現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第99話から第101話

第99話

 

 天空のアルビオン!

 

 王都ロンディニウムの一室にて、王と皇太子が顔を突き合わせては何かを手に取り見せ合っていた。

 

「ウェールズよ。このティファニアと言う女神が実在している噂を知っておるか?」

 

「何ですと!このハルケギニアの美を体現したフィギュアに実在のモデルがいるのですか?」

 

「そうだ!あの巨乳教祖であるツアイツ殿が在野の女神を見いだし自分の妻に迎えるそうだが……まぁ惹かれ合うのも自然の成り行きだな」

 

「そうですね。彼ならハルケギニア一番の巨乳女神を娶るのは当然でしょう」

 

「しかし、出自は平民らしくツアイツ殿も隠しているらしい……まぁ妾や遊びなら問題無いが側室ならば貴族が普通だからな。

配下の貴族の養子にして輿入れだな。この件は、ハーナウ家ではタブー扱いだ。これは仕方ないだろう」

 

 完全版ティファニアプリンセスバージョンの胸を押しながら話す父親。ひっくり返してスカートの中を調べる息子。

 

「父上!なんと、ぱっパンティを穿いてますよ」

 

「でかした!ウェールズよ、どれどれ……ほぅ、白か……やはり清楚なら白よの。流石はツアイツ殿、分かっておる」

 

 親子2人、フィギュアの下着のチェックに余念が無い……

 

「父上!明日のラグドリアン湖の園遊会にて、ツアイツ殿と会える手筈になっているのです」

 

「何だと!何故黙っていたのだ。これは国際的な問題だぞ!我が国にも、フィギュアを扱う商会を誘致したいのだ。

しかしギルド経由での申し込みは渋い返事ばかり。ここは、礼を尽くしワシが出向くべきだろう」

 

 既にフィギュアは服を着ていない。フィギュアの大切な部分には自主規制と書かれた封印シールが施されている。

 

 カリカリと爪で剥がそうとする2人。

 

「落ち着いて下さい。会場はトリステイン国内ですから、父上が出張るには問題が有ります。

私はアンリエッタ姫に伝手を頼んだのです。偶然を装い接触します。ここはお任せを……おっ!剥がれたぞ」

 

 ペリペリと胸の札を剥がしたウェールズ。

 

「なっハズレだと……」

 

 そこには、神秘のサクランボは無くハズレと書かれていた。

 

「ツアイツ殿、これは酷いのではないか?」

 

 ガックリと膝を付く2人。まだ、レコンキスタの存在には気付いていたが問題にはしていない親子だった……

 

「ウェールズよ。次はコレにしよう。ツンデレプリンセスじゃ!どう見てもガリアのイザベラ姫だな!好みの胸だが、ちと若すぎる」

 

「父上、次は猫耳メイドのソフィアたん!を外す訳にはいかないのです」

 

「「むむむむ………」」

 

「しかしガリアのイザベラ姫そっくりだが、ツアイツ殿は交流があるそうだ。トリステインとガリアの王族と懇意にしてるなら、何故アルビオンに来ぬのか……」

 

「我々もゲルマニアとは交流が少ないですからね。最近でしょう。ギルドや商人達の交流が始まったのは」

 

 2人は各々好きなフィギュアを取り出して、舐める様に鑑賞する。

 

「ゲルマニア貴族を見下していた部分が確かに我々に有りましたから……おお、耳と尻尾は脱着可能か!」

 

「しかし、ツアイツ殿の作品は凄いな。元気の無かったワシがビンビンじゃ!

こちらは、残念。流石にイザベラ姫を模した故か、服は脱げても下には彩色してるの。

スク水だったか……胸のネームは、東方の文字か?読めぬわ」

 

 哀れイザベラフィギュアは、ドレスを脱がされてスク水姿だ。胸には日本語で「いざべら」と書いてある。

 

「父上、ゲルマニアと正式に国交を結びませんか?」

 

 ウェールズ皇太子はジェームズ一世に割と本気で提案する。

 

「タイミングは今じゃな。国内には、男の浪漫本とフィギュアの話題で溢れておる。ハーナウ家を擁したゲルマニアとの国交に反対を唱える貴族は少ない」

 

「しかし、北方の連中の動きがおかしいです。使える間者が居ないので情報量が少なく詳細は不明ですが……」

 

「ツアイツ殿を調べようと送った彼らだな。尊い犠牲よ。しかしクロムウェル司教か……

ツアイツ殿と比べると何とも小物臭が有るな。美乳派か……笑わせるわ」

 

「父上!この着替セットとは、好みの衣装をチョイス出来ます。しかし……下着は上級会員のみ販売です」

 

「何だと!テファたんに黒の下着を着せられるのか?しかし審査が通らないのは何故だ!」

 

 ソフィアたんフィギュアに、付属のホワイトセーラー服を着せながら答える。

 

「乳を争いの道具にするな……我らは、エルフと通じたモード大公を処罰した。

それは、貧乳に染まった彼に罰を与える為に。エルフよりも、乳の嗜好に重きをおいて……」

 

 初めて2人の手が止まる。

 

「ワシも巨乳一筋として、乳の素晴らしさの一面しか見ておらなんだ。今なら住み分けを唱え、貧乳教祖のサムエル殿と共闘しているツアイツ殿の理想を理解出来る」

 

「サウスゴーダ家に、逃げ延びた娘が居る噂が有りましたね。探し出して復興させますか?それ位しないと、我ら親子をツアイツ殿は認めてはくれないでしょう」

 

 ジェームズ一世は、目を閉じて何も言わない。

 

「…………父上?」

 

「彼の、ツアイツ殿の教えをあの時に請えれば、また違う未来も有っただろう。しかし、一国の王が下した決断を翻す事は国の威信に関わる事なのだ。

仮にマチルダ・オブ・サウスゴーダを探し出せたとしよう。彼女は素直に謝罪と復興の用意が有る事を認めるか?」

 

「無理ですね。私の知っているミス・マチルダはその様な女性では有りませんね」

 

 深い溜め息をつく……

 

「国やプライド、しがらみに捕らわれる我らと違い、国を身分を越えて分かり合えるツアイツ殿は……

ワシには眩し過ぎるよ。ウェールズよ。彼と会えるならば、彼の人間としての本質を学べ。

アレはハルケギニアの在り方の根本を壊す男よ。出来れば、アルビオンに招きたい者だ。

ゲルマニアとの、国交準備は正式に許可をする。ウェールズよ。お前が担当し、推し進めよ!」

 

「はっ!」

 

 アルビオンの国家方針は、オッパイにより決まった!しかし、レコンキスタの動向は怪しく何時でも暴発する勢いだ。

 

 果たして改心した「謎のプリンスさん&そのオヤジキングさん」の思いは、ツアイツに届くのか?

 

 アンリエッタ姫の暴走による悪意無き妨害をかわせるのか?ウェールズ皇太子の漢度が試されるミッションは此処に発動した!

 

 

第100話

 

 ラグドリアン湖!

 

 何度も書くけど、ハルケギニア一番の景勝地で有り、モンモランシーの実家の近くの湖です。

 暴走特急アンリエッタ号の思い付き園遊会により、関係各所に思いっ切り迷惑をかけまくって何とか開催に漕ぎ着けました。

 ド・モンモランシ伯爵とヴァリエール公爵は疲労困憊なご様子……応接室に座り込み、疲労回復に努めている。

 

 2人の中で、元々僅かだったアンリエッタ姫の評価は急降下中です。

 

「あのアホ姫め……せめて一月は準備期間をよこさんか」

 

「全くだな。もし間に合わなければ……

お前やハーナウ家からの援助が無ければ、折角の水の精霊との交渉役を得た我が家の面子は丸潰れだ。何を考えているんだ?」

 

 お疲れ様な親父ズは、ソファーに深々と座りながら自国の姫に届かない愚痴を零している。

 

「お疲れ様でした。少し早いですが、招待客を待たせる訳にもいかないのでお邪魔しました。

それと、今回のアンリエッタ姫の思い付きはウェールズ皇太子からの手紙によるもの……早く会いたい乙女心の成せる迷惑でしょうか」

 

「「やっぱり色ボケか!道理で、馴れ初めの場所の湖の畔は念入りに整備しろとか怪しいと思ったわ」」

 

「ああ……ウェールズ皇太子が、アンリエッタ姫の沐浴を覗き見した場所ですね」

 

 ド・モンモランシ伯爵はいきなり立ち上がり

 

「ウチの領地を覗き見スポットにするなー!」

 

 吠えた……当たり前だね。

 

「これで、2人が結ばれて後世に記録が残った場合、周りを警戒せず真っ裸で沐浴を始める姫と、遠慮無く覗く皇太子のラブストーリー発祥の地になるからですか?

しかし、ちゃんと事実を隠した創作捏造になるから平気だと思いますよ」

 

「気持ちの問題だよツアイツ殿。仮に王宮のお抱え作家が捏造しても、我が家の記録には真実を残すつもりだ」

 

 ド・モンモランシー伯爵は、相当イラついてますね。

 

「ツアイツ殿もすまぬな。アンリエッタ姫のお願いなど聞く必要も無いのに。それに招待客を待たせるとは?君もその招待客だろう」

 

 僕は先日届いた手紙の件を話す。

 

「いえ、イザベラ姫からも自ら園遊会行くので逃げずに待っていろ!って言われまして。

それと、ウェールズ皇太子……どうせ、アンリエッタ姫をそっちのけで僕に接触してくる筈です。

まぁ偶然を装うとは思いますが……それにウチの閣下も参りますから」

 

「「自業自得だな!ウチの娘のフィギュアは造るなよ、分かってるよな?」」

 

「人気でますよ?イザベラ姫など、ガリアのトップアイドルですし」

 

「「大きなお友達の人気など要らんわー!」」

 

 子を持つ親の気持ちが身に染みたツアイツでした……

 

 

 場所は変わり、ガリア王国グラントロア執務室にて

 

 

 ジョゼフ王に報告をする、シェフィールドさん!

 

「我が主、これが上級会員の特製マントで御座います」

 

「うむ。しかし、蒼髭のジェイと偽名を使っておるのに何故ワシと分かったのだ?」

 

「恐れながら、お届け先がグラントロワ気付ジョゼフ王執務室なれば……」

 

「はっはっは!わざとだよ。それでもツアイツはマントを寄越したか……どれどれ」

 

 バサッとマントを広げ固まるジョゼフ王……

 

「こっこれは……謀ったな!このワシを騙したなツアイツ」

 

「まぁ!お似合いですわ。さぁさぁお召しになって下さい」

 

 いそいそとジョゼフ王のマントを脱がし始めるシェフィールドさん。

 

「いや……ワシは、マルチ&セリオのスク水を……こっこら脱がすな……ちょ、おま落ち着け……ワシは王様だぞ、ちょー」

 

 ガリア王家歴代のマントを脱がされ、特典マントを着させられる。んーと首を上に向け、しっかり金具まで留めてもらう……

 

「我が主、良くお似合いですわ。ほら皆さんもお褒めになって……さぁさぁ」

 

 黒衣の魔女が、周りに控える近衛と侍従にジョゼフ王を称えよ!と、笑顔で促す。

 

 しかし、ジョゼフ王のマントの内側の刺繍は……

 

 花咲き乱れるシェフィールドさんのウェディングバージョンであり、お姉ちゃんの為にツアイツが丹誠込めて制作した逸品だ!

 

 これを誉める=困惑しているジョゼフ王の意思は無視

 

 これを誉めない=ヤンデレ全開中の黒衣の魔女に喧嘩を売る

 

 この女が、ジョゼフ王にお熱なのは皆が知っているし、ジョゼフ王も困っているが嫌がってはない。つまり男女のアレだと割り切る事にする。

 

 パチパチと誰かが拍手をした途端に、皆が一斉に拍手喝采を贈る!

 

 パチパチパチパチ!

 

 かなり広い執務室内に響き渡る拍手にシェフィールドさんはご満悦だ。

 目がグルグル状態のヤンデレMAXシェフィールドに逆らえる者など、ジョゼフかツアイツ位しか居ないのだから、皆さん保身に走ったのは仕方ないのか?

 

「嗚呼……これが女の幸せなのね」

 

 シェフィールドはジョゼフ王の傍らに立ち報告そっちのけで悦に入っている。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ミューズがワシを好いている事は気付いていたが、此処まで直接的に感情をぶつけてくるのは初めてだ!

 しかしツアイツ……ガリア王にこの仕打ちか?人の事は言えぬが、貴様封建制度を舐めてないか?

 

 面白い奴め。

 

 貴様が、シェフィールドを取り込んでしまった事は既に調べが付いている。ワシを侮るなよ。

 男の浪漫本から始まり会員制にフィギュア、それらの関連グッズを見ても既に貴様しか、ワシの積年の悲願を叶えられる者など……

 ハルケギニア中を探しても居ないだろう……

 レコンキスタなど、もう飽きたわ。さっさと終わらせて我が前に来るが良い。

 

 それと……ミューズを何とかせい!

 

 無能王と陰口を叩かれ、粛正の悪魔と畏れられているこのワシが……まるで、らぶこめ?か。

 貴様の作品の……それの主人公が如く周りの目線が生暖かいのだ!

 

「こっこら、ミューズ!少し離れんか」

 

 そこっ!何をほのぼの目線を送ってるのだ?

 

 無能王と陰口を叩かれていたジョゼフは、王宮内で微妙な評価を受け始めた……

 そして無能王の娘と罵られ魔法の苦手なイザベラは、ツンデレアイドルとして確実に勢力を延ばしている。

 

 新生ガリア王国の建国は直ぐそこだ!

 

 

 

第101話

 

 

 ガリアのツンデレアイドル現る!

 

 イザベラ姫が、ラグドリアン湖に両用艦隊所属の大型船で到着する。今回は正式訪問の為、王族専用の戦闘大型船だ。

 タラップが降りると、黒いマントの一団がフライで周囲に降り立ち警戒する。勿論、彼等はガリアが誇る精鋭イザベラ隊だ。

 マントの内側の刺繍もツンデレプリンセスバージョンが施されている。

 

 タラップに蒼い髪の美少女が現れる。

 

 今日は白を基準としたショートライン。裾はふくらはぎ迄の丈の短いドレスだ。

 大き目のコサージュをあしらいどちらかと言えば小悪魔的魅力を演出している。

 実はこのドレスは、フィギュアが着ていた物を原寸に仕立て直しツアイツから贈られた一着だ。

 ツアイツは、婚約者達よりイザベラに数多くの贈り物をしていた。それも毎週だ!

 

 ツアイツ的には、ジョゼフ王よりイザベラ姫にガリアでの地位を高めようと画策していたのだが……

 周りはすっかりソウルブラザーは、ツンデレ姫の魅力を高めるアイテムを沢山届けていると思っている。

 彼女も悪い気はせず、出来も良いので多用しているが、今日はマズかったかもしれない……

 

 周りから歓声が上がる!

 

「おい!アレって男の浪漫フィギュアのツンデレプリンセスの小悪魔バージョンだろ?」

 

「噂通りモデルはイザベラ姫なのか……嗚呼、罵られたい踏まれたい」

 

「お前、性癖だけは上級会員並だな……まさかテファたんも実在のモデルが居るのか?」

 

「知らないのか!我らが教祖が在野の女神を探し出したらしい。孤児で平民らしく、この話はタブーなんだが実在しているぞ」

 

「流石はツアイツ殿!巨乳女神もゲット済みかよ……羨ましいな」

 

 モブな貴族達が、イザベラの元に殺到する!

 

 しかし、強力な公式ファンクラブ「イザベラ隊」がそれらを寄せ付けない。

 

 公式ファンクラブ会員と一般ファンの攻防が始まる。

 

 増援として、こちらも公式ファンクラブ「ツンデレプリンセス隊」「蒼い髪の乙女隊」が参戦し一般ファンは周りに押しやられた。

 

「お前ら、ここは他国だ!程々にしな。周りの連中も今日の主役は私じゃないんだ。空気を読みな!」

 

「「「うぉー!ISABELLAイ・ザ・ベ・ラさまー!」」」

 

 投げ遣り気味にイザベラが手を振る。既に会場はイザベラコール一色、コンサート会場に来たみたいだ!

 

 アウェーなにそれ?美味しいの?

 

 

 続いて、アルビオンが誇る大型戦艦ロイヤル・ソヴリンが着水。

 プリンス・オブ・ウェールズこと、ウェールズ皇太子が小船に乗り移り岸辺に向かう。

 こちらは、アンリエッタ姫がいそいそと迎えに飛び出そうとするのをアニエス隊長が押さえていた。

 

「姫様、自重して下さい。落ち着いて!」

 

 ウェールズ皇太子を歓迎するのはアンリエッタ姫のみだ……哀れウェールズ。

 次に、ゲルマニアから、アルブレヒト三世の名代のモブ貴族が地味に現れた!残りのめぼしい招待客は……

 

 クルデンホルフ大公国からベアトリス・イヴォンヌ・フォン・クルデンホルフとお供の三人衆と空中装甲騎士団が竜籠にて到着。

 

 このベアトリス姫殿下……

 

 膝まで有る金髪ロングを白い髪留めでツインテールにしたペッタンコちゃんだ!

 原作ではテファに色々意地悪をしたが、最後は和解した我が儘で自尊心の強い小柄な少女だ。

 

 彼女の目的は1つ。

 

 嫌われ者だったガリアのイザベラ姫を一躍トップアイドルに押し上げた秘密を探る事。

 美少女振りなら負けない自負が有るが、登場時点で敗北感が溢れてしまった。あの強力なファンクラブを私も欲しい。

 必ず彼女のブレインを探し出す!彼女は心に誓った。

 

 そして一番怪しいのが、ゲルマニアの貴族。ツアイツ・フォン・ハーナウ!

 

 自他共に認める巨乳派教祖で有りハルケギニアに巣くう変態の親玉!なるべくなら近寄りたくないと思っている。触られたら妊娠しそうだ!

 

 彼女の中では、まだ見ぬ彼は、チビで小太りな油ギッシュな眼鏡だった。彼女のイメージは貧困と言うしかない。

 まぁ空中装甲騎士団は、ツアイツを知っているのだが……当然初級会員でも会報を読むから情報は主の少女より詳しかった。

 しかし、ベアトリスが毛嫌いしているので言い出せない。

 

 

 最後はロマリアだが……

 

 急な催しで有り国内の地盤固めの方を優先した教皇ヴィットーリオは、腹心であるバリベリニ助祭枢機卿を送った。

 彼は原作でもシャルロット即位に伴いガリアの宰相になった程の人物。特に問題は無かった。

 それに、今回の話では何も活躍しないから……取り敢えずモブとして園遊会に参加した。

 

 園遊会自体は、滞りなく進んでいる。

 

 本来の主役たるモンモランシーには、ド・モンモランシー伯爵家の代々伝わる家宝で身を包んでいるし、ドレスは最新の物をプレゼントした。

 水の精霊を実際に呼び出した時のどよめきも凄かったので、ド・モンモランシ家としての面子は保たれただろう。

 

 問題は、その後の宴会だ。

 

 ガリアのトップアイドルと、数々の名作を世に送り出している巷で噂の巨乳派教祖!

 ゲルマニア貴族のツアイツ・フォン・ハーナウが参加するとなれば騒動が起きない方が可笑しい。

 

「男の浪漫本ファンクラブ・変態と言う名の紳士の集い」の会員も多数参加するこの園遊会で、2人に接触を持ちたい人々は多数居る。

 

 ツアイツも自分が居ては騒ぎの元だと、モンモランシーのお披露目の時は席を外していた。

 当然、水の精霊との接触を避ける為だが、廻りの警備は安心し彼の配慮に感謝した。

 

 しかし、その後の宴会には出無い訳には行かない。

 

 今回は、最強の守護者シェフィールドさんはガリアのジョゼフ王の下に報告に行っておりワルド&カステルモールの変態コンビはサビエラ村に向かっている。

 

 彼の直属の護衛は居ない……有るのは、牙の腕輪と魔力の指輪、それと魔人召喚用の木札だけだ。

 

 しかし、イザベラの護衛をしている公式ファンクラブ「イザベラ隊・ツンデレプリンセス隊・蒼い髪の乙女隊」の皆は、ツアイツと懇意にしているので平気だろう。

 

 この遊園会で一番の護衛を侍らせているのは間違いなくイザベラだ!

 その彼女が寛ぐテーブルに一番にやってきたのは、ベアトリス姫殿下。

 護衛のファンクラブ会員も、ツンデレの素養を持つ美少女には、当然道を空けた!

 

 しかし、護衛の空中装甲騎士団は二の足を踏んでいる……

 

「イザベラ隊」三隊ある公式ファンクラブの中で、彼女の名を冠するこの部隊は、ガリア中の武闘派の中から選りすぐった所属を超えた連中だ!

 

 この威圧感に適う者は一流だろう……その時、空中装甲騎士団を威圧している連中にイザベラが声を掛ける。

 

「お前ら誰彼構わず威圧するな!」

 

 ザッと左右に分かれるイザベラ隊。見事な統率力だ。

 

「掛けなよ。何か話が有るんだろ?ベアトリス姫殿下」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 くっ……駄目だわ。最初から呑まれてしまったわ。大国の姫って割には、言葉使いが悪いけど……勝てる気がしない。

 

「しっ失礼しますわ。噂のアイドル、イザベラ姫とお話したいと思いまして……」

 

「アイドルかい?好きでなった訳じゃないよ。

アンタもアイドルになりたきゃツアイツに部下を派遣するんだね。後は勝手にやってくれるよ」

 

「ツアイツ殿?ツアイツ・フォン・ハーナウ殿ですか?」

 

 イザベラ姫は、意地の悪い笑みを浮かべ「そうさ!あの変態に感化されちまったのさ」何処までが本気なんだろう?

 

 周りの護衛騎士団、イザベラファンクラブ会員を見る……彼等は一様に頷いている。

 

「そっそうですか?あの悪い噂の絶えない、怪しい彼にです……か……」

 

 ソウルブラザーを悪く言われた彼等の無意識に漏れた殺気に反応し、ベアトリスが固まる。

 

「オラッ!小さな女の子を威圧するんじゃないよ!」

 

 何処からか取り出したワイン瓶を投げつける。

 

「今日のツンはワイン瓶か……上手いことやりやがって」

 

「アイツ、ワザとだな。俺にもブツけて欲しい」

 

 危険な単語を聞いたベアトリスが、違う意味で固まった。これが、ツアイツ殿の洗脳効果……絶対の忠誠を誓わせるのね?

 

「どうした?これ位、御せないとアイドルにはなれないよ」

 

「………失礼しました」

 

 無理、無理よ……お父様から預かっている空中装甲騎士団をあんな変態にする訳にはいかないわ。

 しかし、クルデンホルフのアイドル・ベアトリスになりたい……未来のアイドルベアトリス姫殿下、悩みながら退場!

 

 現トップアイドルイザベラの圧勝だった。

 


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