが宴を用意させてますので楽しんでいって下さい。ウェールズ様に会わせたい女性が居ますので……」

 

「まっ、まさか、女神殿ですか?」

 

 テファの情報は、計画通りに流れている。ここで、ウェールズ皇太子に会わせ何事もなかった実績を作れれば、後々有利になる筈だ。

 

「ご存知でしたか……私の婚約者ですが、少し訳ありなんです。しかし、ウェールズ様の購買リストではダントツ一位ですから是非、紹介したいのです」

 

 微笑みながら、貴方達の購買リストは把握済み。どんな性癖や好みか等は全て知っているんですよ!と裏に含ませたつもりだったのだが……

 

「嗚呼……まさか上級会員だけでなく、テファたんの実物に会えるなんて……父上に自慢できるぞ!ついにテファたんの下着の着替えシリーズも……」

 

 慌てて、お付きの方がウェールズ皇太子の口を押さえて、トリップしている彼を正気に戻そうと肩を掴み揺すっている。

 

 そうか……このイケメン皇太子も、ちゃんと我々と同じ変態だったか!安心した、それなら友人になれるだろう。

 

 なる程、心の友……ソウル・フレンド?ガリア関連は、ソウル・ブラザー。

 

 僕の兄弟と友達は何処まで広がって行くのだろう……友達百人できるかな?は超えた筈だね!

 

 

 

第124話

 

 ウェールズ皇太子……

 

 原作とは随分違う、国を守る為なら泥を被れる覚悟を持った男だった。まさか、土下座をするとは!

 他の誰かに見られたら、問答無用で僕の首が飛んだよね?

 でもアレは、そんな脅しを含んでいない純粋な物だった……だから僕もできるだけの事をする。

 

 最悪、アルビオン王党派の前に出て話をするのも仕方ないだろう。

 あの覚悟に応えねばならないし、謝罪の意味も有る。

 アンリエッタ姫には勿体ない人物だが、逆を言えばあれ位の人物でなければアンリエッタ姫の暴走を受け止められないだろう。

 原作みたいに、ウチの閣下との婚姻同盟が、まかり間違って成立したら……彼女の対応は、僕が担当になりそうだから怖い。

 今、ウェールズ皇太子御一行は、宴までの少しの間休んで貰っている。

 

 僕にはやる事が出来た……

 

 幸せワルド計画の準備をしている、ロングビルさん達の部屋に向かう。

 

「ワルド殿、申し訳ないが出発は少し待って下さい。シェフィールドさんと合流する迄……少しやる事ができました」

 

 荷造りをしている彼らに声を掛ける。

 

「ツアイツ、どうしたんだい?アレかい、ウェールズが無理難題を言ってきたのかい?」

 

 ロングビルさんはアルビオン王家に隔意が有るから、言葉に棘が有るよね。

 

「計画を微調整します。王党派の動きに、予想を上回る手際の良さが有り我々も対応を変えます」

 

 皆、真剣な顔で集まってきたので、備え付けのテーブルについて話を始める。

 

「ウェールズ皇太子が、僕に協力を要請しにきた。ジェームズ一世が、ウチの閣下に親書を送り許可も出ているから……僕に拒否権は無い」

 

 ロングビルさんは、まだムッとしている……

 

「あのジジイ、搦め手できやがったか」

 

「手順を踏んだだけだよ。それにウェールズ皇太子は国の為、国民の為にと、僕に土下座までして頼み込んだんだ。僕も彼の覚悟に敬意を表して全面協力するつもり」

 

 皆、驚いたようだ!

 

「それは……凄い事ですな。しかし、周りが黙っていないでしょう。王族にそんな事をさせては!」

 

「お付きの2人も土下座してくれてね。焦ったよ、本当に……」

 

 あの時の事を思い出して、苦笑いをする。ロングビルさんは……鳩が豆をくらったような顔だ……

 

「ふっふん!まぁまぁな対応じゃないか……あのボンボンがねぇ」

 

 少しだけ、ウェールズ皇太子の評価を上方修正したのかな?

 

「それで、修正の作戦は……」

 

 先程、ウェールズ皇太子達と話した内容を伝える。

 

「私、聞いてませんよ!襲撃を受けて犯人を軟禁中だなんて!」

 

「そうです。そんな不埒者は処分しましょう」

 

 口々に傭兵の始末を申し出るが……

 

「彼らは王党派に裁いてもらうよ。まぁ、公開処刑だね。可哀想とは思うけど、返り討ちも覚悟の暗殺だろうし……」

 

 なっ、何だ!室温が急に氷点下に感じるのは……思わず身震いすると、首に柔らかな腕が回され、良い匂いが鼻腔をくすぐる。

 

 シェフィールドさん?

 

「ツアイツ、ただいま。大変だったのね?それで、大切な弟を襲った奴らは何処かしら?お姉ちゃんに教えて、ね?」

 

 声は優しい……でも背筋を伝う冷たい汗は何なのだろう?シェフィールドさんの腕を掴んで、そっと拘束を解く。

 

「お帰りなさい。お姉ちゃん。でもあいつ等は生贄として王党派に引き渡すから、駄目ですよ」

 

 凄い慈愛の籠もった目で僕を見てからギュッとその豊満な胸に僕をかき抱く。

 

「あらあら……ツアイツの悪巧みを教えて貰おうかしら?

じゃないと、お姉ちゃん、レコンキスタを潰しに逝きたくてしょうがないのよ。こ・れ・か・ら・す・ぐ・に……」

 

 ふがふがとオッパイを堪能できたから嬉しいんだけど、シェフィールドさんには二万程度の傭兵って無双できる範囲なんだ……

 

 なんてバグキャラ!

 

「お姉ちゃん、実は……」

 

 先程修正した案をシェフィールドさんに説明する。周りを見れば、ワルド殿とロングビルさんは居なかった……

 遍在殿だけが、大人しく座って居るなんて。僕を置いて逃げるなんて、酷くない?

 

「ちょっと、お願いしたい事が有るんだ。メンヌヴィルさん……

トリステインのアカデミーで新薬だか何かの実験台にされたらしく、容姿が酷く変わってしまってね。

できれば、カトレアさん達を治す前に、彼女で治療の練習をして欲しいんだけど……」

 

 騙されないかな?安っぽい偽善だけど……じっと僕を見詰める。

 

「ツアイツ……甘いわよ。メンヌヴィルは私でも知っている狂人。

助けたとしても、貴方に敵対しないとは限らないわ……でも、どうしても治したいなら、お姉ちゃんに任せて」

 

「うん。どうしても何とかしたいんだ……」

 

 完全な我が儘だけどね。

 

「ワルドは居るの?指輪のコピーを作らせましょう」

 

 逃げていたワルドを捕獲し遍在で指輪のコピーを作らせる。完全なコピーは、軽く虚無ったワルド殿でも大変だったらしい。

 蓄えた漢力の殆どを注ぎ込んで漸く遍在を作る!これで準備は整った。

 

 後は軟禁中のメンヌヴィルさんとの交渉だ!

 

 建前でなく、この実験で指輪を使用する問題を先に調べる事ができるだろう。

 シェフィールドさんとワルドズに僕で地下に軟禁しているメンヌヴィルさんの所に向かう……ウチにもこんな地下に牢屋なんて有ったのか!

 薄暗い石の階段を降りていく……地下に降り立ち、一番手前の部屋を覗く。簀巻きにされた傭兵が転がされている。

 隣を覗いても同じだ。4人づつ放り込んである。静かなのは、治療の後にスリープの魔法をかけているからだ。

 

 一番奥の部屋を覗くと、メンヌヴィルさんが拘束されながらもベッドに腰掛けていた。彼女にも、同様の処置がしてある筈だけど……

 

「その熱は貴族の坊ちゃんか?何だ、俺を生かしておくとは……それとも公開処刑かぁ?」

 

 随分と楽しそうだ!

 

「ドア越しで話すのも何だから、入っていいかな?」

 

「おいおい。俺は拘束されてるんだぜ!襲ったりはしないぜぇ」

 

 ガチャガチャと両手両足を拘束している金具を揺らしながらアピールする。

 

「いや、女性の部屋に入るからには許可を貰わないと」

 

 あっ……固まった!悪戯は成功かな?

 

 

 

第125話

 

 

 薄暗い地下の牢屋でメンヌヴィルさんと向かい合う。彼女は拘束されベッドに座っている。

 僕は両側にワルド殿とシェフィールドさんを配して対峙している。

 

「坊ちゃんの両脇の奴らは護衛かい?随分臆病じゃないか?」

 

 ムキムキの女性が、顔を赤らめながら悪態をつくのは可愛いものだ。

 

「護衛?違うよ、家族だよ。それとメンヌヴィルさんで実験したいんだ」

 

 実験って言葉を聞いて雰囲気が変わる。

 

「また俺の体で良いように遊ぶのか?畜生がぁ!」

 

 やはりトラウマなんだ……

 

「そう、実験だ。貴女の症状は水の秘薬の副作用……どんな薬か知らないけれど?

僕は義姉の病気を治したい。だから貴女で治療の実験をするんだ。恨んでくれても構わない」

 

「…………?治すだぁ?何を言ってやがる。俺だって散々やってみたが無理だったんだぞ!そんな簡単に……」

 

 メンヌヴィルさんの言葉を遮ってシェフィールドさんに話し掛ける。

 

「お姉ちゃん。お願い……」

 

「あらあら甘いわねぇ……女、動くとどうなってもしらないわよ?」

 

 抵抗しようとした、メンヌヴィルさんもシェフィールドさんの迫力に負けてか大人しくなった。

 いよいよ神の頭脳ミョズニトニルンたるシェフィールドさんの真骨頂が見れる……

 コピーしたアンドバリの指輪と水の指輪を左右の人差し指に嵌める。

 深呼吸して、メンヌヴィルさんの頭を挟み込むように掌を当てて目を閉じる。

 集中力を高めているのか、うっすらと額に汗が浮いてきた。

 

 メンヌヴィルさんは……苦痛なのか、歯を食いしばっている。

 

 長い……五分位か?その時、シェフィールドさんの填めている2つの指輪が鈍い光を発し始めた……

 

「ぐっぐががががっ……」

 

 小刻みに揺れながら苦痛に耐えている。余りに激痛だと、オルレアン夫人やカトレア様の治療は無理か?一際光が強くなり、コピー指輪が砕け散った!

 

「ふぅ……成功ね。アカデミーの秘薬とは、筋肉強化等の肉体のポテンシャルを高める薬みたい。

でも素の肉体が、そんな強化に耐えられないから……耐えられる肉体に変化したのね……」

 

「お姉ちゃん、有難う。でも随分痛がってた」

 

 ベッドに倒れ込んだメンヌヴィルさんを見る。そこには、普通の30代の女性が居た。若い頃は綺麗だったろう面影が伺える。

 多分、下級貴族のお嬢さんだったのだろうか……

 

「お姉ちゃんは大丈夫?」

 

 肩で息をしているシェフィールドさんを見て心配になり声を掛ける。

 

「平気よ……でもコツは掴んだかしら。次は痛みも少しは抑えられるわ。彼女は肉体的変化が大きかったから痛みも強かったのよ」

 

「メンヌヴィルさん。気分はどう?」

 

 だいぶ落ち着いた彼女に声を掛ける。

 

「何だって、あんな拷問をするんだぁ?やっぱり貴族の坊ちゃんだな。そんなに若い癖になん…で…?目が、目が見えるぞ?」

 

 はっとして、自分の両手を見ている。さっき迄のムキムキの手ではない、華奢な手を……両手で顔や肩、足等を触りまくり確認している。

 

「かっ鏡、鏡はないか?」

 

 どうしても確認したい事。それは顔なんだね。僕は鏡を錬金して彼女に渡した……

 

「これが、俺……見る影も無く中年のくたびれた顔だ……でも、記憶にしか残っていない本当の私の顔の面影が有るんだ……これが本当の私か」

 

 薬で失われた年数は戻らない。でも、仮初めの体よりはマシな筈だと思いたい。

 

「貴女で実験した事は謝りませんよ。それと傭兵、白炎のメンヌヴィルはレコンキスタに雇われて僕を襲い……そして返り討ちにあった。そうさせて貰います」

 

「くっくっく……あーっはっはー!甘いぜ小僧。だが、俺の過去を消してくれて何をさせたいんだよ」

 

 少し吹っ切れたのか、言葉は粗いが口調は少しだけ優しい?

 

「仮初めの姿の貴女が受けた暗殺の証拠が欲しい。後は、ご自由に……」

 

 メンヌヴィルさんはポカンとした顔をした、多分だがレアだろう。

 

「それだけかよ?野に放てば、アンタを付け狙うかもしれないぜ!」

 

 んー精一杯の強がり?TSメンヌヴィルさんも結構可愛いね。年上だのに失礼な事を考えてしまった。

 

「僕に必要なのはそれだけです。証拠と引き換えに金銭を要求するなら応じます」

 

 開いた口が塞がってない……

 

「狂人メンヌヴィルに随分な台詞じゃないかい?」

 

「傭兵メンヌヴィルは僕が殺したんです。貴女は……何と呼べば良いんですか?」

 

「……好意に甘えるぜ。証拠はアジトを教えるから捜索しな。そこに全てが有る……」

 

 そう言ってベッドに横になってしまった。

 

「体を休めて下さい。回復したら解放します」

 

 それだけを言って、シェフィールドさんを促し外に出る。

 

「坊ちゃん、俺に名前付けてくれよ。そうしたら雇われてやっても良い。回復したら、復讐したい奴も居るから……それが果たせたらだけどよ」

 

「アカデミー評議会議長ゴンドランですか?」

 

「そうか……今はそんなお偉いさんかよ。有難うよ、坊ちゃん」

 

 そのまま布団を被ってしまった。拘束具も縮んだメンヌヴィルさんでは、すっぽ抜けたようだ……もう逃げもしないだろう。

 

「良い名前を考えておきますよ。後で食事を運ばせますから」

 

 そう言って部屋から出る事にした。外に出ると、何やら手帳にメモをしているワルド殿が……随分大人しかったけど、何をメモしてるのかな?

 

「ワルド殿、何を?」

 

「流石はツアイツ殿!あの狂人をも口説くとは、参考になります!これが、私に足りない物なのですね。

難しい……これを本当にマスターしなければ、ジョゼット殿との薔薇色のニャンニャンは……」

 

 薄暗い廊下で妄想タイムに突入したワルド殿を置いて、シェフィールドさんと自室に戻る事にする。

 

「これから、アルビオンのウェールズ皇太子を招いた宴が有るのですが、シェフィールドさんって彼と面識有るのかな?」

 

「…………?アルビオンでは、流石に私も知られてないと思いますけど……何故ですか?」

 

 なら大丈夫かな?

 

「では、シェフィールドさんも宴に参加して下さい。テファも出ますし、折角ですから楽しみましょう!」

 

 これから大変だから、今夜位は良いよね!

 


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