ある父親の子育て日記   作:エリス

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Chapter.0 Born again
プロローグ


「行ってきます」

「傘は持った?」

「持ってる」

「そう、じゃあ行ってらっしゃい」

 

母親の声を聞きながら、俺は家を出る。

空を見ると、天気は曇り。

確か、天気予報では降水確率が50%、とか言ってた気がする。

雨も降らないうちに急ぐか。

いつ降り出すかもわからないから、早歩きで高校に向かうことにした。

別に、まだ走らなければ遅刻するような時間でもないし、無駄に走って疲れるのも嫌だ。

ただでさえ、今日は体育の授業がある。

朝のうちから疲れる必要もないだろう。

 

高校までの道には、信号は三つある。

一つ目と二つ目は、赤信号で止められてしまった。

青信号で通れたときは多少良い気分になるもんで、その反対となると、少し気落ちしてくる。

そして三つ目に差し掛かったのだが、青信号が点滅しているとこだった。

まさか、三つとも赤で止められるとは…。

思わずため息を吐いてしまうのも仕方がないだろう。

まぁ、急いでないしいいか。

そう思って、携帯でも開くかと思ってポケットに手を入れようとしたときだった。

足元の横をボールが転がっていった。

……ボール?

そしてすぐ後に聞こえてくる、感覚が短い、足音。

そちらを向こうとしたときには、既に自分の横を通り過ぎていて。

……まさか。

道路の方に向き直ると、ボールに追いついて、嬉しそうにボールを取ろうとする女の子の姿。

信号は、赤。

 

(なんてテンプレだよ!)

 

何人か、俺と同じように信号を待っていたのだが、呆然としているのか、自分が大事なのか、なんなのかわからないが、すぐに女の子を助けようとする感じはない。

俺も1、2秒位状況を理解するのに動けなかったが。

気付くと、女の子のいる方に飛び出していた。

走り出したと同時に聞こえてくるクラクションの音。

車が来ているのはわかるが、確かめる余裕は無い。

女の子は自分に迫る危機を頭の中では理解できていないのか、クラクションの音がした方を見て、ただ立っているだけ。

走っている途中で、一つ気がついたことがある。

 

(……これ、両方助かるのは無理だな)

 

陸上部でもない、50メートル走7.1秒程度の俺では、多分出来て、女の子を突き飛ばすことくらいだろう。

もう少しで、女の子に手が届く距離に来る。

しかし、車のブレーキ音もすぐそこ。

 

(間に合え……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神に祈りが届いたからなのか、普段の俺の行いが良かったからなのか、はたまた火事場の馬鹿力が出たのか。

結果的に言えば、俺は女の子を道路の端辺り、車が通らない辺りまで突き飛ばすことに成功した。

そして。

 

今までに味わったことがない衝撃を、俺の体を襲うのは、その直後だった。

 


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