魔神相剋者の夢   作:名無しのごんべい

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第2話 「初訓練……なの!」

 私が彼と初めて出会ったのはとある遺跡の中。

 その時は彼に意識はなかったけど、アースラで治療していた彼が目覚めたと聞いたときは本当に驚いた。

 だって、目を覚まさないんじゃないかって思ったんだもん。

 

 目を覚ました彼はほとんど何もしゃべらなくて、いつもはやてちゃんにべったりだった。

 ある時からそうでもなくなったんだけど、それから私たちは幼馴染の間柄になった。

 管理局にみんなで入局するって言った時はなぜか彼は渋っていたけど、結局は私たちについてきてくれることになった。

 

 彼はいつも私たちを護ってくれてる。

 いろいろと文句も言うし、一度は私たちの行動に反対をするけど、それでも最終的にはいつも私たちに付き合ってくれる。

 彼は私たちのストッパーなんだと思う。

 

 暴走しがちな私たちに一度ブレーキをかけてくれる。

 その彼がかけるブレーキを無視した結果が大怪我を負った私なんだけどね。

 だけど、最近また彼の記憶を戻してあげたいと思うようになった。

 彼は気にしないって言うけど、私は気にする。

 きっと私だけじゃなくて、フェイトちゃんやはやてちゃんも気にしてると思う。

 シャマル先生もそれとなく術式の解析を進めてくれてたみたいだけど、まだ成果は出てない。

 

 私たちはいつも彼に助けられてる。

 普段は頼りなくて、すっごく不幸な目にあっているのに、本当に必要な時にいてくれる彼。

 

 

 

 今度は、私たちが彼を助けてあげたいな。

 

 

 

 

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「そう言えば、自己紹介はもう済ませた?」

 

 私の後をついてくるフォワード隊の新人たちに聞く。

 みんな鍛えがいがありそうな子たちばかりだ。

 そう言ったら智春君は若干引き攣った笑みを浮かべてたっけ?

 

「え? あ…えっと……」

 

「名前と、経験やスキルの確認はしました」

 

「後部隊分けと、コールサインもです」

 

 言いよどむスバルの代わりにティアナとエリオが答えてくれる。

 

「そう。じゃあ訓練に入りたいんだけど……いいかな?」

 

「「「「はい!」」」」

 

 正直さっきからこの子たちを見てるとこう……胸の内から「鍛えたい!」って気持ちがせりあがってくるのを我慢できなくなってくる。

 いい返事ももらえたことだし、さっそく最新式の設備を使ってこの子たちを鍛え上げよう!

 

 私は訓練場に着くまでこみ上げてくる笑いをこらえるのに必死だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 訓練着に着替えた新人たちにデバイスを返し、シャーリーを紹介する。

 私とシャーリーたちで作り上げたシュミレーターにみんなが驚き、それで少し気分がよくなる。

 みんなの準備が終わり、シュミレーターの中で配置につかせる。

 

「よし、と。みんな聞こえる?」

 

『『『『はい!!』』』』

 

「じゃあ、さっそくターゲットを出していこうか。まずは軽く八体から」

 

「動作レベルC、攻撃精度Dってとこですかね」

 

「うん!」

 

 シャーリーの気の利いた設定に頷く。

 相変わらず細かいところで気の利く子だ。

 

「私たちの仕事は、捜索指定ロストロギアの保守管理。その目的のために、私たちが戦うことになる相手は…………これ!」

 

 私が言い終わると同時に新人たちの前にガジェットが現れる。

 

「自立行動型の魔道機械。これは、近付くと攻撃してくるタイプね。攻撃は結構鋭いよ?」

 

 シャーリーの簡単な説明が入る。

 実際、あれはガジェットの中で一番弱い敵だが、数も一番多い。

 これからあの新人たちが一番多く戦う相手だろう。

 

「では、第一回模擬戦訓練。ミッション目的、逃走するターゲット八体を破壊、または捕獲。十五分以内!」

 

『『『『はい!!』』』』

 

「それでは!」

 

「ミッション……」

 

「「スタート!!」」

 

 私とシャーリーの号令と同時にガジェットたちが動き出す。

 

 それを追いかけるスバルと回り込むようにビルの上へと登るエリオ。

 ティアナはあるビルの上へとキャロとともに陣取って全体の指揮を執る。

 キャロはティアナの指示で支援魔法を使う。

 

(スバルが追い込んでエリオがとどめ。討ち漏らしてもキャロの魔法で強化されたティアナの射撃で撃墜……かな? 即席だけどいいコンビネーションだね)

 

 ガジェットの独特な軌道によってスバルの射撃もエリオの斬撃も当らない。

 ティアナの射撃は正確ですべてガジェットに直撃……するはずだった。

 

 AMF。

 

 魔法を阻害するこの特殊なフィールドのせいでティアナの射撃は通らない。

 ウィングロードを使って追おうとするスバルも、シャーリーがAMFの出力を全開にすると途中で道が途切れ、そのままビルに突っ込んでしまった。

 

「対抗する方法はいくつかあるよ? どうすればいいか素早く考えて、素早く動いて?」

 

(さて? これでティアナたちは攻略法を見つけることができるかな?)

 

 現状で新人たちがどれだけやれるのか、どこをどう鍛えてあげればいいのか。

 考えるだけでワクワクする。

 

「へー! みんなよく走りますねぇ!」

 

「危なっかしくてドキドキだけどねぇ……。デバイスのデータ取れそう?」

 

「いーのが取れてます! 四機ともいい子に仕上げますよぉ! レイジングハートさんも、協力してくださいね!」

 

《all right》

 

 危なっかしくてドキドキ……か。

 そう言えばあのころの智春君もいろいろと危なっかしい子供だったなぁ。

 

 

 

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「というわけで、この子……智春って言うねんけどな? 家で面倒見ることになってん」

 

 はやての突然の言葉に、目を丸くするなのはとフェイト。

 

「え~っと……まず、その子が起きていたことが驚きなの」

 

「う、うん」

 

「いや~ごめんな? 智春が起きてからあれよあれよという間に家に来ることが決まってもうたから…」

 

 そんな三人の視線は、相変わらずどこを見ているのかわからない智春へと向いている。

 

「え~っと……智春?」

 

「……?」

 

 はやての声に反応し、はやての方を向く智春。

 

「この子たちが、私と一緒にあんたをあの遺跡から助けた私の友達の……」

 

「高町なのはです! なのはって呼んでね!」

 

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです……よろしくね?」

 

「……」

 

 なのはとフェイトの自己紹介に少しだけなのはたちの方を見て……そのまま何事もなかったかのように再び虚空を見つめる智春。

 

「ちょっ!? 無視はやめてほしいの!」

 

「私たち……何か気に障るようなことしたかな?」

 

「いや、どうも私以外が話しかけても同じ態度取るようやねん。一緒に助けた二人なら大丈夫かな~って思ったんやけどな~……。ごめんな二人とも」

 

 落ち込む二人をはやては励ます。

 

「……落ち込むな。次がある」

 

 すると突然、智春がそう言った。

 

「……今、しゃべったの?」

 

「って言うか落ち込んでる原因はトモハルなんだけど……」

 

 

 

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(それから、智春君は少しづつ私たちとお話をしてくれるようになったっけ?)

 

 そんな昔のことを思い出しているとシュミレーターの方で動きがあった。

 エリオが橋を崩し、飛び上がって逃げ出したガジェットをスバルが魔力を纏わせたこぶしで殴りつける。

 残念ながらAMFを突破することはできなかったが、まだまだこれからだろう。

 

 そう思ったらスバルが後ろに来たガジェットを蹴り倒して馬乗りになり、そのまま直接殴る。

 スバルの拳はガジェットの装甲を貫き、ガジェットはそのまま爆発した。

 

 そして残った三機のガジェットに向けてキャロの使い魔であるフリードが炎のブレスを放ち、そのまま火あぶりにする。

 逃げられないように召喚魔法で呼び出した鎖を使って捕縛している。

 

「ほぇ~! 召喚ってあんなこともできるんですね~」

 

「無機物操作と組み合わせてるねー。なかなか器用だ」

 

 通常のバインドとは違い、魔法ではなく普通の鎖を使っているのでAMFの影響も受けない。

 よく考えてるね。

 

 一方、ティアナはデバイスを構えてカートリッジをロード。

 射撃体勢に入る。

 

「魔力弾!? AMFがあるのに!?」

 

《いいえ、運用する方法があります》

 

「うん」

 

 レイジングハートの言葉にうなずく。

 全ての射撃魔法が無効化されるなら、私のような高ランク以外の射撃型魔導士は対ガジェット戦闘において全くの役立たずだ。

 それでも射撃型魔導士が戦えているのはある特殊な魔法を使っているからだ。

 それを、今からティアナは使おうとしているのだろう。

 

「フィールド系防御を突き抜ける、多重弾殻射撃。AAランク魔導士のスキルなんだけどねぇ」

 

「AA!?」

 

 シャーリーが驚くのも無理はないだろう。

 Bランクの魔導士であるティアナが使うにはちょっと厳しい魔法だ。

 

 だけどティアナはやってのけた。

 一発の弾丸に魔力を注ぎ込み、その一発で二機のガジェットを撃ち抜いた。

 

 その後も残ったガジェットは全て掃討された。

 

「お疲れ様!! 一回休憩しようか!」

 

『『『『は、は~い』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高町」

 

「あ! シグナムさん! …………と、今日の遅刻魔」

 

「助けて~……」

 

 新人たちを休憩させていると、智春君を引きずったシグナムがやってきた。

 

「今から休憩か?」

 

「うん。そっちは?」

 

「主から言われていた智春との模擬戦だ。少しここを借りてもいいか?」

 

「うん! みんな! 休憩の前にシグナム二等空尉と八神准尉の模擬戦を見ようか。特に八神准尉はみんなと同じ陸戦魔導士だから動きとか参考にできると思うよ」

 

「うむ。しっかりと見ておくんだな。こいつも、こう見えて結構やるやつだからな」

 

「別にできなくていいから勘弁してください!」

 

「なに、そう遠慮するな。お前にとっても後輩たちに見せた汚名を返上できるいい機会だろう?」

 

「返上しなくていいから離してくれ~!! シグナムは加減を知らないから嫌なんだよ~!!」

 

 シグナムはそのまま智春君を引きずってシュミレーターの方に行く。

 その後を智春君の使い魔であるサラマンダーのペルセフォネが追おうとし、何を思ったのかこっちに戻ってきてフリードの周りをくるくると飛び回る。

 

「わ? わ!? この子なんですか!?」

 

「あぁ。その子は八神准尉の使い魔でペルセフォネって言うんだ。種族はサラマンダーだから、何かフリードに感じたのかな?」

 

「……それで、失礼ですけど八神准尉ってお強いんですか?」

 

「へ? あぁ、そうだね。朝のあの姿を見ちゃうと、そう感じちゃうよね」

 

 正直、朝のあの情けない姿は幼馴染として恥ずかしくなってくる。

 智春君の不幸っぷりは知っているから多分あの時言っていたことは全て本当なんだろうけど……。

 初対面のこの子たちには必死に遅刻の言い訳をしているようにしか見えないよね。

 まぁその通りなんだけど。

 

「大丈夫だよ。確かに普段は頼りないけど、Aランク魔導士としての実力はちゃんと持ってるから」

 

「Aランク……私たちの一つ上だね、ティア」

 

 この子たちとランク的には一つしか違わない。

 だけど、間違いなくランク以上の力を持っていると思う。

 

 その理由は智春君が持っているレアスキル。

 

 あれは反則だ。

 どんな魔法だろうが、どんな兵器だろうが、AMFでさえもあのスキルの前にはまったくの無力だ。

 

 名前はない。

 

 智春君は何か呼び名を決めているのかもしれないけれど、私たちは聞いたことはない。

 ではなぜそんな能力を持っている智春君がAランクに収まっているのかというと、それは手を抜いているからだ。

 智春君は私たち以外の管理局員がいる場合は何があろうとあのスキルを使わない。

 レアスキルを持っていないかの検査でもあのスキルは何故か検知されないから今まで一度もばれたことがない。

 だから智春君は今Aランクになっている。

 実際あのスキルを使わずに戦った場合はランク通りの戦闘力なので問題はないと思う。

 たまにこちらが驚くような戦法をしてくることもあるけど…。

 

「本当に地上でしか戦わないんですね。ビルの上にすら登らないなんて……」

 

「いや、感心してるところごめんねエリオ。あれにはちょっとした理由があってね」

 

「理由……ですか?」

 

「うん。あれ、ビルの上に登らないんじゃなくて、登れないんだよ」

 

「? 登れない……ですか?」

 

「うん。八神准尉は……重度の高所恐怖症だから……」

 

「「「「へ?」」」」

 

 うん。私も初めて知った時は目が点になった。

 だって学校の屋上すら駄目だったんだもん。

 一応飛行魔法も覚えているんだけど、子供のころに試したらちょっと飛んですぐに下りてきてそのままはやてに抱き付いて震えていたっけ?

 シャマル先生は記憶をなくす前になにかあったのかもしれないって言ってたっけ。

 

 そのせいもあって戦闘はシグナムさんがわざわざ智春君の土俵に立って剣と刀をぶつけ合っている。

 

 少ししてシグナムさんと智春君が同じ技……確か紫電一閃……を同時に放ち、威力で劣る智春君が押されてそのままノックアウト。

 模擬戦はシグナムさんの勝利で終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 模擬戦を見学した後再び訓練を再開。

 その後は夜までみっちり訓練。

 みんな疲れ果てて寮に戻る足取りがふらふらだった。

 

 そんなあの子たちを見送って、訓練の後始末をして明日のスケジュールを確認してから私も寮に戻る。

 

 フェイトちゃんと同室の私は、帰ってきて上着を脱いでフェイトちゃんを待つ。

 するとすぐにフェイトちゃんは帰ってきた。

 

「新人たち、手ごたえはどう?」

 

「うん、みんな元気でいい感じ」

 

「そう……立派に育って行ってくれるといいんだけどねぇ」

 

「育てるよ……あの子たちがちゃんと、自分の道を戦っていけるように……ね」

 

 そう、私にはその義務がある。

 もう二度と私のような子たちを出しちゃいけない。

 ちゃんと自分の限界を見極めて、無茶をしないように。

 そのために、私は教導隊に入ったんだから。

 

「そう言えば、トモハルはどうだった?」

 

「もうみっちりシグナムさんにしごかれてたよ! 結構いい勝負してたけどね」

 

「純粋な剣技だけなら、シグナムにも劣らないもんね」

 

 そう、魔法を入れると私たちの中でも弱い方になっちゃうんだけど、魔法無しの勝負になるとシグナムくらいしかまともに戦いになる人間がいなくなる。

 それにあのレアスキルを使われると私たちでは誰も勝てなくなるんだからつくづく不思議な人だと思う。

 

「なんにせよ、ようやくはやてちゃんと私たちの夢の始まりだね」

 

「うん。みんなで同じ部隊で働く……ずっと夢だったもんね」

 

 そうだ。

 ようやく私たちの夢がかなったんだ。

 これから忙しくなる。

 レリックの調査。ガジェットの追跡。

 そして今回の一連の事件の裏に潜む者の追跡。

 私たち全員が協力して事に当たらなければ解決できないだろう。

 

「がんばろうね、フェイトちゃん」

 

「うん。みんなで一緒に!」

 

 




どうも、少し遅くなった名無しのごんべいです!
今回は原作3話のほとんど丸々です!
智春君の戦闘を期待してた人はごめんね!
次回でやるから許してください!

今回原作見てる人にはちょっとしたおさらいになりますね。
全然オリジナル要素がなかった。

因みに智春君のレアスキルって言うのはシュバルツシルトの闇のことです。
サノバ・ジンです。


というわけで次回は今回の話の智春君サイドとファーストアラートへの導入ですかね。

後、タグで一つ重大なものをつけてなかったのでつけときます。

正直蝶☆ネタバレになるんで付けたくなかったんですが、それだとまったく耐性のない人が見てしまいそうなので追加しときます。
やばいと思ったらすぐにプラウザバックした方がいいです!

ではまた次回お会いしましょう!サラダバー!



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