現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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マチルダ&ティファニアルート第4話から第6話

マチルダ&ティファニアルート第4話

 

 これは願っても無いチャンスだね、早々に坊ちゃんと2人きりになれるなんて。

 ここで意識調査をさせて貰おうか、しかしまだまだ甘いねぇ。

 

 私の事を怪しいと踏んで監視まで付けていた割には態々両手の塞がる御者を買って出るなんて。

 それじゃもしもの時に直ぐに対応出来ないんじゃないかい?

 それとも自信が有るのかね?何にしても猫を被って質問してみようか。

 

 

「ツアイツ様はゲルマニアからこのトリステインに来られてどう感じましたか?」

 

「ん?いきなりだね。そう、先ず最初に感じたのは活気が無い事と……」

 

「活気が無い事と?」

 

「街が臭い事ですね、衛生面の管理が甘いのと公共に使うお金が少ないって事かな」

 

「公共とは?聞き慣れない言葉ですが」

 

「公共とは税を納めて貰ったらそれで領地を良くする為に使う仕事の事だよ」

 

「税は貴族様の生活やなにかに使うもので平民に還元などしませんよ普通は」

 

「そうだね、この国はギリギリまで税を搾り取る。

だからそんな余裕は無い……でも領主とは領民の安全と生活の保障と向上が義務だと思ってる。

勿論善意だけじゃないよ、生活が向上すれば当然税収も上がるよ」

 

「平民の生活が良くなってもまたその分を搾り取られるのでは?」

 

「同じ税率なら総所得の多いほうがより比率で高い税を納める事になるが同時に彼らも生活に余裕が出来ると購買力も上がるから生活品以外の商品も売れる。

そうすれば商人は儲かる、子供も増えるだろう。

働き口が増えれば盗賊や物取りも減って治安も良くなる。ね?良い事だらけだろ?」

 

「そんな考えを持つ貴族様はこの国には居ませんよ」

 

「これは経営の基本だと思っている、独り占めじゃ何時までたっても成長は見込めない。だから……」

 

「だから?」

 

「そう遅くない時期に限界が来ると思うよこの国はさ」

 

「他国の貴族である僕にはこの国を救う義務も力も無いけど、せめて自分の周りだけは守るつもりだ」

 

「そうですね、あのお屋敷のメイド達を見れば分かります。あんなに幸せそうなメイドなんて居ませんよ」

 

「それは彼女らの努力の賜物さ、みな自分に出来て必要な事を進んでしてくれる。

普通内政の事まで勉強してくれるメイドさんなんて居ないだろ?」

 

「普通はメイドにそんな事をさせませんよ!」

 

「逆に聞くけどロングビルさんはなぜ学院の秘書になったの?」

 

「没落貴族に職業選択の幅は殆ど無いんですよ。前職は酒場で給仕をしていてオールドオスマンに声を掛けられたんです」

 

「酒場でスカウトも普通は無いんじゃない?」

 

「ふふふ、そうですね、まさか読み書きが出来るか?って聞かれて即採用なんて変ですよね」

 

「お尻を触られながら?」

 

「良く知ってますね、その場であのジジィはシバいたんですけどしつこく頼まれて……結局雇われましたけど」

 

「あの爺さん本当に……何と言うかしょうがないな」

 

「話は変わりますけど、亜人とかどう思います?」

 

「僕も其れなりに使い手ですから亜人討伐には参加してますよ、でも言葉の通じる相手には先ずは交渉から入りますが」

 

「言葉の通じる……ですか?」

 

「前に領地の隅の山林伐採の際に翼人と領民が揉めましてね」

 

「へぇ!でも彼らは先住魔法を使う危ない相手では?」

 

「原因はうやむやだった境界線を越えて伐採を始めた領民の方に有ったから……

価値観の違う相手でも言葉が通じれば妥協点が必ず有るから交渉がゼロじゃないんだよ」

 

「で?どうしたんですか?」

 

「結局、新たに正式な境界を決めて伐採は中止、その代わり定期的な交流と商品の売買と知識の交流を頼んだんだ」

 

「それはこちらが不利な取引では?」

 

「まさか!情報がないから恐れられるんで定期的に交流が有れば理解はしあえなくても利害は調整できる。

それに彼らの知識は素晴らしい物も有ったよ、採算はおつりがくる位だ。」

 

「エ…エルフとかハーフエルフとかはどうなんですか?恐ろしい相手ですよ?」

 

「どこが?確かに長きに渡り戦い続けてこちらは全敗、先住魔法の使い手で戦力比は10倍以上と言われているけど……」

 

「いるけど?」

 

「まだ会った事もないしブリミル教徒的には悪なんだろうけね、坊主は嫌いだけどね。あいつ等強欲過ぎるよ」

 

「ふふふっ、そんな事を言ったら異端審問に掛けられてしまいますよ」

 

「聖職者は清貧であれ!と思うけどね。傲慢 嫉妬 暴食 色欲 怠惰 強欲 憤怒 七つの大罪の殆どを犯している」

 

「七つの大罪…聞き慣れない言葉ですね?それは東方の諺か何かですか?」

 

「いや、僕の思っている人の罪の種類かな……結局亜人なんかより人間と宗教の方が僕は怖いよ」

 

「もし、もしもですけどエルフが仲良くしたいって……言ってきたらどうします?」

 

「国と国としてなら現実では有り得ないだろうね、宗教絡みだしどちらかが上位に立たないと交渉なんてないと思う」

 

「先程は話が通じる相手なら交渉すると言いましたよね?」

 

「たとえば個人が亡命とかなら話し合いで保護とか支援とかバレないように出来るかもしれない、でも公の立場でそれを言うのは僕がもっと出世するか…

そう皇帝位になれれば可能かもしれないけど今の立場で言ったら僕だけの処分ではすまない、最悪実家は取り潰し一族郎党粛清されるよ」

 

「そうですか、では貴方を頼って保護を求めて来たらどうします?」

 

 

 

「エルフを保護する場合って事?例えば噂ではアルビオンのモード大公はエルフを妾として囲い粛清されたと聞くけど」

 

「そっそんな噂が有るなんて……」

 

「うちもそれなりに諜報機関が有るからね、ジェームズ一世が弟を粛清するなんて普通でも怪しむだろ?」

 

「仮に本当にエルフを囲っていたならモード大公は大馬鹿者だったね」

 

「エルフを妾にした事がですか?」

 

「違うよ、恋愛は個人の自由だしそういう関係になれるって事は先の話の様に十分交渉出来る相手なんだろうね。

でもリスクを抱えたのに何も対処をしていなかったし対応も不味かった」

 

「それはどんな?」

 

「調べたところではエルフを囲っている事が発覚しても頑なに引渡しを拒否したらしい、もう既にダメダメだ。

幾ら秘密にしても人一人を囲うって事は罪人みたく牢に閉じ込めでもしない限りいずれバレる。

その時の対応として直ぐに逃がせる体制を整えておくか偽装でも殺してしまう位の対処が出来た筈だ。

ただ頑なに引渡しを拒否するのではなく既に存在がバレているなら引渡しに応じた振りをして館ごと燃してしまうとか逃げられたと言って違う方向に追っ手を差し向けるとか。

僕なら偽装死だね、スキルニルを使ってもいいし同じ年恰好の死体を用意するなりして館ごと燃してしまう。

後は現王の弟って立場ならどうとでも言えるはずだ、反省して引き渡そうとしたら軟禁してる館ごと火を付けて自殺したんだと」

 

「確かにモード大公ほどの人に追及出来るのは兄であるジェームズ一世くらい……

それも引き渡しに応じていたのだから自殺されても文句は言えても処罰までは無いな」

 

「王族なんだし疑わしきは罰せず……だよ、完璧を求めるなら相手側の目撃者を作るね」

 

「そんな……防げたなんて……どうして……」

 

「あとは囲っている時もマジックアイテムのフェイスチェンジとかを使い、出来れば重ねがけで……

耳を隠しある程度外と交流させていれば良かった。情報は公開していれば普通はそれを信じるから深くは追求されないものだよ。

しかも王族とは言え妾だからある程度情報を隠しても疑われない、余り外聞の良いものでもないから隠すのは当たり前だと周りも思う。

精々が身分違いの娘を囲ったな、このエロ爺くらいじゃない?」

 

「でもモード大公ってうちの父上みたいな趣味だったんだね」

 

「へ?どういう事?」

 

「エルフってスラっとした儚げな種族なんでしょ?ウチの母上みたいな。父上だったら確実に保護出来たかもね」

 

※ハーフは兎も角、ツアイツは現代ファンタジーのエルフをイメージしていた、ディードリットとか。

 

「ツアイツ様では不可能なのですか?」

 

「ほら!僕は大きい乳の娘が好きだから……小さい乳の娘にはそこまで全てを賭けてまでは保護出来るか分からないから」

 

「巨乳なら全てを賭けてでも守る、あの子の胸なら……でもまだクォーターエルフは早いし……しかし対応は早めに……」

 

 その後、ロングビルは学院に帰っても悩み続けた、テファに会わせれば保護は確実……でも直ぐクォーターエルフが生まれてしまう。

 下手したら複数……でも安全には変えられない。

 あの子には自由な恋愛をして欲しいけど現実的に守れもしない相手を好きになっても不幸なだけ……

 でもエルフでも守れると言う変人は今のところツアイツだけ。

 

 「あーもうすっきりしないねぇ。胸の奥もモヤモヤするし……」

 

 何でだろうね。

 

 

 

マチルダ&ティファニアルート第5話

 

 

 ロングビルは悩んでいた、テファの保護について……

 

 ツアイツに会わせれば確実だが間違いなく喰われてしまう、有能で巨乳好きの善人なのは理解したが男女間の事については大変宜しくない……

 とは言え自分の周りも大切にしているから彼の懐まで入らないと手厚い保護は受けられない。

 ただ引き合わせて手出しはするな保護はしろ、は幾らなんでも無理だろう。

 

 とは言え代替の物を提供するにしてもお金は向こうの方が持ってるわね。

 

 欲しい物を盗んでくる……駄目だ大抵のものは金で買えるし盗品などリスクが高く受け取らないだろう。第一、物欲は低そうだし逆に彼の著書の方が欲しい位だ……

 金も物も駄目……あとは権力・名誉……は私じゃ無理だ。

 

 フーケとして捕まって名誉を与える?それじゃ意味は無いし盗賊の身内じゃテファを引き取れないだろう。

 

 し、仕方ないから私を身請けさせるか?

 

 でもあんな巨乳メイドズを見せられた後で戦力値が低いこの胸で迫っても無理だ、逆に鼻で笑われそうだ。

 

 ハーナウ家に就職して役立つ所をみせるか。

 諜報関係なら自信が有るよ。でもこれだと一時的に盗賊家業はお休みだからあの子達の仕送りが心許無いね。

 最初はそんなにお給金も貰えないだろうし、当座の資金を確保してからハーナウ家に就職するのが地道だけど確実かね。

 

 それじゃ今夜から盗賊土くれのフーケの華麗な活躍を見せるかね。

 

 

 

 こんにちは、ツアイツです。

 

 久しぶりに授業を受けています、赤土ことシュヴルーズ先生です。

 確か2年の最初の方の授業で顔見せの筈ですが既に1年の最初の授業に来ています。

 それとも錬金はしないで他の事を教えるのかな?

 

「始めまして皆さん、私はシュヴルーズと申します。二つ名は赤土、二つ名の表す通り土のトライアングルです。

このクラスには私以上の土のスクエアメイジが居ますからやり難いのですが先ずは基本から教えていきます」

 

 スクエアの所で意味深に見られましたが、教師間では既に問題児として認定済みですか?そうですか。

 

「土の魔法の基本は錬金です。皆さんは既に錬金に挑戦した方は居ますか?」

 

「はい。ギーシュ・ド・グラモンです。二つ名は青銅です」

 

「まぁグラモン家と言えば軍人として有名な家系ですね、貴方のお父上や兄上殿達はみな優秀な土のメイジでしたよ」

 

 そんなシュヴルーズ先生とギーシュとの遣り取りをボーっと聞いていた。

 

 ギーシュ頑張れ!ここで良い所をモンモンに見せ付けるんだ!

 

 教卓の上に石ころを置いてそれを錬金させる、ギーシュは勿論青銅を錬金するんだろうな……

 

 

 やっぱり青銅だったが精度やスピードが上がっている、随分練習したな。

 

「命を惜しむな名を惜しめ」って家系だからギーシュも軍人になるんだろうな。

 

 どうなんだろう、現代の感覚だと軍隊って厳しく規律正しくそして女っ気が無いから危険な……

 

「……ツアイツ……ミスタ・ツアイツ」

 

 はっ?しまった、阿部さん的な妄想をする所だった。

 

「はい、すいません。考え事をしていました」

 

「貴方にとってはつまらない授業かも知れませんがちゃんと聞いていなければ駄目ですよ、罰としてこの青銅をさらに錬金してみなさい」

 

 怒られてしまったか……

 

「分かりました。では……」

 

 そうだ最近理解できた超々ジェラルミンに錬金だ!

 

「まぁこれは?随分軽い金属ですわね……ディクトマジックで調べても宜しいですか?」

 

「どうぞ、我が家でこれから売り出す馬車の素材として開発した軽量・強固な金属で超々ジェラルミンと言います」

 

「これは、凄いですね。私も見た事の無い金属です。流石はスクエアと言う所ですね」

 

 ギーシュもマジマジとジェラルミンを見ている。良かった、君の活躍の場を奪ってしまったけと気にしてないようだ。

 

「では、次は……ミスルイズ!この石を錬金してみなさい」

 

 シュヴルーズ先生無茶振りです。ちょ、おま、ヤバいですって……

 

「どうしました?ミスルイズ次は貴女の番ですよ」

 

「シュヴルーズ先生すみません、私は錬金は苦手で……対象物が壊れてしまうのです…だから」

 

 原作のルイズでは考えられない謙虚さだ……謙虚な虚無?語呂が良いのか?

 

「授業とは生徒は失敗を恐れず挑み教師とはそれを正しく導く事なのです、恐れずやってみなさい」

 

「先生。素晴らしいお考えですが僕もルイズの……その魔力量の多さと破壊力は身に染みて知ってます。

僕のアースウォールやアイアンシールドを容易くブチ抜く程の威力をまだ制御出来ないので教室ではなくせめて外で……」

 

「スクエアの守りを抜くって……どれだけの威力なんでしょう?

分かりました、まだ制御面で不得手なら実際に見てみましょう、皆さん外に移動して下さい」

 

 ルイズがギュっと僕の袖を握る、今まで散々味わった失敗・失望・哀れみを思い出しているのだろう。

 

「大丈夫、全力で魔法をかけるんだ。被害は僕が抑える、君は爆発力に特化したメイジという事でいこう」

 

「分かったわ、でも全力で平気?貴方のゴーレムも粉砕してしまったのよ」

 

「むしろOK!スクエアをも粉砕するルイズを馬鹿に出来る奴なんて居ないさ、では外に行こう」

 

 ルイズをお姫様だっこをして外に飛び出る、ここからが本番だ。ルイズの立場が悪くならない様にやってみせるさ。

 

「シュヴルーズ先生。ルイズの特性を調べる為に最大威力で魔法をかけさせるので皆は少し離れさせて対象は僕の全力のゴーレムで良いですか?」

 

「其処までの威力なのですか?分かりました。

皆さんは下がって万が一の為に防御魔法の準備をミスタツアイツは私と近くに、ディクトマジックは私がかけますから防御をお願いします」

 

「分かりました。では……クリエイトゴーレム!」

 

 周辺の大地を巻き込み練成されていく全長18mの鋼鉄の巨人に周りの皆も息を呑む。

 禍々しい一つ目が「ビコーン」と光り放熱口から排気する、全く意味は無いが拘りだけの機能。

 

「こっこれは?私でも同程度の大きさのゴーレムなど土で何とか形を整えるだけですのに……」

 

 シュヴルーズ先生の呟きに皆がどれだけ凄いゴーレムか理解する、てかルイズもカリン様もコレを粉砕するんですけどね……凹むわ。

 

「ではルイズ、錬金を…皆は耐ショック耐閃光防御を……」

 

 ルイズ、君の威力を見せ付けろ!

 

「分かったわ、波動砲はっし……じゃなくて錬金……錬金……錬金!」

 

 トリガーハッピーの如く錬金を連発するルイズ、激しい炸裂音が周りに響き渡る。

 僕のゴーレムは左肩…右腕…脇腹と砕けていく。

 

「レーンーキーンー!」

 

 最後の駄目押しとばかりにルイズが大声で錬金をかける、左足が粉砕し膝を付くゴーレム……

 そしてモノアイを一際強く光らせた後に明かりを消す。

 

 ルイズ……実は失敗と言いつつこの威力に酔ってますね、廻りを見ると皆が呆然としている。

 スクエアのゴーレムを一方的に粉砕する魔法、そして威力。

 さらに嬉々として魔法をかけ続け終わった後の恍惚とした表情のルイズ……

 

 皆が理解した、コイツを馬鹿にすると粉砕されるんだな。ヴァリエールの女性陣はどこか皆異常なんだな……と。

 

「先生……シュヴルーズ先生どうですか?何か分かりましたか?」

 

 呆然とするシュヴルーズ先生……

 

「いえ、大丈夫です。ミスルイズの魔法……

錬金はスペル・制御共に素晴らしかったのですが最後に対象に効果を与える所で違う作用になりましたが、威力と言う点では理解の範疇外でした。少し調べてみます」

 

 ルイズは……大丈夫かと思ったら、男子生徒に囲まれていた。

 

 薄っすらと汗をかき恍惚とした表情で目を潤ませている今の彼女は美しい。

 厳格な貞淑感覚を持つ女性の多いトリステインでは彼女の魅せたこの幼いながらの艶美さに喰いついてしまったんだろう。

 おまえら盛りの付いた犬じゃないんだから落ち着け……ってギーシュまで行っちゃ駄目だろお前モンモン狙い。

 

 結局ルイズが魔法を苦手な事は有耶無耶と言うか寧ろ毎週ゴーレム粉砕をして欲しい位の盛況だった。

 シュヴルーズ先生には疑問を男子生徒には煩悩を女生徒には畏怖を植えつけてだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 「破壊の妖精」と言う二つ名がついた、本人はご機嫌でその二つ名を名乗っている。

 好評だったゴーレム粉砕の件は今後は男子生徒抜きで定期的に実験する事に女生徒主体の話し合いで決まった。

 

 ルイズもストレス発散が出来ると喜んでいるし結果オーライか?

 

 

 

 

マチルダ&ティファニアルート第6話

 

 

 おはようございます、ツアイツです。

 

 最近土くれのフーケが精力的にトリステイン国内を荒らしまわっているそうです。

 彼女、まさか原作通り学院の「破壊の杖」も狙うつもりなのか?そうすると誰が宝物庫の壁にヒビを入れるのかな?

 原作知識が役に立たなくなっているから想像がつかない。

 

 まさか僕がキュルケとルイズの勝負の商品として吊るされるのか?いやサイトと違い魔法で逃げ出せるからそれは無い。

 それともゴーレム決戦で殴り合いをするのかな。

 

 学院の宝物庫、一度見学に行ったが確かにロケットランチャーの様な物が有ったのだが……場違いな工芸品?

 マジカルミンキーモモのミンキーステッキも置いて有りました。

 

 元祖魔法少女アニメの玩具がこんなところにも、厳重に固定化が掛かってたのに苦笑した。

 でも材質のプラスチックって錬金出来ないかな?一緒に廻ったキュルケとルイズには趣味悪いとか言われていたが……

 

 お前らリアル魔法少女だけど現代日本ではこういうステッキを振り回して変身するのが正しい魔法少女だったんだよ。

 因みに名前は「飴細工の杖」だった。誰が仮称を付けるのかね?

 

 そして忘れていた頃にロングビルさんから接触が有った。

 廊下でバッタリ有った時に相談事が有るのでお時間を頂けないか?と聞かれたので了承したんだが会見場所を指定してきた。

 

 現在そこに向かう途中「魅惑の妖精亭」にだ。

 

 原作でお馴染みのウェイトレスが全てビスチェ姿と言う現代のランパブレストラン?だ。

 何故この店を指定してくるかが分からなかった、どうやら先に来てしまったらしく席に通される。

 

 個室までとはいかないが他から余り干渉されない位置の席だ。

 案内してくれた女の子は中々の美人さんだったが彼女が原作のジェシカかは分からなかった。

 取り敢えずワインを頼み料理はお勧めを適当に見繕って貰う。

 

 先にワインが来たのでチビリチビリと飲んでいると「お待たせしました。」ブッー!ゲホゲホッ…

 

 なんとトレイに料理を載せて持って来たロングビルさんの白いビスチェの胸元に思いっきり赤ワインを吹きかけてしまった。

 

「なっななななな…」

 

 意表を突かれた、指を刺し言葉にならない呻き声をあげてしまった。

 

「ふふふ。こんなに一杯私にかけて…どうしました?何時もの冷静さが有りませんよ」

 

 チクショウ、やられた!相談と言う名の戦場で主導権を奪われた。

 

「すいません、驚きましたよ。でもそういう扇情的な衣装は将来の旦那さんに見せるべきですよ」

 

 マントを錬金してさっと羽織らせてから嫌味をチクリと言ってみた。

 

「あら?ではツアイツ様が娶ってくれるのですか?」

 

 艶然と切り替えされた、手ごわいぞ。

 

「先ずは風邪でもひいたら大変ですので着替えて下さい。話はそれからで、勿論衣装は弁償させて貰いますよ」

 

 兎に角このままなし崩しでは不味いので気持ちを切り替える時間を稼ごう。

 

「分かりましたわ。暫くおまちを……」

 

 態々マントを脱ぎ捨ててモンローウォークの如くお尻を強調して歩いていく……あっ他の客のオッサンに撫でられて……ぶん殴ったぞ。

 

 近くに居たウェイトレスさんを呼び寄せてチップを握らせロングビルさんの情報を聞く。

 就職してるわけではなくオーナーの知り合いで今日は僕を驚かせる為にこんな格好をしているそうだ。

 てっきり彼氏でも連れて来るかと思ったがどう見ても年下の僕がきてビックリして調理場で噂になってるらしい。

 などと話しているとロングビルさんが戻ってきたので情報を教えてくれたウェイトレスさんは席を離れて行った。

 

 すれ違い様にロングビルさんに頑張ってって声を掛けながら……

 

 着替えてきたロングビルさんは今度は淡いグリーンのビスチェにタイトなスカートを合わせた所謂ビスチェドレス姿だ。

 髪の色に合わせたのか良く似合っている、胸元も際どく開いているし、隣に座ってくるし、色仕掛けで何を要求するつもりだ?

 

「実は今の学院を辞めようと思いますの、セクハラに耐えられないので……」

 

「そうですか、オールドオスマンも年甲斐も無く若い秘書にはしゃぎ過ぎましたか?」

 

「最近は直接触ってくるしその内押し倒されそうで…よよよ……」

 

 よよよ……って棒読みですよ。どうする話に乗ってみるか直球で聞いてみるかな。

 

「それで、僕に何を求めているんですか?」

 

 直球で行こう、早めに終らせないと従業員達の好奇の目が痛いんです。

 扉に半分隠れてハンカチをかみ締める筋肉オカマが怖いんですよ、早く逃げたい。

 

 ロングビルさんはここぞとばかりに胸を押し付ける様にしな垂れかかってくる。

 

「実はハーナウ家に雇って頂きたいのです」

 

 おぅ(精神年齢は)オジサンOKしちゃいそうですよ、上目使いのお願いは断り辛い気持ちになります。

 

「メイドとして?それとも経営に絡んだ何かで?それともメイジとして?あとは……」

 

 顔を近づけて囁くように喋る。

 

「フーケとしてかな?」

 

 キャーキャー外野大盛り上がり!

 

 ロングビルさんは外野に先に騒がれたので一寸引き気味だが十分驚いていた。

 

「なっなんで何時から…」

 

 相当動揺してますね分かりますこれだけ猫被っていたのにバレバレだから。

 

「前に御者としてウチの屋敷の写本を盗む下見に来たでしょ?その時から色々調べてたんだ、ウチの諜報部も凄いでしょ」

 

「ちっ違うよ。写本を盗みに行ったんじゃなく坊ちゃんの人柄を調べにいったんだ」

 

 口調が素にもどってますね。

 

「口調が素に戻ってますよ、なんで身辺調査なんてしたんですか?」

 

「ハーナウ家で働きたいってのは本当さ。あそこ程良い待遇と環境の職場は無いから…しかし……」

 

「一緒に養って欲しい子がいるんだ……何人か……」

 

「えっロングビルさんって子供居たの?で沢山居るの?」

 

 知ってるけどからかう、この世界は早婚が多いから20代前半で子持ちが普通だ。

 

「マチルダで良いよ、マチルダ・オブ・サウスゴーダ……本名さ、調べは付いているんだろ?

そして保護して欲しいのはウェストウッドに居る孤児達と……妹だよ」

 

「妹?サウスゴーダ家には姉妹は居ない筈ですよ」

 

「モード大公の忘れ形見さ、分かるだろ?」

 

「つまりはハーフエルフか……」

 

「ティファニアってんだテファは良い子なんだよ。だから……その為なら私はどうなっても……」

 

「良いですよ、引き受けましょう」

 

 まぁそれしかお願い事は無いよね、帰り道で話した時も不自然に話題を振っていたし。

 

「ちょ良く考えて返事したのかい?エルフだよハーフエルフなんだよ?」

 

「マチルダさんが体を投げ出してでも守りたい人なんでしょ?その分働いてくれるんでしょ?」

 

「妾の件なら了解だよ、それ位しか出来ないからね」

 

「違うよ、諜報機関で働いて欲しいんだ。今はヴァリエール公爵から密偵を派遣して貰ってる状況だから独自の部隊が欲しいんだ」

 

「なんだい、私の体より技術が欲しいってかい?男としてどうなんだいその提案は?」

 

「彼女を守りたい気持ちを利用されて妾にされたと知った彼女はどう思うかな?守るって事は体だけじゃなくて心までだよ。

大丈夫、前に話した通りに姿を誤魔化しある程度外とも接触をさせながら暮らせる様には出来る、他の孤児達も独り立ちするまでは面倒をみるよ。

なに仕事は幾らでも有るし働き手は此方が欲しい位さ」

 

 ワイングラスを上げて乾杯する、キャーキャー外野の五月蝿さはピークだ!

 

 はっ?筋肉オカマが両手を広げて近付いてく「話はまとまったのねぇ」奇声を上げて近寄るな、変態!

 

 マチルダさんは他のウェイトレスさんに捕まって祝福されている、何故か年の離れた僕らが駆け落ちする事が決まったらしい。

 そんな馬鹿な勘違いをするなっての、多分ジェシカ?胸元のネームプレートもジェシカだ、が話し掛けてきた。

 

「覚えています?タルブでシエスタちゃんをスカウトした時近くに居たんですよ、ジェシカです」

 

「ごめん気が付かなかったよ」

 

 あの時はシエスタしか眼中に無かったな。

 

「近くのお屋敷に引っ越したからって手紙の遣り取りをしているんです。ツアイツ様の事ばかり手紙に書いてますよ」

 

「ああシエスタには良くして貰ってるよ」※セーラー服とかスク水とか体操着とか。

 

「だからロングビルさんの相談の相手がツアイツ様と聞いてビックリしました」

 

 

「世の中って狭いんだね。でも安心して彼女の保護はちゃんとするから」

 

「有難う御座います、この店もご贔屓にしてくださいね」

 

「そうだね、今度皆を連れて来るよ。ビスチェウェイトレスさんVSメイド軍団!貸切でお願いね」

 

「なんかイヤラシイ表現ですよ、でも約束ですからね」

 

「ツアイツ様何を楽しそうにお話してるのですか?」

 

「はぁ?ツアイツ様?」

 

「ええお仕えする訳ですから此れからはツアイツ様とお呼びします。早速ですが一度ウェストウッドの件で……」

 

楽しい夜は更けていく……

 


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