恥ずかしがり屋の司書の異世界譚   作:黒蒼嵐華

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ネギまが再ブームになってしまったので、勢いで書き始めました。


プロローグ
0時間目


 ――皆様、ご搭乗ありがとうございました。当機はまもなくロンドン・ヒースロー国際空港に着陸いたします――

 

 え? もうロンドンについたんだー。じゃあ後はウェールズまで行ってゲートまで行くだけだったよねー。ネギ先生(せんせー)は空港で待っててくれるんだよね。高校生になって初めての夏休みだし、夕映にはやく会いたいなー。夕映はアリアドネーで魔法をするために留学中だから会うのは久しぶりだなー。ゴールデンウィークはアイシャさんたちとは一緒に色んなダンジョンに行ったけどー、それで夕映とは会う時間がなかったから余計に楽しみだよー。

 

飛行機の座席にいた少女――宮崎のどかは自分の荷物をまとめ、飛行機を降りるために準備を始めた。着陸し、降りるように支持するアナウンスが流れると、のどかは到着口に向かって動いている人の波に乗って動いた。そして、入国審査やらいろいろなことを終えると、荷物を受け取った。のどかに向かって走ってくる少年の姿を見つけた。

 

「のどかさーん、こっちですよー」

「あ、ネギ先生(せんせー)、お久しぶりです」

「そうですね。お久しぶりです、のどかさん。それじゃあ行きましょうか」

「はいー」

 

 少年の名前はネギ・スプリングフィールドと言う。ネギは11歳だが、ちょうど4ヶ月ほど前までは麻帆良学園女子中等部の教師を勤めていた経験を持っている。更に今はBlue Mars計画の発案者でもあり、魔法世界(ムンドゥス・マギクス)を救った英雄でもある。そんな英雄と親しいのどかは、彼が教師を勤めた約1年間ネギの生徒だった。また、彼と契約したパートナーの一人でもある。

 

「のどかさん、最近勉強の方はどうですか? 心配ないと思いますけど、何かわからないことがあったら遠慮なくメールしてくれて構わないですよ。もっとこうして皆さんと会いたいんですけどね……」

「いえー、勉強の方はまだ大丈夫ですよー。そうですよねー、先生(せんせー)はお仕事すっごく忙しいですからー。」

 

 二人はそんなような会話をしながらネギの故郷であるウェールズへと向かった。ウェールズには魔法世界へと続くゲートがある。世界に12箇所あり、麻帆良学園にもある。麻帆良学園のゲートの調子が悪いので、のどかは今回ウェールズのゲートを使うことにしたのだ。

ウェールズに着き、ネギはのどかに話しかける。

 

「じゃあ、のどかさん。とりあえず今日は(うち)で休んでください。長旅で疲れたでしょう? 家でネカネお姉ちゃんが料理を作って待っててくれているはずですから」

「ネギ先生(せんせー)は戻らないんですか? 用事があるなら私もお手伝いしますけど……」

「いえ、戻りますよ。その前にスタンさん達に会いに行こうと思って」

「あ、そうでしたか。わかりましたー。先にお邪魔させていただきますー」

「はい! じゃあまたあとで」

 

 ネギは大きく手を振りながら、笑顔で去っていく。のどかはそんなネギに声をかける。

 

「ネギ先生(せんせー)! このかさんがすっごくすっごく頑張ってますからー! 絶対に大丈夫ですー!」

 

 本来のどかはおとなしい少女だ。前髪で目を隠し、恥ずかしがり屋ないわゆる文学少女である。そののどかが大きな声で叫んだのだ。ネギは思わずこちらを振り返り、また笑顔でのどかに答える。

 

「のどかさーん! ありがとうございます! 少しだけ不安になっちゃってたけど、木乃香さんがそんなに頑張ってくれてるなら心配ないですね! じゃあすぐ治るってスタンさんに報告してきますよー!」

 

 のどかはネギの晴れやかな笑顔を見て赤面しながら、その場に立ち尽くしていた。

 

 あわわわわ、ネギ先生(せんせー)があんな風に笑うの久しぶりにみたよー。うぅ、やっぱりあの子が羨ましいなー…………あ、ネカネさんのところに行かないとー。待たせちゃってるかもしれないしー。

 

「のどかちゃん、いらっしゃい。ご飯も作ってあるし、日本式のお風呂も入れておいたわ。とりあえず、ネギが来るまで少し時間あるでしょうし、お風呂入ってもらっていいかしら?」

「はいー、わかりましたー。えーっと、荷物はどこに置けばいいですかー?」

「そうねぇ……のどかちゃんが泊まる部屋はここだからここ置いておけばいいわ」

「ネカネさん、ありがとうございます」

「いいのよ、気にしないで」

 

 のどかは言われた部屋に荷物を置き、荷物の中から着替えを取り出し、着替えてから風呂場に向かった。

 

 ふぅー、いいお湯だなー。イギリスでもこんなふうにお風呂に入れるのは嬉しいなぁ。明日は早いし、今日はさすがに本は読めないかなー。ネカネさん、料理も準備してあるって言ってたから早めにあがろうかな。

 

 のどかが体や髪を洗い終え、お風呂を上がったところで気づいたことがあった。身体を拭くためのバスタオルがないということだった。その瞬間、扉が開けられた。入ってきたのはいつの間に帰ってきたのかネギだった。ネギはネカネに言われてバスタオルを持ってきたのだ。ネギと目があったのどかはしばらくすると、キャーッと叫び声を上げ、腕で身体を隠しながら膝を曲げた。ネギは顔を真っ赤にしながらも、のどかに持ってきたタオルを謝りながら渡した。のどかのスタイルは一概に良いとは言えないが、かなり綺麗な身体をしている。胸は小ぶりだが、お腹から胸にかけてのラインを見ると美しいと形容され、足から腰を見ると、足は長く、腰も女性的なそれになっている。また、お風呂上がりで肌がほんのりと紅潮して綺麗なピンク色になっている(ネギに見られたからかもしれないが)。前髪もいつものように目にかかっていないので(最近はいつも目は出ているが)、のどかの可愛い顔がよく見えるようになっている。

 

「ね、ねねね、ネギ先生(センセー)、あのそんなに見られると……恥ずかしい……です」

「……あ、あ、え、えと……のどかさん、ごめんなさーい!」

 

 のどかはもっと頬を紅潮させてネギに抗議すると、ネギは年頃の男子らしい反応を見せて慌てて出ていった。その後、ネカネにからかわれたのは言うまでもないことだった。

 

 夜が明けて、のどかとネギはゲートにいた。初めてのどかたちがゲートを使おうとしたときは案内人が必要で、人も多かった。だが、今はあまりそういうことを必要とせずに動くようなシステムになっている。これは麻帆良のオーバーテクノロジーと魔法使いが協力して成り立っている。

 

 昨日は恥ずかしいコトがあったけど……い、今はそれは置いおくとしてー。夕映にやっと会えるんだー。待っててね夕映―。

 

「……かさん。のどかさん」

「ふぇ? あ、なんですかー?」

「ゲートを開きますから準備してください」

「はいー、わかりましたー」

 

 ネギはのどかに合図を送ると、ストーンヘンジには似つかわしくないゼンマイを巻き始めた。このゼンマイを巻くと魔法世界(ムンドゥス・マギクス)に繋がるゲートが開くのである。ストーンヘンジに刻まれていた魔法陣がゼンマイを巻くたびに呼応して、輝き始める。次第にその輝きは増していき、のどかとネギを包み込んだ。

 

そこで、異常が起きた。

 

本来ならば一瞬で着くにも関わらず、10秒、30秒、1分経ってもまだ光の中にいるのだ。しかも、体が段々と浮き始めた。

 

「のどかさん、どうやらここも壊れているみたいです。このままだと、どこの世界に行くかわかりません! 下手したら向こうに行けずに、並行世界に飛ばされるかもしれません!」

「ほ、本当ですか!? ネギ先生(せんせー)! これをー!」

 

 のどかが自分のカバンから投げたのは小さな懐中時計だった。それを見たネギは驚愕した。

 

「これって!? なんでカシオペアがここに!?」

「似ていますけど、違うものです! これはこの前のゴールデンウィークでアイシャさんたちと見つけたマジックアイテムの一つです! ほんの少し魔力を込めると未来へ跳ぶ力があります!」

 

のどかが説明している間にも、ネギとのどかの距離は離れていく。ネギは急いでのどかを引き寄せようとした。

 

「のどかさん! (クソ、なんとかしてのどかさんの側に行かないと、のどかさんは助からない!) ラス・テル ラ・スキル マギステル!」

「ダメです! せんせー! この中でせんせーの魔法を使ったら多分戻ってこれないと思います! 私のことは心配いりません! ネギ先生(せんせー)は脱出してください!」

「でも!」

「大丈夫です! 私だって白き翼(アラアルバ)の一員です! 刹那さんや楓さん、それに夕映と比べると頼りないかもしれないですけど、ネギ先生(せんせー)信じてください!」

 

 ネギはのどかのその言葉に信頼と同時に、自分の不甲斐なさを痛感した。もっとはやくのどかを自分の元に引き寄せていれば、もっとはやくにゲートが故障していると気付けていれば……そんな後悔の念がネギを支配していた。

 

「そうですよね、のどかさんだってあの夏の冒険を乗り越えてきたんですから。それに今はもっと身体強化もできますしね。……のどかさん、ごめんなさい! 絶対に見つけてみせます!」

 

 ネギが光の中から姿を消すと魔法具使ったからか、光がより一層強くなり、一気にのどかを包み込んだ。

 

 うう、あんなこと言っちゃったけど、やっぱり少し不安だよぅ。夕映ゴメンね。またしばらく会えなくなっちゃった。せんせー、迷惑かけてごめんなさい。

 

 のどかは光に呑まれながら自分の親友と初恋の相手を想い消えていった。一方ネギはカシオペアの力で未来にたどり着いていた。のどかが消えてからほんの数秒後の未来だった。

 

「光は収まってる。のどかさんはどこか別の世界に飛ばされた可能性が高いな。クソォ!僕がもっとしっかりしていれば! 夕映さんに合わせる顔がないよ……」

 

 のどかが目を開けるとそこは見たことのない場所だった。自分の荷物も同時に飛ばされてきているのを確認した。周りは一面が草原。唯一建物があるとすれば、中世風の城のような建物だった。

 

「ここは……? とりあえずあの建物に行こう。もしかしたら魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の一部かもしれないしー……」

 

 そんなのどかの淡い期待はそこで出会った人々によって裏切られることになった。

 




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