俺にはどうしたって苦手なものがある。苦手なもの、つまりは弱点と言い換えてもいいだろう。
それらは自分でも弱いと分かっていても対策のしようもなく、苦手なまま変えられないでいるものばかりだ。分かっていても克服できないから、それは弱点足りうるのである。
まず一つ、辛すぎる料理。これは今の俺になってから、特に苦手になったものだ。
以前の“俺”は辛いものをたいして苦手だと思ったことはなかった。むしろ、わりと好んで食べていた気がする。激辛などと表示されているパッケージを見ては、よく買い食いしていたものだ。
思い返せば、当時はしばしば辛いものを酒のツマミにしていたなと思う。あの頃は辛いものとビールの組み合わせは最高だと思っていた。好物だったという方が正しいに違いない。
が、それも過去形。かつての話である。今の俺では絶対にありえないと言い切れる。
今の俺の舌は辛いものを一切受け付けない。
実際、以前好物だった激辛チップスを一度買って食べたことがある。買い物に行った時にふと見かけて懐かしさのあまり購入して食べたのだが、口に含むと同時に水道に向かうことになった。それは既に俺の中ではあまり思い出したくない出来事に数えられている。
今の俺は辛すぎるものを食べようものなら、舌がヒリヒリして涙が止まらなくなってしまうのだ。
その一件以来、俺は自分が以前の“俺”とは別の人間になってしまったのだと改めて思い知らされた。よく考えてみれば、趣味嗜好が以前の俺とは変化していると感じることは他にもいくつかあったのだ。多分、この身体になった影響の一つなのだろう。
俺は自分でも知らないうちに変化しているらしい。けれど、それらは自分ではどうしようもないことなので仕方がないと思っている。それによって何か不利益を被っている訳でもないし、考えるだけ無駄だろうと今の俺は半ば投げやりな結論を下していた。まあ、現状大きな問題が起きているでもないし、別にいいかなというのが俺の意見だ。
二つ目。アルファベットのGの略称で知られる夏によくいる黒光りする昆虫。
かつての俺が幼少の頃はさほど苦手意識がなかったが、周りがギャアギャア言って騒いでいるのを見ると何となく俺も嫌だなぁと思うようになったのが始まり。そのまま苦手意識が膨れ上がり、今では立派にヤツを見かけると絶叫する側の人間になった。
冷静に考えればさほど恐ろしいもののはずもないのだが、今ではヤツは俺の恐怖の対象の一つだ。ぶっちゃけ気持ち悪い。生理的に受け付けないとも言う。
出来ることならヤツラを目にすることない穏やかな日常を送りたいというのが、俺のささやかな願いの一つだ。
ヤツラを滅殺する術とか誰か開発してくれないだろうかと、わりと本気で思っている。結構需要はあると思うんだが。
三つ目。これは以前の俺だった頃から変わらずに苦手なものだ。
それは女の涙。
自分自身も女になってしまった俺だが、これだけは克服できる気がしない。目の前で女性に泣かれたら、俺はどうしたらいいのか分からずあたふたと慌てるしかないだろう。
男に泣かれたって何とも思いはしないが、女性に泣かれるのだけはやりきれない。惚れている女は勿論だが、そうでなくても女性の涙というのはキッツイものだと思う。
涙は女の武器とはよく言ったものだよな。それだけでこっちは戦闘不能に陥ってしまうんだから、その武器の有効性というのがいかに強力かというのは分かってもらえるだろう。
そんな訳で、女を泣かせる男は最低だと俺は思うのである。
日向ヒナタは大人しい女の子だ。
日向といえば、木ノ葉でも有名な名家の一つである。白眼という血継限界を持ち、優秀さで里の中でもかなり名を馳せている。その源流は里の設立以前からと言われ、由緒正しい血筋の一族だ。
人伝に聞いた話によると、ヒナタはその日向一族の宗家の娘らしい。
しかし、一方で宗家の娘である筈のヒナタは、どちらかと言えば優秀な名家の娘と言うよりも、ごく平凡で地味な雰囲気の女の子だった。
あまり目立つようなことを得意としておらず、いつも教室の隅でひっそりとしている。常にどこか不安気で、おどおどとしていた。人前で実技をする場面などを見ていると、こっちが何か失敗したりはしないかとヒヤヒヤしてしまうくらいだ。実際、彼女は特に優秀と呼べるような人間ではなかったので、度々失敗しては大げさなくらい落ち込んでいた。
これが例えば俺だったら、同じように失敗をしても、いのにため息を吐かれるくらいであっさりと終わってしまうのだろう。翌朝どころか、メシを食う頃には全て忘れているに違いない。けれど、ヒナタは悪く言えばいつまでもうじうじと引きずるタイプだった。
基本的な性格は真面目らしく、アカデミーの授業もいつも真剣に取り組んでいる。座学の時はどこかの誰かさんたちと違って居眠りしたり、菓子を食ったりは勿論しない。俺が船を漕ぐような退屈な話でも、ちらりと横目で見たヒナタは生真面目に聞いていた。実技もいつも一生懸命やってます、という感じで必死に頑張っているというのはちょっと見ていれば、誰にでもすぐ分かることだろう。
その頑張っている姿というのが、健気であると感じる。
ああいう女の子を世間では可愛いと呼ぶんだろうな。実際にヒナタは可愛いと俺も思っている。なんというか、派手さはないがその分儚さがあるというか。とにかく、男だったら守ってあげたいと思わせる雰囲気のある女の子だ。
そんなヒナタと俺は特別親しい訳ではない。
俺は女子では大体いのにひっついていることが多く、いのとヒナタは誰がどう見ても正反対のタイプだ。二人が行動を共にすることはあまりないので、必然的に俺とヒナタが関わり合う機会もそんなにはない。
にも関わらず、何故こんなにヒナタのことについて詳しいのかと問われれば、彼女が目に入ることが多いからだと俺は答える。
勿論、最初はヒナタのことを意識して見ていた訳じゃない。ふと気がつくと、ヒナタが視界の端にいつもいたのだ。俺は直接ヒナタとは何の接点もない人間だが、彼女が俺の視界に止まることは非常に多かったのである。
何の接点もない俺とヒナタを結ぶもの。
それはうずまきナルトである。
日向ヒナタはうずまきナルトに惚れている。
なんでまた、と思わないことはない。だが、何故かなどと問うのはあまりにも野暮な話だ。
恋とはするものではなく落ちるものというのは、いつかどこかで誰かが言った言葉であるが、まことその通りであると俺は思う。
相手を好きになろうと思って好きになるのではない。気がついたら好きだから好きなのだ。
俺が何故お姫様のことが好きなのかと問われれば、俺はいくつも理由を挙げることができるだろう。だが、どれも要因の一つであれど、決定的な原因ではないと思う。好きだから好き。それ以上、適した言葉は結局はない。
大体、俺は愛だの恋だのを語れるほど、それらに精通している訳じゃない。そんなものは個人の尺度であり、決まったものさしがあるもんでもないだろう。好きだと思うその感情があればひとまず理由は後回しだ。そんなものは後でいくらでも後付けができるのだから。
とにかく、今重要なのはヒナタがナルトを好きだと言う事実だ。
はっきりきっぱり言ってしまえば、他人の恋愛など詳しくもない俺だが、ヒナタのナルトへの好意は案外すぐに分かった。というか、分からない方がおかしい。それくらい、ヒナタの恋心はあからさまだった。
まずナルトを前にするとヒナタはまともに話をすることが出来ない。
元々ヒナタは饒舌な方ではないが、明らかにナルトに対しては上手く言葉が出てこないようだった。顔を真っ赤にしながら、「あの、その……」と何かを言いかけては口ごもってしまう。緊張しているのだろう。あわあわと慌てている様子は、隣りで見ていてこちらまで恥ずかしくなってしまうほど初々しい。
そして、気がつくとヒナタの視線はいつもナルトに向いている。
良くも悪くもナルトは目立つやつなので、ついつい周囲の視線を集めることはよくあることだ。けれど、ナルトがひっそりと影に隠れているような時でも、ヒナタはナルトを見つめている。その視線はいつもナルトを想っていて、ヒナタの一途さがわかるようでもある。もし、眼光で人に穴を空けられるならば、今頃ナルトは全身穴だらけに違いない。そんな能力がヒナタになくて良かった。あったら、ナルトは命がいくつあっても足りなかっただろう。
まぁ、当の本人であるナルトは恐ろしい程ニブチンだったので、全くというほど気がついていなかったけれど。
いのの初恋宣言の時はみっともない程うろたえてしまった俺だったが、ヒナタの恋心に気がついてもさほどうろたえずに済んだのは、それがあまりにも初々しかったからだろう。
何というか、見ていて微笑ましいと言うかこそばゆいと言うか。とにかく、その恋模様があまりに甘酸っぱかったせいで、俺は何とも言えない生温かい笑顔でヒナタ(とナルト)を見守ることが出来た。
見守るだけというそのスタンスに、過去の自分を重ねてしまったこともあるのかもしれない。あの頃の俺も結局はお姫様を見ていることしか出来なかった。
いや、本当は俺は見てるだけじゃなくて、余計なちょっかいをかけてしまったりもしていたから、ヒナタからすれば一緒にするなと思うかもしれないけれど。
とにかく、俺は存外ヒナタの恋心に肯定的だったのである。
その日の放課後、ナルトとこの後何をしようかと話しながら、一緒に帰ろうとしていた時だ。アカデミーの廊下でヒナタが大きなダンボールを抱えている姿を見かけた。
もう他の子どもたちはみんなとっくの昔に下校している。こんな時間に残っていたのは俺たちぐらいだろう。
廊下は入り込んだ陽光で茜色にすっかり染まっている。伸びる影法師も細長く、俺たちの身長の倍くらいはありそうだった。
ちなみに何故俺たちがそんな時間まで残っていたのかと言うと、いつもの如くイタズラをしでかしたナルトがイルカ先生に雷を落とされていたからだ。長々とイルカ先生のお説教を食らったナルトを先ほど俺が迎えに行った訳だが、今日はいつもに増してイルカ先生のお小言が長かったせいである。
先ほど解放されたナルトは反省の色もなく「イルカ先生は話が長すぎるんだってば」と、苦言を漏らしていた。
「ヒナタ? こんな時間に何してるんだってばよ?」
「な、ナルトくん……?」
抱えているダンボールが大きすぎるせいで、前がはっきり見えないのだろう。ナルトの声に驚いたようにヒナタは肩を揺らした。
予想外のナルトの出現に、ヒナタは上手く返事が出来ないらしく慌てているようだ。
「もうみんな帰ってるのに一人で何してるんだ?」
助け舟を出すために、ヒナタにそう問えば「あのね……」と小さな声で事情を説明しだした。
ヒナタの話を要約すると以下のようになる。
その日の放課後、事情があって少し教室に残っていたとき(ヒナタは詳しく語らなかったが、俺はナルトのことが気になって残っていたんだと思っている)、ふとアカデミーの教師に声をかけられたらしい。何でも、明日の授業で使う教材を運ぶのを手伝って欲しいと頼まれたのだそうだ。
いい人目いい人科いい人属お人好しのヒナタは断るということも出来ずに、引き受けてしまったらしい。最初は教師と二人でダンボールを運んでいたが、その教師が他の教師に呼ばれてヒナタを置いてそちらへ行ってしまったそうだ。
その際に、件のアカデミー教師に『いつ戻ってこれるか分からないから、区切りのいいところで帰って構わないよ』とヒナタは言われたそうなのだが、根が真面目な分、止め時がわからなくなってしまったのだろう。結局、区切りを付けることが出来ず、一人で教材を運ぶために廊下をダンボールを抱えて何往復もしていたら、こんな時間になってしまったのだそうだ。
「そんなのもう十分だと思うぞ。そろそろ帰っていいんじゃないか?」
事情を聞いた俺がそう言えば、ヒナタは眉を八の字にしながら「でも、あと少しだから……」と小さく告げた。
そのあと少しがどのくらいの量かは知らないが、こんな時間に一人で作業をするのは精神的にもきついだろうと俺は思う。か弱い女の子にそんなことをさせるのは心が痛む。
それからの俺の判断は早かった。
「ナルト」
ヒナタに少し視線を送ってから、俺は隣にいるナルトに告げた。
「労働の後のラーメンは美味いと思わないか?」
「ん?」
突然の俺の切り出しに、話が読めないらしくナルトは頭上にクエスチョンマークを浮かべてみせた。
そんなナルトを見て、俺はにんまり笑いながら続ける。
「ヒナタを手伝ったら、一緒に一楽のラーメン食べに行こうか」
そこまで言えば、ナルトも俺の言葉の意味が理解できたらしい。この後のナルトの行動など言うまでもあるまい。
「ヒナタ!」
「は、はい!」
急にナルトに名前を呼ばれたヒナタが、驚きのあまりか無駄に背筋を正して返事をする。
「荷物、どこに運べばいいってば?」
言いながら、ナルトはヒナタから荷物を受け取る。
その瞬間、ヒナタの顔がゆでダコのように真っ赤になり、俺の目には確かにその頭から湯気が出ているのが見えた。きっと今のヒナタの目にはナルトのバックに無駄にキラキラしたものが見えているに違いない。
ヒナタは自分のほっぺたを左手で抑えながら、右手で廊下の先を指差した。
「く、くノ一教室に……」
何とかそれだけを言い切ったヒナタは、ふらりと倒れそうになる。俺は慌てて、ヒナタを支えた。恋する乙女にこのシュチュエーションは効果がありすぎたらしい。
ナルトはそんなヒナタに気がつかず「くノ一教室だな!」と荷物を持って、既に廊下の向こうに踵を返していた。
何だこのラブコメ。状況を作った要因のひとつは間違いなく俺だが、そんなことを思わずにはいられない。
何だか俺の存在が忘れ去られているような気がして、ほんの少し胸の奥で乾いた風が吹いた気がしたが、俺は気にしないことにした。というか、意識したら虚しくなる。
仕方なしにため息一つ吐くと、俺はヒナタを支えてから立たせた。
「倒れるのは構わないけど、荷物を運び終わってからにしてくれると嬉しいんだけど」
その後しばらく、俺たちは三人で教材運びを続けた。
ヒナタはあと少しだからと言ったが、実際には運ぶ荷物はまだまだたくさんあった。ヒナタ一人だったら、いつ帰れることになったのか分かりゃしない。手伝いを申し出て良かったと俺は密かに思う。
何往復かした後、ようやく俺たちがそれぞれ後一回ずつ荷物を運べば終わるというところまで荷物を運び終えることが出来た。
ナルト達より一足先に俺の分の教材をくノ一教室に運び終えた頃、ふとカサリという音と気配を感じて俺は背後を振り返った。
そして、振り返ると同時に俺は思いっきり後悔する。
そこにいたのは、俺がこの世で最も憎悪する昆虫だった。しかも、でかい。滅多に出ないくらいの特大サイズのGだったのだ。
「ぎゃあああああああああああああ」
俺は誰が聞いてもドン引きするに違いないだろう絶叫を上げて、後ずさった。
「サクラちゃん? 何があったんだってば?!」
俺の絶叫に後から来たナルトが心配するように声をかけてきた。俺は咄嗟にナルトの後ろに隠れながら、Gを指差す。
最初は「ん?」と目を細めたナルトもGの存在に気がつくと、俺と似たような絶叫を上げた。
以前、俺がナルトにGの恐ろしさはこんこんと語り尽くしたおかげで現在ナルトは俺と同じくらいGが苦手な人間になった。余談だが、そのおかげで、ナルトの部屋が以前よりほんの少しキレイになるという恩恵を得たという話がある。まぁ、それもこんな時二人揃って絶叫を上げながら逃げまとうしかないというデメリットも得てしまったので、素直に喜ぶことも出来ないのだが。
そうこうしている内に、慌てふためく俺たちの前に現れた地獄の使者は、俺たちをさらなる混沌に陥れようとこちらへ向かって前進をしてきた。
「ぎゃああああああああああ!?」
俺たちは我を忘れて、お互いに縋りつきながら絶叫を繰り返す。
この世の汚物を集めて固めたような存在が、俺たちを追い詰めるようにこちらへと向かってきていた。
俺たちをあざわらうかの如く左右へ動きながら、ヤツは俺たちを教室の隅へと誘導していく。罠だと知りながら、俺たちに追い込まれる以外の選択肢はない。
怖い。とにかく怖い。
速いし、動きが気持ち悪いし、下手に刺激をすれば飛ぶかもしれないの三重苦だ。
ちくしょう、俺たちはこのままなすすべなく黒い悪魔の餌食になるしかないのか。俺たちが絶望の淵に立たされたとき。
「二人ともどうしたの?」
俺たちに遅れて、最後の荷物を抱えながらヒナタがくノ一教室に現れた。
ヒナタは黒光りする憎いあんちくしょうの存在に気がついていないのだろう。平常通りの顔で、俺たちの元へと足早に歩を進めた。
だが、俺たちとヒナタの間にはヤツがいる。このままではヒナタが危険だ。俺は必死にヒナタに足元の危険を知らせるために叫んだ。
「ヒナタ、お前だけでも逃げるんだ!」
教室の奥に追い込まれている俺たちはともかく、ヤツから見るとヒナタは教室の入口側だ。俺たちと違い、ヒナタはヤツから逃げることは容易い。
俺たちは無理でも、せめてヒナタだけは……!
だが、ヒナタに俺の叫びは届かない。
身の危険に気がつかないヒナタは、そのまま俺たちの元へと近づき、そしてヤツと邂逅した。
カサカサッとヒナタの足元をヤツが横切る。それに気づいたヒナタはゆっくりと右足を上げ、それから――。
「えいっ」
踏んだ。
ぷちっという音を聞いた瞬間、俺とナルトは完全に思考を停止させてヒナタを見つめたまま固まってしまった。
ヒナタはぺちゃんこになったそれを、ティッシュで包むとそのままゴミ箱にぽいっと捨ててしまう。俺たちはヒナタがそれらの動作を行っている間も、瞬きすら出来ずに硬直したままだった。
「ヒナタ……?」
喉の奥から何とか声を絞り出して名前を呼べば、ヒナタは小さく首をかしげてみせる。どうかしたのかとでも言わんばかりの仕草だった。
そのままヒナタがこちらへ近づいてこようとしたところで、俺とナルトはヒッと喉の奥から変な声を出してしまう。耐え切れなくなったのか、ついにはナルトは絶叫した。
「ヒナタ、こっち来るなってば!!」
あ、馬鹿。
内心ナルトと全く同じことを考えていたが、その瞬間、俺はナルトがとんでも失言をしてしまったことを理解した。
ナルトの言葉に、ヒナタがこの世の終わりでも見たという表情で固まる。
次の瞬間にはヒナタの目の端に涙が浮かんでいた。
ショックを受けたらしいヒナタが踵を返して走り出す姿を見送ってから、俺はとりあえずナルトの頭を思いっきり殴ってみせる。
気持ちは分かる。とてもよく理解できる。だが、その上で言わせてもらおう。
「ナルト、女を泣かせる男は最低だ」