それではどうぞ。
○月○日 晴れ
今日からボクは、日記をつけることにした。
学校も夏休みに入って最高だ!
なぜなら今日から毎日、大好きな森に行けるからだ。
うちの裏にある小さな森の中には、森の賢人と呼ばれる怪物が住んでいるらしい。
でもボクはそんなのは全くの嘘だと思っている。
だってそうだろ? そんなに賢いならなんで森の中なんて住んでいるのさ。笑っちゃうよまったく。
○月×日 晴れ
今日も森に行った。
いつものようにブラブラ歩いつていると大きな木の葉で覆い隠された洞窟の入口らしきものを発見した。
ボクは急いで葉っぱを取り除いて中に入っていった。中はそんなに狭くなく立ったまま進めた。
壁についたピカピカ光る苔のおかげか、視界も悪くなかった。
よく見るとあちこちに腐った木の実の残骸や動物の骨らしきものが落っこちていた。
恐ろしいという思いも確かにあったけどそれ以上にボクは興奮していた。
しばらくすると行き止まりになり、そこには大量のガラクタが所狭しと置かれていた。
中にはまだ使えそうな時計や普通に扱っていれば相当高く売れたであろう宝石類なども存在した。
と、その時だった。
突然、ガサガサと物音がして慌てて振り向くとそこには、一頭のゴリラの巨大な顔があった。
ボクは恐怖にすくみ上がってしまい、悲鳴の一つも立てれなかった。だがそれがよかったのだろう。
ゴリラはボクの匂いを一頻り嗅ぐとその場に腰を下ろし適当にガラクタを手に取って弄くり始めた。
これは逃げるチャンスだった。
ボクはそ〜っとゴリラの後ろに回り込み、ゆっくりと後退して行く。当然後ろ向きだ。全てが上手くいくかに思えたその時。
当然ゴリラが振り返ってボクに向かって手を伸ばしてきたのだ。
もうお終いだと思い目を瞑った。
だけどいくら経っても何も起きないことに違和感を覚えたボクは、そっと目を開ける。するとそこにあったのは、優しい微笑みを浮かべたゴリラの顔とそっと差し出された、チープな作りの知恵の輪の載っかった大きく毛むくじゃらな手だった。
その後、ボクとゴリラは一緒にガラクタを弄くり回した。
たかがガラクタだけど誰かと一緒というのが楽しくていつまでもそうしていたいくらいだった。
でもあっという間に暗くなり始めたためその日はそのまますぐに家に帰ることにした。
また明日も行こうと思う。
やっぱり夏休みは最高だ!
×月△日 雨のち曇り
その日に起きたことをボクは今でも信じることができない……
その日もいつものようにいくつかのオモチャとバナナ一房を持って彼の元へ向かっていると、途中で地面に点々と広がる大きな動物の足跡が残っているのを発見した。
それはまるで人間の物のようにも見えたが、少なくともボクはそんな巨大な足を持った人間を今まで見たことがない。
警戒するべきと判断したボクは、そ〜っと忍び足で彼の家へと向かっていった。
入口にあるはずの木の葉が一切合切取り除かれている。
嫌な予感がした。
ボクは、そこら辺にあった木の棒片手に中へと入っていった。
やはり中にも足跡は続いていた。
冷たい汗が垂れる。
手足が震えた。
喉もカラカラで涙が無条件で溢れてくる。
奥に行けば行くほどわかるんだ。
中には今、とんでもないバケモノがいてたぶん彼はもう……
すると突然、ボクの耳に『クチャリクチャリ』と粘着質な音が飛び込んできた。
滲んだ視界を慌てて拭い去り、キッと見据えた先にあったのはーーー
無残にも切断された嘗ての友人の生首を頭上に掲げた一人の大男が、滴り落ちる血潮をゴクリゴクリと飲み下す姿だった。
男は言った。
「ふぅ……不味いな…ゲテモノは美味と相場が決まってるもんだが…」と……
気が付けば僕は、森の入口のところに寝かされていた。
よくわからない頭の痛みにしばらくボ〜っとしていると行方不明になったと判断したらしい警察官達がボクを保護しにやってきた。
家に帰るとお母さんに酷く怒られた。
だがボクはそれどころじゃなかった。
その後、ボクは自分の部屋に行き二時間ねむった…そして……目をさましてからしばらくしてゴリラが死んだことを思い出し…………泣いた…
以来、ゴレイヌはもう二度とゴリラを犠牲にするものか、という強い想いから自身とゴリラの位置を入れ替え身代わりとなる能力を手に入れたのだった。
まったく悲しい漢よ……