現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第7話から第9話

第7話

 

 原作キャラの父親から果たし状?(ファンレター)が来たよ!

 先日キュルケちゃんを喜ばせる為に見せてしまった寸劇が、各方面に波紋を呼んでいます。

 現代人ならば普通に暮らしていれば、テレビドラマや映画の漫画や小説等、少し興味が有れば古典芸能だって見る機会は有る。

 僕だってそれなりに映画やドラマも見た。

 そして製作側の苦労や努力は分からないが、結果としてのストーリーや演出に感動もした。

 

 つまり結果どうすれば面白くなるか、ビックリさせられるかを知っている。

 

 この世界では斬新だったり革新的だったり奇抜だったり……

 勿論、このハルケギニア風にアレンジは、しなければならないから多少の文才は必要だろうが、この世界では比べ物にならないだろう。

 全部前の世界のカンニングをしている訳だから。義務教育も受けているのだから、それなりの作品は作れてしまう。

 

 そして暇有り金有り見栄っ張りな貴族が、ウチの両親やツェルプストー夫妻が自慢しまくる僕らの(主演女優キュルケちゃん)劇を見ていない事が悔しいらしく、パーティへの招待を兼ねてウチの屋敷でも上演してくれないかとのお誘いを受けだした。

 流石に両家より格下クラスの貴族たちは無理強いしないが、同等以上な連中やウチの商売のお得意様には断り辛い。

 てか、母上とツェルプストー夫人がノリノリになってしまい後には引けない状態です。

 そして現在、売れっ子作者の缶詰状態と同様に、何故かツェルプストー辺境伯の屋敷にて新しい脚本を書いています。

 

 おかげで毎回恒例のパフパフからの目覚めと挨拶が出来ません。

 格上の相手に我が家の巨乳専属メイドを連れてくるのは失礼らしく、ナディーネ達はお留守番。

 父上は政務の為に先に帰宅してしまい、僕と母上に割り当てられた無駄に広く豪華な部屋で執筆に励んでいます。

 注意しなければならない事はブリミル教に失礼の無い様にする事、他の貴族のプライドに傷を付けない事。

 ヴァリエール家には既に思いっきり茶化してしまったが、敵対されても既に敵対してるから関係ないかな……

 

 烈風のカリンは恐ろしいけど、子供には酷い事しないよね?よね?

 

 因みにロミオとジュリエットは、此方では実際にヴァリエール家からお嬢様を掻っ攫ったツェルプストー家の若き貴族の名前に変わってしまいましたとさ。

 ヴァリエール家の古傷をモロに抉ってないかこのタイトル?

 

 死亡フラグダヨネガクガクブルブル

 

 この水のゴーレムを使った演目は既に5回程上演し、しかも演出の補助にまさかの水と土のスクエアメイジが二人も付いてくれてます。

 こんなお遊びに付き合わしてしまい本当に申し訳ないと恐縮しあやまったのですが、なんと僕らの劇をみてファンになってくれたらしく態々、僕の拙い?

 魔法制御を補助し、序に近くでこの劇を見たいと言ってくれました。

 

 嬉しいけど後には引けなくなってない?お忙しいのでは?とやんわり断ろうとしたげど金持ち貴族の三男と四男なので平気、しかも給金もいらない。

 実家がツェルプストー家とハーナウ家と繋がりが出来るだけでも十分だそうです。お二方ともそれだけの腕があるなら引く手数多だろうが、政略結婚の駒に使われる前に好きにしたいみたい。

 名前は美形の水メイジがユリウスさんで、ちょっと残念なポッチャリ体型の土メイジがアルミンさん。

 共に実家は子爵家で、後で調べて貰ったら特に政治的思想も立場も経済状況も問題なさそうです。

 嬉しい事に空いた時間で土の魔法のレクチャーをしてくれます。

 

 そして元々素養が有った(ハズの)土の魔法が使える様になり、ゴーレム作成・制御と錬金の多用でラインになれました。

 後でこの話をした時のリッテンさんの落ち込み振りは凄まじく、家庭教師を辞めると言い出し必死でとめました。

 

 考えればコモンマジック以外教わってないや!

 

 数回の公演を無事、終了し最新作「シンデレラ」を書き上げ、ようやくツェルプストー家を後にする事が出来た。

 この間約2ヶ月……長かった。

 

 因みに「ロミオとジュリエット」及び「シンデレラ」は小説化して出版しました。

 この2冊は噂の劇を見れなかった貴族の子女に大人気で特に恋愛色の強い作品であった為、生産が追い付かない程でありハーナウ家にそれなりの富と、僕のお小遣いをもたらしてくれた。

 これでシエスタスカウト計画の下準備が出来たかな。しかしとんでもない弊害が襲ってくるのを僕は気が付かなかった。

 

 発端は何度目かの公演で人手が足りなくなり、メイド3人娘を呼び寄せ手伝って貰った時の事。

 3人とも巨乳で且つ最近導入したバストアップ体操により確実に美乳化しつつある。

 そんな彼女達が人目を集めるのは当たり前であったが、流石に僕の専属メイドに手を出す奴等も居なかった。

 

 裏方繋がりでお呼ばれした貴族のメイド達や、同行しているキュルケちゃんのお世話係のメイドさん達と話す事も当然有る訳で……

 

 彼女達がいかに僕から高待遇を受けている事。

 僕がいかに多様な才能を発揮し、魔法も既に水のトライアングルで土のラインで素晴らしい事。

 彼女達に不貞を働こうとしたら僕の名を出してまで良いと貞操を守ってくれる事。

 そして最悪なのがどんな貧乳でも巨乳・美乳へと導いてくれる事。

 

 彼女達3人を見て説得力の有ったこの事は、ハルケギニアの巨乳の導き手として、噂は爆発的な勢いで広まっていった。

 そして使用人の噂は何時かは主人である貴族達の耳にも入る訳で……耳聡い貴族達からその秘術の伝授もお願いされだした。

 

 しかしウチにはチッパイLOVEな父上がいる訳で、僕に繋ぎを取りにきた貴族をあらゆる手段で悉く断っていった。

 父上からすれば迷惑以外の何物でもなかった事だろう。

 

 暫くして書斎に一人で呼ばれ懇々と説教された、自重しろ……と。

 

 ゲルマニアでは噂は落着いたが、とある恐妻家とツンデレな娘達がいる貴族にまで届いてしまったからさぁ大変!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 某恐妻家のツンデレ娘の父親である時ヴァリエール公爵は怒りそして悩んでいた。

 

 最近ゲルマニアから流れてきたハーナウ家から発行された小説の内容についてで、これは我がヴァリエール家に対し宣戦布告に近い古傷を抉る内容だった。

 しかもこの話は腹立たしい事に劇として、既に多くの貴族達から賞賛されている現状だ。

 確かに配役を置き換えて読めば素晴らしい内容だし、劇も水ゴーレムを使った斬新な演出の物らしい。

 何人かのトリステイン貴族も見ており、野蛮なゲルマニアにしてはまぁまぁだと言っていた。

 

 プライドの高い彼らのまぁまぁと言う事は、素晴らしかったのだろう。

 

 なのでこの作者であり演出家である、ハーナウ家の跡継ぎツアイツについて細かく調べさせた。

 いまだ8歳とは言え既に水のトライアングルで最近土のラインになったそうだ、魔法に関しては一流なのだろう。

 この先順調にいけばスクエアにも届くかもしれん。

 

 憎っくきツェルプストーの小娘とも仲が良いらしい。

 

 是非ともそのまま繋ぎとめて欲しいものだ。此方に略奪愛を仕掛けてこない様に……そしてゲルマニア貴族にしても珍しい変わり者だとか。

 平民に優しく気さくで、自分のメイド達には何か有れば自身の名前を出しても良いと言うお人好し振りだ。

 

 トリステインでは考えられないな、平民に舐められるだろう。

 

 ここまでなら才能は有るが平民上がりの貴族らしく、平民に甘いと低い評価をされるだろう。

 貴族絶対のハルケギニアでは、下手をすれば異端として痛くない腹も探られそうだな。

 だが、奴はそれを劇の中で、二人の仲を取り持つブリミル教の司祭を登場させる事でかわしている。

 

 真実ではそんな事はしてないが、奴が真実の愛を守る善人の司祭として登場させ、実際に自分の領地の司祭に許可を取っているらしい。

 汚職まみれの奴らからすればイメージアップを図れ、損はないし多額の寄付もいっているのだろう。

 

 名声と金をチラつかされたら断れまい。

 

 油断がならないな。本当に子供か?裏に誰か居るかとも思って調べさせたが、なにも出てこなかった。

 そして既に3人の専属巨乳メイドを持つ、自身の考案した体操や食事療法を駆使した巨乳の担い手とか。

 実際にかの家のメイドは巨乳・美乳が多く後天的に巨乳化したのは事実らしい。

 それと僅かながら胸のささやかなメイドも居るが、それらは全て父親付きのメイドになっている。

 彼女らは可愛そうにチッパイLOVEの父親に見初められ、巨乳化の話から外されてしまったのだろう。

 なりふり構わず、息子に接触を図る奴らを葬った事をみても高確率で巨乳化するのであろうな。

 

 愚かなロマリアめ。

 

 奴こそ神の奇跡の担い手。伝説のバストアッパーだろう。なんとしても接触を図りたい。

 そして巨乳好きの、しかし浮気の許されない私の為にカリーヌを巨乳・美乳化して欲しい。

 我が家の構成を見て悟ったのだが、豊かな胸の婦女子は心優しくなり、胸が貧しいものはキツイ性格になる。

 妻と長女と末の愛娘と次女を比較すれば分かるのだ、早急に対応しないと大変な事になると……

 

 しかし敵対しているしかも他国の貴族、とうしたら良いものか。

 

 いっそ巨乳を信奉する一貴族として、腹を割って話すのも手だろうか?あっこらエレオノール、父の手帳を見てしまったのか?

 

 「母上に報告します」とか無表情な顔で出て行かないでー!待ってくれー、アーッ!

 

 

 結果一ファンとして手紙をしたためる事とした。

 

 

 拝啓、貴方の素晴らしい本に感動しました。実は我が妻と二人の娘の為に先生のお力を……

 

 そして何故か手紙は無事に、ツアイツに届きました。

 

 

第8話

 

 ファンサービスに命を掛けるか?

 

 おはようございます、ツアイツです。

 

 今朝は久々に幸せなぱぷぱぷ状態から気持ちよく目覚め朝の挨拶をしています。

 エーファ嬢が添い寝専用下着改でギュッとしてくれています。

 この下着どんどん布の面積が減っていませんか?サービスですか?そうですか。

 

 執筆活動も落ち着き劇の方も魔法関係はアルミンさんとユリウスさんに任せ本職?の声優達も教育し僕の手からやっと離れました。

 暫くはリッテン先生と魔法の訓練に勤しみ地力を付ける事に専念しようと考えていましたがとんでもない手紙を携えた密使が来ました。

 

 

 拝啓

 

 貴方の素晴らしい本に感動しました。我が妻と二人の娘の為に先生のお力をお借りしたく筆を取った次第です。

 聞けば先生は巨乳の担い手として畏敬と尊敬を集めていらっしゃる。

 そこで貧乳で嫉妬深いしかも凶暴な妻とまさに今が婚期なのですが貧乳でキツイ性格の為中々縁談の纏らない長女について先生のお力で胸を豊かに情と思いやりも豊かな女性として教育して欲しく…

 勿論新作の執筆でお忙しいとは思いますがこれもブリミル様と巨乳の神の思し召しと思いなにとぞお力をお借りしたい所存であります。

 私自身も貴族としての雑務に追われ中々時間が取れませんが一度調整をし直接先生のお話を聞きしたいと願います。

 過去に誤解が有ったかも知れませんがここは巨乳を愛する独りの先生のファンとして宜しくお願いします。

 

 

 

 ウチもそれなりの防諜機関を持っているが、それを掻い潜り届けにきた目の前に跪く男に手紙を読み終えてから声を掛けた。

 

「この手紙の内容は知ってるの?」

 

「はい。内容を理解して頂いた上でお返事を貰ってくる様に命令されています」

 

「うちはツェルプストー家と懇意にしてるので政治的にもそちらに手を貸すのは不味いんだけど」

 

「同好の士として過去の事は水に流して協力をお願いしたいと申しておりました。またお礼に関しては最大限努力するとも聞いています」

 

 原作を知る者としては最早手遅れとも思うのだが……あのヴァリエール公爵が巨乳信奉派で有るなら協力はしたい。

 しかし母親と長女と三女には会いたくは無い。さてどうするか?

 

「私としても同好の士であるヴァリエール公爵のお力にはなりたいと思います。

しかし立場が許さない。なので苦肉の策としてどこぞの密偵が我が屋敷に忍び込みこの秘伝の書の写本を盗んでいった。

そういう事にして下さい、貴方に泥を被せてしまいますが……」

 

 

「わが身も巨乳に捧げた身。

ご心配なく。若も烈風の騎士姫などと言う貧乳の小娘に籠絡されて……

幾ら若き時に共に活躍し数々の武功を立てたとは言え当時でさえ男装し男と見間違う胸をしていれば将来性の無い事などわかろうに。

しかも結婚し尻に敷かれねば今頃はトリステイン一の巨乳屋敷になっていたかもしれぬ物を……おいたわしや」

 

 なんか危険な単語がデテキタヨウナ?

 

 ボクハシリマセンヨ……

 

「同士にお伝え下さい。巨乳への道は険しく日々の努力が実を結ぶのです。その奥方とご息女に毎日努力する様に本当に伝えられますか?」

 

 

「あの胸がスカスカでプライドの高い女達では苦労はすると思いますが必ずその様に伝えます」

 

「私見としては手遅れと思いますし胸が豊かになっても性格は変わらないとも思いますが頑張って下さい」

 

「……有難う御座います」

 

「それとこれはまだ世に出してない私の新作ですが私のファンに渡して下さい」

 

 そう言って新しい境地を開くべくハルゲニア風に金持ちの貴族が下級貴族や平民の美しい娘達を引き取り自分好みの淑女に教育していく。

 やがてその中の1人の娘と真実の愛に目覚める「マイフェアレディ」ハルケギニア版を手渡した。

 

 しかし密偵は私もこの作品を早く読みたいが主人の手に渡ればそれは難しいだろうと寂しそうに呟いた。

 なので風のスクエアが知り合いに居るなら本を持って偏在して貰い本物を主人に渡せば良いのでは?と教えた。

 

 「その発想は無かった。流石ですな」と酷く驚いてそして嬉しそうに去っていった。

 

 

 しかしプライドの高そうなあの二人が素直に話を聞くとは思えないのだが……

 原作では貴族の中の貴族みたいな厳しい感じのオッサンだったが実情は恐妻家で浮気も許されないなんで悲惨だな。

 今度18禁本でも書いて送ってあげようと心に決めた。

 

 

 すっかりその事を忘れていて3ヶ月が過ぎた頃に先の密偵が再び現れた。

 所謂結果報告とお礼だがやはり結果的に最初に夫人にお願いしたら半殺しにされ長女にお願いしたら野良犬を見る様な目で見られ暫く口も利いて暮れなかった……と。

 しかし使用人特に若いメイド達には好評で欠かさずに行っていた者達は見事に巨乳化したそうです。

 だかヴァリエール公爵はこれを他に広めて尊敬を集めるのは自分では無いと使用人達には固く口止めしこの写本もお返しすると今日お持ちしたと。

 尚、その実績をみて内緒で励んでいる夫人と長女だがいまだに効果は確認出来ないと。

 

 写本の出所は口が裂けても教えないので此方に迷惑にならない様にする。

 それとお礼の件だが金銭的の物は無粋で有りお互い不要と思うが先生程の人に送るものが思い浮かばずとは言え次女は巨乳でお淑やかに育てたが体が病弱だし長女・三女は(胸的に)失礼に当るのでもしも希望が有れば教えて頂きたいと。

 

 確かに結果で見れば屋敷は巨乳だらけになったが夫人と長女には効果が無いからなぁ……

 

 逆に変に実績を作ってしまったから他に何か方法が無いのかとあの二人に目を付けられたくないな。なので丁重に辞退する旨を伝えてもらいました。

 流石は巨乳の担い手様は謙虚でいらっしゃると職場環境の向上した密偵は喜んでいた。

 

 やはり原作キャラは原作通りなんだな……としみじみと思ってしまった。

 

 

 

 キュルケちゃんも今は素直でお淑やかだが何れ微熱になっちゃうのか……少し残念でならない、無常だ。

 

 やはりと言うか流石は仇敵同士互いに情報を集めていたのだろう。

 久々にツェルプストー家に遊びに行くとツェルプストー辺境伯より最近ヴァリエール家から接触が有っただろうと言ってきた。

 隠す必要も無いので夫人と長女の巨乳化と性格改善の相談を受けたが成功せずしかし試しに使用人が実施したら効果が出過ぎたので秘術は念入りに口止めし渡していた写本を返してきた。

 あれは同好の士だが貧乳の妻と娘に蔑ろにされている寂しい男だと。

 

 

 それを聞いたツェルプストー辺境伯は腹を抱えて自分のライバルの実情を笑い同時に同情した。

 我が一族でもあの長女にちょっかいかける猛者は居ないだろう。序に三女も体型・性格は母親譲りだとも教えておいた。

 しばし沈黙してからツェルプストー辺境伯はヴァリエール公爵に対し少し歩み寄っても良いかな?と言い今度二人で会ってみようか?と提案してきた。

 

 折角領地は隣り合っているのだし一度ちゃんとした協定を結び双方の領地から商人の行き来きを奨励したり関税を撤廃したりしたらお互いの領地が栄えるのではないかと進言してみた。

 

 

 どのSSでも書いてある事だし何の気なしに言ったのだがツェルプストー辺境伯はじっと僕を見詰め考え込んでいた。何か変な事言ったかな?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 こやつには何時も驚かされる。

 宿敵ヴァリエールから接触が有ると報告が有りどうした事かと聞いてみたらとんでもない事をさらりと言いおった。

 まぁ私は巨乳も貧乳も広く愛せる男だが彼の環境は余りにも悲惨で同情を禁じえない。

 長きに渡り反発していた我等を乳だけで取り持とうとしてると思うと腹の底から笑えるわ。

 ただ油断がならないのが直ぐに協定や貿易の件まで話を振る強かさだ。

 

 両家を取り持ちハーナウ家にも利益が出る方に誘導してないか?本当に8歳児か?

 

 こやつがハーナウ家を継げばさぞ退屈しないだろうな。それより我が娘とくっ付けた方が面白いか?

 キュルケも満更ではないようだしハーナウ家と縁が強くなれば安泰だ。

 

 それだとツェルプストー家を継ぐ跡取りを作らないといかんな。認知している子等から優秀なのを引き取るか新しく作るか。

 

 ふふふ。久しぶりに子作りに励んでみるか。本妻、側室、妾と居るから忙しいな。

 

 ヴァリエールめ羨ましがるだろうな。ははは愉快だ。

 

 

第9話

 

 シエスタスカウト計画発動

 

 おはよう、ツアイツです。

 

 午後からはツェルプストー辺境伯とヴァリエール公爵との面談について打ち合わせです。

 流石に長きに渡る因縁は両当主が直ぐに会おうと言っても周りが許さず調整に調整を重ね今まで掛かってしまった。

 

 

 僕の方は何度か密偵を通じ手紙での遣り取りをしている。

 大貴族なのに実情は妻と娘に虐げられている可愛そうな親父なので最近書き始めた18禁本を既に何冊か贈りその感想と近状報告をまめに送ってくれる文通仲間だ。

 長女は相変わらず婚約者と長続きせず魔法学校を卒業後はアカデミーに進むらしい。

 次女は体調が思わしくなく予断を許さない状態らしい。あの乳は何とかしてあげたいが正直手段が無い。

 

 三女については何故かコメントを避けている。アレか?もう爆発魔状態なのかも知れない。

 

 こう書き連ねると本当にヴァリエール公爵って大変なんだなー。

 どれか一つ位はお手伝いしたいけど……どれもハードル高いよ。

 さてツェルプストー辺境伯との話し合いだがそろそろ我が父上にも参加して貰い具体案に入っていった。

 概要は互いに隣接している土地に新たに商売の基点となる街を作り各自の領地より商人を配置し無関税の商品を取り扱わせる。

 もともと関税の高いトリステインの他の領地を経由にて入って来るより無税で直接入ってきた方が当然安い。

 先ずは小口取引から様子をみて商品が捌けそうなら取引量を増やしていく。

 商人達には関税の無い代わりに販売量に低額の税金を掛ける。

 

 入ってくる前から税金が乗っかり高い商品になって売り辛いよりは安く大量に捌け儲けに比例した税を払った方が良いとわかると出店数も取引量も増えそこに集まる人をターゲットにした二次商売も盛んになる富のスパイラルが出来るはずだ。

 最初はゲルマニア側の方が売りでトリステイン側の方が買いが多いと思うけどね。

 

 生産力とかの関係で……

 

 ゲルマニア・トリステイン両政府には戦争の火種に成りそうなツェルプストーとヴァリエールの仲が少しでも落ち着くなら構わないとお墨付きを貰った。

 実際何度か小競り合いの原因になっていて少なくない戦費が掛かってたので政府としても損な話ではなく上手くいけば売り上げの何割かは税として上納されるのでそれはそれで美味しいのだ。

 序に言えば許可だけ出せばあとは勝手に進むので自分たちの負担も発生しないしウハウハだ。

 両現政府公認は誘致する商人に対しても良い安心材料になるだろう。

 そしてついに具体的な調印を結ぶ為にツェルプストー辺境伯と父上と僕でヴァリエール公爵邸に行く事に。

 僕は行きたくは無かったのだが発案者で有り多分ヴァリエール公爵と一番仲が良いので同行する事となった。

 

 

 そして厄介事をこなす内に精神が一回りも二回りも成長を遂げたせいか土のスクエアになれた、でも回りにはいまだ土のトライアングル・水のラインで通している。

 ほら最年少スクエアメイジだとガリアの無能王とかに目を付けられそうだ色々面倒臭いし……でもバレてるみたいなんだ。

 

 ふと疑問だったのだが自分がこんなに成長するのに何故他の連中はしないのか?

 多分だが転生って普通じゃありえない経験が精神的な成長を促したのか……何にしても予定より少し早く魔法に関しては目標を達成出来た。

 

 

 後は自分の願望のアレの習得だ、まだ原作開始まで3年以上有るから何としても習得しなければ!

 そしてツアイツ13歳の春ついにヴァリエール公爵家に調停の為に訪問した。

 有力貴族同士の調停と言う事でトリスティン政府側から何故か偉そうな立会い人とどこから聞きつけたのがブリミル教の枢機卿が同席していた。

 どうせ己の取り分を明確化したいのだろう、本当に金に汚い奴らだな。

 

 しかも調印場所をトリステイン王宮で行うと言い出した。

 

 これにはツェルプストー辺境伯も父上も反対し(このままでは美味しい所を全て持っていかれてしまう)この話は無かった事としゲルマニア皇帝にも報告すると厳しく言い放った。

 事前根回しも無く当日に言い出して来た事を考えても此方を舐めてるとしか言いようがないな。

 しかし貴族同士プライドが高いのでどちらも引く事はないだろう。

 父上はツェルプストー辺境伯に遠慮が有り自ら折れる事は無いしツェルプストー辺境伯は……そんな気などないな。

 

 ヴァリエール公爵は苦虫をまとめて2〜3匹噛み潰したような顔をしている。

 多分、立ち会いの話は聞いていても場所まで変更されるとは知らなかったのだろう。

 

 王宮の勅使はなんとあのモット伯だった、シエスタはあげないよ。

 

 ここで揉めても何の意味もないので立場的には爵位もなく強行にならない僕が妥協案を提示してみる事にした。

 

「ヴァリエール公爵宜しいですか。今回の件公爵はどこまでご存知だったのですか?」

 

「いや王宮より調停の立会いをするとは聞いていたのだが場所の変更は聞いておらん」

 

 僕はモット伯とブリミル教の枢機卿に対して黒い笑みを浮かべた。

 

「教皇様とマリアンヌ様は当然ご存知なんでしょうね?このままではゲルマニアに戻り皇帝に報告し戦争準備に入りますよ。

ゲルマニアの有力貴族2家に対し他国の王宮に連行するのであればこちらとしてもそれなりの対応をしますので……」

 

 なんだこの餓鬼は?みたいな目で見られたがヴァリエール公爵がフォローしてくれる。

 

「彼はハーナウ家次期当主で今回の件の発案者だ」

 

 流石は我が同士!

 

「教皇様には今回新しく作る街に教会を寄贈する話をしましたが戦争となればその話は白紙撤回という事で、責任は貴方が取って下さい」

 

 僕は更に突っぱねた、ロマリアには我が領地の司祭を通じ多額の献金を行っている、ここで他国に配置されている枢機卿に遠慮も融通する事も無いだろう。

 モット伯というかトリステイン政府に対してはゲルマニア貴族を舐めているとしか考えられない。

 

 じゃ開戦するけど責任はそちらだよ?って態度に出れば利益は欲しいが責任は嫌だって顔で考え込んでしまった。

 

「モット伯も枢機卿も己が責務を果す為に少しだけ意気込んでしまっただけでしょう。

ここは穏便に当初の段取り通りヴァリエール公爵家にて調印で宜しいのではないでしょうか?

幸い公爵家は王家に次ぐ歴史と血筋の尊い名家ですし問題はないですよね?」

 

「このままではモット伯と枢機卿の所為で開戦なんて嫌ですよね?」とニッコリ脅してあげた。

 

 こちとら数年掛けて地道に関係各所に根回しと献金・賄賂を贈ってるんだ。

 仮に開戦しても彼らに働きかけて責任は押し付けられるしツェルプストー家とヴァリエール家はとっくに和解してるから出来レースの小競り合いでお茶を濁せるからね。

 

「勿論、条約が結ばれ事業が軌道に乗ればお二方にも利益提供は出来ると思いますので」と飴もチラつかせた。

 

 戦争責任を押し付けられるかと思ったら利益が貰えると言われ何となく丸め込まれた感はあるが納得して貰えたようだ。

 そして調停は問題なく結ばれ親睦会と言うか関係者だけの晩餐会となった。

 

 

 僕はこの後にヴァリエール公爵に根回ししてもらってタルブ村にワインの取引を持ちかける名目でアポを取って貰っている。

 勿論タルブ伯にも運搬用の竜騎士を派遣する事の内諾も貰っている、運ぶのはワインでなくてゼロ戦だけど!

 

 

 ついにシエスタと対面か……

 

 内心ニヤけながら明日からの予定を考えていたが大事な事をを忘れていた。これから烈風のカリンとヴァリエール三姉妹と会わねばならないじゃんか!

 ヴァリエール公爵とは趣味友として和解出来ている、けど女性陣にはろくでもない奴と思われているよね。

 

 そして遂に対面となりました。

 


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