「ご注文は?」
「ステーキ定食」
「焼き方は?」
「弱火でじっくり」
「奥へどうぞ」
どうも。毎度お馴染みイブ=フリークスです。
私は今、ハンター試験の会場へと向かっています。
これと言って何事もなく、ここまで無事やって来たわけですが、まだまだ油断は大敵です。
とはいえ正直、受かる気しかしません。まぁ既に念を五大行から応用まですべて修めているから当たり前と言えば当たり前なんですが……
それもこれもすべて敬愛するゴンさんのお蔭です。
というわけでそんな素晴らしいゴンさんの素晴らし過ぎる教えをより多くの人に伝えたい! そのためには是非ともハンターライセンスが必要なのです!
だけど…
天涯孤独の身であることがデフォルトになっているゴンさんに、何某かの教えを請うような奇特な人間はそうそう現れません。
そこで私は考えました!
確実に信用を得られる、一番の方法を…!
まずハンターライセンスを手に入れます。次に資金を調達する。
簡単な道場を立ち上げ、同時に方々でハンターという権力を振りかざした大々的な宣伝を行う。
この際、対ゴンさんマニュアルとして、意思疎通の方を記した教本を配布(最重要事項)。
と、まぁここまでが最低条件でここから先は、試験が無事終わってから改めて詰めていくとしましょう。
ふと、ここでイブの口元に笑みが零れる。
(ふふ。そしてあわよくばゴンさんが他の者に気を取られているうちに、私はどこか遠く、けっっっしてゴンさんの目が届かないところへ逃る! 完璧だ! ふぅ〜⤴︎‼︎)
要は、イブは程のいいスケープゴート探しに躍起になっていたのである。
ちなみに「この際、暗黒大陸でもいいや」とはイブの言。
そんな先の見えない未来を夢想している間にどうやら到着したようである。
「よし。 行くぞッ!」
やる気を十分に滾らせて大きく一歩を踏み出すイブ。すると大勢の見知らぬ人間がこちらを一斉に睨み付けてきた。
(うっ。やっぱり怖い…そういえば転生してこの7年間、1度も人らしい人に会ってなかったな……)
少ししんみりしてしまうイブ。
と、そこにこちらへ向かってやって来る男性が一人。
彼は両手に缶ジュースらしきものを持っており、取って付けたような笑顔を貼り付けている。
「よっ。やってるか?」
(おぉっ! 生トンパだ! 鼻でけぇ〜)
「お〜い」
「あっ、ハイ! 元気です‼︎」
「ははは。そうかいそうかい。やっぱ新人はフレッシュでいいねぇ」
「あははは…」
(新人潰しのトンパ……さっそく目を付けてきたか!)
イブは、一般の人と遜色のないよう常に微量のオーラを垂れ流しの状態にするよう心掛けている。それ故に第三者に変な警戒心を植え付けないようにしているのだが…こういう時は不便なものだ。
「おっといけない。自己紹介がまだだったな。俺の名前はトンパ。こう見えてハンターテスト35回目のベテランなんだぜ?」
「へ〜。凄いですね。私の名前は、イブ。イブ=フリークス『ガランッ』……へ?」
何が起こったのかと足元に視線を走らせる。するとそこには先程までトンパが手にしていたジュースが転がっていた。
「? あの〜、ジュース落としましたよ?」
「ひっ⁉︎ い、いやだだだ大丈夫だ! じじ、自分で拾えるからッ!」
限りなく悲鳴に近い声。トンパは明らかにパニクっていた。
「⁇ どうしたんですか? 突然、震えだして。顔もやたら青いし…」
「 いやいやいや‼︎ ぜ〜んぜん! て〜んでそんなこと…ナイデスヨ?」
「……なんで敬語なんですか?」
「い、いやだなぁ〜。僕、最初から敬語だったじゃないですかぁ〜。あっ! そうだ。僕、今から用事があったんだった!」
「へ? 今から試験ですよね?」
「 試験? 僕が? なんのことです⁇」
「はぁ…もう巫山戯てないでしっかりして下さいよ。はい! これでも飲んで落ち着いて。ね?」
「う…っ。あ、あぁ。ありがとな。後で美味しく頂くよ」
「そんなタイミングあります?」
「あるある! 大いにあるから! そ、それじゃ俺もう行くから! サイナラーーーッ‼︎」
そう叫ぶとトンパはもの凄い勢いで走り去っていった。
「チッ、逃げたか。それにしてもあの反応はいったい……ん?」
ざわざわ…フリークス…ざわざわ…フリークス……ゴン=フリークス……ざわざわ…
ゴンさん…ざわざわ…短パン…13km…ざわざわ……
「⁇ ま、いっか」
多少、胸につっかえるとこはありつつもその後は(先程の騒ぎの一件で変に注意を向けられるようになった以外は)、滞りなく試験が始まった。
(一次試験はマラソンか…うん。予定(原作)通りだな。とりあえずこれ以上、悪目立ちして変態(ヒソカ)に目を付けられたらマズイ……)
チラッと視線を向けると間髪入れずにヒソカと目が合った。
一瞬で全身のありとあらゆるところに怖気が走る。
(一番後ろに下がっとこ……)
「はぁ…! はぁ…! はぁ…!」
予定通り一番後ろにやって来るとそこにはすでに先客がいた。
(あ、そうか。彼がいたんだ。え〜っと……あっ、そうそう! 『ギコルくん』!)
違います。
「ひぃ…! ひぃ…! ひぃ…! 」
(だいぶ辛そうだなぁ……よし! いっちょやりますか!)
突然、何を思ったのかイブがおもむろに取り出したのは、一個のタンバリンだった。彼女はそれを片手にニコルへと声を掛ける。
「君! こんな時はこれだよ! これがあればどんなに辛くても頑張れるんだよ! ホラッ! ホラッ! ホラッ!」
器用に後ろ向きで走りながら小気味好いリズムでタンバリンを奏でるイブ=フリークス。
「ひぃぃ…! ひぃぃ…! ひぃぃ…!」
明らかに息遣いの意味合いが変わっているが『ゴンさんからの教えを流布させる』と言う大望を掲げるイブには一切通じない。
「頑張れ! 頑張れ! ギ! コ! ル!
∧∧
負けるな! 負けるな! (,,゚Д゚)〈ゴルァ! 逝ってよし!(合いの手)」
「あぁぁあぁぁぁぁあ…ッ‼︎‼︎」
ニコルの心が折れた瞬間であった。
イブが未来ある若者の人生を破滅へと導いている丁度その時、クラピカとレオリオの原作組はキルアと初会合を果たしていた。
「へぇ。じゃあおっさんは、医者になるためにハンター試験を?」
「あぁそうだ。っておっさんじゃねぇ! 俺はまだ10代だ‼︎」
「マジ⁈ 見えねぇ〜。アンタもそう思うだろ? え〜っと…」
「クラピカだ。「クラピカもさ。な?」…まぁそうだな。少なくとも20代後半くらいには見える」
「がぁぁあ! テメェら大概にしろよ⁉︎ 俺だって傷付くもんは傷付くんだからな‼︎」
「はははは。悪りぃ悪りぃ」
「落ち着けレオリオ。呼吸が乱れるぞ」
「〜〜〜〜〜ッ! どっっちくしょーーーーッ‼︎」
「あらら。行っちゃった」
「……すまないな」
「ん? なにが?」
「誤魔化さなくてもいい。レオリオを叱咤してくれたんだろう?」
「フン…別に? そんなんじゃないよ」
「君のことを誤解していた。謝罪する」
「……ま、元より第一印象に自信ないし別に気にしてねぇよ。…殺気立ってたのは俺の方だしな」
「ふむ。…よかったらその訳、聞かせてもらえないか?」
「……いいぜ。 ウチさ。親が殺人鬼なんだ」
「両方とも?」
「……ぷっ。お前面白いな。普通信じないだろ」
「だが本当のことだ。違うか?」
「…ホントに面白いな。……よし! 俺、クラピカと一緒に行くよ! 別にいいだろ?」
「え? まぁ私は別に構わないが…」
「じゃあ決定な〜。ふんふふ〜ん♩」
「……ふっ。そうだな。たまにはこういうのも悪くない」
その後、案の定バテバテになって落っこちて来たレオリオと合流し、三人は仲良く足並みを揃えて歩みを進めるのだった。
「ご苦労様でした。こちらが、『ヌメーレ湿原』通称〝詐欺師の塒〟二次試験会場へは、ここを通って行かねばなりません」
(さて、と。ここからが本番だ)
何を隠そうこのヌメーレ湿原でのイベントこそイブが最も危惧していたことだった。
(ヒソカによる試験管ごっこ。これに巻き込まれるのだけはどうあっても避けなくてはいけない…! そのためには、常に前をキープするのが最低条件となる。そして何より大事なことがある。それは、このタイミングでなければ原作組に取り入るチャンスがなくなってしまうということだ!)
イブは別にミーハーというわけではない。
ただ彼女には、どうしてもキルア=ゾルディックと仲良くなっておかなければならない理由があった。なぜならキルアは本来、ゴンさんの大親友であるはずだから。故にどうにかしてお近付きにならなくてはならないのである。
そのためには手段を選ばないつもりだ。
「よーし! やるぞ〜‼︎」
「フフフ。いいね(ハート)。その目、崩しがいがあるよ(ハート)」
「……は?」
錆び付いてしまったように動き難くなった首をギギギ…と軋ませ後方へと動かしていく。するとそこには、噂の彼……ヒソカが立っていた。
「やぁ(クローバー)」
(ホゲ〜〜〜〜〜〜ッ‼︎)
イブ大ピーーーーンチ‼︎
どうも。あずき@です。
しかし話が全然前に進まないな…
こんなペースで果たして天空闘技場にたどり着くことが出来るのだろうか……
そしてその時、ゴンさんは何をやらかすのか…!
とにかくしばらくの間はこんな感じで真面目(?)にストーリーをなぞる形になると思います(当然、著作権に触れない範中で)。
ちなみに次回以降ゴンさんもなるべく登場させるようにしますんで今日のところはお許しください(笑)