現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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第30話から第32話

第30話

 

 アカデミー応接室にて

 

 現在テーブルを挟みエレオノール様・アンリエッタ王女と向かい合って座っている。

 僕の右側にはルイズ、左側にはオールドオスマンだ。

 

「アンリエッタ姫、何故学院の生徒を名指しで召喚などしたのじゃ?しかもミスタツイアツはゲルマニアの貴族……問題ですぞ?」

 

「あら?私はただお友達とそのお付合いをしている殿方をお呼びしただけですよ?」

 

「私の研究の成果をミスルイズ経由でお教えするのは構わないと申しましたが正式にアカデミーで研究なされるというのは我がハーナウ家の功績をトリステイン王国が奪う……と認識して宜しいのですね?」

 

「えっ?そのような大袈裟なお話ではなく幼少の頃よりのお友達のルイズが暫く見ない間に……

その胸が大きくなったので出来れば我が国でも悩んでいる女性達の為に代表してミスエレオノールに研究して貰おうと……」

 

「アンリエッタ姫はエレオノール様に正式に豊胸化の研究をしろ!と仰るのですね?」

 

「ええ……彼女も悩める……」

 

「姫様……そのような浅はかなお考えでこの様な暴挙にでられたと?」

 

「アンリエッタ姫よ……彼女にその様な研究を表立ってさせるのは……その、配慮が足りないのぅ」

 

「彼女も貧乳だ「オールドオスマンは黙って下さい」……しかしのう」

 

「お主の浅慮の所為でヴァリエール公爵家にゲルマニアのツェルプストーとハーナウの両家が動いておるぞ」

 

「ヴァリエール家は2人の娘が巻き込まれた事にゲルマニア側は自国の研究成果を奪われたと思っておる」

 

「私はその様な考えは……」

 

「私はこの豊胸化技術を世に出すつもりは(今の所)ありません。なので姫様の要望もルイズ経由で個人的にならと認めました。

しかしアンリエッタ姫はそれを裏切りトリステインの国益としてこの研究を盗もうとしている……と解釈しましたが?」

 

「ミスタツアイツそのような考えは有りませんでした……私は……」

 

「姫様は実は偽ちち……」

 

「ちょーっとまったールイズそれはいっちゃダメダー!」

 

「姫様にその気は無くても廻りはそうは思わないのが貴族社会です……しかし困りました。こう表立って行動されては」

 

「ツアイツ殿……少しご相談が有るので別室にてお話したいのですが?」

 

 エレオノール様がそう持ちかけてきた、流石だな。落とし所を模索する相談だな。

 

「ではルイズも一緒に……オールドオスマンはアンリエッタ姫のお相手をしてもらって宜しいでしょうか?」

 

「ワシ……要らない子かのう?」

 

「いえその様な事は……姫様暫く時間を下さい」

 

「わかりました。では暫し休憩としましょう」

 

「ではツアイツ殿とチビルイズは私の研究室に来てちょうだい」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「オールドオスマン……私はこの様な大事になるとは思ってませんでした」

 

「アンリエッタ姫よ、お主の立場を考えるんじゃ。お主のお願いはトリステイン王国の命令と同じ重さがあるのじゃよ」

 

「私にはお友達にお願いすることもできないのですか?」

 

「お主のお願いには強制力が付く……それを受けた側の事も考えるんじゃ?今回の件は他国の研究をアカデミーにさせようとしたのじゃよ。

ミスタツアイツは立場上ゲルマニアの国益を損なう事は出来ん。

じゃが理由はどうあれ断ればトリステインの馬鹿者貴族達はアンリエッタ王女に無礼を働いたと思い彼を非難し自分の良い様に動き出す可能性が有るのじゃ」

 

「その様な事は……」

 

「残念ながら無い……とは言えぬな、彼はこの国でも成功しているから敵も多いのじゃよ。

それに身内を大切にするタイプじゃ。今回は自国の研究成果を奪う役目にエレオノール殿を選んだ。

そしてミスルイズを交渉の場に同席させた、何か有れば彼女等も当事者になってしまう」

 

「そんな……どうすれば?」

 

「それは……多分エレオノール殿が落とし所を探してくれるはずじゃ。

しかしミスタツアイツは最悪の状況も想定し動いている、つまりこの交渉が決裂しても周りを守れる準備と覚悟が有るのじゃ」

 

「準備と覚悟ですか?」

 

「アンリエッタ王女に足りないものじゃよ、上に立つ者ほど重責が掛かる。それを受け入れる覚悟が必要じゃな」

 

「ああ……前にルイズが私に言った言葉……『姫様はお立場と心構えがアンバランスだ、立場が人の心を強くする……

一国の王女としての強さが有りますか?権力ではない自身の強さですよ』……と言われました」

 

「ほぅ!それをあのミスルイズが?中々の言葉ではないですかの」

 

「思い人の受け売りだと言ってましたが……それがミスタツアイツの覚悟なのですね」

 

 ぐふふ……ワシ教育者として活躍してるのう!

 

 

 

エレオノールラボ

 

 

 

「ツアイツ殿どう言う事ですか?」

 

「エレオノール様……実はアンリエッタ王女の胸にはパットが入っていてその本来は微妙な大きさなのです」

 

「うん、先日学院に来た時に確認したわ。微妙な大きさなのよ」

 

「しかしお目当てのウェールズ皇太子は大きい胸が好き……だから豊胸技術は確実に欲しい」

 

「そんなどうしようもない理由でこの騒ぎなの?」

 

「仕方ありませんよ。エレオノール様はアンリエッタ姫の胸の秘密を知らなかったのですから。

何か有ると思いますよね?僕だって最悪の事態を想定して手を打ちましたし」

 

「最悪とは戦争って事?」

 

「いえ断った場合に王女に対し不敬だと先走った貴族が居た場合の迎撃措置ですよ」

 

「貴方は……本当に用意周到ね、しかし今回は裏目に出たわね」

 

「ええ、まさかこんなおバカとは思わず話を大きくしてしまいました」

 

「困ったわね……アンリエッタ姫の胸の件は秘密でしょうし……あとは貴方の成果を正当な金額で購入するかね」

 

「成る程、それなら多少強引ですが納得出来る理由ですね」

 

「でも豊胸技術は不味いわね……私だってそんな研究は嫌だしアンリエッタ姫だってそんな研究を推し進めたなんて……」

 

「普通に考えて無理ですね。アンリエッタ姫の肝いりの研究が豊胸?駄目でしょ?対外的にも」

 

「他に何か無い?トリステインに渡しても良い技術系の物って?」

 

「んーいきなり言われても……」

 

「どれも利益に絡むものだし……超々ジェラルミンはこれからの主力商品だし……」

 

「なにそのジェラルミンって?」

 

「最近安定した生産が出来る様になった鉄より軽くて丈夫な金属です」

 

「それ教えてもらってないわよ?」

 

「すいません。来月から売り出す馬車の外装に使う金属でアルブレヒト3世にも献上する品なので」

 

「他にはなにか無いの?」

 

「ねぇ?ツアイツってトリステインでも凄いファンが居る脚本家でしょ、だから姫様が新作を希望してお願いしたってのはどう?

アカデミーには演出の技術的な相談が有って私が同行したのは直接他国の貴族と接触しない為の紹介者って事で……」

 

「「凄いこじ付けだけどそれしかないか(わね)」」

 

「それで行きましょう。ルイズはアンリエッタ姫の豊胸指導をツアイツは私と新作の演劇について打合せを」

 

「むー私のアイデアなのに私が損してない?」

 

「ではウチの劇団を誘致して下さい、それとトリステインの劇団と会わせて2つの劇を競演させましょう」

 

「そうね。そちらの劇団だけでは角が立つからウチの国の劇団も同時に公演させるのね」

 

「新作を競演し出来る事なら定期的に興行したいな」

 

「貴方は……本当に強かね。既に継続的な興行まで話を進めるなんて」

 

「だって面倒臭い既得権を持つトリステインの劇場や劇団には姫様というか王宮が対処してくれるんでしょ?」

 

「まぁそうなるわね。アンリエッタ姫も胸の秘密は知られたくないから必死になるわね」

 

「なら最大限に利用させて貰わないと……大丈夫、ヴァリェール家も一枚咬んでよ!」

 

「本当に……貴方は何と言うか本当にルイズと同い年なのかしらね?」

 

「どうです?エレオノール様も役者デビューしてみませんか?沢山のファンが付くと思いますよ」

 

「それは無理ね。私にも立場が有るし子供時代の貴方とミスキュルケとは状況が違うわよ」

 

「そうですか残念だなぁ……それだけ美人なら人気が出るのは確実なのに」

 

「そ、そそそそんなに言うなら考えてあげても……」

 

「駄目でしょ大貴族の跡継ぎが役者なんて!如何してもっていうなら私が出演するわよ」

 

「なによチビルイズは姫様の胸の心配だけしてなさい!」

 

 エレオノール様とルイズが2人してほっぺの引っ張り合いを始めた……本当に仲の良い姉妹だよね。

 そういえばカトレア様にも久しく会ってないな……この新作の脚本を書いたら物語にして贈ろう!

 

 君の意味深な台詞で長女と三女が姉妹喧嘩を始めたのに次女の攻略を考えちゃ駄目でしょ?

 2国間であわや戦争開始かも知れなかった問題でオールドオスマン&アンリエッタ姫組は深刻に悩んでいたがこちらの当事者達は呑気だった。

 

 

第31話

 

 

 応接室にて

 

「オールドオスマン、ルイズ達の話合いが長すぎませんか?」

 

「そうですな?難航しておるのかの?」

 

「私の浅慮の所為で……どう謝ってよいのか」

 

「してしまった事は仕方有るまい。これからの対応ですな」

 

 ぐふふ……ワシ教育者としての株が鰻登りのハズじゃ……これをミス・ロングビルに見せる事が出来ればのう……

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 女王としての覚悟……

 

 こうしてオールドオスマンに諭されるとはやはり教育者なのですね。

 ミス・エレオノールとルイズ……ミスタ・ツアイツには素直に謝りましょう、もうこの様な浅慮はしないと。

 

 そしてこの件で学びました、どの様な事をしても豊胸化する決意と必ずウェールズ様と添い遂げる覚悟が完了しました。

 私の影響を考え周りに角が立たない様にウェールズ様を篭絡する事が大事な訳です、先ずは豊胸化が肝心です。

 

 そして豊胸出来なくても結婚まで持ち込む手段を準備しましょう、それには私の影響力を高めねばなりません。

 

 しかし……

 

 王宮に跋扈する魑魅魍魎の様な貴族達と対等に渡り合うには力が足りません。

 今の私に出来る事は新しい世代の協力者を作る事と民意の掌握くらいですね……

 

 やはり学院には頻繁に行かねばならないでしょう、在学するこれからのトリステインを支える貴族の子弟達を取り込まねば。

 そして元々が国民の人気取りと言われてましたがこれからは更に強化し確固たる人気を掴みましょう。

 あとは私の直接の手足となる者が必要です、ワルド隊長は今回の一連の対応をみても信用できる数少ない貴族。大切に扱わなければ。

 

 他に平民から女性のみで構成する親衛隊を募りましょう。

 

 出来れば剣士隊か銃士隊を結成し自らの直轄部隊として動かしたいのです。あとはマザリーニ枢機卿をどう説得するかですね……

 彼は私の胸の秘密は知らない……知らせる必要も有りません。

 

 しかし今回は王女の権限をもってゴリ押ししましょう。

 

 成る程これが覚悟なのですね、勉強させて頂いたので学院でのルイズの無礼はチャラにしましょう。

 しかしルイズとミスタ・ツアイツにも協力して欲しいけど……こちらのゴリ押しは無理ね、先ずは信用を回復しましょう。

 

 さてと……彼らが戻って来たわね。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「アンリエッタ姫、お待たせしました」

 

「いえ、構いません。元はと言えば私の浅慮故の事、幾らでもお待ちしますわ」

 

 あれ?先程と雰囲気が違うな?何か有ったのかな?それにオールドオスマンがいやに得意げに此方を見ているんだけど?

 

「エレオノール様とも協議しましたが結論から言っても豊胸技術の公な研究は避けたいと思います。

今回の召喚については私が執筆し公開している演劇についてアンリエッタ姫が興味を持ち、トリステインの劇場にて公演を希望された。

そして私の演劇にはいつも魔法的な演出が有り、その辺の技術的な事をアカデミーのエレオノール様を交えて協議したと」

 

「まぁそれは魅力的な提案ですね」

 

「ルイズはアンリエッタ姫に私が学院に在学している事を報告し、そして紹介者として同行した」

 

「成る程、筋は通りますね」

 

「勿論例の(豊胸指導は)件はルイズが直接行います」

 

「それで其処までして頂く私に求める物はなんでしょうか?」

 

 ん?何だろうこの物分りの良さは?それとご自分に求められている事を理解しているのか?

 

「そうですね。

1つ目はトリステインの劇場及びギルドにゲルマニアの私の劇団の公演を認めさせて頂きたい。

2つ目はトリステインの王宮に馴染みのある劇団を紹介して下さい、両国の劇団による競演にしたいと思います」

 

「それが両国に配慮すると言う事なのですね、わかりました。

劇場及び劇団の選出と既得権を持つギルドとの調整はトリステイン王宮が責任を持って行います」

 

「勿論この提案で保留又は却下になっても問題は無いと思います。アンリエッタ王女が劇場や劇団の既得権を守ったとすれば断っても問題にはならないでしょう」

 

「大丈夫です。勿論一度王宮に持ち帰りマザリーニ枢機卿にも相談してみますわ。それと……」

 

「それと?」

 

「何故ミス・エレオノールとルイズは頬が真っ赤になっているのですか?」

 

「ああ……麗しの姉妹愛ですよ、僕は兄弟が居ないので羨ましいですね」

 

「あら?ルイズと結婚すればミス・エレオノールは義姉になりますよね」

 

「うふふ……アンリエッタ姫?ルイズが義妹かもしれませんわよ」

 

「まぁミス・エレオノールもツアイツ殿をお好きなのですか?」

 

「いいいいいえその様な事では有りませんが……ヴァリエール家の存続を考えてのもしもの時です」

 

「ふふふっミス・エレオノールの婚約破談の原因の一部はツアイツ殿かも知れませんね?」

 

 当初は緊迫していたのに終ってみればほのぼのした雰囲気での解散となった……

 

 

 

帰りの馬車の中

 

 

 

「オールドオスマン、アンリエッタ姫は途中から随分雰囲気が変わりましたが何かありましたか?」

 

「ん?ワシが教育的指導をしたのじゃよ……ふふふ見直したかの?」

 

「ええ、正直見直しました、あの甘ったれ姫様を短時間で変えたのですから」

 

「これでミス・ロングビルもワシを見捨てないかのう?」

 

「それは……その……セクハラを止めて給金を上げてみれば或いは……」

 

「なんでそんなに歯切れが悪いのじゃ?」

 

「いえ別に……」

 

 言えない……僕が引き抜いて僕の家に仕える事になったなんて。

 

「兎に角帰ったら関係各所に今日の詳細を報告しないといけませんね」

 

「そうじゃトリステイン側の報告はワシが対応するがヴァリエール家とゲルマニアの両家にはミスタ・ツアイツが報告してくれ」

 

「そうですね。でも今回のアンリエッタ姫の対応は試金石になりますね。どこまで既得権の有る者達を説得出来るのか?」

 

「お主も人が悪いのう……どちらになっても問題ないのじゃろ?」

 

「そうです。僕が断ったのではなくアンリエッタ姫、又はトリステイン王家が断ったなら何も問題は有りません」

 

「断られてもアンリエッタ姫には貸しが出来るし上手く行っても僕には利益が入るだけですからね」

 

「実際に戦争になってもゲルマニアは負けませんよ、負ける理由が無い。

ただ戦後にこの疲弊したトリステインと言う国の建て直しが面倒なだけです」

 

「そこまで読んでいたのかの?」

 

「ええ……僕の屋敷に攻め入ったら即ツェルプストー辺境伯と我がハーナウ家が侵攻します。

ウチの常備軍は400、ツェルプストー辺境泊は600、そして融和政策の緩衝都市の警備兵は200……

しかも緩衝都市には戦略物資が溢れてます、これが即戦力です。ヴァリエール家は色々な関係で動きが鈍いはずです」

 

 僕は疲れて肩に寄り添い眠っているルイズを優しく眺めてその色々が何かを諭させる。

 

「確かにご息女を人質に取られては行動も鈍るわな」

 

「まさか人質などと……しかし尊き王家の血は此処にも有りますよね、いざ攻め込めば王宮までは一直線です。

王宮を抑えれば押っ取り刀で攻めてきたトリステイン軍など……

わが国の常備軍ですらトリステインの正規軍に勝る数ですから、増援を考えても時間が経つ程こちらが有利。

そしてアルブレヒト閣下は始祖の血を欲している、アンリエッタ姫の身柄を抑えていると言えば開戦もやむなしと思いますよ。

むしろ積極的に動くでしょう、属国化するなり占領するなりは別として」

 

 それに魔法衛士隊隊長のワルド子爵はこちらの味方なんですよ。

 

「それがお主の最悪のストーリー……開戦しても勝つ自信が有ると言う事か」

 

「自分もこの国に個人的な友人や守りたい物も有りますから其処までの無茶はしたくないです……

全てが思い通りにとも行かないでしょうが、そう説明して思い止まる人も居るでしょ?」

 

「ワシ本当に同行して良かった、アンリエッタ姫を改心させたワシの功績って大きくない?」

 

「そうですね、オールドオスマンには感謝しています。流石ですね教育者の鑑です」

 

「ふぉふぉふぉ、そうかそうか!ワシ最高か!」

 

 学院に到着するまでオールドオスマンはご機嫌だった。

 しかし学院長室の机の上には少し早いですがお暇を頂きます!と言うロングビルの辞表が置いてあったりした。

 

 

 

第32話

 

 

 タバサさんの受難1

 

 人目の付かない森の中で迎えの風竜を待つ。今回の任務の成果品は2冊……しかしコレをイザベラに渡すのは気が引ける。

 昨夜の事を思い出す、父親以外に始めて年頃の男性に抱かれた(お姫様抱っこ)しかも彼は私を好きだと言った。

 

「守ってみせる、僕のタバサ」が頭の中でリフレインする。

 

 自然と頬が熱くなり口元が緩んでしまう、しかし上着のポケットにコンナ赤面スル本を持っているなんて……しかも2冊も。

 

 いいいイヤラシイ……Hなのはいけないと思う。

 

 試しに2冊とも読んだ、読んでから気付いた。洗脳はされてない。ミスタツアイツには初めからある種の尊敬と憧れが有った。

 本の好きな私は彼の作品を読むのが好きだ。

 

 しかし……この本は……イケナイトオモウ!

 

 洗脳はされないが混乱はする、はっコレは混乱する本なのでは?既に彼の術中に嵌ってる!

 

 なんて恐ろしい相手!

 

 では何故ワルド様はこの本を懐に忍ばせていたのか?彼もミスタツアイツに敬意を持って接していたハズ……そうか!

 男女か年齢か他の条件が有るのかこの本には複数の効果が有るのだ。ならばイザベラにはどの様な効果が?

 ジョセフには?お母様にはどうなのだろう……

 

 試してみる価値は有る……

 

 イザベラには1巻だけ渡し2巻はお母様に見せて見よう、しかしお母様にこの様な本を見せたらイヤラシイ娘だと思われる。

 でも心が壊れたお母様に僅かでも回復する見込みが……

 

「7号……7号殿?待たせたな」

 

 迎えが来てしまった。

 

「どうした?真っ赤だぞ?風邪か?夜間飛行は冷え込むが大丈夫か?」

 

「……平気」

 

「なら良いが……これでも羽織っとけ」

 

「……ん」

 

 彼が外套を放ってくれた、着込んで彼の後ろに乗り腰を掴む。

 

「では出発する」

 

 ふわりと浮き上がる風竜……私も欲しい。移動に楽だ。

 

 

 

竜騎士心の中の葛藤……

 

 

 

 ヒャッハー役得ダゼー!ロリっ子と合法夜のランデブー!それも最近流行のクーデレでチッパイだぜ。

 

 最近読んだゲルマニアからの密輸本の「エヴァさん-TV版-」のアヤナミーに似てるぜ!

 あのゴーレム対ゴーレムの肉弾戦の描写も凄いが操縦者のクーデレのアヤナミーとツンデレのアスカーに萌えるのよ!

 しかもこの7号も人形とあだ名されているし挿絵の髪型や体型もアヤナミーに似ているし……

 

 帰ったらほかの連中にも自慢しよう。しかし続きが見てーなー!

 

 作者のツアイツってホントに神だぜ……ブリミルなんかよりよっぽど良いぜ!

 何冊か読んだけどどれもヒャッハーでクールな内容だしサイコーにハイって奴だぜー!

 しかし密輸本だからって足元見やがって1冊5エキューはボリ過ぎじゃね?

 一度皆で金を出し合ってゲルマニアまで買いに行かせるか……いや行く奴の好みの本だけ購入しそうで駄目だ。

 

 やっぱり貧乳が時代の先端だよな。でも揺れる巨乳も捨て難いんだが……駄目だ本格的にこの案件は竜騎士会議にかけてみよう。

 でも団長殿がチッパイLOVEとか言ってるからなー。

 

 そう言えばさっきの7号って赤くなって可愛かったよなー!

 

 まるであの作品の……大空をタバサと操縦者の妄想を積んで力強く羽ばたく風竜!ようやく彼の妄想が尽きた頃にガリアの国境近くまで到着した。

 

「さてここで俺の風竜は限界だぜ。悪いな7号乗換えだ……気をつけてな」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 何だろうこの竜騎士は学院でミスタツアイツの本を読んで恍惚とした顔の連中と似ている?試しに「TO HEART」を見せて見よう。

 

「ありがと……この本を少し見て」

 

「ん?なんだいこの本は……」

 

「こっこの本はゴッドツアイツのイカス著書じゃねーか!どうしたんだよコレ?うわっスゲーヘブンな内容だぜ!」

 

 ゴッド?神?ブリミル教信者を裏切らせる程の本なの?やはり女性には効かず男性にだけなんだ。

 

「……何でもない返して」

 

「ちょちょっと待ってくれ何でもするからその本を見せてくれよ」

 

「駄目……イザベラが欲しがっている。早く渡さないと」

 

「そっそんなぁ……」

 

 凄い!やはり男性のみ読ませればその所有者に忠誠を誓う本。

 

「しかしイザベラ様が欲しがるなんてイザベラ様って……そんな趣味なんだ」

 

「……?」

 

 その後何回か乗り継ぎ漸くプチトロワに到着した。全ての迎えの竜騎士に「TO HEART」を見せたが同様の反応だった。

 これはイザベラに渡すのは惜しい……しかし1冊は渡せねばなるまい。

 もしコレを私が直接ジョセフに見せたら彼はどういう反応を示すのか?素直にお母様の解毒薬を渡すだろうか?

 

 「TO HEART2」を隠しイザベラの元に向かう。

 

 竜舎から向かう途中で会う竜騎士たちがリアルアヤナミーモエーとかヒソヒソと話しているが何だろう?

 

「7号……7号殿。少し宜しいか?」

 

 この男はたしか竜騎士団の団長。

 

「その、何だ……部下から報告を受けてな……そのゲルマニアのツアイツ殿の著書を持っているとか?」

 

「……ん」

 

「その……少しだけ貸していただけぬか?」

 

「……ん」

 

「こほん……では風の奥儀をお見せしよう……これが風の最強たる所以……ユビキタスだ!」

 

 団長は「TO HEART」を持ったまま遍在を4体出現させた。

 

「「「「「ヒャッハーサイコーにクールだぜダンチョー」」」」」

 

 どこからか先程送ってくれた竜騎士が集まり団長を囲んで騒ぎ出した。

 

「7号殿お手間を取らせたな。では本書はお返しする。てめぇら逝くぞー!」

 

「「「「「ウォー」」」」」

 

 なに?なんなの?タバサはプチトロワの廊下で暫し呆然としてしまった……

 


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