夜の帳が落ち始めた時間帯。
密林のあちこちでモーター駆動音、キャタピラが土を踏み荒らす音が聞こえていた。
「どうだ、ジオンの様子は?」
前線指揮車輌、
『静かなものです。前へ進めても、反撃も何もなく』
「待ち伏せの可能性が高い。油断するな」
『了解です。大尉』
彼ら連邦軍東南アジア戦線の一翼を担う戦車部隊は、八時間前にジオン軍攻撃部隊に奪取された陣地、対中東アジア戦線の橋頭堡を奪還、もしくは破壊を命じられて此処へ派遣された。
配信された対モビルスーツ戦術。それを用いて確かな戦果を先日上げた彼の隊は、着任前に攻略の憂き目に合っている前線基地、計画通りに事が進めば中継基地となる拠点の後詰援護として進軍を開始。しかし、五時間前には基地から通信が途絶えた。
進軍ルート上にある、奪われた陣地。これも後方基地が中継基地となれば、前線基地と変わる。
そのための用意も成されていたが、現状の陣地は見る影もない。
これはほぼ、彼ら連邦軍の攻撃に依るものだ。
敵が立て籠った以上、戦車部隊による攻撃よりも航空部隊による爆撃、ないし戦艦を用いた主砲一斉射が有効と指揮官殿に具申したが、却下された。
何でも航空部隊は、ジオン軍の部隊が後方に艦隊を展開しているために、そちらへ急襲を掛ける必要が出たので総出で狩りにいっているらしい。
向いているものが違う、弾薬の無駄だと彼自身は強く思ったが、やり方を心得ているために従うしかなかった。どのような兵科で向き不向きがあろうと、求められたものには応える義務がある。彼の軍人としてのプライドがそうさせた。
ちなみに戦艦は、というと。
「あの大佐、意気込みは買うが、功を焦り過ぎだろう」
移動司令部となるビッグトレー級陸戦艇、これが攻撃を受けた前線基地の後方に本隊を率いて着陣している筈だ。大尉とその戦車部隊は壊滅した前戦車部隊と交代した別働隊で、陣地に残るモビルスーツ隊を撃破、身動きが取れないよう釘付けにする任を受けていた。
この戦線の指揮を執るのは、イーサン・ライヤー大佐。
打って出る気概は基地の奥で燻っているよりは遥かにマシだし、大尉自身も戦線が押されている今、敢えて攻勢に出る重要性を理解していた。司令官としては腰が重い連中に比べれば好印象。
しかし、本人は紳士を気取っているようだが、眼光に野心が見て取れたのがマイナスであった。
赴任早々ジオン軍と事を構える姿勢は、大事だ。
消極的ではジオン軍の戦線拡大を止める事などできはしない。ひいては部隊全体の士気に関わるし、それが連邦軍総司令部ジャブローに伝われば更迭の
もっとも、ミノフスキー粒子という魔法のような現象で連絡手段が限られた今、揉み消されたらどうにもならんだろうが。
ただ、基地奪還は良いとして、困難であれば破壊も容認とはどういう事だ。
強く奪還を押してはいたが、無理ならばと続いた。
あの場所は前線基地、これからは中継基地として機能する。
その為の機材、設備が投じられているし、必要なスタッフも送り込まれていたと記憶している。
脱出を確認した、と大佐は言っていたが交戦状態になってまだ八時間。八時間なのだ。
交戦してすぐ基地を破棄する判断を下せれば、時間が短くとも避難はできる。
しかし、抵抗を続けたのならば、通信途絶したその分を引いては短か過ぎる。
基地外での応戦ならば裏から逃げればいい。囲まれてはいないのだから。
もし、基地内で交戦状態に入ってしまえば、どうなる。
秘密裏に脱出、そんな事ができるのだろうか。
シオン軍も敵の内情は知りたいし、自軍情報も渡したくはない筈。
追撃して捕縛ないし、最悪は殺害される。
捕虜ならば南極条約が適用されるだろうが、撤退中の兵士はその限りではない。
大尉にとって無事に後方基地へ収容できたのか、それだけが気掛かりだった。
送り込まれたスタッフ、整備兵のリストには自分の弟の名前が記載されていた。
偶々、辞令を受けにいった際に見ることができた。
同じ東南アジア地区だと、メールのやり取りをした事もあったし、まさかとも思ってもいた。
今回の出撃へ熱が入るのは、地球をジオンから守るためなどではない。
ただ、肉親の安否を気遣う。完全な私情だ。
コロニー落とし、その津波で行方不明となった両親や親族。
唯一の家族となった、弟を助けに行くため。
その為だけに、彼は戦場に居る。
『大尉、陣地に侵入しました』
部下からの報告に、彼は意識を戻すと席を立ち、後ろで情報分析をしている部下とそのモニターに向かう。
「陣地内はどうなっている?」
「
「機動力で振り切ることも可能なモビルスーツが、あれで撃破できたのか」
陣地を破壊するつもりでの一斉射だったが、対モビルスーツ戦術を思案する中で、モビルスーツという機動兵器の運動性をある程度は知っている。被弾覚悟で突破ないし、離脱も出来たはずだ。
「…待て、残った建造物はあるのか?」
嫌な予感が、口から言葉を吐き出させた。
「はい、他はほぼ倒壊していますが、兵器格納庫はまだ原型を留めています」
「その兵器格納庫は、モビルスーツが入る大きさか?」
彼は通信機を手に取り、口元に近づけた。
「恐らくは、身を屈めれば―――」
「全隊員に次ぐ、兵器格納庫へ一斉攻撃を加えろ! その中に奴らは居る!」
通信機へ怒鳴り、攻撃を命令。
『りょ、了解!』
驚いたようだが、身の危険が近くにあるのであればと彼らも迅速に応じた。
遠くから砲撃音。それも途切れることなく続く。
汗ばんだ手を、軍服で拭いながら、部下からの報告を待つ。
何かが崩れる音が、木霊した。
「どうだ、中は見れるか?」
『はっ。しかし、動くものはありません』
「…何も無いのか?」
『はい、機材と整備中の戦車しか見当たりません』
「撤退する様子は見られなかった、何処かに身を潜めていると思っていたんだが」
『撃破できた、という事でしょうか』
「いや、ミノフスキー粒子濃度が上がっていない。あの粒子を利用して動いている兵器だ、撃破すれば一定の範囲に拡散する。仕留めたかどうかは、それで判断できる」
『なるほど。では、機能停止の可能性は』
「もし、そうであれば残った僚機が破壊するだろう。敵も鹵獲されたくはないだろうしな」
つまりは、敵は息を潜めて陣地内に居る。
あの図体でよくもまぁ隠れたものだ。
一度後退、炙り出しにもう一手打つべきか。
被害は覚悟の上だが、これ以上の捜索は危険だろう。
「一度下がれ、炙り出しが必要になった」
『了解』
「こっちは急ぎたいんだがな…腰を据えにゃならんか」
その時。きーん、と空を切り裂く音が聴こえた。
「なんだ、航空部隊が敵本隊を叩き終えたのか?」
大尉は後ろを振り返ろうとして、
「うおっ、何事だ!?」
「ば、爆撃です! 敵方から飛来した爆撃機に―――」
悲鳴を上げる部下の声、叩きつけられる衝撃、爆音の中。
「奇襲されたってのか!」
彼の喉から叫びが迸った時。
ホバートラックは、直撃した爆弾に耐え切れず四散した。
「大尉!? 応答願います、大尉!」
前衛を務める戦車隊、その分隊長は金切り音、何かが弾ける音が連続して聞こえる事態に胸騒ぎが止まらず、通信機に何度も声を当てるが返事はない。
彼は格納庫の中を確認するため、戦車から降りていた。大尉の言に従い携帯ライト、銃火器を手に内部の様子を窺う。しかし不吉な音の後に大尉との連絡が途絶えてしまい、中断する事にした。
半壊した格納庫から飛び出し、大尉が指揮を執っているホバートラック、その方向へと視線を向けるが。
「ジオンの攻撃? 一体何処から来やがったんだ!?」
彼の目に入ってきたのは夜闇を照らす、不気味なほどに赤い炎。
演出するのは、上空から攻撃する爆撃機。それを十機、視認した。
この爆撃機が容赦無く、一輌のホバートラックへ集中攻撃しているのだ。
周りを見れば、自分と同じように警戒していた戦車乗りも呆然とその光景を見ていた。
自分たちにとっての司令部、指揮車輌を見つけ出され、撃破されたのだ。
彼はぼうっと数秒間見た後に現実を受け止め、思考を回し始めた。
何故ホバートラックの、指揮車輌の位置が分かるのだ。
周囲を守り、固めていた戦車部隊が前進したのを察知したとでもいうのか。
ジオン軍の別働隊なのか。奴らの本隊は我が航空部隊が攻撃中の筈、其処から抜けてきたとでもいうのか。
別働隊とすれば、状況は最悪だ。
息を吹き返したジオン軍が援軍を得て攻勢に出る可能性が高い。そして敵の攻略隊と本隊、その間に突出する位置に自分たちは居るのだ。このまま何もせずに居れば挟撃されてしまう。
航空隊の攻撃、追撃を振り切って向かってきたとしても同じこと。
指揮車輌、部隊長の大尉と同時に部隊の目と耳を失い各分隊長も混乱している。
爆撃隊が損傷していても、戦車と爆撃機では高度、搭載兵器の差から圧倒的に不利だ。
ミノフスキー粒子が散布されていない今ならコンピュータによる自動照準が可能だが、散布されてしまえばそれも終わり。
自分たちがモビルスーツ相手に優位を保てたのはホバートラックに搭載された
今となっては敵情報は得られず、その場を作る術も無い。
「く、くそっ」
悪態しか発することが出来ない自分が悔しい。
だが、このままむざむざとやられはしない。
自分にも戦車乗りの意地があるのだ。
座して死を待つことだけはしたくない。
彼は戦車に戻ろう、と踵を返したところで、
「いま、何か動いた?」
自分たちが通過した、八時間前は棟が幾つかあっただろう瓦礫の山。
巻き上がった粉塵が積もり重なった、その下で。
―――赤い
その目は大きく。自分の身体、その半分以上はある。
ブゥン、と瞳孔を開くように輝きを増した、そのモノアイ。
「も、モビルスーツ…!」
彼が発した声、その兵器の名称が正しいと言わんばかりに大量の砂と瓦礫を振り落としながら、全長一八メートルを超える巨人が立ち上がる。広がる粉塵と砂塵に巻かれながら、相手を見上げた。
暗がりから滲むように現れた砂漠色の塗装、頭部のブレードアンテナは歪み、装甲板には凹凸が多く、ショルダーアーマーは破壊されその下の防塵材が露出。各部も同じような状況で、亀裂が走っていない場所など一つもない。
「まだ居るのか!」
その近くから、同じように砂と瓦礫を落としながら姿を現す2機のモビルスーツ。
左隣は頭部のモノアイスリットが歪み、レールにも影響が出たのか左側へモノアイが移動することはなく、左肩は肩口から千切れ、脚部にも問題があるのか前に屈んでいる。
右隣のモビルスーツは右脚が破壊されたのか、膝関節部からケーブルと可動部が露出し、その先が無い。膝立ちに近い体勢で機体を起こし、マシンガンを構えると空いた手は地面に着けバランスを取っていた。
どの機体もダメージが見て取れるがコクピットの位置、そして右胸部の部隊章だけが唯一無事であった。
飛び掛る獅子のシルエット、その場所だけは彼らにとっての心臓のようで。
夜闇が濃くなる中で、不思議とそのエンブレムだけは読み取れた。
「こ、こいつら、イカれてる!」
あの砲撃の中を耐え忍び、唯一無事な兵器格納庫から瓦礫の下へ身を隠す事を選択した豪胆さに、彼は畏怖の感情を覚えた。
欺くために、安全地帯から踏み出す勇気。
機を得るために、砲弾が飛来する中で身を隠す度胸。
その境遇に置かれた時、自分にはできるだろうか。
強く食いしばった口、其処から漏れた声が、彼の心を吐露した。
「畜生…!」
自分たちは騙された。
―――プシュー、と排気音。
自分たちはまんまと敵の目前に姿を晒してしまった。
モビルスーツの機動力と運動性ならば、戦車隊はその攻撃範囲内だ。
―――手前にいるモビルスーツが手持ち武器、マシンガンを構える。
押し込めたと思っていたが、釣り出された事に今更ながら気づく。
「畜生っ!」
マシンガンから弾丸が発射され、背後にあった戦車を貫く。
次に生じた爆風と衝撃波に、抗うこともできず意識を刈り取られた。
その後に響く悲鳴、熱波と破砕音が彼に届くことは、無い。
「ガースキー、ジェイク、無事か?」
ケン・ビーダーシュタット少尉はMS-06D、ザク・デザートタイプが以前のザクIIと比べて頑強で装甲強化が成されている事を己の身で十二分に体感した。
『機体は五体満足じゃないが、何とか』
『くそ、脚がやられてる。最悪だ』
機体の状態は良くないが、通信状態は良好だ。パイロットの声も普段と同じに聞こえる。
彼らは敵による包囲が完成される事を見越して、行動を開始していた。
進軍しているのならば、その状況を有効に使うしかない。
古来より使われた手の一つ。
敵を陣深く誘い込み、機を見て反撃に移る。
唯一残るだろう格納庫の周りに点在する半壊した建造物に隠れ、敵の砲撃と必要であれば自ら倒壊させることで機体を下敷きにする。寝そべった状態で打ち付けられる、数瞬前まで構造物だったものに機体を殴られ、潰されながらも耐えに耐えた。
瓦礫の山、夜間帯、機体の迷彩パターン、砂地という条件が組み合わさった事。
彼の両翼を務める二人がこの行為を博打と知った上で、応じた事。
身を隠した後は完全にモビルスーツを停止。
モノアイも閉じられ、完全な暗闇の中で三人は待ち続けた。
暗闇恐怖症、閉所恐怖症であれば気が触れる場所で。
もしも、気づかれれば、そのまま破壊されて終わる戦場の中で。
一つ、二つ、三つ…十数車両分のキャタピラがコンクリートを踏み砕き、接近する音。
どくん、どくんと緊張と不安が脈動を、飲み込んだ唾の音を大きく聴こえさせる。
敵戦車部隊はやはり、無事だった格納庫を包囲し砲撃を開始した。
振動と爆音がコクピットを揺らす。
攻撃されているのは自分ではないが、緊張が緩むことはない。
しばらくして、何かが着地する音が複数。
人間の靴音を捉える。
その音を拾ったケンはデザートザクの起動準備に入る。
機体の自己分析結果は散々なものだ。
必要な措置とはいえ、敢えて被害を被る事となった。これまで自分が被弾したどの結果よりも酷い。
ロイド技術大尉や、小さな整備主任から何と言われるかわかったものじゃない。
ケンの思考に余裕が出てきたのか、戦場外の事すら思い浮かべる。
出力も安定しないし、モビルスーツのパワーも今ひとつだ。
しかし、問題はない。
ケンのザクは立ち上がり、ガースキー、ジェイク機もそれに倣う。
ノイズが走るモノアイには、戦車とその搭乗者だろう連邦軍兵士が映る。
「急いでるんでな、無力化させてもらうぞ」
構えたマシンガンで戦車を破壊、続いてザクのセンサーに表示される敵部隊殲滅に機体を走らせる。
自走可能な彼が囮となって敵の注意を引く。
スラスターは通常の五〇パーセント以下しか確保できず機動力は大きく低下している。だが、それでも時速一〇〇キロメートル以上は確保できた。後は瓦礫の山、凹凸の地形を利用した高低差で敵の射線を遮り、先手を打って攻撃を続ける。
ガースキー機は硬い動きだが、その後に続いた。
ケン機の側面をフォロー、砲身を回頭した戦車を次々とマシンガンで撃ち抜き、敵がまとまった場所、障害物に隠れた時はマシンガンを上空に放り投げ、その間に二八〇ミリバズーカを構え、打ち貫く技量を披露してみせた。
ジェイク機は脚部のダメージから起き上がれず、しかしマシンガンで障害物を崩し、視界を確保すると左腕部の固定兵装、ラッツリバー三連装ミサイルポッドを発射。火柱を二つ作り、目標を失った一発が瓦礫の中に飛び込み、砕けた破片と粉塵、土煙を一層舞い上げた。
偶然か、それとも狙ったのか、それが煙幕となって戦車部隊の視界を塞ぐ。
自走できないジェイク機の周りを掃射、彼の安全を確保すると陣地出入り口付近から砲撃を開始する分隊が迫る。
『隊長、新手だ!』
「ガースキー!」
『ったく、少しは休ませろってんだ!』
ガースキー機は空になったバズーカを腰に戻し、マシンガンを撃ち込む。
背を向けていたケンも反転。火力を集中させ撃破を狙う。
「くそ、こっちも空か!」
警告音。サブモニターには兵装弾薬切れの表示。
撃ち尽くしたマシンガンをそのまま、ケンは瓦礫の山に隠れるように迂回。
ガシュン、ガシュンと足音を夜闇と銃火の中に響かせ、十字路で在った場所で大きく跳躍した。
「うぉおおおおおおおっ!」
着地先は、戦車隊の真上。
注目を引きつけていた為にこちらを探っていた幾つかの砲口が火を吹き、それはデザートザクの左腕、右太腿部を貫通、爆破させた。
ケンは操縦桿を握り、スロットルを絞る。
ゴ、ゴゥ! バーニア光が黒い空間を裂き、両脚を文字通り使い潰して二輌を撃破。さらに倒れ間際に右腕を振り下ろし、マシンガンを鉄の塊に変貌させる代償にもう一輌を叩き壊したのだ。
『無理し過ぎだ!』
生き残った戦車が倒れ伏したケンのモビルスーツに砲身を向けるが、その前に降り立ったデザートザクが残りを掃討。そこでスラスターの限界が来たのか、各バーニアから白煙を上げながら落下した。
着地するも、バランサーがその衝撃で死んだのか。彼の機体もその場に膝から崩れる。
ガシャア、と金属とアスファルトが喧嘩する盛大な音を上げた隣人に声を掛ける。
「そっちもな、ガースキー」
『これはアレですわ、体が勝手に動いたってやつです』
『三機とも、これで行動不能か。…腹括るか』
「なんだ、腹括ってなかったのか。ジェイク」
『しぶとく生きる気なんでね』
『まぁ、話聞いて頷くの早かったしな、お前。隊長、これからどうします?』
「戦闘継続は無理だ。本隊へ帰還しよう。機体は最悪、爆破しなくてはならないが」
コクピットハッチを開きながら、粉塵漂う外気に触れる。
ノーマルスーツのおかげで吸い込む事はないが、長い事居たいとは思わない。
「とりあえずは、友軍と合流する」
ケンは、こちらへ進路を取るド・ダイを視界に収めながら呟いた。
ピ、ピと電子音が聞こえる。
コクピット内を照らす機器類の低光量、モニター画面が瞼を刺激する。
はぁ、と吐いた息が鉄が錆びた臭いに似て、嚥下した唾が酷く喉に張り付いた。
ズキズキと、鈍痛が頭に響く。
計器類にぶつけたのだろうか、額から血が出ているし、胸の奥が痛む。
四肢を軽く張り、痛みが無いか確認。
打撲以外、突き刺さる痛みも無ければ発熱する部位もない。
「意識を失って、戻ったらベッドの上が最高なんだがね」
つまり戦闘継続に、何ら問題ないという事。
「自己診断プログラム、開始。友軍に通信回線開け」
〈自己診断開始。現在はミノフスキー粒子下のため、通信断絶〉
操縦桿に指を這わせ、フットペダルに足を合わせる。
「現時点の兵装、知らせ」
〈ヒートサーベル一、ロスト。他問題なし。
一二〇ミリマシンガン残弾七十八発。ヒートサーベル二、エネルギー効率一〇〇パーセント。シールド被弾率二〇パーセント。ヒートロッド一、二、エネルギー効率九〇パーセント。戦闘継続可能と判断します〉
転倒したままのYMS-07M、先行試作グフ改修M型を立たせる。
「各部状況を」
〈全身に微傷レベル。可動部に支障ありません。各部バーニア、問題なし。
蒼いグフは専用シールドを左手で構え、シールドの裏に収納された一二〇ミリマシンガンを右手で取る。
両手首の下部には固定兵装、ヒートロッドが格納。使用可能表示を信じれば、これも手札に入る。
―――さて、いざ参ろうか。
「対象放熱反応、パターン収集開始及び映像記録開始」
〈対象機動兵器の放熱反応、パターン収集開始。映像記録開始します〉
収音マイクが拾う、ギャリギャリとコンクリートを砕く音。
兵器格納棟、その奥から聞こえてくる。
「地形情報入手開始。入手後仕掛ける」
〈地形情報入手開始。―――二〇パーセント―――四〇パーセント〉
モビルスーツに類する高熱源反応がミニマップに表示。
識別該当なし。
―――来る。
メルティエは機体を上空へ。
メインスラスターが力強く大気を震わし、バーニア
その空間にあった格納棟出入り口シャッターを破壊、続いて飛び出した小型ミサイルの群れが撃ち込まれた。ドドドドドッと驚異的なマシンガン並の連射性、装弾数を見せつけ空中に身を置く蒼いグフへと襲いかかる。
それだけでも恐ろしい性能だが、メルティエを戦慄させたものはこれではなく。
「馬鹿な!」
悠々と姿を晒した敵機体。
其処へお返しとばかりにマシンガンを喰らわせてやった。
高速機動で空中を走ってはいるものの、十発は命中させた筈。
AIも命中報告をメルティエに伝えている。それはセンサーで感知したという事。
目の錯覚でも、誤りでもない。
センサーの誤作動は有り得ない。
今もAIはパイロットへ正確な情報を伝えているし、現に今も意識が逸れた彼を促して建造物を回避させるのに一役買った。
「マシンガンが、一二〇口径の弾丸では効果がない等と!」
今まで対面した敵を喰い破った、一二〇ミリマシンガン。
それを防ぎ切るという。
巫山戯た装甲強度、性能だ。
下半身が
背部から延びる砲身は長く、ザクIIの全長に近いのではないかと思わせた。
両手はマニピュレーターの機能を廃したのか、片手に四門、計八門の射出口が火災で彩られた中で鈍色の光沢を帯びる。火力と連射性に優れたミサイルは、ここから発射されていたのだ。
キャタピラの下半身、底部から推されるように動く。スラスターがあるのか、器用にジャンプ。背部の姿勢制御用バーニアで体勢を崩すこと無く向かってくる。
悪路ではキャタピラで地ならし、そこにスラスターで加速。
障害物があれば飛び越え、しかし照準をも並行で行える技量の持ち主なのだろう。武器腕と砲身が小刻みに動き、メルティエを執拗に追い込む。
正確にグフの軌道を追うミサイル。しかも直進式で、自動追尾機能を有するタイプのミサイルではないのにも関わらず、蒼いモビルスーツに迫っているのだ。
ミサイルに気を取られれば、グフの着地地点を読んだ実体弾が飛来し揺さぶりを掛けてくる。
今のところは回避に成功しているが、相手の高い射撃能力に冷や汗が流れた。
陣地に飛び込む事が多いメルティエだが、今この時はそれ以上の緊張と死の気配を感じられ、余裕というものが無い。
だが、余裕がないから焦るというものではない。
何時しか、彼の呼吸は平時に近いものに戻り、冷静な思考が熱くなる本能を制する。
朽ちた建造物の上を走らせるように誘導、僅かにでも減速すればキャタピラに射撃。
それは相手も理解していた、敢えて前進。
キャタピラの上にある装甲板でカバー。衝撃が機体を揺らすものの、被弾箇所には凹み程度。戦車であれば致命傷のダメージも、この半人半車は意に介さず襲い掛かる。
ダメージが通らない防御力を前面に出し、轢殺するかのように前進一辺倒。
それはこの戦場が凹凸が多く、一度蒼いグフから離れれば奇襲するに向いている場所だからだ。今はマシンガンのみの応戦だけだが、メルティエの機体はヒートサーベル、ヒートロッドを装備する近接戦闘特化が成されたモビルスーツ。
仕切り直し後に不意を打たれるのを嫌い、このタンクモドキは長距離支援型の仕様を無視して距離を離さずにいるのだ。
煙幕後に兵器格納庫に身を隠し、時期を計る判断。
応戦後に地形情報を読み取り、例え機体には向いてなくても最善の行動を選ぶ決断。
その決断を英断にまで昇華する、この技量。
モビルスーツ開発着手が遅れた連邦軍で、ここまでの戦いができる。
身に迫る驚異が、”蒼い獅子”の闘争本能を掻き立て、かつて
肉迫するミサイルにマシンガンを合わせ、数を減らし、誘爆させる。
爆炎と煙を遮蔽に、メインスラスターを開放。暴風が吹いた音を残して前へ。
腰、脚部のサブスラスターが約八〇トンもの超重量を力強く動かし、制御に掛かる。
シールドを離し、左手にヒートサーベルを抜刀。剣状の発生器から高熱波が刀身を形成するのを見届けずに最短の動作、突きを放つ。
バウッ、とタンクモドキは背部のスラスターを使った横滑りで回避。
掠めたのかじんわりと赤熱した胸部装甲、庇うように乱射されたミサイルにマシンガンで応戦。下にあるシールドを蹴り上げ、端を掴むとその場から肩部のブースターの力を借りて離脱。
離れたと思えば砲弾が足場を穿ち、グフの姿勢を崩しにかかる。
「引けば進み、踏み込めば下がる! こいつ、駆け引きが巧い!」
蒼い巨人と、半人半車は互いの攻撃を躱し、受け、
メルティエ・イクスは、この無残にも変わり果てた前線基地跡で強敵と遭遇していた。
彼にとって幸いだったのは、敵機体の射線は思ったほど広くなく、制限されているという事。
「こうも手が出ないとは。素直に相手を賞賛するべきか」
メルティエとて、エースと称されるパイロット。
躱しながら反撃を加え、移動射撃や照準の狂いで外したものもあるが残弾警告がAIに発せられるまで撃ち込んでいる。
それでも敵機は怯まず、撃破できる様子も気もしないのだ。
「厄介な―――むっ」
ゴウッ、と硝煙の中から飛び出した敵機。
両手を突き出す姿勢。その先にはミサイル発射口。
一気に発射、雌雄を決する気か。
彼の目が八つの発射口に吸い寄せる中、ガシャと上から落ちるもの。
砲身が震え、その先から被弾すれば大事に至る砲弾が蒼いグフを目指して突き進む。
最初に長時間相手にさせられたミサイルで視線を釘付けに、その後に本命のキャノン砲で撃破する。
奇襲を警戒していた相手からの奇襲。
意識していた武器は欺瞞、上からという視覚効果も合わさり挙動を制される。
そして、相手は本命の後にも追撃を行う。
駄目押しとばかりに、ミサイルも発射したのだ。
意識外からの攻撃に、意識していたものも向けられ一瞬の隙を作る。
向けられた拳が突如止まり、無防備な下半身を蹴られたようなものだ。
相手は蹴りだけでは止まらず、拳を再度向けてきたわけだが、
「―――飛んだな、
メルティエは、攻撃しつつスラスターを加えて距離を詰めた敵機に向けて獰猛な笑みを浮かべる。
既に彼の四肢は動き、先端の指先は脳からの指令に忠実に動き、蒼いグフがモノアイを爛々と輝かせる。
彼は、何も新兵よろしくその動きを目で追っていたわけではない。
飛び込んでくるタイミングなぞは分からない。
自分は相手の思考を読み取れるわけではないのだ。
先の先を読め、と戦上手は諭すだろう。
簡単に読めれば苦労しないし、古来より積み重なる戦術や切磋琢磨の上に築かれる経験が必要だ。
その手の才能には、生憎と恵まれず素質も宿っていない。
だからこそ、
「
シールドを前に構えた蒼いグフ。
耐え忍ぶ姿勢ではない。
彼は機体を前に倒し、メイン、サブ全ての推進力が顕現。
サブモニター上の速度が壊れたようにメーターを振り切り、獣じみた唸り声を発動機が上げて飛び掛る。
バーニアからは直視できないほどの光量。
その全てがモビルスーツを前へ前へと推す、推し上げる。
メキィ、と嫌な音が彼の鼓膜を震わせる。
ピシャ、と飛沫音がコクピットに木霊した。
それらを飲み込む、グゥォオオッと咆哮に似た大音源。
軋む音を奏でながら、彼の指先は操縦桿のスロットルを振り絞り、更に押し込む。
蒼いグフは撓めた力を開放できる喜びに震えてか、がくがくと揺らし、飛翔した。
―――左に。
「―――――――っ!」
ドドッ、ドウッ! 肩部のブースターが水平移動を掛け、接触位置の砲弾、ミサイルからすいっと身をずらした。臓腑を叩きつけられたような痛みが走り、重く残る。激痛が喉を走るが、彼は犬歯を利かせて食いしばった。
大気圏、狭所内でロールすら魅せて飛び込む。
弾幕を振り切り、前傾姿勢を取り距離を詰めたモビルスーツ。
高速機動に対応してみせるモビルスーツモドキは、容赦無い攻撃を浴びせる。
着弾、削り取られるシールドが耐久限界を越える前に、蒼い軍服の男は親指の下にある三つのパネルの、その二つ目をぐいっと押し込む。
―――バチィ、バシュウ。
通電音、何かが外される音を置き捨てて、二つの飛来物がタンクモドキのキャタピラに突進。
ドォン、と音が二回重なり、爆発すら発生させた痕はキャタピラの履帯を破壊せしめ、剥き出しの車輪を損壊させた。
パージした脚部補助推進、サブバーニアを即席の弾頭に見立てて打ち込んだのだ。
直進するだけで当たるこの位置ならではの攻撃手段。
結果としてタンクモドキは移動が困難どころか、自走不可能。
対するグフは幾らか速度が落ちるも、目に見えてではない。
半人半車は掬い上げるような衝撃に上体が仰ぎ、蜂の巣にせんが如き弾幕が乱れる。
蒼い機体は更に距離を詰め、先ほど相手にされたように両手を突き出した。
シュ、シュ、と空気を裂く二条の線。
青い白い軌跡を残すそれは、相手の両腕に絡まった。
ヒートロッド、伸縮式の電磁鞭が対象を束縛。
メイン、サブジェネレーターから供給された大電流が、敵機を内側から灼く。
エネルギーゲインが軒並み減る中、バババババッと電流が、そこから発生した熱が入り鞭が溶け込むように装甲面に沈む。
電気回路を焼かれる攻撃の中、相手は抗戦するのかグフの肩口目掛けて砲身が降りる。
その口から砲弾が発射されるよりも早くグフの両肩が砲身下に入り、その勢いのままに軽くなった脚部でドロップキックを胸部へ打ち込み、甚大な衝撃を浴びせた。
ぐん、と駆け上がればグフの肩部よりも脆弱な砲身はへし折れ、攻撃手段が潰えた。
ガシャ、と地上に落下したのはタンクモドキの両腕。
ヒートロッドの高温が、対弾性に優れた装甲板も許容範囲を逸脱したのだろう、溶断したのだ。
「降伏しろ、連邦軍パイロット。応じれば南極条約に基づいた扱いを保証する」
敵の武装を無力化したメルティエは、相手の腕前を惜しみ降伏勧告を口にした。
ヒートロッドを格納、腰からヒートサーベルを手に取り刀身を発生させず返事を待つ。
刀身を向けなかったのは、これ以上戦い続ける意味等ないとアピールするつもりであった。
故に。
「甘いな、ジオンのパイロット。首元に刃を突きつけないとは」
グン、とタンクモドキはスラスターに力を込める。
(やはり、駄目か!)
彼も相手が降伏に応じる可能性は低いと見ていた。
だが、優れた戦士を散らすには惜しいと。
タンクモドキは体当たりを仕掛け、蒼いグフは赤い刀身で迎え撃つ。
突く点よりも、払う線を選択したメルティエは突進する機体を薙ぎ払う。
ヒートサーベルは接触、溶断、切り飛ばそうと当てやすい胴体へと迫る。
その前に折れた砲身が邪魔をし、胴に切り込むまで僅かな時間が生じた。
「もらったぞ!」
「なに!?」
それこそが、敵の狙い。
何と、タンクモドキが腹部より上を
ヒートサーベルが断つ前に、胴体部から小型戦闘機が飛び出す。排出した頭部近くに近づくと、頭部のゴーグル型センサーだと思っていたが実は其処はキャノピーで、ノーマルスーツの連邦兵が飛び出すと背負った圧搾空気式リフト・ジェットで戦闘機上に移った。
その曲芸に似た光景に目を奪われ、グフは
「あんな機能、あるんだ…」
呆然と基地跡から遠のく戦闘機を見送り、
〈直近に高熱源反応、すぐに離脱を〉
「―――まさか、核融合炉があるのか!」
地上に転がる上半身、其れから飛び退ると半壊した格納庫を壁に、両肩の防御シールドをクロスさせた。
果たして、膨大な熱量とミノフスキー粒子を撒き散らす光が出現。
起点となった場所に在るタンクモドキの上半身、残されたキャタピラ部はその中へ没し、余波が蒼いグフにまで至った。
「今回はさすがに肝が冷えた」
「確かに、難敵でした」
小型戦闘機、コア・ファイターの狭苦しい中で彼らは互いの健闘を讃え帰還の途に就いていた。
目撃例が少ない敵方のモビルスーツは機動力強化、いや特化型というべき機種。
モビルスーツが空中でロールすらしてみせたのだ。
宇宙空間、ルナツー防衛で幾度か目にしたことはあったが、無重力の宇宙でこそだろう。
重力下で行うなど、正気の沙汰ではない。
いくら攻撃と回避を両立させる事が出来る、と言えどもだ。
「この戦線も長くは続かないな」
今作戦のみの相棒となった間柄の二人は同じく元戦闘機乗りだ。
二人は連邦軍総司令部ジャブローへ向かう途上、この前線基地へ立ち寄っただけに過ぎない。
辞令を受け、その移動中だったのだ。途中で輸送する積荷があったために大きく迂回する羽目になったが、輸送隊の定期便に乗せてもらっているのだ、贅沢は言えまい。
問題はこの東南アジア防衛戦線に着任した司令が早々に攻勢を掛けたところだろうか。
司令には司令なりの勝機が見えたのだろう。そう思わなくてはやっていられない。
戦車部隊を前衛に、航空部隊を遊撃兵、陸上艦艇を後衛にした部隊は各前線基地と連携を取り、じわじわとジオン軍の勢力圏を締め付けていく筈であった。
しかし、この前線基地司令は敵が来ると彼らが搭乗していたミデア補給艦を徴発、少ない側近を連れて逃亡。基地防衛戦力とそのまま置き去りにされたが、梱包されたままの積荷が一時仮置きで兵器格納庫に置かれていた事を知っていた彼らは共にジャブロー行きになる筈だったRX-75、ガンタンクに搭乗しジオン軍と交戦することに決めたのだ。
射撃のセンスが優れる中尉が砲手、操縦と戦闘機の腕に定評があった少尉が操縦士となり。タンクモドキを火器管制が集中した頭部、機体制御と操縦を腹部から操り、それぞれが専任となる事で集中できた。
ジオン軍のメルティエが優れた射撃、操縦と戦慄したがこのようなタネがあったのである。
彼らは各操縦席でカタログを開き、早読みで流す内に整備士に気づかれ降りろとまで言われたが、その要求を無視して出入り口へ移動。長距離戦仕様であるならばと自軍と肩を並べて不慣れな間接照準射撃を開始。
しばらくした時、爆撃機の上からモビルスーツが狙撃、うち一機が降下してきたので撃ち落とそうと四〇ミリ四連装ポップランチャーで迎撃するが五色の煙幕に巻かれたので兵器格納庫内へ後退。
敵の動きが止まり次第打って出る事に決め、蒼いモビルスーツと戦闘となったのだ。
まさかモビルスーツのマシンガンを受けても穴が開くどころか損傷が凹みのみとは、最初は信じられない出来事が重なったが連邦軍モビルスーツが戦線へ配備されれば、ジオン軍の猛攻を跳ね返せると希望を抱かせるには十分だった。
しかし明るい展望とは裏腹に、彼らの表情には暗いものがある。
それは上層部の腐敗、と言っていいのだろうか。
部下を見捨てて逃げる。
この行動を目の前で、実際にされた二人は陰りを生むには十分過ぎた。
今も続いているだろう、眼下の戦いを指揮する司令にも猜疑の目が向かうのも止むを得ない。
現実を見つめれば、彼らは正に敗戦の途中であった。
「何故、ライヤー大佐は攻勢に出たのか」
作戦前から疑問に思っていた。独り言だが、彼はそれを拾う。
「ライヤー大佐はレビル将軍をライバル視しているそうだ。噂話だがね」
「…では、この戦線は」
ジオン軍に押される戦線を押し戻し、戦果を上げる場。
点数稼ぎ、ライバルと目す人物を見返す為だけのものだと。
ただの私情から発し、兵士が血を流しているという事なのか。
「噂話だよ、少尉。我々はベストを尽くす、それだけだ」
彼にも思う所があるのだろう、でなければ噂話とは言え上官のマイナスイメージを植え付ける事なぞはすまい。
ベストを尽くす、そう言う彼の言葉には信念が込められている気がした。
「中尉の言う通り、自分もベストを尽くします」
その後、彼らは語ることは無く。
合流予定だった本隊が、六機のグフタイプに殲滅され最寄りの基地へ帰還するまで一言も発する事はなかった。
数ヵ月後、彼らはジャブローで新兵器の訓練を終える。
数少ない同郷だった二人は挨拶を交わし、その後別れた。
中尉はオーストラリア大陸へ向かい、同地で特務小隊を率いる指揮官として。
少尉は各戦線を渡り、モビルスーツの実戦データ収集を目的とした部隊へと。
「蒼いモビルスーツ、か」
言葉を交わしたあのパイロットとも、何処かの戦場で巡り合う時が来るのだろうか。
そう遠くない未来だろうと、彼は予感した。
閲覧ありがとうございます。
上代です。ご機嫌如何。
活動報告の方でアンケート実施中。
コメントに興味深い内容が多い。何かの際に入れてみよう。
今回はノリスさん出せなかった。
主に文章量の問題で(白目)
インパクトある文面って難しいね、平坦な文字の集まりになっちゃう。
面白いと言ってくれる人たちの優しさで執筆できています、感謝感謝。
次話、もしくは同時進行で外伝も書いていきます。
その分更新が遅れますが、長い目で見守ってください<(_ _)>
最後に誤字連絡、評価、感想毎度ありがとうございます。
次話をお待ちくださいヾ(*´∀`*)ノ
追伸:メルティエを追い込むと執筆が加速する事に気がついた。この流れに乗るべきか…(逃亡)